
しかし、この結果を裏読みすると、何だかどこかで経験したようなデジャブ(既視感)に捉えられる。思い当たるのが、あのドル高是正を打ち出した1985年9月のプラザ合意である。当時は、日本を筆頭に先進5カ国(G5)が、いっせいにドル高是正のドル売りの協調介入に踏み切り、これがその後の日本のバブル経済の遠因となった。急速な円高進行により「ジャパン・マネー」が、世界のマーケットを席捲、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」として世界経済の機関車となった。この「ジャパン・マネー」が、結局は、金融機関の過剰融資による「バブル・マネー」であったことは、「バブル経済」が破綻し、巨額の不良債権の処理に追われることになったときに「一朝の夢」として思い知らされることとなった。
プラザ合意当時は円安修正、今回は円高修正と真逆となっているが、それでも今回の共同声明のどこにデジャブがあるかといえば、日本経済への期待感が共通なのである。G20の共同声明では、世界景気減速への懸念も盛り込まれ、ユーロ圏の景気が悪化し、中国の経済成長が鈍化するなか、「アベノミクス」効果により復活中の日本が、「シェールガス革命」に沸く米国と並んで世界経済を牽引する役割を暗に求められたとも受け取れるからだ。「ジャパン・アズ・ナンバーワン」ではなくとも、「ジャパン・アズ・ナンバーツー」程度で世界経済が、袋小路に迷い込むことのないよう下支えする展開を想定したものだろう。
となると、「円安誘導」も条件闘争となる。為替レートが、1ドル=105円までなら問題がないのか、110円でも異論が出ないのか、さらに115円までオーバーシュートした場合でも許されるのか瀬踏みするということである。昨年11月の野田佳彦前首相の解散・総選挙表明以来、日経平均株価は、為替レートが、対ドルで5円円安となると1000円幅の上昇を繰り返す為替連動性を強めてきた。この計算式通りなら為替レートがこの先、105円まで円安となれば、日経平均株価は1万3800円、110円なら1万4300円との目標株価が弾き出されることになる。今年4月第2週(8〜12日)に日本株を週間で過去最大の1兆5865億円も買い越した外国人投資家が、かさにかかって「日本買い」に拍車を掛けることは想像に難くない。
「日本買い」なら相場感いらずである。主力株買いとなるわけで、TOPIX Core30の構成銘柄が中心となるのはまず間違いない。もちろん外国人投資家は、先物取引を絡めてロットで勝負してくる。元手に制約のある個人投資家が太刀打ちできるわけがない。個人投資家は、外国人投資家との棲み分け投資が賢明で、含み資産関連の材料株などを候補株として選好するのが無難である。ただTOPIX Core30投資でも、外国人投資家との棲み分け投資は可能となりそうで、それが、構成銘柄30銘柄のうち出遅れ株の下値をコツコツ拾う個別株投資である。(本紙編集長・浅妻昭治)