[小倉正男の経済コラム]の記事一覧
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2017年03月18日

【小倉正男の経済コラム】残業料率引き上げこそ歴史的な大改革

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■残業時間100時間未満で歴史的な大改革とは?

 「きわめて画期的で、労動基準法70年のなかで歴史的に大改革だ」(菅義偉官房長官)。
 労使の残業時間の上限規制合意で、繁忙期の残業時間を100時間未満にしたことについてのコメントである。

 このような後進国並みの残業規制で「大改革」とは、残念な話である。民進党や連合も結局はこれに合意しているわけだから、傍からみていると野党もほとんど同罪である。
 政府は「プレミアムフライデー」「働き方改革」とかいっているわけだが、労働政策は旧態依然の感がぬぐえない。

 ドイツやフランスは残業料を大変高いものにした。残業させるよりは、もうひとりの従業員を雇用したほうが安い――。残業料が高いことがワークシェアリングをもたらし、雇用を増加させてきた。

 雇用や賃金を重視するアベノミクスに沿う話だが、そうした方向にはいかない。どうやら与野党とも「籠池・森友学園事件」で思考停止といったところか。

 与野党そろってこんなこと、つまりは「芝居」みたいなことをやっていれば、何をやっているのかと見透かされることになりかねない。
 これでは日本にもドナルド・トランプ大統領のようなとんでもないというか、凄い人が飛び出してくる素地を耕しているようなものである。

■金融政策も限界、賃上げも低調

 そのアメリカだがFRB(連邦準備制度理事会)がトランプ大統領の政権下で初めての利上げに踏み切った。しかし、利上げペースの加速化は示されなかったということでドルを売る動きとなっている。

 加速化はないというが、年3回ペースの利上げは行われるとみられている。アメリカの景気はよいということを確認したわけである。

 問題は日本が政策的に手詰まり状態になっていることだ。トランプ大統領の為替に対する強烈な批判があり、日銀は動けない。それに日銀としても、金融緩和策にこれ以上踏み込んでも効果は期待できない状況だ。

 そのうえ賃上げも低調な推移となりそうである。ドル安基調のなかでは、日本の主力産業である自動車産業各社なども賃上げには積極的になれない。
 またまた利益準備金など内部留保優先、つまりは企業におカネを貯めこむことになる。あまり賢い循環とはいえない。

■残業料率引き上げをアベノミクスの新しい目玉にせよ

 それであるなら、残業料率を引き上げたらよいのではないか。繁忙期の残業を100時間未満にするというだけではなく、少しでも残業料率を引き上げる。そうなれば、ワークシェアリング効果が発現するから、雇用も増加する。

 金融政策だけでは限界がある。それだけに「プレミアムフライデー」「働き方改革」といったことが提案されている。しかし、これらは残念ながら掛け声だけの面があり、政策としては実体が乏しく、上滑り過ぎるのではないか。

 民進党、連合など野党勢力は、政府の揚足を取っているだけではなく、少しは日本経済に寄与することを提案すべきである。そうでなければ、ますます国民から見捨てられることになる。

 残業料率が高くなれば、経営サイドもそれこそ働き方、働かせ方を真剣に考えることになる。世界的に劣悪で悪名が高い1時間当たり生産性も改善に向かう契機となる。

 残業料率が引き上げられれば、所得が上がり、消費購買力の向上にもつながる。これこそ歴史的な大改革で、よいことが少なくない。アベノミクスというタームもあまり聞かなくなったが、残業料率引き上げをアベノミクスの新しい目玉にするべきではないか・・・。

(小倉正男=『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社編集局で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事、日本IR協議会IR優良企業賞選考委員などを歴任して現職)
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 13:54 | 小倉正男の経済コラム
2017年03月08日

【小倉正男の経済コラム】トランプ大統領とメディア「メディアは人民の敵」か!?

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■トランプ大統領の「メディアはアメリカ人民の敵」

 アメリカのトランプ大統領がメディアに対して「偽ニュースだ」と罵倒する風景は、いまやお馴染みとなった。トランプ大統領は、「偽ニュースのメディアはアメリカ人民の敵だ」とツイートしている。

 「人民の敵」というフレーズが飛び出したのは、ロシア革命のレーニン以来のことだそうだ。

 型破りといえば型破りであり、お互いにリスペクトなしに罵倒し合っている。それはそれでアメリカであり、どんどん罵倒し合っていくことが、ある意味で健全の証しになるように思われる。

 大統領とメディアとの緊張関係は悪いことではない――。チェック&バランスということでは、それが曲がりなりにも機能しているからである。

■頑張れメディア

 昨今の日本の話――。東芝では歴代の経営トップが会計担当者に指令を出して不適切会計が行われたといわれている。経営トップの指示・指令で会計はある程度なんとでもなる面がある。それでも無理に無理を重ねて数字をつくり続ければ、どこかで破綻が生じる。

 以前にカネボウが倒産したときに当時の経営トップが、それまでの歴代社長がやってきたようにしてくれ、と会計担当者に粉飾を命令したという話が残されている。
情けない話だが、そのときの経営トップとしては、それは当然のことと思っていたに違いない。

 それだけに記者たちよ、頑張ってほしい。特に、一般紙はともかく、経済新聞、経済雑誌の記者たちには、辛くても勉強して仕事をしてほしいと思っている。

 「コーポレートガバナンス」がいわれて久しいが、日本ではなかなか定着しない。「コーポレートガバナンス」が実体上ないだけに記者たちには頑張ってほしいのである。

 「コーポレートガバナンス」の要諦は、チェック&バランスにある。しかし、これは東芝にみられるように形だけあるが中身はないケースが大半である。
それだけにメディアは、チェック&バランスということでは重要なポジションにある。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 11:05 | 小倉正男の経済コラム
2017年02月23日

【小倉正男の経済コラム】トランプ大統領の税制改革は世界経済を引っ張る中身となるのか?

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■NY株価は史上最高値を連続更新

 アメリカは、消費が好調、利上げ再接近ということで、要するに景気がよい。NY株価は、連日、史上最高値を更新している。

 トランプ大統領は、「ポリティカル・コレクトネス」からいうと問題が多い。支持率も低下している。記者会見をやればやったで怒鳴り合いというか、喧嘩腰でメディアを罵倒している。

 しかし、経済ということでは、差し引きで大きなプラスということである。それがマーケットの過去最高値の連続更新をもたらしている。

 ちなみにNY株価の9日連続史上最高値更新は、30年ぶりということである。確かに、史上最高値ならずとも、9日連続高騰というのもそう多くあることではない。

 もっとも、それは「アメリカ・ファースト」で、アメリカだけのことである。このところの日本のマーケットは、いまひとつというか乗り切れていない。

■「アメリカ・ファースト」ではない税制改革になるか

 マーケットだけではなく、日本経済に影響が及ぶのはトランプ大統領の税制改革(減税策)の行方である。2月28日の議会演説でその具体的な中身が明らかになるとみられる。

 目を見張るものになるか、そうではないのか――。トランプ大統領が事前に公言しているように法人、個人の両面で大幅な減税が打ち出される見込みだ。
 これによりアメリカの景気に拍車がかかり、利上げに進めば、ドル円(為替)にも影響が及ぶことになる。

 「アメリカ・ファースト」で視野を狭くすることなく、アメリカが世界経済全体を引っ張るような税制改革が望まれる。
 国境税など保護主義・重商主義めいたものが強く打ち出されるようでは、「アメリカ・ファースト」であり、世界経済全体を引っ張るものにはならない。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 13:25 | 小倉正男の経済コラム
2017年02月09日

【小倉正男の経済コラム】トランプ大統領の手口とは?脅かすよりも落しどころが重要

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■どこかの地回りの手口?

 ドナルド・トランプ大統領には、メディアを含めて振り回され過ぎではないか。

 ただ、ドル円の為替相場などもトランプ大統領の思惑通りにドル安円高に推移している。
 ドル安がはたしてアメリカの国益かどうかわからないが、まずはトランプ流のペースで進行しているというところだ。

 トランプ大統領は、ネゴシエートル(商人)感覚で、ハッタリをかましてくる。ディールなのだから、相手を驚かせて威圧して、着地=落しどころは違ってもそれでよいということなのだろう。
 ネゴシエートル(商人)は、交渉しないと商売(ネゴシオ)したという気持ちにならないという存在である。

 マティス国防長官が来日して、「日本の駐留費負担は他国のお手本」などの発言に終始した。
 「カネ(駐留費)を全額払わないのなら、アメリカ軍は撤収する――」。そんなトランプ大統領の発言からすると、マティス国防長官が大変にまっとうにみえる。
 どこかの地回りの手口だが、それをアメリカの大統領にやられたら、たまったものではない。

■合理性がなければ、政策は成功しない

 トランプ大統領の「アメリカ・ファースト」は、それはそれでよいのだが、保護主義というか、重商主義めいたものは合理性があるのか。

 ドル安にしたら、日本でアメ車が売れるとは思えない。「被害者意識」だけで、マーケットを否定しても、合理性がなければ経済政策としては成功しない。

 私の住んでいる地域でも、クルマに興味があるほうではないが、ドイツ車はよくみかける。しかし、アメ車はみかけない。まずは何故売れないかを考えるべきだ。

 おそらく、トランプ大統領はネゴシエートル(商人)であり、わかっているのではないかと思われる。アメ車であれ、イヴァンカ・ブランドのファッション衣料であれ、ともあれ声高に言ってみる。
 地回りの手口と思えば、是非はともかく、いちいち驚くことはない。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 20:51 | 小倉正男の経済コラム
2017年01月24日

【小倉正男の経済コラム】石原慎太郎元都知事の窮地〜豊洲購入の賠償責任問題〜

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【東京都が卸売市場を所有する必要はあるのか】

■石原慎太郎元都知事の賠償責任

 小池百合子都知事が、豊洲移転問題で、石原慎太郎元都知事の賠償責任について見直すと表明した。

 石原慎太郎元都知事については、「東京都は豊洲の購入資金578億円全額を石原慎太郎氏に請求しろ」という住民訴訟が起こされていた。
 東京都は、石原慎太郎元都知事に賠償責任はないという立場を採ってきたが、それを変更するかどうかを検討するとしている。

 豊洲ではベンゼン、シアンなどの有害物質が検出され、移転のメドはまったく立っていない。豊洲には、水産物などの卸売市場の前提である「安全・安心」があるとはいえない。
 東京都は、いわば豊洲という汚染された土地を購入したわけだが、そのおカネは税金であり、石原慎太郎元都知事としては相当な窮地に立たされている。

 石原慎太郎元都知事からは、説得力のある説明や反論はまったくなされていない。税金を使い放題という調子で貪ってきたわけだが、税金なのだからその使いみちは説明する責任がある。

■所有してガバナンスがない、というのは最悪

 税金といったものは、「親方日の丸」とまったく同じであり、下手に使おうが、無駄に使おうが、東京都が倒産するわけがない。使い方が鷹揚になる素地がある。

 本来でいえば、いまでは東京都が水産物などの卸売市場を所有しているいわれはないのではないか。
 監督権、チェックしたり指導したりといったガバナンスを所有していればよい。所有はしているが、ガバナンスがまるでないのでは税金を食うだけであり、何の意味もないどころか最悪である。

 卸売市場は、民間に売却して任せて、東京都はそれを監督する。民間ならば、豊洲などの「安全・安心」がない土地にポンと578億円を支払うといったことなどなかったのではないか。

 東京都が卸売市場などまで持っているから、いくら税金を集めてもさらに税金が必要になる。「市場長」などといったポストも必要になり、これも税金で賄うことになる。減税などということは間違っても出てこない。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 09:52 | 小倉正男の経済コラム
2017年01月08日

【小倉正男の経済コラム】トランプ氏の「社会主義市場経済」

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■トランプの企業経営への介入は社会主義経済

 アメリカの次期大統領であるトランプ氏のツイッターによる企業経営に対する介入が止まらない。

 フォード,GMにメキシコに工場を移転するなとツイート、メキシコに工場を建設するなら大型の輸入税を課すと脅かしを発信した。
 さらにはトヨタにまでメキシコに工場を建てるのは、「ありえない」と――。トヨタだけではなく、ほかの日本の自動車企業にも余波が直撃しかねない状況になっている。

 減税、例えばトランプ氏が唱える法人税の35%から15%への大型減税などは市場経済を基本にした経済政策になる。
 法人税が低率なのだから、企業はアメリカで安心してビジネス活動を行ってくれ、海外企業もアメリカでビジネスを広く展開してくれ、というメッセージになる。

 しかし、アメリカの工場をメキシコに移転するな、メキシコなどに工場を建設するな――、と民間企業に「命令」、あるいは「恫喝」するのは市場経済とは程遠いことになる。
これははっきり言えば社会主義、一歩譲っても社会主義市場経済にほかならない。

■徳川吉宗の米相場への介入=悲惨な結末

 社会主義経済、あるいは社会主義市場経済がうまくいった例はない。結果は惨めな失敗になりかねない。
市場経済を人為の力で支配・統制するというのは、ほとんど無茶な話であり、「専制君主」のつもりか、という事態になる。

 江戸時代に八代将軍・徳川吉宗が米相場に介入したという事例がある。徳川吉宗に付けられたアダ名は「米将軍」、米相場を上げようとした。しかし、その結末だが米相場は暴落に見舞われた。
市場経済を人為の力で支配・統制しようとしたが、もたらされたのは市場経済からの逆襲であった。

 徳川吉宗としては、家臣たちが家禄をお米でもらっているのだから、米相場を上げればそれは家臣たちの給料がアップすることになる。家臣たちの生活の向上を考えて、「ポピュリズム」政策を採ったわけである。

しかし、新田開発、農業技術の発展などがあるのだから、おのずとお米の生産量は上がり、そしてお米の価格は下がる。「米将軍」であれ、市場経済を支配・統制しようというのはどだい無理であった。

■トランプ氏自体も5〜6度の倒産で市場経済に痛い目に

 トランプ氏自体も倒産は1度や2度ではない。それどころか倒産は5度、6度というのだから、市場や市場経済の逆襲にとことん痛い目にあっている。
 その恩典で、トランプ氏は税金をほとんど払っていないというのである。

 トランプ氏は、市場経済に逆らっても勝てないことは痛いほど知っているはずである。

 不動産という浮き沈みが激しいマーケットで、企業経営者をやってきているのだから、市場経済を体でわかっているに違いない。
 ところが、「アメリカ・ファースト」になると、まったくの別人格になり社会主義、あるいは社会主義市場経済の信奉者になる。

 日本の企業経営者のなかにも市場経済に逆らう人がいるものである。能力は乏しいがやる気は満々といった企業経営者が、市場経済の警鐘や逆襲に遭遇しても、それをしっかり理解しようとしないケースがある。大概うまくいかない。

 それはともあれ、トランプ氏の矛盾に満ちた政策は大変興味深いのだが、市場経済への支配・統制は悲惨な結末になることはほとんど間違いない。微力ながら、それを少しひっそりと指摘しておかなければならない。

(小倉正男=『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社編集局で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事、日本IR協議会IR優良企業賞選考委員などを歴任して現職)
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 08:35 | 小倉正男の経済コラム
2016年12月22日

【小倉正男の経済コラム】トランプ氏を抜きには語れない「新年の世界景気」

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■トランプ氏の大判振る舞い

 新年の世界景気を占うとすれば、アメリカの次期大統領であるトランプ氏の政策を抜きにして語れない。

 トランプ氏の政策は、牽引車が不在だった世界経済に「主役はアメリカだ」、いや「主役は俺だ」と名乗りを上げたようなものだ。
 問題や相矛盾するような点は少なくない。しかし、世界経済の「主役は俺だ」というのは、このところ見られなかった新事態である。

 まずは減税、富裕層を中心とする所得税減税、さらに法人税減税が取り沙汰されている。10年間で6兆ドルの大型減税が打ち上げられている。法人税は35%から15%に大幅な減税が行われる――。

 海外に移転したアメリカ企業を本国に呼び戻す。加えて、外国企業をアメリカに呼び込む。

 さらには10年間で1兆ドルという国内インフラ投資、それに国防への投資などが謳われている。このあたりはケインズ政策めいており、おカネをばら撒いて雇用を増やすということになる。トランプ氏の大判振る舞いというしかない。

■トランプ氏は財政赤字を無視

 オバマ大統領は、「財政の崖」、すなわち巨額の財政赤字に縛られ、何もできなかった。「世界の警察官」を自らあっさりと放棄した。財政赤字の拡大を見過ごせない。臆病なほど何もやらない。オバマ大統領はそんなジレンマを抱えていた。

 トランプ氏は、財政赤字など眼中にないという立場だ。景気がよくなれば、税収が上がるという楽観論である。

 仮に財政赤字が拡大しても、基軸通貨であるドルを持っており、国債増発で乗り切れる。アメリカにデフォルトはない――。
 根拠があるのかどうかはわからないのだが、強気の楽観論である。

 財政が悪いのに大型減税をやり、インフラ投資を行うとすれば、とりあえず財政赤字は大幅に膨らむ。ただし、景気がよくなれば、税収が上がり、財政赤字を減らすことができる。
 その綱引きになるが、はたしてどうなるものやら・・・。

■新しいバブルが勃発する

 リーマンショック時は、「100年に1度」の金融危機と騒がれたものだ。この時も世界はインフラ投資などケインズ政策が必要だといわれた。

 結局、リーマンショック時は、中国が劣悪な国内インフラの近代化に乗り出し、大判振る舞いを行った。いわば、中国は世界経済の「白馬の騎士」となり、GDPで世界2位の経済大国に躍り出た。
 中国のバブルの勃発である。中国のバブルは、世界の景気を一時的に支えたわけである。

 だが、中国はいま高成長が終わり、いわばバブル崩壊状況で、息切れをきたしている。世界経済を支えたり、救ったりできる立場にはない。アメリカも、オバマ大統領には世界経済を引っ張る気概はなかった。

 主役不在の世界経済にトランプ氏が、「俺が主役だ」と名乗りを上げた。世界の景気はアメリカが引っ張る、言葉を換えれば「バブルを起こす」ことも辞さないということになりかねない。長期金利は上がり、新年は金利がさらに上昇するとみられている。

 トランプ氏の政策が、アメリカを偉大な国に復活させるのか。あるいはアメリカはついには偉大な国から滑り落ちることになるのか。どちらに転がるのか――。
 新年はリスクを持ちながらトランプ氏の政策が始動する。

(『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社編集局で企業情報部長、金融証券部長、日本IR協議会IR優良企業賞選考委員などを歴任して現職)
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 10:20 | 小倉正男の経済コラム
2016年11月26日

【小倉正男の経済コラム】トランプ氏のTPP離脱:アメリカどころか世界をブッ壊す?

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■アメリカをブッ壊す

 次期大統領のトランプ氏が、TPP(環太平洋経済連携協定)からの離脱を明言した。トランプ氏は、多国間貿易協定ではなく、2カ国間貿易協定を結ぶとしている。

 トランプ氏は、大統領選挙中に「2カ国間貿易協定では、最もタフで賢い交渉担当者を任命する」と語っていた。どうやら、そうしたことが現実味を帯びている。

 大統領選挙中とは違うトランプ氏を期待する面がないではなかった。だが、「君子豹変」とはならなかった。
トランプ氏の「孤立主義」「保護主義」は“筋金入り”ということが鮮明になった。

 共和党、民主党とも、これまでは大枠で「自由貿易主義」をアメリカの国益・国是として追及してきた。トランプ氏は、このアメリカの国益・国是を捨てるというのである。

 共和党どころか、アメリカをブッ壊す、ということか――。いや、アメリカどころではないかもしれない。下手をすれば、世界をブッ壊す事態になりかねない。もちろんそうならないことを期待したいのだが。

■「戦後」をブッ壊す

 多国間貿易協定であるTPPにしても、2カ国間貿易協定にしても、アメリカによる「ルール変更」の面がないではない。そうした動き自体がアメリカの衰退を映しているのは間違いない。

 大店の3代目が、お店がうまくいかないので店子の家賃を値上げするのに似ているのではないか。あるいは、傾いたヤクザが上納金をかさ上げするようなものか。ともあれ、「ルール変更」しろというわけである。

 それはともかく多国間貿易協定もそうだが2カ国間貿易協定も、自由貿易主義を基本とするのか、保護主義を基本とするのかで大きく異なる。「ルール変更」は同じだが、ベクトルが異なる。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 20:44 | 小倉正男の経済コラム
2016年11月20日

【小倉正男の経済コラム】トランプ次期大統領の岐路:自由貿易主義か?自国優先の保護主義か?

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■乱世の梟雄か、まっとうな人物か

 アメリカの次期大統領であるドナルド・トランプ氏は世界にどう対応するのか。世界はトランプ氏にどう対応するのか――。
 乱世の梟雄なのか、あるいは案外まっとうな人物なのか。まだ見えない。

 安倍晋三首相とトランプ氏の会談で、トランプ氏が何を語るか。注目はそこに集まったが、それは秘密にされた。

 ただし、唯一手がかりになりそうなのが、会談後の安倍総理の談話である。日米同盟について、安倍首相はこう答えている。

 「同盟は信頼がなければ機能しない。ともに信頼関係を築いていくことができる。そう確信が持てる会談だった」

■自由貿易主義か、自国優先の保護主義か

 結局、トランプ氏がまっとうな人物かそうではないかは、TPP(環太平洋経済連携協定)をどうするかで見えるのではないか。

 自由貿易主義を採るのか、自国優先の保護主義を採るのか――。トランプ氏が、このどちらを採るかで、世界経済は大きく変わる。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 14:47 | 小倉正男の経済コラム
2016年11月11日

【小倉正男の経済コラム】トランプ大統領が一転まっとうな人物に、目指すのは「強いアメリカ」か?

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■一転して「強いアメリカ」

 ドナルド・トランプ氏が大統領選挙に勝って、アメリカの利上げは吹き飛び、円高ドル安になると見られていた。

 トランプ氏は、「私は低金利主義者だ。物価上昇の兆しもない」「利上げをしてドル高になれば大問題になる」などと発言していたからだ。

 「強いアメリカ」を放棄して「弱いアメリカ」、すなわちフツーの国になるというのがトランプ氏の大統領選での一貫しての主張だった。ドル安が基調となるのは規定路線と思われていた。

 しかし、現実は猛烈な円安ドル高になっている――。トランプ氏が大型の減税や財政出動、そして規制緩和などを行えば、アメリカの景気は急浮上するという見方が出ている。

 目下の財政は巨額の赤字だが、景気が急浮上すれば、税収が上がり、財政も好転するということか。ダイナミックな政策転換になるということで、NY株は史上最高値を大きく更新し、強いドルに転じた。

 となれば、吹き飛ぶと見られていた利上げが復活して行われる流れになる。利上げが行われれば、おカネがアメリカに集まってくるからドルはさらに強い通貨になる。一転して「強いアメリカ」、いまやそんな見通しになっている。

■12月再利上げは復活か

 日本のほうはまだまだ「出口」が見つからない。「出口なし」みたいなものである。しかし、アメリカはどちらかといえば、猛烈に「出口」を見つけようとしていた。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 13:45 | 小倉正男の経済コラム
2016年10月20日

【小倉正男の経済コラム】ポピュリズム(大衆迎合)のもたらすもの

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■「聞いていない、記憶にない、分からない、覚えていない」

 「豊洲」「東京五輪カヌー会場」と問題(アジェンダ)が尽きることがない。TVのワイドショーなどネタに困らないということで、まさに「小池(百合子)劇場」化している。

 ところで、その豊洲市場の主要施設下に盛り土がなかった件――。
 小池百合子都知事が、石原慎太郎元都知事に質問状を出したが、石原慎太郎氏から届いたその回答は、「(自分は)聞いていない、記憶にない、分からない、覚えていない」。"ないない尽くし"ということである。

 石原慎太郎氏の都知事任期は、1999年4月〜2012年10月の長期に渡っている。
 それだけ長期に東京都知事だったというのは、よかれ悪しかれ世上の人気が高かったわけである。
 ところが、その東京の絶大の権力者だった人物が、「何も知らない」というゼロ回答を出してきたというのである。

 ともあれ、組織というものは何であれ権力者=トップが、時々変わることが必要であるという見本ということか。
 権力者が「何も知らない」では、「ガバナンスがない」、あるいは「ガバナンス以前の問題」になりかねない。無責任ということになるのではないか。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 16:29 | 小倉正男の経済コラム
2016年10月10日

【小倉正男の経済コラム】利上げの妨げ――FRBの惑いと逡巡

■年末に利上げができるかどうかは不透明

小倉正男の経済羅針盤 アメリカの9月の非農業部門雇用者数は15万6000人の増加となった。雇用者数の増加は、事前の予想(17万5000人)をやや下回った。

 6月28万7000人、7月25万5000人の増加に比べると勢いが見られない。8月に続いて20万人を下回った。ただし、大きく低落したわけではない。それなりの雇用者数の増加を果たしている。

 9月の失業率は5.0%。これまでの4.9%から悪化しているが、労働参加率の増加があり、実体的には変化はない。失業率そのものは大きく改善されている。
 時間当たり賃金は上昇している。だが、そう大きなアップではない。

 こうなるとアメリカは年末に再度の小幅な利上げができるかどうか不透明だ。利上げの公算は残しているが、いまのままの状態が新年も継続する可能性がある。
 これは年末までいかないと、どうなるのか、何ともいえない。

■利上げの大義名分はあるのか・・・

 総じていえば、アメリカの景気は悪いわけではないが、過熱感は出ていない。インフレやバブルといった兆しがない。

 「(現状は)年内に利上げを行う妨げにならない」――。FRB(米連邦準備制度理事会)のタカ派は、強がるような発言をしている。だが、景気に過熱感がなければ、これは大義名分がないに等しい。
>>>記事の全文を読む
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 12:24 | 小倉正男の経済コラム
2016年09月20日

【小倉正男の経済コラム】アメリカの「ガラケー景気」、経済のサービス化に由来

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■中国が波乱要因――ゾンビ企業が延命

 騰がったり下がったりは、株も為替もそれは定めのようなものだ。しかし、このところそれがかなり激しいのではないか。方向性が定まらない。

 アメリカの景気はよいが、中国、中東、欧州などがいまひとつ冴えない。

 とくに中国はバブルが崩壊しないから始末が悪い。「ゾンビ」「キョンシー」といわれる企業群が延命し、むしろバブルを膨張させている。ゾンビ企業退治どころか、借入金漬けでゾンビが生き延びている状況とみられる。

 原油価格が大底を打ったものの回復しきれない。これは中国の原油ガブ飲みがなくなったためで、いわば中国の景気停滞の実体を映している。

 中国は、GDP(国内総生産)で世界2位ということでにわかに大国として振舞っている。
 だが、資本も技術も外国に依存しており、その内実ははたして厳しいのが実情である。先々の世界経済にとって波乱要因になるのはいう必要がない。

■アメリカの景気が「ガラケー」である訳

 ところで、アメリカの景気は「ガラケー」であると指摘してきている(前回コラム参照)
 アメリカのGDPの中身だが、消費が70%である。つまりは経済のサービス化が進んでいる――。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 13:01 | 小倉正男の経済コラム
2016年09月12日

【小倉正男の経済コラム】「ガラケー」にとどまっているアメリカの景気

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■定まらない利上げの行方

 アメリカの景気はガラパゴス型、「ガラケー」にとどまっている。いまの世界の景気動向は、この構造に起因している。

 アメリカは、利上げの行方をめぐって、株式市場が上昇したり下落したりと方向が定まらない。ドル=為替も同様であり、これも先行きについては不確実ということになる。

 アメリカは、雇用については確かに力強い動きをたどっている。失業率も低下し、完全雇用に近い状態にある。ただし、賃金は上がらず、インフレも起こっていない・・・。

 アメリカ以外の世界経済を見渡せば、中国、EU、中東といずれもよい状態にはない。原油価格も大底を打ったものの大きく回復するといった兆候は見えない。

 世界全体の景気が盛り上がりを欠いているのだから、原油価格も上がらない。インフレも起こりようがない。
 言い換えれば、アメリカの景気回復が、世界全体の景気を牽引するまでにはいたっていない。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 13:44 | 小倉正男の経済コラム
2016年08月12日

【小倉正男の経済コラム】アメリカの利上げ――世界経済の先行きを左右

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■利上げのタイミングが接近か

 アメリカの雇用の増加が凄まじい。この7月の非農業部門雇用者の増加は25万5000人、事前の予想は18万人だったが、大きく上回った。
6月の雇用者増加は28万7000人、2ヶ月連続で大幅増となっている。

 2ヶ月連続で雇用者増加が25万人を上回ったのはあまりないことだ。2014年11月〜2015年2月まで4ヶ月連続で順調な雇用者増加がみられた。それ以来の動きである。

 アメリカの景気回復は本物とみられる。失業率は4.9%と5%割れを実現している。2012年8%台、2013年7%台の失業率からみると、失業率も極限まで改善している。

 これで賃金が顕著に上昇に転ずることになれば、インフレリスクが生じることになる。利上げのタイミングが生じることになる。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 10:33 | 小倉正男の経済コラム
2016年08月08日

【小倉正男の経済コラム】持つか、持たざるか――「国立」「都立」は要らない

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■「国立」「都立」という発想

 都知事選で、ある候補者が発した言葉・・・。
 「僕は都立保育園をつくりたいのだ」
 善意なのだろうが、勉強していないことが露呈。――これだから惨敗するのである。

 「国立」だ、「都立」だ、と持つ(=所有)ことにこだわる。
 これは社会主義につながる。税金を営々と食うことになる。

 石原慎太郎都知事の時代も「新銀行東京」という「都立石原銀行」をつくり、破綻している。膨大な税を食った。これも社会主義である。

 尖閣諸島も、「都が買う」とか、モメにモメて結果は「国有化」になった。これは火をつけた本人が、自宅を売り払って個人のおカネで買うべきだったのではないか。

■「国立」「都立」はもう要らない

 「国立」、あるいは「都立」ということになれば、いくら赤字をタレ流しても、誰かが責任を取ったという話はきかない。
 「国立競技場」といったものは、つまりはそういうことではないか。

 持つか、持たざるか――。国も都も、持たざるところに立つべきではないか。

 「国有化」「都有化」すれば、それは社会主義だから、税金を食い続ける存在になる。財政赤字を膨大なものにするし、ひいては増税の原因になる。

 安くつくって、民間(外資を含む)に高く払い下げるのなら、財政を潤して、減税につながるかもしれない。そうしたことを考えるべきである。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 12:52 | 小倉正男の経済コラム
2016年07月08日

【小倉正男の経済羅針盤】リグレジット(離脱への後悔)先に立たず

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■ナポレオンの大陸閉鎖=市場困窮から戦争

 その昔、といっても210年前のことだが、ナポレオンが英国を封鎖することを宣言した。欧州諸国が英国を封じ込めて、貿易から締め出す、というわけである。「大陸封鎖令」である。
 そのうち、逆に英国が海上封鎖に踏み出した。どっちが封鎖しているのか、我慢比べである。

 貿易を封鎖すれば、マーケットは小さくなるから、どっちも困ることになる。困窮すれば、争いごとになり、ついには戦争になる。

 ロシアは大陸封鎖令を破り、英国と貿易を再開した。ロシアは英国の工業製品が欲しかった。フランスの工業製品は高いし、品質が劣っていた、代替にならない――。
 ナポレオンはロシアに遠征する。ナポレオンが率いた大軍のその大半は、自国に戻ることはなかった。

 アメリカは、フランスとの貿易を求めていた。英国の海上封鎖は障害となり、米英戦争に突入する。アメリカの大統領府が英国軍に焼き討ちされた。その後、大統領府は白い塗料が塗られて「ホワイトハウス」になった。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 12:31 | 小倉正男の経済コラム
2016年07月04日

【小倉正男の経済羅針盤】日本企業のIRは進んでいるのか?

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■事実を事実として認めるのが経営者の器量

 その昔、といっても2000年より少し以前の話だが、キリンビールの佐藤安弘社長(=当時)にインタビュ―した時のことだ。
 ――若い人たちは知らないかもしれないが、佐藤安弘社長は、低迷していたキリンビールを立て直した名経営者である――。

 佐藤安弘社長は、自宅で晩酌のビールを飲んでも、「うまくない」と思ったというのだ。
 何故かと考えて、「うちの原価はアサヒに負けている」と。原価率がアサヒのほうが低かったのである。

 アサヒは、スーパードライでキリンを追撃し、そしてその後に追い抜いた。茨城に新鋭の大工場を持ち、大量生産・大量物流・大量販売で勢いはとどまることがなかった。原価低減が実現されていた。

 「これは手狭な老朽工場は閉鎖しないと、キリンビールの原価は高いままだ」。
 佐藤安弘社長は、工場リストラに着手する。これが名門企業だけに社内から根強い反対が起こった。「わが社は負けていない」、そんな事実を顧みない意見が相次いだ。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 10:03 | 小倉正男の経済コラム
2016年06月22日

【小倉正男の経済羅針盤】『炉心溶融』隠ぺいというコンプライアンス違反

■「炉心溶融」を伝えたのは地元の地方紙

小倉正男の経済羅針盤 「炉心溶融」、これをひた隠しに隠した東電の罪は深すぎる――。情報を出さずに隠ぺいして人々の命を危険にさらした。日本人のほとんど半分ぐらいが、生死を分ける危機にあった。

 もちろん、「トモダチ作戦」に従事したアメリカ空母も危険にさらされたのは想像できるところである。

 原発事故の当時、東京の大手新聞も「炉心溶融」という記事は書かなかった。今頃になって、東電や民主党(当時)の批判をしているが、厳しく広げて言えば、これも同罪に近いのではないか。少し厳しすぎるかもしれないが、記者クラブでお国の情報を流しているクセが付きすぎているのではないか。

 あの当時、「炉心溶融」をいち早く活字にしたのは、「福島民友」とか「福島民報」といった地元の地方紙である。私は、あのとき、福島民友をネットで読んで、ゾッとしたことを覚えている。これは東京など首都圏も危ないかもしれない、鹿児島あたりに避難する必要があるのではないか、と。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 10:03 | 小倉正男の経済コラム
2016年05月22日

【小倉正男の経済羅針盤】タックスイーター(税を食う人)の罪

■自分で指名して「第三者」とは言語矛盾

小倉正男の経済羅針盤 2時間以上、何を聞かれても「第三者の厳しい公正な目で」と舛添要一・東京都知事。
 自分で弁護士を任命して、自分の帳簿を判断してもらうということが、はたして「第三者の厳しい公正な目で」、となるのか。

 野球でいえば、チームの監督がアンパイヤ―を指名するようなもので、不正を隠すことになりかねない。
 裁判長なら「第三者の厳しい公正な目で」ということになるが、雇ってくれた人に忠誠を尽くす弁護士にそれは求めるべくもない。

 記者会見に出席しているメディアこそが、「第三者の厳しい公正な目で」という存在に近いわけだが、どうもそうとは思っていていないようだ。メディアは「第三者すぎる」存在というわけか。

 税金から高い給料をもらって、家族旅行をはじめ何から何まで税金で贖って、経費を立てて節税では、「タックスイーター」(税を食う人)の極致ということになる。

 これが合法、適法だというのだから、国民主権とは名ばかり――。政治資金規正法とは、憲法を超える法ということになるのではないか。政治資金規正法とは、「税を食う人」の主権を宣言しているのに等しいことになる。

■自分が任命して「独立役員」と称している不勉強な経営者

 ある新興市場の上場企業でまだ若い社長が、自分が任命した社外役員を「独立役員」と称していたが、これも酷い話である。「社外」だから「独立」と誤認している・・・。

 その上場会社は、ある非上場会社に乗っ取られたのだが、送り込まれた若い社長は2代目――。
 乗っ取ったのは2代目の親父で、息子(2代目)を番頭付きでその会社に送り込んだ。経験も識見もない2代目は、自分が任命した役員を「独立役員」と文書に書き込んだりしていた。目付け役の番頭も番頭で、同列だったということになる。

 これはコーポレートガバナンスの基本なのだが、株主が任命するからインデペンデントな役員(独立役員)ということになる。

 CEO(最高経営責任者)が任命したオフィサーは「独立役員」とはいわない。
 「独立役員」とは、CEOと一般株主の利害が対立した場合は、株主サイドに立つ役員にほかならない。CEO以下のオフィサーの経営を監督・チェックするのが「独立役員」なのである。
 これによりコーポレートガバナンスが確立されるわけである。

■都民が任命したら、それは「第三者」になるが・・・

 「第三者の厳しい公正な目で」というのもこれと同じである。
 東京都でいえば、一般株主に当たる都民たちが任命したら、それは都知事に対する「第三者」になる。都民は「税を払う人」であり、厳しい公正な目で、にはうってつけというしかない立場になる。

 裁かれる者が、自分で任命したら、それは「第三者」とはいえない。インデペンデント、つまり独立した存在ではないからだ。

 それどころか、自分で任命したら、それは弁護人にほかならない。
 コーポレートガバナンスとは、三権分立など権力のチェックを基本にした考え方である。本来は政治学者が知らないといえるフィールドの話でない。

 「精査」「第三者」とキーワードは変わったが、先は見えたのではないか。先輩政治家も「気の毒だ」などと支援するのではなく、税を貪ったことの罪を一喝すべきではないか。

(経済ジャーナリスト 『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所)など著書多数。東洋経済新報社編集局・金融証券部長、企業情報部長,名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事など歴任して現職)
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 08:29 | 小倉正男の経済コラム