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2017年06月26日

【作家・吉田龍司の歴史に学ぶビジネス術】「ダメ社長」こそ勝者になれる?項羽と劉邦の分かれ目

作家・吉田龍司の歴史に学ぶビジネス術

■ニッポン企業は既に「四面楚歌」か?

 「実は幻想、iPhoneの日本製部品頼み」――先日の日本経済新聞の報道に落胆された方も多いだろう。過去5年通算のアップルサプライヤーは今や台湾企業71社、米国企業60社、日本企業55社、いう順位になっているというのだ。
 一昔前の感覚ならそもそもiPhoneをつくるべきは日本企業の役割だったはずだが、今やその部品さえも台湾の後塵を拝するようになったことになる。「モノ作り大国」の地盤は揺らぐところか、もう崩壊してきているのかもしれない。

 昨年発売され話題となったデービッド・アトキンソン氏の『新・所得倍増論』(東洋経済新報社)は日本の一人当りGDP(国内総生産)の先進国中最低の低さ(世界27位)など、まん延する「日本病」に鋭いメスを入れた書だった。日本は輸出額世界4位の輸出大国だが、これも一人当りにすると世界44位となるらしい。モノ作り大国の看板はどこへいったのか。

 日本人の生産性を著しく低下させている「日本病」とは、やれ会議が長い、決裁印が多い、タコツボ然とした組織などなど、いろいろな要因が囁かれている。だが最大のポイントとなると経営者ということになるだろう。
 東芝にせよシャープにせよ、ここまで日本企業を凋落させたのはやはり人だ。昨今は日本の経営者・社長叩きがますます加速している。半面、こうした風潮がますます経営者を萎縮させ、ただでさえサラリーマンの気質がある日本の社長がますます保守化、結果として生産性も一段と低下、という悪循環が起こっているのかもしれない。

■劉邦がライバル項羽に勝てた理由とは?

 秦の始皇帝亡き後の中華の覇権を項羽と争い、見事勝利して前漢初代皇帝になったのが劉邦(高祖・在位前202〜前195)である。
 劉邦は典型的なダメ人間であった。
 生まれは沛の農家だが仕事は大嫌いで、酒色を好んだ。半面、情愛が細やかで、心ばえはからっとして明るく、度量が大きかったという。まあ、愛される田舎の侠客、といったところである。なおライバルの項羽は楚の貴族出身のエリート、さらに圧倒的な力を持つ武人であった。
 項羽と劉邦は乱世の中、天下に雄飛することになる。

 劉邦の性格を示す逸話の一つが「法三章」である。
 秦を滅ぼした劉邦は始皇帝の定めた厳しい法律を廃し、「人を殺せば死刑。人を傷つければ処罰。人の物を盗めば処罰」というシンプルな3条に改めた。それまで秦の厳しい法律にびくびくしていた人々は大いに喜び、劉邦の人気は一気に高まったのである。理不尽な法整備を急ぐどこかの国に聞かせたい話である。

 さて、項羽を倒して天下を統一し、洛陽に都を置いた劉邦は居並ぶ諸侯・文官に次のような質問をしたという。
 「遠慮なくホンネをいってくれ。わしが天下を取れたのはなぜか。項羽が敗れた理由は何か」。

 ある群臣はこういった。
「陛下(劉邦)は傲慢で人を侮り、項羽は情け深く、人を可愛がりました。しかし、陛下は城や地を攻略すると、正しい論功行賞をしました。だが項羽は賢者や有能な人をねたみ、功労者は害し、満足な褒賞も与えませんでした。これが項羽が天下を失った理由です」。

 劉邦はこういった。
 「貴公らは一を知って、二を知らぬ者だな。そもそも深い戦略を考えることでわしは張良(劉邦の軍師)にかなわない。国家を鎮め、人民を手なずけることや軍糧の調達で、わしは蕭何(劉邦の重臣。漢の丞相)にかなわない。百万の軍を率いて戦えば必ず勝ち、攻めれば必ず攻略するという点でわしは韓信(劉邦の将軍。「股くぐり」の逸話で著名)にかなわない」。
 「この傑出した三人をわしは使いこなせた。それが天下を取れた理由だ。楚にも范増という傑物がいたが、項羽は彼一人使いこなせなかった。それが項羽がわしの餌食となった理由だ」。

■「賢に任じ、能を使う」マネジメント

 劉邦はおごり高ぶらず、自分が凡才であるとはっきり認識している。正しく自己分析ができるマネジャーだったのである。
 劉邦が傑出していたのは「人を使う能力」だった。

 『孫子』と並ぶ中国の兵法書である『呉子』には「賢に任じ、能を使う」という言葉がある。
 呉子はこの「賢能を任用している国」は絶対に攻撃してはならないと戒めている。正しく人を登用し、使いこなせている国には絶対に勝てないためだ。

 だから劉邦のようなトップに求められるのは個別の専門能力ではない。むしろ「おれがおれが」と出しゃばるような専門能力はいらない。賢能を任用することさえできれば、「ダメ社長」でもいっこうに構わないのである。
 裏を返せば、自己分析もできず、賢能を任用することもできない経営者は去るべきであり、張良や韓信を目指した方がずっといいことになる。それほどトップという仕事は難しいのだ。


(作家=吉田龍司 『信長のM&A、黒田官兵衛のビッグデータ』(宝島社)、『毛利元就』、『戦国城事典』(新紀元社)、「今日からいっぱし!経済通」(日本経営協会総合研究所)、「儲かる株を自分で探せる本」(講談社)など著書多数)


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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 13:02 | 吉田龍司の歴史に学ぶビジネス術