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2021年08月23日

【小倉正男の経済コラム】「菅首相は1日でも長く続いて欲しい」という戦術

■野党側は「菅首相は選挙の相手には持ってこい」と踏んでいる

kk1.jpg 横浜市長選だが、野党側が推薦する山中竹春氏が圧勝した。選挙開票のかなり前というか、投票が締め切られると同時に「当確」が報道された。

 敗北した与党側候補の小此木八郎氏(前国家公安委員長)は、政界から「引退」を表明した。菅義偉首相としては、お膝元の事態であり衝撃は小さくない。

 ところで野党側は、「菅首相は1日も早く辞めて欲しい」ではなく、「管首相は1日も長く続いて欲しい」に戦術を変えてきている。野党にとっては、菅首相が総裁選を勝って、総選挙となるのが理想的とみている。

 野党は、菅首相が相手のほうが絶対に有利と踏んでいる。野党にとって「ガースーの風は選挙に持ってこい」ということになる。

 菅首相は、長崎市の原爆犠牲者慰霊平和祈念式典に遅刻した。野党側は「トイレは仕方ない」といつになく大人の態度を示した。「コロナ感染を最優先」という菅首相の言い違いも問題にされずスルーされている。菅首相を支持しているのは、(何も与党だけではなく)野党であることになる?

■反対はよいのだが財政問題は?

 横浜市長選の争点は、新型コロナ感染症対策とカジノを含むIR(統合型リゾート)だった。山中竹春氏は「カジノ誘致反対」を表明していたのだが、小此木八郎氏は「横浜市へのカジノ誘致は反対」という立場だった。小此木八郎氏のほうは、選挙用の反対ではないかと疑念を持たれた面がある。

 現職の林文子前市長はカジノを含むIR推進を唱えたが、こちらも敗北。そもそもIR誘致に走ったのは財政難からだったと思われる。

 林文子前市長の場合は、新型コロナ感染症問題ではまったく存在感がなかった。ワクチン接種ですら予約が取れないという混乱を招き、解決・収拾できなかった。カジノを含むIR以前に敗北が決まっていた感がある。財政難もあるのだろうが、コロナ対応での無為といえる結果が致命的だった。

 選挙では、山中竹春氏も小此木八郎氏も財政難問題をどうするのか表明する必要があった。山中竹春氏は市長に就任するわけだから、横浜市が抱える課題の企業誘致などにどう取り組むのか明らかにしなければならない。

 カジノを含むIR誘致反対はそれでよいのだが、財政難を抱えていては反対しているだけでは済まない。財政問題を解決しないと存在感を示せず、林文子前市長の二の舞になりかねない。

■「衰退国家」のトレンドが加速化

 菅首相と野党の奇妙な“共存関係”だが、野党があまりにそれに依存すれば政策が出てこない。「菅首相が相手なら選挙はいつも勝てる」なら、野党として勢力を拡大するにはそれで十分である。国民への給付金、消費税などでリスクを取って経済政策などを打ち出す必要はない。

 しかし、与党の自民党にしても、菅首相にしても、ここまで追い込まれると何をしてくるか分からない。菅首相は、「総裁選出馬の考えに変わりはない」としている。だが、自民党としては「選挙の顔」を変えることも十分にあり得る。野党もずっと菅首相を相手に選挙というわけにもいかない。

 日本は「衰退国家」というトレンドに歯止めをかけるどころか、「衰退国家」化のトレンドが加速されている。新型コロナ感染症対策の不手際が経済に与えた打撃は計り知れない。コロナは天災の面もあるが、政治という「人災」が輪を極限まで拡大したことも紛れない。

(小倉正男=「M&A資本主義」「トヨタとイトーヨーカ堂」(東洋経済新報社刊)、「日本の時短革命」「倒れない経営〜クライシスマネジメントとは何か」(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長などを経て経済ジャーナリスト。2012年から当「経済コラム」を担当)

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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 14:14 | 小倉正男の経済コラム