[小倉正男の経済コラム]の記事一覧
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記事一覧 (10/19)【小倉正男の経済コラム】企業不祥事で登場する「第三者委員会」というネコ騙し
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記事一覧 (07/17)【小倉正男の経済コラム】「忖度」でモメて「付託」が低下〜内閣支持率30%割れの意味〜
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2017年11月19日

【小倉正男の経済コラム】IoTが日本企業にもたらす思いもよらぬ需要

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■ネット通販が全盛で包装箱に凄まじい需要

 IoT(インターネット・オブ・シングス)が身近なものになっている。

 紙袋・紙器企業に取材をしたら、インバウンドで紙袋の需要が旺盛だった、と。
 確かに、旅行客が大挙して買い物をすれば、紙袋に商品を入れてお客に渡さなければならない。大量の紙袋が必要になる。

 最近では、ダンボールや紙の包装箱が成長期に入っているというのである。
 これはIoTの進展というかネット通販で、商品を包装箱に入れて送る必要があり、凄まじい需要が起こっている。様々な商品を送るわけであり、包装箱の形状も多様を極めているということだ。

 ネット通販は、いまでは全盛といった状態である。ネット通販が繁盛すれば、ダンボールの包装箱に需要が飛び火する。思わぬところというか、新しい需要が生まれている。

 紙袋・紙器企業が、天から降って沸いたような需要で新たな成長期に入っていることになる。

■アメリカのお客がスマホでドレスシャツを注文

 国内のドレスシャツ企業、ドレスシャツとはワイシャツのことなのだが、アメリカのネット通販企業と提携――。アメリカのお客が、スマホからのイージーオーダーのドレスシャツを注文、日本で縫製してお客に製品を直送するシステムで販売している。

 アメリカにはイージーオーダーというものはないようで、案外、需要は旺盛というのである。このビジネスは開始されたばかりだが、1日120着の注文が舞い込んでいる。IoT、インターネットが販売チャネルを大きく変えているわけである。

 例えば、化粧品企業などにも、中国向けのEC(イー・コマース)業者がメーカーから買い取りで化粧品を仕入れるといったビジネスが出てきている。

 EC業者は、化粧品企業から、商品を買い取って自社のECサイトで販売する。化粧品企業としては、委託販売ではないから、売れ残りが戻ってくることはない。しかもEC業者が仕入れて販売しているボリュームは小さいものではない。

 IoTは、海外に店舗を構えなくても企業が世界化できるようにマーケットを変えている。企業は、本業を深掘りして磨いていれば、IoTというツールで思いもよらぬ需要を発見できる。そうした変化が始まっている。

■IoTという変化が新しい成長への切り口

 これらに紙袋・紙器企業、ドレスシャツ企業、化粧品企業は、いずれも日本ではフツーの企業である。そう特徴があると見られている企業ではない。いや悪くいえば、埋もれていたような企業である。

 しかし、IoTというツールを使って世界市場にアクセスすると有望な企業になる。
 世界マーケットから見ると、日本企業のポテンシャルは大きなものになる。IoTが、フツーの日本企業を世界マーケットに押し出している。

 経済というのは、確かに生き物で、思わぬ環境の変化で成長できたり、衰退したりする。景気が良くなっているという実感がないというが、経済の変化は確実に起こっている。

 IoTは、日本企業に新しい成長を約束する切り口になる。日本企業もそう捨てたものではない。IoTという時代の変化のなかでしたたかに生き残っていくのは間違いない。

(『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(ともに東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(ともにPHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社編集局で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事、日本IR協議会IR優良企業賞選考委員などを歴任)

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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 15:47 | 小倉正男の経済コラム
2017年11月03日

【小倉正男の経済コラム】小池百合子・希望の党代表『失敗の本質』

■政治の人気はそうしたものだが激しい騰落

kk1.jpg 小池百合子氏(東京都知事・希望の党代表)の「失敗」はどこに問題があったのだろうか。

 日の出の勢いだった小池氏がいまや人気が凋落――。政治における人気とはそうしたものだが、あまりにも激しい騰落である。

 「排除」「リセット」「さらさらない」「キャンキャン吠えた」という小池流のキーワードが記憶に残っているが、これらはいまや奢りを物語るものになっている。

■小池氏の差別化戦略の大きな失敗

 小池氏の「排除」は、憲法改正をめぐるものだった。民進党からの合流組に憲法改正で「踏み絵」を迫ったものである。

 これは共産党の志位和夫委員長から、「自民党の補完勢力」という批判を受けた。希望の党は、「第二自民党」という的を穿った指摘である。

 選挙では、“自民党はふたつも要らない”、という票の流れとなった。小池氏に排除された立憲民主党のほうが、「反安倍」「反自民」ということでむしろ票が取れた。

 仮に、希望の党というか、小池氏が、「規制緩和を断行する」と踏み絵を迫ったらどうだったろうか。

 それなら、規制緩和ができない自民党と差別化ができる。「革新を目指す保守」というポジションを確立できたのではないか。小池氏は差別化戦略を残念なことに間違えたといえそうである。

■負けたら「鉄の天井」とは・・・

 希望の党は、「安倍一強反対」を掲げていた。「安倍一強反対」というなら、民進党を全部まとめて飲みこむ選択もあったはずだ。

 まとめて呑み込めないなら、「安倍一強反対」などという矮小な目標はいうべきではなかった。

 自民党の規制緩和はスピードが遅い、希望の党は規制緩和をワン&オンリーで行うというべきだった。
それなら、「自民党の補完勢力」「第二自民党」とは指摘されなかったに違いない。

 規制緩和を掲げると同時に都知事の座は投げ捨てて、選挙に出るべきだった。戦場を設定したのだから、大将として選挙に出るしかなかったのではないか。国政か都政かといえば、それは国政という結論になる。

 選挙に負けたら、「鉄の天井」に阻まれた、というのでは、これも奢りめいたことになりかねない。
 希望の党の先行きはわからないが、千載一遇のチャンスを失った感が否定できない。

(『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(ともに東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(ともにPHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社編集局で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事、日本IR協議会IR優良企業賞選考委員などを歴任)
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 15:01 | 小倉正男の経済コラム
2017年10月19日

【小倉正男の経済コラム】企業不祥事で登場する「第三者委員会」というネコ騙し

■神戸製鋼、日産自動車と不祥事が相次ぐ

kk1.jpg 企業の不祥事が相次いでいる。後を絶たない。そのうえ、不祥事の中身が考えられないようなことが少なくない。
 改ざん、手抜き、不当表示、ごまかし、ウソ偽り、粉飾、パワハラ、権力争いetc――、あらゆる企業がそうしたリスクやクライシスを内包している。

 神戸製鋼では、製品の性能データを改ざんしていたことが発覚した。日産自動車では、無資格の社員が「完成検査」をしていたという事実が明らかになった。そんなことをしているのか、と呆れるようなレベルの仕業である。

 日本企業には、コーポレートガバナンスがないといわれている。確かにあるとはいえない。
 私が取材などで知り得た企業などでも、経営者トップを筆頭に話にならないほど酷すぎるケースを目の当たりに見てきている。

 ただし、日産自動車などは、いまもカルロス・ゴーン氏が代表取締役会長として経営の実権を握っている。日本の企業文化も確かにほめられないが、これは日本のことだけでもない模様だ。

 会社がおかしくなって傾けば、顧客、取引先、社員、株主などあらゆるステークホールダー(利害関係者)に被害というか、実害が及ぶ。
 それだけに株主は、会社のオーナーなのだから、ものを言ってガバナンスを効かせなければならない。株主による経営に対するチェック&バランスがコーポレートガバナンスの要諦である。

■ジョンマスターオーガニックも成分不当表示で製品回収

 外資系企業でも不祥事が発覚している。
 ジョンマスターオーガニックグループという天然由来の成分を売り物にする化粧品企業が、日本マーケットで38品目・121万個の製品を自主回収していることが明らかになった。

 「ジョンマスターオーガニック」は、セレブあこがれの高級・高単価品のブランドである。ブランドや社名からして、健康や美容によいというイメージを与えてきた。

 しかし、シャンプーやトリートメント製品などにシリコーンなど合成成分が一部使われていた。さらに、ラベンダーエキスなど天然由来の原材料が使われていないに使われていると成分表示されていたというのである。

 化粧品の成分表示など複雑というか、一般の顧客にはわからないものである。もしかするとこの事故・事件は日本企業にも飛び火する可能性がある。「オーガニック」は、健康志向・天然志向で最近の大きな人気トレンドだが、それだけに潜在的に危ないといえるかもしれない。

 それはともあれ、ジョンマスターオーガニックグループはアメリカ企業なのだが、コーポレートガバナンスはないに等しい実態をさらしている。いまだにカスタマー、ディーラーにもメディアにもしっかりした説明はまったくなされていない。

■「第三者委員会」というネコ騙し

 企業の不祥事などでよく登場するのが、「第三者委員会」という存在である。
 これは第三者を装いながら、依頼者の意向を汲んだものであることが一般である。いわばクセ者であり、メディアに対してもそうだが、これはネコ騙しのようなものである。

 不祥事の一方の当事者が依頼しておきながら、第三者委員会という名称はおこがましいことになる。
 弁護士などが任命されることが多い。弁護士も「商売」「生業」とはいえ、第三者委員会の仕事はあまり心躍るものとはいえないといった舞台裏の話を聞いたことがある。

 紛争の当事者が任命しておカネを払っておきながら、第三者委員会で公正・公平な裁定や調査などが行われるはずもない。
 そんな第三者委員会は、結果としては、任命しておカネを払ってくれる当事者の言いなりになるわけで、本来的に「第三者」とはいえない。

 企業というものもにっちもさっちもいかない事態になると何でもやるもので、第三者委員会をつくって自己を正当化しようとするものだ。
 ネコ騙しのような第三者委員会が登場するような事態は、末期的なケースであると思ったほうが早い。

■独立が担保されなければ第三者委員会とはいえない

 当事者から独立した存在が第三者である。つまり、「第三者」とは「独立=インデペンデント」が担保されていなければならない。任命も報酬の支払いも当事者以外の第三者が行う必要があるわけである。

 これはいわゆる「独立役員」も同じことである。経営者が任命しているのに、独立役員であるなどと説明しているケースが少なくない。これも経営者が理解していないというか、勝手な理解で勝手に話しているだけで、まがい物の独立役員ということになる。
そんな単純な"偽装"がまかり通っているうちは、コーポレートガバナンスはまだまだ機能していないということになる。

 企業というものは、苦し紛れにいろいろな偽装や隠蔽を仕掛けてくるものである。案外単純すぎて意表をつかれることもないではない。それを見分けなければならない。かなり難しいことだが、そうした作業が不可欠である。

 不祥事で「第三者委員会」がにわかに登場するような事態を迎えた時は、当事者が保身など自己の利益確保を図る目的でつくられているのかどうかを見極めなければならない。

(『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(ともに東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(ともにPHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社編集局で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事、日本IR協議会IR優良企業賞選考委員などを歴任)
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 17:00 | 小倉正男の経済コラム
2017年10月05日

【小倉正男の経済コラム】「希望の党」緑の風は吹いているか?

■風は止んでいる

kk1.jpg 緑の風は吹いているか??
 小池百合子・東京都知事の風が吹き荒れると思われていたが、このところ止んでいる。

 民進党を丸呑みするのは、看板の付け替えといわれるし、イメージもよろしくない。それでは、左派というかリベラル派というか、それらを排除する、としたあたりから風向きが変わった。

 丸呑みすれば民進党亜流となるし、排除すればそれはそれで国政に携わる者としては器が小さいと論評される。苦しいところである。

 三役経験者、すなわち首相経験者は、希望の党への合流を遠慮してもらいたい、といえば「先に離党した人の股を潜る気はまったくない」と反撃されることになった。
 韓信の股潜りも偉いが、野田佳彦元首相の股潜り拒否も偉い。「下克上」がいわれることになった。

 離党したのが早い、遅い、役職をやった、やらなかった――。なんとも細かい線引きであり、昨日の友は今日の敵といった事態である。そうしたことで、風向きも日々変わっている。

■局員はリベラル派、コメントは保守派という奇妙なバランス

 いまは風が凪いでいる状態で、しいて言えばメディア、田崎史郎氏などのコメントが風となっている。

 メディアの社員、局員はリベラル派だが、外部からのコメントは保守派が担当して、奇妙なバランスでやっている。

 メディアを視聴している一般の人々も、政治には散々騙されてきているだけに少しは疑い深くなっている。
 それでもメディアはリベラルに過度に傾き過ぎたり、急に保守となったりと忙しいが、どうなることやら・・・。

 風を吹かせるべき政党がなく、メディアがリベラルだ、保守だと、人々をあたかも「啓蒙」するのは不遜な感がある――。メディアは事実をベースに報道してほしいものである。

■民進党が一夜にして崩壊・消滅

 最大の驚きは、民進党の崩壊だった。日本のリベラルの牙城が一夜にして消滅したのだから、これは何だったのだろうか、と。

 歴史的なアナロジーを見つけようとしても簡単には出てこない。ソビエト崩壊のようなものか。

 北朝鮮のミサイルや核が、日本の保守化を促し、民進党といったリベラル派の崩壊・分裂をもたらしたという見方がある。おそらく、今回の衆院選挙の持つ意味合いはそうしたところにあるのかもしれない。

 新しい党に期待したいのだが、民主党政権の酷さが学習効果として人々に強烈に残っている。これも日本の保守化を誘っている。

 日本共産党が指摘しているように自民党がふたつあるいまという時代、「安倍一強」だけを敵にしても矮小な話ということになりかねない。
 曖昧でいい加減ではいわゆるリベラル派が生存できない、いわば絶滅する、とするならば、いままでとはかなり違うステージに入っていることだけは間違いない。

(『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(ともに東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(ともにPHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社編集局で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事、日本IR協議会IR優良企業賞選考委員などを歴任)
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 11:32 | 小倉正男の経済コラム
2017年09月09日

【小倉正男の経済コラム】北朝鮮の独裁が終わる日〜瀬戸際外交の果て〜

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■北朝鮮の暴走はどこまで・・・

 北朝鮮はどこまでやる気なのか。ミサイルを北海道の上空を通過させて襟裳岬の沖合いに落下させたり、水爆の実験をしたり、と・・・。

 北朝鮮は自らを原爆、水爆、ミサイルを持った軍事強国だとプロパガンダを流し、今度は東京上空の通過させるのではないか、といわれている。確かにやりかねない。

 アメリカはいま動けないと読んでのやり口なのだろうか――。自国の国体(金正恩体制)護持が基本のはずだが、アメリカをナメて過剰な挑発を繰りかえりしているようにみえる。

 金正恩・朝鮮労働党委員長の廻りには、誰もものを言える人は存在できないだろうから、究極の瀬戸際外交にはまり込んでいる。独裁の果てとはいえ、困った話である。

 隣の韓国は、「物乞い」に揺れ動いており、北朝鮮に誤ったシグナルを送っているようなものである。これではますます北朝鮮をおかしな方向、すなわち暴走に向かわせることになる。

■「瀬戸際外交」VS「物乞い外交」

 韓国はソウルが火の海になることを恐れているのだろうが、北朝鮮政策が定まっていない。

 北朝鮮は、ソウルが砲撃される、日本にもミサイルが撃ち込まれる、という脅しでアメリカは動けないだろうとタカをくくって挑発を行っている。揉み手の物乞い外交では、北朝鮮の瀬戸際外交を暴走させることになる。

 相当な挑発をやってもアメリカは手出しをできない。だが、そんなナメたことを繰り返していれば、いずれ北朝鮮がそれこそ火の海になる・・・。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 08:58 | 小倉正男の経済コラム
2017年09月01日

【小倉正男の経済コラム】アベノミクスの出口戦略

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■「セイコノミクス」を明らかにしないではフェアではない

 野田聖子総務相が、金融緩和の出口戦略を含めてアベノミクスを総括し、次の経済政策を展開する必要性を訴えた。

――「異次元(の金融緩和)をやってきて、ある程度の効果はあったとしても予想を下回っている。これでは厳しい」「若い人にどんなツケを回すのか、うすうす国民はわかっている」

 少しバイアスをかけて見ると、大手新聞メディアの安倍一強批判なのだろうというところか。
 ともあれ野田聖子総務相としては、次期総裁選を意識し、「出馬の準備を進めている」と意欲を示した模様だ。

 少し遠慮しながらも、しかし、言わないではいられないということなのか。ただ、批判の中身は一般論というか、これでは民進党と同じ程度の批判である。

 自身の「次の経済政策」の中身を明らかにしないではフェアとはいえない。メディアの安倍一強批判の空気に乗っているだけにみられることになりかねない。どうせなら「セイコノミクス」の中身を聞かせてほしいものである。

■企業は「アベノミクス・バブル」のなかにいる

 確かに、異次元金融緩和は、一撃としてはインパクトが大きかった。ゼロ金利、マイナス金利ということで、企業活動にとっては凄まじい恩恵になっている。

 100億〜200億円を借り入れしても、金利負担は微々たるものだ。以前だったら金利負担だけで大きな赤字になる会社が黒字を計上できるのがいまの環境である。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 11:27 | 小倉正男の経済コラム
2017年08月16日

【小倉正男の経済コラム】北朝鮮はグアム島に向けてミサイルを撃つのか?

★クライシスマネジメント 生き残るのが基本
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■クライシスマネジメントでは意地とか見栄は無用

 前回のコラムで、韓国や日本を道連れにすると恫喝して、やるぞ、やるぞと見せながら、するりと逃げるのが北朝鮮のサバイバル(=生き残り)戦略である、と――。

 金正恩朝鮮労働党委員長は、軍司令官からグアム島周辺に向けた4発の弾道ミサイル発射計画について報告を受けた。金正恩委員長は、「アメリカの行動をもう少し見守る」と述べたとしている。

 やめてやるぞ、ということになるのか。あるいは、計画通りに弾道ミサイルを発射するのか。

 金一族の世襲支配という「国体」を護持するのが戦略目標であるなら、ここは危機を回避するのが常道になる。

 北朝鮮がグアム島に向けてミサイルを撃てば、アメリカが黙ってはいない。北朝鮮が韓国や日本に砲撃やミサイル攻撃をしたとしても、北朝鮮はサバイバルの基盤を失う事態になる。

 危機管理(=クライシスマネジメント)からみれば、北朝鮮の負け以外の何ものでもない。
 クライシスマネジメントでは、生き残りが至上命題であり、サバイバルが基本になる。意地だの、見栄だの、というのはクライシスマネジメントでは無用のことになる。

■売り言葉に買い言葉も本来的には無用

 アメリカとしては、北朝鮮に核爆弾とそれにアメリカ本土に届く弾道ミサイルを持たれるとクライシスマネジメントで問題が生じる。

 ただし、アメリカが北朝鮮を叩くなら、「世界がこれまで見たことがない炎と怒りに直面することになる」といった売り言葉や買い言葉を少しは控える必要がある。これも無用ということになる。

 それだけに、挑発的な言葉を吐いているときは、まだ安心なのかもしれない。

 トランプ大統領のディール感覚からして、やるぞ、やるぞと見せて、やるというのも愚かではないか。買う気があるなら買わないそぶりが、ディールというものだ。もっともこのあたりはなんともいえない・・・。

■経済制裁を厳格に実施すれば根底が揺らぐ

 基本中の基本に戻って、北朝鮮への経済制裁――。貿易、金融、海運などあらゆる面から締め上げる。中国もこれに協力する。これを厳格にやるのが案外重要と思われる。

 貿易、金融、海運などが制限されれば、国内の生産力は意味を失うことになる。変な言い方だが、北朝鮮の「資本主義」、あるいは「資本主義力」が機能しなくない。

 これこそがディールであり、飽きずにやることだ。信じてやれば、いずれ効果が出る――。北朝鮮の経済が存外によいのは、経済制裁がきちんと実施されていないことの証明にみえる。
それならば、経済制裁を厳格にやることが締め上げることになる。

 トランプ大統領、金正恩委員長とキャラクターが際立っているが、地道なやり方のほうが効く。「資本主義力」が機能しなくなれば、国家存立の根底が揺らぐ――。急がば廻れ、ということにほかならない。

(『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社編集局で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事、日本IR協議会IR優良企業賞選考委員などを歴任して現職)
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 10:04 | 小倉正男の経済コラム
2017年08月12日

【小倉正男の経済コラム】日本の地政学、北朝鮮・サバイバルの手口

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■どこで矛を収めるのか

 これは一体どうなるのか――。アメリカのトランプ大統領が、「北朝鮮がアメリカを脅すなら、世界がこれまで目にしたことがない炎と怒りに直面することになる」と言明した。

 北朝鮮は北朝鮮で、すかさず「グアム島周辺に中距離弾道ミサイル4発を同時に撃ち込む計画を検討している」と表明している。この計画の策定は8月中旬とみられている。

 トランプ大統領は、「炎と怒り」では、厳しさが足りなかったかもしれないとしている。「彼(金正恩・朝鮮労働党委員長)がグアムに対して何かすれば、これまで誰も目にしたことのないようなことが北朝鮮に起こる」。さらに、「いまにわかる」、と。

 言葉の上とはいえ、最大限の激しい応酬となっている。どこかで矛を収めるのかもしれないが、予断はできない状況である。今回は矛を後ろに下げても、いずれにせよこの先はわからない。

■恫喝してするりと逃げるサバイバルの手口

 北朝鮮は金一族による世襲の独裁国家という最悪の「国体」を採っている。この国体護持のためにひたすら核爆弾、ミサイルを持とうとしている。
 アメリカに対しては、北朝鮮の国体護持を認めさせる交渉のテーブルに着かせることが戦略目標にほかならない。

 したがって、北朝鮮は挑発を繰り返して、その結果として戦争になれば、いずれにせよ「負け」である。

 韓国や日本を道連れにすると恫喝して、やるぞ、やるぞと見せながら、するりと逃げる。それが北朝鮮のサバイバル戦略というか、巧妙な手口である。

 こんな危ない綱渡りをやっているのが隣国なのだから、困ったものである。地政学とはそういうもので、引越しが効かないところから始まる。

■企業でいえばコーポレートガバナンスのない状態

 世襲の独裁体制で誰も何もいえない国体、何かいえば粛清させる――。そんな息が詰まるような国体は考えただけでもゾッとする。
 そんな国体を存続させるのが第一の目標というのだから、これは言葉がない。

 日本でいえば、世襲の一族企業組織で、番頭さんなども存在せずというコーポレートガバナンスがないような状態である。まわりは何も言わない人で固めて、どんどん会社はおかしくなっていく。何か思う社員は自然にその組織からいなくなるわけである。

 それでも日本の会社なら、どこかで傾いたり、改革されたり、という新陳代謝がなんとか行われる。時間はかかっても、そうした作用がなければ息が苦しい。

 「国体護持」、なんだかどこかで聞いた言葉だが、北朝鮮はいつまで恫喝外交を繰り返すのか――。

 北朝鮮、中国、韓国、ロシアと困った隣人が多いが、それは日本の地政学として受け止めなければならない。引っ越すわけにもいかないのが地政学にほかならない。

(『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社編集局で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事、日本IR協議会IR優良企業賞選考委員などを歴任して現職)
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 18:06 | 小倉正男の経済コラム
2017年07月17日

【小倉正男の経済コラム】「忖度」でモメて「付託」が低下〜内閣支持率30%割れの意味〜

■「忖度」「お友達」が支持率30%割れを招く

kk1.jpg 「モリ」(森友学園)、「カケ」(加計学園)といった蕎麦屋のような問題で安倍晋三首相の支持率が大きく低下している。

 中谷元・前防衛相の「あいうえお」発言があったが、えこひいきせず、おごらず、といった問題が現状を引き起こしている。

 株価も日経ダウ2万円内外と一応高水準にある。経済は雇用にみられるように悪いわけではない。しかし、それだけに権力だから、ゆるみやおごりは生じてくる。
 ――廻りや下は「忖度」する。お友達は近付いてくる。上は上で「お友達」を過剰に可愛がったり、かばったりする。「モリ」「カケ」でもそうだし、閣内の防衛大臣などの失言問題でもそれが垣間見られる。

 その結果が支持率30%割れを招いている。「忖度」「お友達」といったものを泣いて斬れない。
 ――有能で可愛がっている士を泣いて斬った諸葛孔明の域にはないといったところか。

■支持率は選挙に準じる重要な指標

 官邸主導――各省庁の幹部人事を内閣人事局が握るといった一元化も様々響いている模様だ。
 各省庁が内部で人事を決めるのではなく、官邸=内閣が人事を決める。官邸=内閣のガバナンスのようなものは強化されるが、省庁内のほうは窮屈になる。

 首相の周りで「忖度」をする――。下なら「忖度」しないと廻りや上にいけない。「忖度」できないほうはそれでは面白くない。確かに、これではいろいろ不満・抵抗が生まれたり、リーク文書が出たりということになる。

 官邸=内閣は選挙を経ており、国民の「付託」を受けているから、官邸=内閣が主導するのは当たり前という理屈になる。

 それだけに安倍首相の支持率は重要な指標になる。支持率は、選挙と同じかそれに準じるもので、その時点の国民の「付託」の度合いを表している。国民に「付託」されていないなら、官邸=内閣主導の正当性が脆弱になる。
 

■受け皿がないというのは不幸

 「忖度」でゴチャゴチャとモメているうちに肝心の国民の「付託」が低下したことになる。安倍晋三首相の支持率低落は、そうした意味合いで受け止める必要がある。

 官邸主導――ともあれ確かに、日本の場合、それが極端な独裁や独善的な支配になっているかどうか。
 主導する側は、「頼むから、目をつぶってくれ」といった独裁程度の認識かもしれない。しかし、主導される側としては、それが理不尽な独裁・支配に映るといったことも少なくない。

 ゆるみやおごりにつながるのだが、いまのところ安倍晋三首相に取って代わる受け皿はない。ポスト安倍を窺う受け皿が、与党にも野党にも見受けられない。
 内閣改造などが支持率回復の安直なきっかけになるとは思っていない。だが、受け皿がないのだから、したがってこのまま死に体にズルズルと沈み込むとも思えない。

 ただし、言えるのは受け皿がないという不幸である。受け皿がないということでただただ継続しているというのも困る。
 もっと困るのは、下手に受け皿を誤ってしまうことだ。また再びみたび経済が死んでいるといった事態をみることになりかねない。

 安倍晋三首相には、あくまで政策で勝負して支持率を回復せよ、といいたいものである。

(『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社編集局で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事、日本IR協議会IR優良企業賞選考委員などを歴任して現職)
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 18:21 | 小倉正男の経済コラム
2017年07月06日

【小倉正男の経済コラム】安倍晋三首相の窮地、支持回復には政策しかない

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■秋葉での発言で火勢が増す

 安倍晋三首相のJR秋葉原駅前での発言がメディアなどで批判を浴びている。都議会議員選挙の最中に、「こんな人たちに私たちは負けるわけにいかない」と演説したのが発端となっている。

 聴衆の一部が集団でプラカードなどを掲げて、演説を邪魔して、「安倍帰れ」「安倍辞めろ」などと騒然とした。それに安倍晋三首相が応酬したのが、「こんな人たち」発言である。

 こんな発言までメディアに批判されているのだから、やや末期的な感がしないではない。
「秋葉」には、火よけとか鎮火といった意味があるが、火勢が増したわけである。

 森友学園、加計学園問題と続いて、「忖度」「お友達」といったことが言われてきた。そして、「このハゲー!」といった豊田真由子議員などの不祥事連発が止めを刺している。

■付け焼き刃になるのでは・・・

 結局、規制緩和などの政策が生半可というか、中途半端だったことが底流にあるのではないか。

 内閣改造など人事で支持や人気を挽回するというが、それは付け焼き刃になるとみられる。人気のある小泉進次郎議員を大臣に取り立てるというのだが、一時的な効果はあっても長続きするかどうか。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 13:19 | 小倉正男の経済コラム
2017年06月23日

【小倉正男の経済コラム】ビール安売り規制、ガンバレ河内屋

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■守るべき酒屋さんはどこに存在するのか?

 行政が歪められているのかいないのか、ビール安売り規制が行われている。確かに、新ジャンルをはじめビール類は値上がりしている。

 アメリカが北朝鮮に空母、潜水艦、爆撃機で攻撃すれば、北朝鮮も抵抗するかもしれない。「危機管理」――そんなことでビール、焼酎、水などを買ったのは、つい最近のことである。

 安売り規制ということでまたビール、発泡酒、新ジャンルなどを買い込んだ。そしてまた値上げ後も買っているではないか。このあたりは、行政に見透かされているというしかない。

 大手スーパー、ディスカウンターなどが安売りで大量に販売すると、酒類小売店が対抗できない――。地域の酒類小売店(=酒屋さん)を守るというのが、安売り規制の大義名分ということだ。

 しかし、首都圏などでは、酒屋さんといったお店はほとんどというか、まったくというか存在しないのが実体だ。選挙の票が目当てともいわれるが、はたして・・・。

 昔みたいにビンビールを自転車で宅配してくれる酒屋さんというスタイルはすでになくなっている。そうした酒屋さんは、コンビニなどに酒類販売の免許を売り、リタイヤメントを遂げている。守るべき酒屋さんはどこに存在するのか?
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 10:52 | 小倉正男の経済コラム
2017年06月12日

【小倉正男の経済コラム】ふるさと納税規制にみる中央集権再強化

■規制が再強化、カルテル経済を再構築

kk1.jpg 地方自治・地方分権といわれてすでにずいぶん月日が過ぎている。しかし、地方自治・地方分権が進んだか、といえばまったくそうではない。
 むしろ、規制が強まり、中央集権が再強化されている感がないではない。

 例えば、大学(=企業)をつくるのに文科省が需要予測までして許認可権を振りかざしている。これではまるで社会主義経済である。
 ビールには安売り規制が行われている。ビール類は競争するな、ということか。これも市場経済に規制の手を入れている。

 日本では、「原則=規制・特例=自由」の経済を当たり前に受け止められているが、かなり異形なシステムである。
 企業には誕生する権利があり、死ぬ=倒産する自由がある。それをお役所=国が管理・統制するのは「社会主義市場経済」の変型ということにならないか。

 お役所=国が企業の新規参入権を規制すれば、これはれっきとしたカルテルであり既存業者の既得権を保護する政策になる。

 中世以来の「座」のシステムであり、ここにお役人が天下りする構造が形成される――。合法的な"賄賂"みたいなものであり、行政はもともとから歪んでいることになりかねない。

■ふるさと納税にまで国が細かい規制

 身近なことでは、ふるさと納税にまで「あーしろ」「こーしろ」と細かい規制が入っている。

 ふるさと納税の返礼は寄付額の3割を上限にしろ、そして返礼品の中身についてもこれは禁止とか、まるで子供扱いで地方自治体に指示を出している。
 これでは本末転倒というか、地方自治・地方分権どころか、中央集権そのものということになる。

 政界・官界、すなわち国は「地方自治・地方分権」と意味もなくお題目を唱えているが、本音は中央集権という姿が浮かび上がってくる。

 ふるさと納税にいたるまで地方自治体に競争するな、とカルテルを要請している。地方が国のこうした細かい規制を緩めるにはあの手この手の陳情などが必要になる。
 政界・官界=国は、ふるさと納税にも規制を入れて、(無意識のうちにも)利権の拡大行為をしていることにならないか。無意識の面があり、これはさらに始末が悪いことになる。

■下(=人々)からみた地方自治・地方分権

 地方自治・地方分権は、上からみれば統治形態だが、下からみれば少し違ってくる。

 どの地方が住みやすいのか、食べ物が旨いのか、生活環境がよいのか、そして税金が安いのか、というのが下からみた地方自治・地方分権である。

 極論すれば、人々がどの地方に住みたいか、人々がどの地方に税金を払いたいのか、というのが地方自治・地方分権になる。ふるさと納税は、その擬似的な形態ということができそうだ。

 地方自治・地方分権とは、地方が人々に選んでもらえるようにほかの地方と競争することにほかならない。
 ふるさと納税は、まがりなりにもその競争が始まったということなのだが、早くも国のストップ(=規制)が行われている。

 人々目線の地方自治・地方分権が論じられるのはいつか。もしかすると、この地には永遠にその時は来ないかもしれないという気がしないではない・・・。

(小倉正男=『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社編集局で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事、日本IR協議会IR優良企業賞選考委員などを歴任して現職)
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 12:49 | 小倉正男の経済コラム
2017年05月18日

【小倉正男の経済コラム】トランプ大統領:都合よすぎるFBI長官解任

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■「ロシア疑惑」でクライシスに直面

 北朝鮮をめぐる危機はとりあえず少し遠のいたが、今度はアメリカのトランプ大統領がクライシスに陥っている。大統領選挙時からの芳しいとはいえない「ロシア疑惑」が、トランプ大統領の『致命傷』になりかねない。

 トランプ大統領は、コミーFBI(連邦捜査局)長官を解任した。解任の理由は、「目立ちたがり屋」という曖昧で抽象的なものだった。コミー氏としては、「アンタにだけはそう(目立ちたがり屋)言われたくない」という思いではなかったか。

 その際、トランプ大統領は、コミー長官(当時)に自分が捜査対象ではないことを確認し、コミー長官に捜査対象ではないと言わせたことを明らかにしている。もちろん、これは「ロシア疑惑」についてということである。

 突然、トランプ大統領がコミー長官を解任したのは、FBIの捜査を懸念したためではないか、と思われるのがオチである。ところが、コミー氏の言葉を借りて、自身が捜査対象ではないと身の潔白を語っている。都合がよすぎるわけである。

 さらにトランプ大統領には、コミー長官にフリン大統領補佐官(ロシアとの不透明な関係で辞任)の捜査を止めるように求めたという疑惑が出ている。

 そのうえトランプ大統領は、ロシアのラブロフ外相にIS(イスラム国)がらみの機密情報を漏らしたといわれている。
 この機密情報は、第三国(イスラエル)からの情報であり、大統領の資質が問われかねない振る舞いになる。これも新たに「ロシア疑惑」に加わることになる。

■子供じみた権力乱用

 トランプ大統領は、何度もクライシスを逃れているが、今回はどうだろうか。

 NY株式市場は、トランプ大統領の政権運営、そして先行きの政策実現についての不透明感から一気に気迷いを見せている。為替もドル安(円高)トレンドになっている。

 トランプ大統領にしてみれば、FBIの捜査に介入する、あるいはFBI長官の解任するのは自分の権限内であり、何が悪いのか、ということかもしれない。
 しかし、ほかならぬ自分ないし自分の陣営に対する疑惑であり、捜査主体と推定されるFBIに介入するのは権力乱用というか身勝手すぎることになる。

 要するに絶対権力者の子供じみた乱暴・粗暴――。やや前代未聞だが、これでは「弾劾」による大統領の罷免ということもありえない話ではなくなる。

 トランプ大統領は、「フェイクニュース」という言い方で事実・真実を一方的に判定してきた。しかし、事実・真実を判定するのは大統領ではなく、大統領が判定されるサイドに立たされることになりかねない。

■「トランプ崩れ」のクライシス

 ロシアへのISに関する機密情報漏洩もトランプ大統領は何故それが悪いのだと言うに違いない。

 しかし、これはイスラエルなど機密情報の提供先との信頼関係にヒビが入ることになる。下手をすれば、提供先に深刻な危害・危険を及ぼすことになる。
 ロシアからほかの第三国に情報が流れたらアメリカの信用は地に落ちる。次からは情報は絶対に入ってこなくなる。

 トランプ大統領のディール感覚は、よい面もあるだろうが、見境なく使えば問題が生じる。
 おそらく、トランプ大統領にはこれらにとどまらず、これまでそうだったように問題は次々に出てくるに違いない。「トランプ崩れ」――、そのクライシスに備える必要を内包している。

 単純な話、メディアをこれだけ敵に廻してサバイバルできるだろうか。それこそ前代未聞の大統領であり、なかなか先行き楽観できるようには思えないのだが・・・。

(『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社編集局で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事、日本IR協議会IR優良企業賞選考委員などを歴任して現職)
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 11:13 | 小倉正男の経済コラム
2017年05月11日

【小倉正男の経済コラム】決算シーズン:バランスシートは作戦と用兵の結実

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■作戦も重要だが、用兵も劣らず大切

 いまや決算の季節である。決算は企業の通信簿であり、結果は厳粛に受け止めるべきものだ。
 株主、社員などステークホールダー(利害関係者)にとっても、経営者にとっても、重要なイベントになる。

 経営の要諦は、経営戦略(作戦)と人事(用兵・人使い)なのだが、その結果がいやおうなく決算に現れる。バランスシート&損益計算書は、作戦と用兵の結実にほかならない。

 その昔、富士通の秋草直之社長(当時)が、自社の業績悪化をメディアに質問されて、「(経営戦略はよかったのだが)業績が悪いのは社員が働かないからだ」と、返答して大きな話題となった。
 この事件が起きたのは不況期の2001年当時のことだったが、ある証券界の大物は、「社長が代わると、株価が上がるケースだな」と呟いたものである。

 「社長はよいが、社員が悪い」は、確かに通用する話ではない。作戦も重要だが、用兵もそれに劣らず大切だということに尽きる・・・。用兵、人使いができないと企業は旨くいかない。

■作戦も用兵も下手ではすべての不幸の始まり

 経営者のなかには、どういうわけか作戦も用兵も下手という人がいないではない。他人の意見を聞いて、それをうまく用いればよいのだが、それもまたできない。
 反対に作戦、用兵ともなんとか上手い人もいる。ただ、これらも運と勘でやっている面がある。いうほど安定性はない。

 前者のケース、――頭が固まっているのか、プライドが邪魔するのか。「人使い」どころか、「自分」を使えない。
 「イエス」としか言えない人で廻りを固めることになる。コーポレートガバナンスでいえば、チェック&バランスがない状態、いわば危険なステージに入っている。

 業績が悪化すれば、社員たちもよいことはない。社内の雰囲気はギスギスして、給料やボーナスは下がる。社員たちもクビを傾げるような命令に従わなければならない。理不尽なハラスメントめいたことも散見されるようになる。
 株主にとっても時価総額が下がる。株主もこのあたりはナーバスだ。よいことはなにひとつない。

■よい経営、よい決算のよい循環を

 社長を終わり、会長や相談役などに退いた経営者と話をすると、「あの時にこうすればよかった」とかという『しくじり』を聞くことがある。
 「今にして思えば、――」。社長の時期にやったこと、やらなかったことを後悔しての話である。

 こちらからすれば、「なんであの時にこうしなったのか」「こうしておけばよかったのに――」ということになる。傍目八目なのだが、傍目から見れば『しくじり』は少なくない。

 「たまたま経営者になったので、そこいらまで考えが至らなかった――」。そんな『しくじり』を聞いたことがある。確かに、たまたま経営者になったというケースはかなり一般的である。ただ、後悔しているだけまだしもよい経営者といえる。

 経営者のなかには、「社員が働かないから」などと強弁するケースもある。
 事実に基づくこともないではないだろうし、あるいはほとんどは事実に基づかないこともあるだろう。なかには苦しまぎれの強弁だったりする。
 なかなかできないのだが、事実を事実として認めることが度量になる。

 ――よい経営を行って、よい業績を残せば、世間からよい経営者としてリスペクトされる。今年の決算では、そうしたよい循環を見たいものである。

(小倉正男=『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社編集局で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事、日本IR協議会IR優良企業賞選考委員などを歴任して現職)
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 10:36 | 小倉正男の経済コラム
2017年04月11日

【小倉正男の経済コラム】トランプ大統領の戦法・まるで「秀吉の小田原攻め」

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■米中会談で圧倒的な格の違い

 トランプ大統領のアメリカが、シリアのアサド政府軍が支配する空軍基地を巡航ミサイルで攻撃した。しかも、米中首脳会談の真ッ最中に叩いた。

 アメリカの巡航ミサイルでの攻撃は、アサド政府軍が化学兵器を使用したことを大義名分としている。「いくつもの一線を越えた」――トランプ大統領はそう語っている。

 米中トップ会談でフツーに「二大強国」を演出したいと思っていた習近平(=国家主席)としては、屈辱だったに違いない。面子を潰された思いがあったと思われる。
 ただ、それ以上にあったのは、力で圧倒的な格の違いを見せつけられた思いではないか。

 アメリカがシリアを攻撃したのを喜んだのは、北朝鮮の金正恩(=最高指導者)だったのではないか――。
 アメリカは、やはり東アジアより中東が主戦場だ。北朝鮮には死活的な関心はない。それに北朝鮮、中東の二正面同時作戦は、いくらアメリカでも採れないだろう、と・・・。

 しかし、アメリカは、シリア攻撃ではロシア、そしてシリア・アサド政府にも事前に告げていたフシがある。二正面作戦ではなく、陽動作戦というふうにもみえないでもない。

■「トランプの小田原攻め」

 アメリカは、間髪をおかずにカール・ヴィンソン空母打撃群、さらにミサイル駆逐艦なども朝鮮半島に向けて航行させている。

 力ではまったく格が違う――。隠密の航行ではない。なかばこれみよがしの堂々の航行である。金正恩が頭を下げるのなら許してやろうといったやり方である。

 これではまるで「豊臣秀吉の小田原攻め」のように見える。
 それでも金正恩は強がる可能性が高い。おそらく強がるに違いない。トランプ大統領としては、北朝鮮、いや金正恩はもうすでに"いくつもの一線を越えた"と判断しているのではないか。

 このまま放置すれば、ますます難しいことになりかねない。それなら、いまでしょ、ということになるのか。中国は、そのときの家康の亜流みたいなもので、「トランプの小田原攻め」を黙認するしかない・・・。

■被害者意識ではすまないところにいる現実

 アメリカが、北朝鮮を叩いてもいまは火の粉がアメリカ本土までは飛ばない。しかし、韓国、日本には火の粉が飛ぶ。

 実害をこうむるのはアメリカではなく、韓国であり、日本である――。新聞、系列のテレビなどからそうした意見が出ている。

 日本のリベラリズムは先送り論というところだ。被害者意識をベースにしているわけだが、先送りしても問題は解決しない。先送りしていまにいたっている面がある。
 アメリカに火の粉が飛ぶまでになれば、それこそ解決は困難になる。北朝鮮の金正恩の思う壺というところか。

 北朝鮮は、韓国、日本に火の粉を飛ばすことを盾に瀬戸際外交を続けてきている。結末はまだみえない。そんななかで日本も被害者意識ではすまないところにいる現実が突きつけられている。

(小倉正男=『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社編集局で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事、日本IR協議会IR優良企業賞選考委員などを歴任して現職)
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 12:09 | 小倉正男の経済コラム
2017年04月06日

【小倉正男の経済コラム】北朝鮮問題・米中首脳会談で緊迫度マックス!

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■トランプ大統領の「我々がやる」という発言

 米中首脳会談が迫っている――。トランプ大統領は、今回は関税や為替操作については協議しない、と語っている。関税、為替操作、貿易不均衡は次回以降に後回しを公言している。

 トランプ大統領は、中国に25〜45%の輸入関税をかけると息巻いていたのだが、今回はそれが吹き飛んでいる。
 協議されるのは北朝鮮にほかならない。今回は安全保障、北朝鮮が100%の協議対象である。

 「もし中国が北朝鮮問題を解決しないなら、我々がやる。言えるのはそれだけだ」
 トランプ大統領は、中国の習近平国家主席に何らかの協力を求めていないではない。だが、協力がなければないでアメリカはやる、と宣言している。

 問答は終わった。一触即発――、いつやるのか、どうやるのか、そこに絞られている。
 ティラーソン国務長官も、「(北朝鮮のミサイル発射に対して)これ以上コメントすることはない」、と。

 アメリカは、北朝鮮については十分に話してきている。もう話している段階は終わっている、としている。
 一方、北朝鮮にも、アメリカに先制攻撃を行うのではないか、という見方が出ている。

■生活者個人もクライシスマネジメント対応が必要か

 これだけの緊張状態はほとんど経験のないことである。
 子供の頃、朝鮮戦争が終わった頃なのか、空をアメリカ軍の巨大な飛行機が編隊で飛んでいたのを見たことがある。
 それを思い出したが、こうした緊張は気持ちのよいものではない。

 緊張を煽るつもりはない――。だが、日本にミサイルが飛んでくるという事態になれば、自衛隊も後方支援だけというわけにもいかないだろう。危機の当事者であり、観客やお客さんではないのだから呑気なことは言っていられなくなる。

 TVワイドショーなどで、そもそも論なのか、トランプが悪いとか、安倍さんの発言がどうなのか、という発言があった。主婦めいた立場なのか、シロウト丸出しの発言もあった。

 しかし、今回はそうした話は聞いていて時間のムダではないか、と。
 いつ何が起こるのか、どうしたらよいのか。危機に直面しているのだから、そもそも論など中身のない「ヒマ話」をしているのはいかがなものか。それこそ次回以降にしてほしい。

 水とか、食料品とか、少し買っておかなければならないのか。生活者個人もクライシスマネジメントを考えなければならない時かもしれない。

(小倉正男=『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社編集局で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事、日本IR協議会IR優良企業賞選考委員などを歴任して現職)
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 16:42 | 小倉正男の経済コラム
2017年04月04日

【小倉正男の経済コラム】『リ・アベノミクス』――再びアベノミクスに戻れ

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■政策停滞のなか危機説が流れる

 アメリカではドナルド・トランプ大統領の政策に停滞が生じている。「税に関する驚くべき発表」、すなわち法人、個人の大幅減税の発表も遅れに遅れている。
 税制について、トランプ大統領周辺にプロフェッショナルが不在なのではないか、といった状況が語られている。

 その代わりに北朝鮮・金正恩への攻撃も排除しないといった緊張が生じている。中国の協力が期待できないとすれば、「我々だけでやる」、と。朝鮮半島危機説が語られている。
 しかし、これこそ簡単にはいかない。トランプ大統領は、減税案すらいまだ発表もできていないのに先制攻撃などできるのか――。そんな疑問がないではないが・・・。

 日本のほうも安倍晋三首相が「森友学園」問題でやや憔悴がみえる。国有地を格安で売却したのがそもそもの問題だが、忖度はあったというのが大方の見方である。長期政権の緩みが思わぬところで出てしまったのか。

 安倍晋三首相は、経済政策ではどちらかといえば市場経済主義、政治ではナショナリズム、右翼的志向である。経済では支持を集め、政治では人気を下げるという循環を繰り返している感がある。ここは再び経済に集中すべきということではないか。

■「失われた時代」に後戻りは悲惨

 ポスト安倍で、1年ごとに首相が代わるでは、「失われた時代」に後戻りになりかねない。雇用はいまや空前の人不足だが、経済が停滞すれば、仕事自体が失われる。賃金も上がらず、ひいては退職金や企業年金などにもマイナスの影響が生まれる――。

 そんな「失われた時代」が再到来すれば、「災難」というしかない。共働きでマンションを買って住宅ローンを払うといった現在のライフスタイルも保持できないといったことが起きかねない。

 「失われた時代」は、株式市場も売り一方の死んだような状態だった。兜町はリストラ一色で人影が消えていたものだ。外資有力企業も東京から事業撤退が相次いだ。
 オフィスビル建設はいまやピークで銀座、日本橋などは新しい高層ビルが続々登場している。しかし、オリンピックを前にして建設ブームも頭を打つことになる。

 我々が経験した「失われた時代」は悲惨そのものだった。「失われた時代」に戻ることだけは避けたいものである。

■「リ・アベノミクス」=ソフィステケートに練られた新政策

 さてアベノミクスだが、これも失われているというか、忘れられている感がある。安倍晋三首相からもアベノミクスという言葉がまったく吐かれなくなっている。
「リ・アベノミクス」、ここはアベノミクスに再び戻るべきである。

 政府がいくら依頼しても、賃上げははかばかしくない。それなら次の手を少し考えるべきではないか。
 「プレミアム・フライデー」、政府は月末の金曜日は午後3時に終業するように民間企業に呼びかけている。これなども中途半端である。お役所はプレミアム・フライデーだが、民間企業の大半はそんなものは導入していない。

 例えば、仮に月末の金曜日を正午から半ドンにする、といった制度が強制されるなら、これは実質的に賃上げになる。労働時間が減り、賃金(月額)が不変なら賃上げに等しいことになる。時間だけではなく、実質的に賃上げとなるならば消費購買力の向上につながる。

 フランスのレオン・ブルム人民戦線内閣(1936〜1937年)が、有給休暇の制定を強行して、消費購買力を高めたのに類似した政策になる。
 「暇ネタ」ではあるが、ソフィステケートに練られた「リ・アベノミクス」政策を提案したいものである。

(小倉正男=『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社編集局で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事、日本IR協議会IR優良企業賞選考委員などを歴任して現職)
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 13:38 | 小倉正男の経済コラム
2017年03月18日

【小倉正男の経済コラム】残業料率引き上げこそ歴史的な大改革

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■残業時間100時間未満で歴史的な大改革とは?

 「きわめて画期的で、労動基準法70年のなかで歴史的に大改革だ」(菅義偉官房長官)。
 労使の残業時間の上限規制合意で、繁忙期の残業時間を100時間未満にしたことについてのコメントである。

 このような後進国並みの残業規制で「大改革」とは、残念な話である。民進党や連合も結局はこれに合意しているわけだから、傍からみていると野党もほとんど同罪である。
 政府は「プレミアムフライデー」「働き方改革」とかいっているわけだが、労働政策は旧態依然の感がぬぐえない。

 ドイツやフランスは残業料を大変高いものにした。残業させるよりは、もうひとりの従業員を雇用したほうが安い――。残業料が高いことがワークシェアリングをもたらし、雇用を増加させてきた。

 雇用や賃金を重視するアベノミクスに沿う話だが、そうした方向にはいかない。どうやら与野党とも「籠池・森友学園事件」で思考停止といったところか。

 与野党そろってこんなこと、つまりは「芝居」みたいなことをやっていれば、何をやっているのかと見透かされることになりかねない。
 これでは日本にもドナルド・トランプ大統領のようなとんでもないというか、凄い人が飛び出してくる素地を耕しているようなものである。

■金融政策も限界、賃上げも低調

 そのアメリカだがFRB(連邦準備制度理事会)がトランプ大統領の政権下で初めての利上げに踏み切った。しかし、利上げペースの加速化は示されなかったということでドルを売る動きとなっている。

 加速化はないというが、年3回ペースの利上げは行われるとみられている。アメリカの景気はよいということを確認したわけである。

 問題は日本が政策的に手詰まり状態になっていることだ。トランプ大統領の為替に対する強烈な批判があり、日銀は動けない。それに日銀としても、金融緩和策にこれ以上踏み込んでも効果は期待できない状況だ。

 そのうえ賃上げも低調な推移となりそうである。ドル安基調のなかでは、日本の主力産業である自動車産業各社なども賃上げには積極的になれない。
 またまた利益準備金など内部留保優先、つまりは企業におカネを貯めこむことになる。あまり賢い循環とはいえない。

■残業料率引き上げをアベノミクスの新しい目玉にせよ

 それであるなら、残業料率を引き上げたらよいのではないか。繁忙期の残業を100時間未満にするというだけではなく、少しでも残業料率を引き上げる。そうなれば、ワークシェアリング効果が発現するから、雇用も増加する。

 金融政策だけでは限界がある。それだけに「プレミアムフライデー」「働き方改革」といったことが提案されている。しかし、これらは残念ながら掛け声だけの面があり、政策としては実体が乏しく、上滑り過ぎるのではないか。

 民進党、連合など野党勢力は、政府の揚足を取っているだけではなく、少しは日本経済に寄与することを提案すべきである。そうでなければ、ますます国民から見捨てられることになる。

 残業料率が高くなれば、経営サイドもそれこそ働き方、働かせ方を真剣に考えることになる。世界的に劣悪で悪名が高い1時間当たり生産性も改善に向かう契機となる。

 残業料率が引き上げられれば、所得が上がり、消費購買力の向上にもつながる。これこそ歴史的な大改革で、よいことが少なくない。アベノミクスというタームもあまり聞かなくなったが、残業料率引き上げをアベノミクスの新しい目玉にするべきではないか・・・。

(小倉正男=『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社編集局で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事、日本IR協議会IR優良企業賞選考委員などを歴任して現職)
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 13:54 | 小倉正男の経済コラム
2017年03月08日

【小倉正男の経済コラム】トランプ大統領とメディア「メディアは人民の敵」か!?

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■トランプ大統領の「メディアはアメリカ人民の敵」

 アメリカのトランプ大統領がメディアに対して「偽ニュースだ」と罵倒する風景は、いまやお馴染みとなった。トランプ大統領は、「偽ニュースのメディアはアメリカ人民の敵だ」とツイートしている。

 「人民の敵」というフレーズが飛び出したのは、ロシア革命のレーニン以来のことだそうだ。

 型破りといえば型破りであり、お互いにリスペクトなしに罵倒し合っている。それはそれでアメリカであり、どんどん罵倒し合っていくことが、ある意味で健全の証しになるように思われる。

 大統領とメディアとの緊張関係は悪いことではない――。チェック&バランスということでは、それが曲がりなりにも機能しているからである。

■頑張れメディア

 昨今の日本の話――。東芝では歴代の経営トップが会計担当者に指令を出して不適切会計が行われたといわれている。経営トップの指示・指令で会計はある程度なんとでもなる面がある。それでも無理に無理を重ねて数字をつくり続ければ、どこかで破綻が生じる。

 以前にカネボウが倒産したときに当時の経営トップが、それまでの歴代社長がやってきたようにしてくれ、と会計担当者に粉飾を命令したという話が残されている。
情けない話だが、そのときの経営トップとしては、それは当然のことと思っていたに違いない。

 それだけに記者たちよ、頑張ってほしい。特に、一般紙はともかく、経済新聞、経済雑誌の記者たちには、辛くても勉強して仕事をしてほしいと思っている。

 「コーポレートガバナンス」がいわれて久しいが、日本ではなかなか定着しない。「コーポレートガバナンス」が実体上ないだけに記者たちには頑張ってほしいのである。

 「コーポレートガバナンス」の要諦は、チェック&バランスにある。しかし、これは東芝にみられるように形だけあるが中身はないケースが大半である。
それだけにメディアは、チェック&バランスということでは重要なポジションにある。
>>>記事の全文を読む
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 11:05 | 小倉正男の経済コラム
2017年02月23日

【小倉正男の経済コラム】トランプ大統領の税制改革は世界経済を引っ張る中身となるのか?

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■NY株価は史上最高値を連続更新

 アメリカは、消費が好調、利上げ再接近ということで、要するに景気がよい。NY株価は、連日、史上最高値を更新している。

 トランプ大統領は、「ポリティカル・コレクトネス」からいうと問題が多い。支持率も低下している。記者会見をやればやったで怒鳴り合いというか、喧嘩腰でメディアを罵倒している。

 しかし、経済ということでは、差し引きで大きなプラスということである。それがマーケットの過去最高値の連続更新をもたらしている。

 ちなみにNY株価の9日連続史上最高値更新は、30年ぶりということである。確かに、史上最高値ならずとも、9日連続高騰というのもそう多くあることではない。

 もっとも、それは「アメリカ・ファースト」で、アメリカだけのことである。このところの日本のマーケットは、いまひとつというか乗り切れていない。

■「アメリカ・ファースト」ではない税制改革になるか

 マーケットだけではなく、日本経済に影響が及ぶのはトランプ大統領の税制改革(減税策)の行方である。2月28日の議会演説でその具体的な中身が明らかになるとみられる。

 目を見張るものになるか、そうではないのか――。トランプ大統領が事前に公言しているように法人、個人の両面で大幅な減税が打ち出される見込みだ。
 これによりアメリカの景気に拍車がかかり、利上げに進めば、ドル円(為替)にも影響が及ぶことになる。

 「アメリカ・ファースト」で視野を狭くすることなく、アメリカが世界経済全体を引っ張るような税制改革が望まれる。
 国境税など保護主義・重商主義めいたものが強く打ち出されるようでは、「アメリカ・ファースト」であり、世界経済全体を引っ張るものにはならない。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 13:25 | 小倉正男の経済コラム