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2020年01月24日

【小倉正男の経済コラム】「泉佐野の乱」の行方〜ふるさと納税と地方自治とは?

■「泉佐野の乱」=総務省VS泉佐野市

kk1.jpg 「泉佐野の乱」、ふるさと納税をめぐる総務省と泉佐野市の争いのことだが、国と地方がどちらも引かずに裁判になっている。
 裁判のほうは、口頭弁論などが終わり大阪高裁の判決が出されるばかりの状態だ。
 
 「泉佐野の乱」というと国と地方の内乱めいたネーミングになる。佐賀の乱、西南戦争などで日本の内乱は終わっているのだが、少し面白おかしくという立場から「泉佐野の乱」と表現しているようだ。
 
 税金というのはおカネがからむわけだから、どう徴税(国民からすると納税)するのかは大きいファクターである。
 
 ふるさと納税は、国民個人が自由に地方自治体を選んで寄付して、その地方自治体から商品やサービスの還付を受けるというのが基本構造だ。
 国民個人からすれば納税する地方が「自由化」されており、個人の選択に任されている。選択された地方自治体が初めて徴税権を持つ仕組みである。
 
■納税者が選ぶことでマーケット原理に晒される

 徴税というのは徴税者からすれば凄い既得権だから、法律に沿って粛々と徴税を進めるわけであり、有無をいわせない分野である。
 
 しかし、納税が選択に任されるとすれば、納税者に選んでもらうわけだから競争原理が働くことになる。いわば、マーケット原理に晒される。
 
 地方自治体は選んでもらうためにこれでもかと「企業努力」をして商品、サービスを展示して巨大な“バーチャル特売マーケット”を形成する。
 百貨店、スーパー、ネット通販とまったく同じで品揃え、提示価格、品質、お買い得感を競いに競って「毎度ありがとうございます」という構造になる。
 
 当初はそうしたことは考えていなかったのだろうが、ふるさと納税はすでに定着し地場産業などにとっても売り上げ面で不可欠な存在になっている。

■18年度500億円の寄付を集めた泉佐野市

 マーケット原理の導入を徹底的にやったのが泉佐野市だ。やったというか、泉佐野市はやり過ぎている感は否定できないのだが・・・。
 
 泉佐野市のふるさと納税サイトは、そこいらのネット通販が負けそうな凄まじい品揃えだった。地場産品とはほとんど無縁の牛肉、ビールなどてんこ盛り状態――。
 
 ふるさと納税が国会で新制度改訂の議論がなされた時期には「閉店キャンペーン」でAmazonギフト券贈与セールまで行った。
 
 この結果、泉佐野市は2018年度に500億円の売り上げならぬ寄付を集めた。納税者も18年度は泉佐野市をこぞって選んだわけである。泉佐野市は、ふるさと納税でほとんど“一人勝ち”だった。
 お買い得感というか、改めてマーケット原理とは恐ろしいもの、凄いものである。

■徴税権は各藩から中央政府に移行

 そうした経過があって総務省としては、ふるさと納税の新制度では泉佐野市の参加を除外した。
 「国地方係争処理委員会」からは再検討の勧告があったが、総務省としても泉佐野市除外は譲れない模様だ。裁判の争点はそこである。
 
 徴税権に話を戻せば、江戸期は幕末まで藩がそれを握ってきた。藩が藩兵を養って身分制度を維持継続してきたのも藩がおカネを握ってきたからである。
 明治政府が、「版籍奉還」「廃藩置県」と改革を行ったのは、徴税権を中央政府に移すという意味合いがあった。藩から明治政府に徴税権を移さなければ、幕府がなくなったにしても
財源がなければ不安定でしかない。

 明治政府が国軍を養えなければ、藩が反乱を起こせば吹き飛ばされてしまうことになる。併せていえば、藩が集めた税収から給料(秩禄)をもらっていた武士階級は、「秩禄処分」で身分による給料はなくなった。
 
 地方税交付金などは、中央政府が徴税権を持って地方に地方税を分配交付するというのだが、日本の近代化の流れと無関係ではないといえるかもしれない。
 日本の地方自治とは何なのか――。「泉佐野の乱」は、それを考えさせられるものであることだけは間違いない。

(小倉正男=「M&A資本主義」「トヨタとイトーヨーカ堂」(東洋経済新報社刊)、「日本の時短革命」「倒れない経営〜クライシスマネジメントとは何か」(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長などを経て経済ジャーナリスト。2012年から当「経済コラム」を担当)

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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 12:53 | 小倉正男の経済コラム