■まだまだ重要イベントの渦中

「何も決められない日本」が、「何でも決められる日本」に大変身しているようである。過日9月7日(日本時間8日)の国際オリンピック委員会(IOC)総会で、並み居るライバルたちを圧倒して2020年オリンピックの東京招致に成功したことが、このイメージ・チェンジを国際的に印象付けた。この圧勝の決め手になったのが、安倍晋三首相のIOC委員を前にしたプレゼンテーションで、世界的に懸念が高まっている福島原発の汚染水漏れに対して「コントロールされている(アンダー・コントロール)」と堂々と毅然とした態度で言い切ったことにあるといわれているからなおさらである。
こうなると「いつ決めるの?今でしょ」となるのが、消費税増税だろう。このキャッチコピーで人気がブレークした予備校の名物講師張りに、安倍首相も、最後の参考指標となる10月1日発表の日銀短観を待って、増税の政治決断をするとの観測が、日に日に高まっている。日本中が、オリンピック招致成功の歓迎ムードに酔っている間をチャンスに、ヤヤコシしい問題にケリをつけようとの判断が働いても不思議はない。すでに新聞、テレビの報道は、消費増税を飛び越して、増税を前提にした対応の経済対策や増税分の価格転嫁問題のスクープに焦点を移している。米国FRB(連邦準備制度理事会)の量的緩和策(QE3)の資産購入縮小は、きょう17日、18日と開催されるFOMC(公開市場委員会)で決着がつく予定だが、「一難去ってまた一難」となお続く重要イベントの渦中に張り付けられることを余儀なくされる。
こうなると「いつ買うの?今でしょ」と直ちにならないのが、株式市場の難しさである。外国人投資家がどう動いてくるのか、消費増税のデフレ効果を、策定される経済対策や2020年開催の東京オリンピックの期間7年限定の「オリンピック・バブル」でどれほどカバーできるのか目視しなくてはならないからである。故橋本龍太郎首相が、1997年4月に実施した前回の消費税増税は、海外からの懸念の声が強まるなか政治決断して、デフレ不況を呼ぶ込み、「失われた20年」のドン底に落ち込む引き金となったが、今回の消費増税は、先進国首脳会議で再三にわたって声明してきた国際公約であり、外国人投資家は、買い材料としてポジティブに評価するとみられる。
問題は、国内のデフレ効果である。政府、日銀の景気判断は、上方修正が続き、景気は回復しているとしているが、これが所得の上昇にまでにはまだ至っておらず、年金生活者の年金支給額が減額されるなかでの消費税増税である。庶民レベルでのサイフのヒモは固くなり、節約志向・生活防衛意識が再燃することは、目に見えている。兜町の市場参加者も、今年5月の高値で上手に売り抜けた投資家は、なお「アベノミクス」の資産効果を満喫しているようだが、この高値で遅れて市場参加して高値掴みを余儀なくされた投資家は、逆資産効果に喘いでいる最中である。とてもポジティブに買いとは判断し難くくなる。
消費税増税の評価が分かれるなかで、株式市場でも強気(ブル)派、弱気(ベア)派と投資判断が、二極化するのは当然、予想される。そこでである。ここでブル派、ベア派のいずれにも肩入れするのでなく、それぞれが投資戦略を練り上げる棲み分け投資を提案したい。ブル派は、積極対処してくる外国人投資家を出し抜き、ブル派は、デフレ効果を逆手に取って業績を伸ばしそうな銘柄への投資に限定すれば、自らの景況感・相場観やライフスタイルに違うことなく好パフォーマンスが期待できるはずである。(本紙編集長・浅妻昭治)
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 10:05
|
編集長の視点