[小倉正男の経済コラム]の記事一覧
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記事一覧 (08/08)【小倉正男の経済羅針盤】都市のソフト力全体の厚みとカジノ
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2014年09月06日

【小倉正男の経済羅針盤】Jリートと私募リート

■Jリートは12兆円マーケットに成長

小倉正男の経済羅針盤 Jリート(=上場不動産投資信託)は、高い利回りが得られるところが一般的な特色とされてきている。配当、すなわち分配金を得るために期末に狙うジャンルと思われてきた。

 しかし、このところインフレに強い金融商品という思惑から「期末だけの商品」(銘柄)ではなくなってきている模様だ。

 実際にインフレになっているとは思えないが、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)改革への期待などが重なっている。実物の不動産を持つわけではなく、高い利回りを得られるということで運用先として脚光を浴びているわけだ。

 Jリートが、日本に登場したのが2001年というのだから、「リート後発国」というか、馴染みはまだまだである。

 それはともあれ、Jリートは現状40銘柄、12兆円のマーケットに成長を見せている。

 Jリートは、リーマン・ショック時などは不動産関連商品ということで酷い暴落を経験した。そんな経験もしながらだが、いまや12兆円マーケットと過去最高を記録しているというのである。

■非上場の私募リートにも情報開示を促す

 そんななかで私募リート(非上場不動産投資信託)も急成長している模様だ。私募リートは8銘柄、市場規模は7000億〜8000億円の現状と見られる。内外の機関投資家向けのマーケットである。

 リート専門の情報サイトを運営する東間大・ジャパンリート代表取締役は、「私募リートは(将来的には)20銘柄、6兆円規模のマーケットに拡大する」と見通しを語っている。

 私募リートは、Jリートとは異なり、株式市場の変動リスクを回避できるメリットがある。だが、私募リートはマーケットでの歴史も浅いだけに、情報面で「透明性」が不十分というネックがあった。

 私募リートは、情報開示に問題が残っている。「透明性が必要だ。情報をできるだけオープンにしていく」(東間氏)。情報がなければ、マーケットは大きくならない。東間氏としては、私募リートのサイトを新稼動させて、情報の「透明性」アップに挑戦するとしている。

■不動産はロケーション(場所)で価値が決まる

 不動産の価値は、その不動産が生み出す利回りで決まる――。これはリートという商品の根幹だが、「不動産バブル」以前の日本にはまったくなかった価値尺度だった。
 
 アメリカの不動産業界では、「不動産は第一にロケーション(場所)」といわれる。では、第二、第三には?「第二はロケーション」「第三はロケーション」というジョークがある。
結局、すべては「ロケーション」でそれぞれの価値が決定される。

 ニューヨークの五番街のオフィスビル、店舗、ホテル、マンションだから、高い賃料(利回り)が取れる。だから、価格が高い――。

 リートは利回り商品だから、それ自体が「不動産バブル」を回避する作用を持つ一面があるとされている。しかし、それでもリーマン・ショックのようなことが起こる。
妙な結びで恐縮だが、世の中、単純にはいかないということか・・・。

(経済ジャーナリスト・評論家、『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営』(PHP研究所刊)など著書多数)
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 15:49 | 小倉正男の経済コラム
2014年08月27日

【小倉正男の経済羅針盤】GPIFが直面する二つのガバナンス

■新浪剛史氏の「もの言う株主になれ」という提案

小倉正男の経済羅針盤 GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用資産は、2013年度末で126兆5771億円――。

 この126兆円超というおカネはなんと日本の実質GDPの四分の一に近い金額に匹敵する。もちろん、すなわちすべて国民から集めたおカネだ。

 運用資産額では、確かに世界断トツの「機関投資家」にほかならない。その存在感は相当に大きい。そのGPIFが株式への運用拡大をさらに促進する動きを見せている。

 新浪剛史・ローソン会長などは、GPIFの存在感を指摘して「GPIFはもの言う株主になれ」と提案している。
そう、GPIFは株主として大きい存在感を持っているのである。

 GPIFは、いま二つのガバナンス問題に直面している。ひとつは、日本の企業全体のコーポレート・ガバナンスである。

■日本企業のガバナンス欠如問題

 GPIFが株式への資産運用を拡大するなかで、投資する企業のガバナンスはかくあれと要求する――。あるいは、ガバナンスがある企業に投資する、と表明する――。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 12:54 | 小倉正男の経済コラム
2014年08月15日

【小倉正男の経済羅針盤】GPIF 株式への運用が劇的増加

■株式への運用が劇的に増加、国債は減少

小倉正男の経済羅針盤 GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の資金運用に変化が起こっている。端的にいえば、株式への資金運用が増加し、国債への運用が減少している。

 その変化たるや、顕著というか、むしろ「劇的」といってよいかもしれない。

 GPIFは現状129兆円の運用資産を持ち、「世界最大クラスの機関投資家」といわれる。

 それだけにその運用の劇的変化には、国内のみならずアメリカの株式市場などからも注目を集めている。

 GPIFの前2013年度の運用資産は126兆5771億円、収益は10兆2207億円(収益率8・64%)。2012年度に続いて大きな収益(利回り)を確保している。

 2013年度の運用内訳は、国内債券55・43%、国内株式16・47%、外国債券11・06%、外国株式15・59%――。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 11:38 | 小倉正男の経済コラム
2014年08月08日

【小倉正男の経済羅針盤】都市のソフト力全体の厚みとカジノ

■シンガポールのカジノ解禁

小倉正男の経済羅針盤 お堅いイメージのあるシンガポールだが、2011年にカジノを公認した。シンガポールのカジノは、中国などのお金持ち層旅行客の取り込みに成功したといわれている。

 シンガポールがカジノ解禁をしたのは、東京などのアジアの都市との「都市間競争」を意識したためとされている。「カジノも都市の魅力のひとつ」、と新しいメニューに加えたわけである。

 アベノミクスの「第3の矢」はどこにいったのか、ほとんど誰もいわなくなった。その代わりなのか、ここにきて日本もカジノ事業の解禁に踏み切りそうだ。

 「都市間競争」――、都市が旅行客に選ばれるのはよいことである。

 いま銀座の大通りを歩いていると、中国などのアジアの旅行客ばかりである。彼ら、彼女らにとって、東京や銀座ははたして魅力のある旅行地だろうか。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 12:53 | 小倉正男の経済コラム
2014年07月19日

【小倉正男の経済羅針盤】GPIF 「池のなかの鯨」になれるか?

■少しは「池のなかの鯨」らしくなった?

小倉正男の経済羅針盤 世界最大の年金基金といわれるのが、日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)である。

 GPIFは現状129兆円の運用資産を持ち、運用資金規模でみれば「世界最大の機関投資家」だ。
とかくガチガチな保守的運用が特色だが、それをほんの少し転換する動きが出ている。GPIFが、運用方針を国債中心は変わらないが、株式を増加させる動きを採用しているというのである。

 GPIFの運用成績は、2013年度10兆2207億円の黒字(収益率8.64%)。過去2番目の黒字額だ。過去最高の黒字・利回りは、2012年度の11兆2000億円(収益率10・23%)。

 それまでは資金運用成績は目も当てられない散々な低空飛行が続いていた。ほとんど死んでいた株式市場が急活発化したことが、この様変わりの運用黒字を呼んでいる。

 アベノミクス発動(2012年12月)による株式上昇が大きく貢献しているのは間違いない。GPIFの資金運用といえば、誰も期待しないというか、噴飯ものというのが過去の定評だった。
 アベノミクスのおかげで、少しは「池のなかの鯨」らしくなった、というべきか。

■GPIF=日本国債の「受け皿」構造は不変か

 2013年度の運用資金は126兆5771億円――。その運用内訳は、国内債券55.43%、国内株式16・47%となっている。

 従来、基本ポートフォリオは国内債券60%、国内株式12%とされてきた。国内債券とは、すなわち国債のことだが、一目瞭然、国債が減り、株式が増加している。
この傾向はさらに強まっており、国内債券50%、国内株式20%になるとみられている。

 日本の国債金利は長期物でも1%を割っており、これを支えてきているのがGPIFの大量の国債買いである。GPIFは、日本国債の「受け皿」といわれている。

 GPIFの国債買いが、日本の公共投資資金となり、低金利=円安誘導の源泉となっている。おそらく、国内株式への資金運用が多少増えても、国債の「受け皿」構造は変らないのではないか。

■世界の年金基金=その運用方針

 世界の年金基金の運用方針だが、各国まちまちである。国債中心のところもあり、株式の比重が大きいところもある。

 アメリカでは、老齢遺族保険信託基金や傷害保険信託基金などはアメリカ国際(特別債券など)のみの運用だ。それでもよい時は10%を大きく超える利回りがあり、最低でも4〜5%の運用収益を上げている。
 ちなみに日本の国債金利では、こうした事態は考えられず、「日本国債の罠」にドップリはまっているようなものだ。

 アメリカでもカリフォルニア州職員退職年金基金、ニューヨーク州職員退職年金基金などは株式を中心に据えた資金運用を行っている。これらはアメリカ国債が30%内外に抑えられている。

 要はプロが運用しており、リーマン・ショックのように「株式の罠」、すなわちリスクがあれば運用方針を機敏に変えるのが基本だ。それでも穴が空く時は空く。資金運用リスクは避けられない。

 日本のGPIFの問題点は、まさにそこだ。「池のなかの鯨」どころか、「池のなかの蛙」よろしくいつまでも「天下り」の温床でぬくぬくと過ごす独立行政法人、というのはいまどき少し不届きすぎないか・・・。
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 13:35 | 小倉正男の経済コラム
2014年07月07日

【小倉正男の経済羅針盤】「あまロス」症候群と岩手県

■「あまロス」にどう立ち向かうのか
 
小倉正男の経済羅針盤 昨年は、NHKの連続テレビ小説「あまちゃん」に沸いた岩手県――。主演の能年玲奈の人気は爆発的だった。だが、さすがに「あまちゃん」ブームがずっと続くわけではない。

 「あまちゃん」の放送が終了した後、視聴者は「あまロス」症候群に陥ったといわれた。
天から降った「あまちゃん」ブームに救われた岩手県なのだが、こちらも深刻な「あまロ
ス」症候群に見舞われた模様――。

 そのテコ入れなのか、岩手県の達増拓也知事は物産、観光の情報発信特使に俳優・村上弘明氏を就任させた。村上氏は、岩手県陸前高田市出身で、地縁からの起用ということである。

 知事が、物産や観光などでトップセールスを行うのは、東国原英夫・前宮崎県知事が知られている。
こちらは口八丁手八丁の芸能人の手法であり、簡単には誰もマネのできないものである。

 岩手県の達増知事は、外務官僚、衆院議員からの転進であり、地道に物産・観光にテコ入れを図る方針を採用するしかない。
 岩手県としては、何とか知恵をめぐらしたのだろうが、はたしてこの成否はどうだろうか。

■パラダイムシフト=競争を意識しない地方は生き残れない

 地方自治体が、物産販売や観光客誘致で他の地方自治体と競争するのは悪いことではない。そのはしりが、各地方自治体の「ゆるキャラ」による地域興しキャンペーン、あるいは「ふるさと納税」などなのだろう。

 本来、地方自治あるいは地方分権とは、「うちの地方は税金が安くて住みやすい」、例えば「相続税や法人地方税、個人地方税が安いから、他の地方から移り住んでくれ」、ということである。
住民の福祉や選択の自由――、競争を意識しない地方は、生き残れない時代がいずれ到来するとみられる。

 地方自治体は、いまだに「独占事業体」でアグラをかいているが、競争原理が導入されていく必要がある。地方がそれぞれ競争すれば、住民は住みやすくて、納得できる地方を選ぶことができるようになる。

 税金を当たり前のようにむさぼる地方自治体には、耳が痛いことだが、住民から敬遠される。そうしたパラダイムの大転換が、地方に迫っている。

■物産、観光がとりあえず競争の主役

 岩手県は、ようやく大震災による沿岸部のガレキ処理が完了――。応急的な仮設住宅から恒久的な住宅に移れるような取り組みを進める段階にある。学校、病院といった社会的インフラの復旧・復興も加速させていかなければならない。

 「岩手県がいまどうなっているのか、強力に情報を発信・展開していく」と達増知事。岩手県としても大震災の風化が深刻に懸念されており、それと闘う必要がある。

 恐縮ながらその昔の田中角栄内閣による列島改造時代――。私の新人記者時代だが、盛岡市の県庁で、当時の千田正・岩手県知事(故人)に単独でインタビューしたことがある。
千田正知事は、弁舌がなんとも面白い、人気のある名物政治家だった。当時は、地方は工業団地などを整備して、製造業=工場を誘致するのがメインのアジェンダだった。

 いまや製造業はグローバル展開で、地方に工場はなかなか建たない。物産販売、観光がとりあえずの競争の主役に変わっている。いまの岩手県の使命・立ち位置は、大震災からの復興もあるが、地域経済を盛り立てなければならない。

 おざなりな地域興しイベントや記者会見でお茶を濁して地方をPRするような手法では、地方が生き残れない時代に入ろうとしている。

 各地方自治体には、天地が引っくり返るようなパラダイムシフト=コペルニクス的展開になるが、「競争」というものを深く認識すべきである。      
提供 日本インタビュ新聞 Media-IR at 08:32 | 小倉正男の経済コラム
2014年06月30日

【小倉正男の経済羅針盤】セクハラ野次」事件の安易な顛末

■「セクハラ野次」事件のすっきりしない顛末

小倉正男の経済羅針盤 どうでもよいといえばそうなのだが、少しすっきりしない。例の東京都議会の塩村文夏・都議(みんなの党)の演説時に発せられた「セクハラ野次」事件である。

 野次った鈴木章浩・都議(自民党)は、野次られた塩村・都議に直接頭をさげて謝罪した。「早く結婚したほうがいい」――。鈴木・都議が吐いた野次はそうした内容だった。

 メディアはこぞって、「セクハラ野次」事件を女性蔑視、男尊女卑と批判。
外国人記者クラブなど海外メディアもこの事件を取り上げた。そんなところから、TVなどは「世界が日本の女性蔑視、男尊女卑を批判」と相次いで発言している。

 自戒もあるが、メディアというのも少し薄っぺらなものだ。
『スタップ細胞』ではわかりもしないのにワーワーと取り上げ、雲行きがおかしくなると手のひらを返して叩きまくった。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 16:33 | 小倉正男の経済コラム
2014年06月23日

【小倉正男の経済羅針盤】『プロ野球16球団制』のボトルネック

■「第3の矢」どころか、出てくるのはスマホ税、パチンコ税

小倉正男の経済羅針盤 「第3の矢」、すなわちアベノミクスの眼目になるはずの経済成長戦略だが、はたして期待できるものはあるのか。
 法人税の実効税率低減、カジノの規制緩和による新稼動、燃料電池車への補助金などプランが積み上げられている。

 またしても期待外れに終わるのか。いや、もう期待している向きのほうが少ないのだから「外れ」はないか。
 本質的に新産業を育成し、人々に仕事をつくっていくような切り口が見当たらない。

 法人税見直しなどはやらなくてはならない事案である。ただ、これを成長戦略にカウントするのは筋違いではないか。

 その一方でケイタイ電話税=スマホ税、パチンコ税と新増税のプランは次々に出てくる。自民党の知恵やアイディアはどうにも新増税に尽くされているようだ。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 16:37 | 小倉正男の経済コラム
2014年05月26日

【小倉正男の経済羅針盤】中国―経済高成長の「予定調和」とその終焉

■バブれる者久しからず・・・

小倉正男の経済羅針盤 「買うから騰がる、騰がるから買う」――。不動産・住宅、あるいは株式でもバブルとはそうしたものである。

 日本の1980年代後半のバブル期にも、そうしたことが語られたものである。

 そこにいる人たちが全員とも、「これは騰がる」と買ってしまえば、その全員が潜在的には売り手に変わる。

 次の買い手がいなくなれば、「売るから下がる、下がるから売る」になる。かくて市場から熱狂は去り、バブル崩壊ということになる。

 人間、わかってはいるが、聖人君子ばかりではないのだから、やってしまう。奢れる者久しからず、いやいやバルれる者久しからず――。

 しかし、バブらざる者また久しからず、である。世の中、人も企業も、あるいは国も大きく新陳代謝し、盛衰を繰り返していく。

■高成長の「予定調和」とその終焉

 中国の不動産・住宅市場が急激に低迷している、と報道されている。
 5月初旬のメーデー連休の中国54都市の新築住宅売買件数が前年同期比47%減に落ち込んだというのである。

 中国経済の先行きには、1年以上前から、悲観的な分析・観測が語られている。今回も、中国経済のウオッチャーたちからは、「いよいよ・・・」「ついに・・・」と分析・観測が加えられている。

 「鬼城」(=ゴーストタウン)、人が住んでいない高層マンションの林立――。近隣地域に大工場が建設される、そうであるならば大量の労働者が寄り集まってくる、そして人々はマンションを購入するはずだ――。

 経済高成長が無限に続くとすれば、マンションへの投資は高い利益を産む。しかし、高成長が止まれば、その「予定調和」は失われる。

■バブル処理・制御で、はじめて大人の資本主義になる

 中国は資本も設備も、そして技術・ノーハウも外資企業にすべて依存――。安い労働力だけを武器に経済高成長を遂げてきた。「徒手空拳」とは、まさにこのことにほかならない。

 上部構造は共産党独裁の官僚支配、下部構造は資本主義という極端なネジレを起こしながら世界ナンバー2の大国にのし上がった。

 上部構造と下部構造を貫くものは「拝金主義」――、経済の好循環時は官僚などへのワイロなども高成長のテコに作用してきた。ワイロのおカネが住宅投資に回るといった具合で、ともあれ資金が循環していたわけである。

 共産党独裁下で現代資本主義に付き物のバブルとその崩壊現象に突き進もうとしているかに見える。歴史も進んだというべきか、関西弁でいうケッタイな事が起こるものである。

 バブルとその崩壊処理、いわば現代資本主義に付きまとう危機管理(=ダメージ制御)をこなせてはじめて大人の資本主義になる。これは日本(=1990年代のバブル処理に失敗)であれ、中国であれ、言えることである。

(経済ジャーナリスト・評論家、『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』(PHP研究所刊)など著書多数)
提供 日本インタビュ新聞 Media-IR at 07:32 | 小倉正男の経済コラム
2014年04月28日

【小倉正男の経済羅針盤】日米首脳会談――外交に非礼は禁物

■TPPは「お疲れ様」交渉

小倉正男の経済羅針盤 日本の企業社会では、いつからか「お疲れ様」という言葉が乱用されるようになっている。仕事からの帰りはもちろん「お疲れ様」――。最近ではそれだけではない。社内の廊下などでのすれ違いの挨拶も「お疲れ様」。ほとんどあらゆる局面で、「お疲れ様」が使われている。

 ところで日米首脳会談、なかでもTPP(環太平洋経済連携協定)はなんともいえないものになった。徹夜の攻防、という交渉になったというのだが、その中身は判然としない。

 進展があったと見る向きもあるが、実質何もなかったという見方もある。手ぶらで帰したのか、お土産はあったのか。中身はともあれシゴトはした、ということか。まさに、「お疲れ様――」交渉である。

■「お・も・て・な・し」どころか「ぶ・ち・こ・わ・し」
 
 おまけに麻生太郎副総理など、「オバマが国内でまとめきれる力はないだろ。協議がまとまったとしても米国の議会で通る保証はない」と解説――。この談話は、オバマ大統領が、韓国に向けて飛び立つ直前、まだ日本に滞在中に出された。

 これでは、「お疲れ様」というか、なんといったらよいか。そう、「台なし」である。
 せっかく安倍晋三総理や皇室までお鮨や抹茶アイスで、「お・も・て・な・し」をしたというのにまるで「ぶ・ち・こ・わ・し」ではないか。

 これが翌日、韓国でのオバマ大統領の「慰安婦」についての発言につながったという憶測はもちろんのことまったく根拠がない・・・。

■ドゴールへの「侮り」

 だが、外交に非礼は禁物である。

 1966年、ドゴールはフランス軍をNATOの統合軍事指揮下から撤収させた。ドゴールはアメリカへの極度の依存を嫌い、ついには独自の核抑止力を持つ決断をした。NATO軍司令部は、パリを追われる事態になった。

 これには伏線があった――。ドゴールが、以前に訪米した時に、「禍根」を残したといわれている。

 ドゴールが、はじめてアメリカに着いた時にアイゼンハワー大統領が空港に出迎えなかった。代理で出迎えたのは若いニクソン副大統領だった――。これがドゴールの矜持を痛く傷つけたというのである。

 些細なことにも見えるが、少なくともドゴールには些細なことではなかった。
 ドゴールは、NATO、つまりはアメリカの核抑止力に頼っていることが、この「侮り」の根源だと判断した。軍事力を他国に頼っているから、こうした侮辱を受けることになる、と。

 取り越し苦労かもしれないが、あえて指摘しておくことにする――。
 外交で非礼をすると、とんでもないことになりかねない。TPP交渉の中身や結末がどうあれ、些細なことが「禍根」を生むようでは何のための首脳会談か、ということになるのではないか・・・。

(経済ジャーナリスト・評論家、『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』(PHP研究所刊)など著書多数)
提供 日本インタビュ新聞 Media-IR at 07:44 | 小倉正男の経済コラム
2014年04月14日

【小倉正男の経済羅針盤】「日銀が泣いている」という心境か・・・

■「銀が泣いている」、阪田三吉ではないが・・・

小倉正男の経済羅針盤 「(ワテの)銀が泣いている」、将棋界の鬼才・阪田三吉が大一番で残したといわれるセリフである。

 「進むに進めず、引くに引かれず――」、攻めに強い銀も打ち方を誤るとにっちもさっちも行かなくなる。

 このセリフが出た関根金次郎(後に名人)との大勝負では、最終的に阪田三吉が勝った。阪田三吉は泣きを入れたが、銀はしぶとく活かされた、ということだ。

 対局している相手の駒の陣形配置と、そして自分の駒の陣形や動き、つまり全体の攻防のなかで、銀が活きたり死んだり、そして泣いたりする。

 強い駒である銀も使いようである。使い時を間違うと、何にもならない。

 いまそんな心境にあるのは、あるいは日銀の黒田東彦総裁かもしれない・・・。

■第3の矢=構造改革が見えない

 日銀・黒田総裁は、昨2013年4月に「異次元」といわれる量的・質的な金融緩和を行った。為替は円安に大きく振れ、株価は一気に上昇した。その効果は絶大で、「日銀バズーカ」と評された。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 10:03 | 小倉正男の経済コラム
2014年04月07日

【小倉正男の経済羅針盤】振り返れば「財政の崖」――オバマの内向き行動

■見て見ぬ振りでクリミア編入を黙認?

小倉正男の経済羅針盤 ロシアのクリミア半島の事実上の支配・制圧に対して、アメリカもNATOもさほどでもない経済制裁を行うのみである。

 アメリカもNATOも、「ウクライナやクリミアに軍事支援・介入も辞さない」といった牽制すら行わなかった。
オバマ大統領は、「アメリカはウクライナで軍事行動に関与しない」と早々に表明――。

 冷静にというか客観的に言えば、これではロシアのクリミア編入=軍事支配を「黙認」したに等しいのでないか。

 ロシアは、ウクライナを威嚇するように国境沿いに大軍団を集め、長々と軍事演習を行っている。しかし、一方でプーチン大統領は当初から「ウクライナへの軍事介入は望まない」としてきた。

 いま世界は見て見ない振りをしているようなものだ。
クリミア問題の長期化――、暗黙のうちにロシアのクリミア編入で手打ち、事実として「休戦」状態に入ったということになる。

 アメリカ、EU、そしてロシアもそうだがカタストロフィは避けたい――。無理もないのだが、株式、為替といった世界の金融マーケットも大破局・大混乱を嫌った。そうした経過から直近のNYダウは史上最高値圏に上昇を果たしている。
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提供 日本インタビュ新聞 Media-IR at 07:27 | 小倉正男の経済コラム
2014年03月23日

【小倉正男の経済羅針盤】ウクライナが嫌悪する「ロシアのくびき」

■「タタールのくびき」

小倉正男の経済羅針盤 1236年の東欧、モンゴル帝国(ジョチ・ウルス=チンギス・カーンの長男の後裔)が、キエフ大公国から分裂したルーシ(ロシアの旧名)諸国を襲った。

 勝敗はバトゥが率いるモンゴル帝国の大勝、ルーシ諸国の完敗――。征服は悲惨を極め、ルーシは人口の多くを失った。

 モンゴルは征服後、ルーシ諸国を臣従させた。モンゴルの支配は、その地域に直接配置する人員が極めて少なく、ルーシ諸国に委任する間接的な形態――。宗教の自由などは許して比較的寛容だったといわれる。いわゆる「タタールのくびき」である。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 14:50 | 小倉正男の経済コラム
2014年03月18日

【小倉正男の経済羅針盤】「第1の矢」だけでは限界、黒田・日銀総裁のジレンマ

■第二弾の金融緩和に踏み込む

小倉正男の経済羅針盤 日銀の黒田東彦総裁は、現行の量的・質的金融緩和について、「必要あれば調整を行う」と発言――。さらに、「その調整に限界があるということはない」と。

 これは日銀総裁に就任してちょうど1年を経過するに当っての抱負を語ったものだ。黒田総裁は「調整」、すなわち第二弾の金融緩和を行う腹だなと素直に受け取ってよい。

 4月には消費税が上がる。消費税増税をテコにした先食いの仮需が一巡する。つまり、4月を境に消費や設備投資が大きく低迷するのは確実である。

 そうなれば第二弾の量的・質的金融緩和に踏み込むタイミングということになる。その時期は5〜6月頃になるのではないかとみられる。

 黒田総裁は、昨年4月に異次元といわれる金融緩和を行った。2年後をメドにマネタリーベースを2倍に拡大、消費者物価を2%上昇させる、という野心的なものだった。
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 12:42 | 小倉正男の経済コラム
2014年03月13日

【小倉正男の経済羅針盤】ウクライナ軍事介入はロシアの「ストーカー行為」

■プーチンの「梟雄」ぶり

小倉正男の経済羅針盤 ウラジーミル・プーチン――KGB出身のロシア大統領であり、やり口を見ていると「梟雄」そのものだ。
 
 大統領職は、2度目である。1999年エリツィン大統領のもとで首相、2000〜2008年に大統領(2期連続)の座にいた。その後、首相に降りたが、権力を実体として握り続けていささかも離すことはなかった。

 2012年に再び大統領に戻った。権力争いがシビア極まりないロシアで、この経歴を見るだけでエグいな、と思わせるものがある。
 このしたたかさには、いまの世界のどの政治家でも太刀打ちできないところがある。

 シリア内戦介入の秒読み寸前で、アメリカのオバマ大統領は、プーチン大統領の提案を受けて爆撃回避を行った。
 プーチン提案とは、シリアの化学兵器を国際管理するというものだった。オバマ大統領としては「借り」をつくってしまったわけである。

 ロシアのウクライナへの軍事介入でも、アメリカ,EUは動けないと足元を見られたのではないか。プーチンにとっても、軍事介入はいかにも苦し紛れの下策だが・・・。
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提供 日本インタビュ新聞 Media-IR at 07:16 | 小倉正男の経済コラム
2014年02月23日

【小倉正男の経済羅針盤】最近のオヤジたちの軽すぎる発言撤回

■すぐに撤回するぐらいなら・・・

小倉正男の経済羅針盤 発言内容の是非を論じる以前に、

 最近は、何かというと「撤回します」「取り消します」である。NHK新会長に続いて、首相補佐官――。

 エラそうなことは極力言わないようにしているのだが、最近のいい歳のオヤジたちは何を考えているのやら。

 発言を撤回したのだから、「どこが悪いのか」「問題ないのではないか」というのは軽すぎるのではないか。

 発言したばかりなのにすぐ撤回するぐらいなら、発言などしないほうがよい。

 「綸言汗の如し」――、いったん発した言葉は、訂正したり取り消したりすることはできない。NHKの大河ドラマなどで何度も語られてきた中国古典の教えである。

■政府が右なら右、とは身も蓋もなし

 籾井勝人・NHK会長の発言は、慰安婦問題を含めて多岐にわたるものだが、「政府が右と言っているのに我々が左と言うことはできない」とは、ほとんど思考停止の感がある。

 この発言は、国際放送、そして領土問題に関しての発言らしい。
だが、原発事故などの報道についても、政府の言動が右なら右と言うことになりかねない。

 政府の任命なのだから、最初に政府の顔を伺うということなのだろうか。少なくとも、第一義に視聴者=国民に顔を向けないということになる。

 身も蓋もないことだが、もう少しというか巨大メディアのトップとして最低限の"見栄"を張ってほしいものである。

 これでは、任命した筋も当てが外れたというか、頭を抱えているのが本当のところではないか。身も蓋も、つまり普段の見識や教養のようなもの、いうならば少々の資質があれば見栄も上手に張れるものだが・・・。

■「失望したことに失望」、すぐ撤回したことに失望!?

 衛藤晟一・首相補佐官の発言撤回も身も蓋もない話である。

 安倍晋三首相の靖国神社参拝に「米国が失望を表明したことに失望した」、という発言。

 靖国参拝の是非は様々な議論のあるところだが、米国に率直にモノを言ったことはオヤと思わせた。

 是非はともかく骨がある人がいるではないか、と。これはどういう人物なのだ、と。
しかし、即日すぐの撤回、オヤオヤである。動画も削除となった。

 同盟関係だとか言っているが、結局、米国には何も言えないのか。中国外交部報道官からは、「日本は一体何をしたいのだ――」と揶揄される始末である。

■再び失敗の轍を繰り返すのか

 さらには森喜朗・元首相まで浅田真央ちゃんについて無神経な発言。イヤハヤ困ったものである――。国民からの批判・反響は、これがいちばん大きかったのではないか。

 これでは前回の安倍内閣の失敗の轍を繰り返すことにならないか。

 廻りが軽い発言や行動をしたり、失言を重ねたりして、国民の失望を大きく膨らませていく。

 ところでいま安倍首相に直言するとすれば、アベノミクス第3の矢=経済成長戦略に集中すべきであるということだ。

 第3の矢は、どこにいったのか。「バイ・マイ・アベノミクス」は終わったのか――。

 これこそが日本の失望の源である。第3の矢をしっかりと放つことこそが、徐々に膨らんでいる失望の源を断つことになる。

(経済ジャーナリスト&評論家・小倉正男=東洋経済新報社・金融証券部長、企業情報部長などを経て現職。『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』(PHP研究所刊)など著書多数)
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 13:24 | 小倉正男の経済コラム
2014年02月08日

【小倉正男の経済羅針盤】中国・経済成長減速と「鬼城」現象

■アメリカ豹変=リーマンショックは「100年に一度の大事件」

小倉正男の経済羅針盤 2008年9月に勃発したリーマンショックを思い出してみたい。

 市場経済一辺倒だったアメリカが、まるで手のひらを返したように世界各国に財政出動による公共投資を呼びかけた。
 これが『曲者』だった。

 ケインズ経済学など親の敵、あるいは博物館でホコリをかぶった存在と決め付けていたのが、ウソのような豹変ぶりだった。
 その時に語られたのが、「100年に一度」「100年に一度の大事件」(グリーンスパン・前FRB議長=当時)というキーワードだった。

 アメリカは、それまで『ひとり勝ちの経済』を謳歌してきた。
 ところが、リーマンショックに直面すると、世界経済が引っくり返るぐらいの「100年に一度」の非常事態だから、と危機感を訴えた。

 リーマンショックは、アメリカがれっきとして起こしたバブルだが、崩壊するとなると世界経済を「質」に入れた。確かに、アメリカ経済が破綻したら、人類史上空前の崩壊になりかねない。
 これにより突然ケインズ経済学がホコリを払って取り出され、財政出動=公共投資が脚光を浴びることになった。

■中国の大判振る舞い、57兆円超の巨大な景気刺激策

 このアメリカの財政出動呼びかけに、ホワイトナイトとしてさっそうと手を上げたのがほかならぬ中国だ。

 中国の胡錦濤・国家主席(=当時)は、4兆元(当時のレートで57兆円超)の巨大な景気刺激策を追加断行すると応じた。

 これは中国が、世界経済に巨大な存在感を確立した瞬間にほかならなかった。2010年にGDPで日本を追い抜いて世界2位になるテコは、この『大判振る舞い』による。

 中国は、道路、鉄道、空港、都市勤労者向け高層住宅など不足している社会インフラを整備する必要性もあった。北京五輪(2008年8月)をピークに陰りが生じていた経済成長率や都市部の雇用失速にテコ入れを図るという側面もあった。それに資産バブル縮小・崩壊に歯止めをかけるといった事情も秘められていた。

■『輸出』された不動産バブル=「鬼城」現象

 中国の4兆元の公共投資を担ったのは、実体としては地方政府、政府機関、国有企業などだった。国のお墨付きの事業であり、実際には4兆元をはるかに大きく超える乱脈な財政出動=公共投資になったという見方がなされている。

 「列島改造」どころか、「大陸改造」を実行したわけである。
その際、資金調達チャネルとしての役割を果たしたのが、シャドウバンキング(=影の銀行)である。

 リーマンショックのバブルをしのぐために行われた中国の大規模な財政出動=公共投資は、いわば世界経済を救い、そして中国を文句なしの「世界の経済大国」に押し上げた。
 しかし、その反面では中国のバブルを膨らませた。特に不動産バブルは、アメリカから中国に『移転』、『輸出』されたという見方がなされている。

 いまでは経済の高い成長の減速傾向も重なり、「鬼城」(=ゴーストタウン)現象にみられるように中国の不動産バブルはいわばかなり危機的な状況が指摘されている。中国は、これをどう収束させるのか。

 ややセンチメンタルに言えば、アメリカは救ってもらったお返しに世界経済のホワイトナイトを演じるべきだろう。
しかし、アメリカはそうした関心はさほど示さず、ひたすら”ひとり勝ちの経済”をまたまた目指しているようにみえる。

(経済ジャーナリスト&評論家・小倉正男=東洋経済新報社・金融証券部長、企業情報部長などを経て現職。『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』(PHP研究所刊)など著書多数)
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 07:16 | 小倉正男の経済コラム
2014年02月04日

【小倉正男の経済羅針盤】アメリカ金融緩和縮小とその因果

■揺らぐ「世界の金融協調体制」

小倉正男の経済羅針盤 アメリカの金融緩和縮小が、新興国の金融不安を惹起している。

 インドのラジャン中銀総裁は、「先進国は世界の金融協調体制の立て直しに努めなければならない」、と批判した。先進国とはアメリカにほかならない。

 アメリカが金融緩和縮小に走れば、高金利を求めて新興国に流れていた資金がアメリカに戻ることになる。新興国の通貨は低下し、それに歯止めをかけるために新興国の金利は上昇する。

 当然ながら新興国の経済は軋むことになる。
新興国サイドから見れば、アメリカは「世界の金融協調体制」を揺るがしており、"立て直さなければならない"状況に陥っているということになる。

■「異例」から「通常」に戻る代償

 アメリカとしては、リーマンショックから経済がようやく立ち直り、異例だったゼロ金利など金融緩和の訂正を図る――。(どこかの国のように"ゼロ金利依存症"になることは避けなければならない!)

 いわば、「出口戦略」、つまり予定通りのスケジュールということになる。

 となれば、中国の経済成長にブレーキがかかり、さらに中国に食料品を輸出しているアルゼンチンなどの新興国経済が打撃を受ける、とマイナスの連鎖がつくられる・・・。

 日本円は安全資産ということで買われ、円高になり、株式(日経ダウ)も直撃を余儀なくされてきている。

 アベノミクスには、株式上昇による「資産効果」といったものも織り込まれている。アベノミクスにとってもこれはマイナスのファクターになる。

 世界中の株式が不安定になり、どこで歯止めがかかるか。世界経済が「異例」から「通常」に戻る動きだが、代償は小さいとはいえない模様だ。

■アメリカの因果、はたまた資本主義の因果

 その昔、「ベアリング恐慌」(1890年)という金融恐慌では有名な事件がある。

 この時代、世界金融市場に提供される資金は、圧倒的に大英帝国によるもの。
大英帝国の金利が低く、高金利のアルゼンチンに資金が流れていたが、アルゼンチンの経済破綻からマーチャントバンク・ベアリング商会が倒産した――。

 ベアリングは、金融界でロスチャイルドと並ぶ巨大な存在だっただけに、「ベアリング恐慌」という名が付けられた。

 ついちょっと前に世界を襲った「リーマンショック」と同じ発想によるネーミングにほかならない。

 今回のアメリカの金融緩和縮小が、何をもたらすのか――。なんとか混乱を収束させ、ソフトランディングしてほしいというのが大方の願いである。

 リーマンショックの克服のための「入口戦略」がゼロ金利といった異例の金融緩和だった。その「出口戦略」の金融緩和縮小が皮肉にもまた世界経済を執拗に揺るがしている。
これはアメリカの因果、あるいは資本主義の因果というしかないのだろうか。

(経済ジャーナリスト&評論家・小倉正男=東洋経済新報社・金融証券部長、企業情報部長などを経て現職。『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』(PHP研究所刊)など著書多数)
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 09:26 | 小倉正男の経済コラム
2014年01月25日

【小倉正男の経済羅針盤】ガラケー法人税と企業の「祖国愛」

■「法人税引き下げに踏み込む」は本気か

小倉正男の経済羅針盤 安倍晋三首相は、ダボス会議(世界経済フォーラム年次総会)でスピーチした。そのなかでオヤと思わせたのは、“法人税の実効税率引き下げに踏み込む”、と表明したことだ。

 グローバルな競争を意識して割高の法人税を見直す。それにより外国企業の日本への投資を呼び込む、というのである――。これはいわば「国際公約」という格好になる。

一般的には、法人税実行税率引き下げには消極的と見られていただけに、本気なのかやや懸念もないではない。
だが、法人税率が世界的に見て高いのは事実であり、本気で取り組まなければ外国企業は日本をパスすることになる。

「バイ・マイ・アベノミクス」と胸を張っても、割高な税金に手が付けられないでは「バイ・バイ・アベノミクス」になりかねない。それがこれまでの現実である。

■“企業は税金を払う国を選ぶ”という圧力

「このままでは我々は祖国を去るしかない――」
その昔、ドイツが法人税を下げたのは、ベンツ、BMWなどの国を代表する大企業が、本社や工場を海外に移すしかない、と表明したことが圧力となった。

法人税の安い国で税金を払う。
つまり、企業は税金を払う国を選び、グローバル競争力を養う――。

企業に国を選ばれたら、元も子もない
結局、ドイツは法人税を下げ、消費税を上げる道を選択した。

■「祖国を裏切らない」を前提にした“ガラケー法人税”

日本の法人税は、日本の企業は“祖国を裏切る”ことはないということを前提にしている。グローバル競争といっても、「祖国を去る」ことまではない、という実効税率になっている。

以前にトヨタ自動車などが社長交代で、新社長の披露パーティなどが行われた時のことである。そのご祝儀に徴税が行われた、というのである。

ご祝儀も、個人になるのか、企業になるのか、ともあれ所得になるのだから徴税は合法であるのは間違いない。
コンプライアンスからみれば正当だが、少々のことなら目をつぶるという手も大人としてはアリではないか。

「我々は祖国を去るしかない――」。そう企業に言われたら、地域にしても国家にしても大きな痛手になる。
企業の「祖国愛」を信じる余り、あまりにも厳密な徴税や割高な税制を強いるはよいことではないに違いない。

税金もまたガラパゴス化(=ジャパゴラス化)、つまり“ガラケー”が許されないということか・・・。

(経済ジャーナリスト&評論家・小倉正男=東洋経済新報社・金融証券部長、企業情報部長などを経て現職。『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』(PHP研究所刊)など著書多数)
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 15:00 | 小倉正男の経済コラム
2013年12月18日

【小倉正男の経済羅針盤】みんなの党を普通の会社として見れば・・・

■みんなの党は「ユア・コーポレィト」だったのに

小倉正男の経済羅針盤 アメリカでは、自分の勤務する会社を「ユア・コーポレィト」(貴方の会社)と表現する。ユア・コーポレィトとは、“株主や顧客の会社”だというわけである。

 ユア・コーポレィト――「ウチ(内)」「ソト(外)」でいえば、ソトに比重がある。

 会社は、そこ=ウチに勤務する経営者や社員のものではない。会社とは、ユア・コーポレィト、すなわちソトのものだというのである。

 日本では、「弊社」などという言い方もあるが、一般には「わが社」と表現される。言うまでもなく、ウチがあくまで中心というかすべてである。

 「みんなの党」は、本来、“貴方の党”という意味合いが込められていたと思われる。つまり、党内=ウチの党ではなく、党外=ソトの一般の国民市民の党ということである。

 「みんなの党」には、そんな画期性があった。それが、いつの間にか、「自分の党」に変わってしまったということなのだろうか。

 人事やお金の権力を握れば、それを手放したくなくなる。政界再編成に消極姿勢を採るのは、権力を持っている党内の心地よさを維持したいからという推察が語られている。

■認めるべきは“大量退社”、会社が分裂した現実

 江田憲司前幹事長を筆頭に14名の議員が一気に離党し、みんなの党がふたつに分裂したのはよほどのこととは言えないか。

 「江田新党」(=結いの党)については、ソトからの支持や信頼はまだ集まってはいない。厳しく言えば未知数の段階、「すっきりした」(江田氏)のはわかるが、それは個人的次元の話でしかない。ソトは、あくまでどう行動するかで判断することになる。

 渡辺喜美代表は、当初の印象では、「党の方針、私の方針に反する言動をするなら出て行け」という調子だった。
 しかし、大量離党という事態になったら、今度は会派からの離党を認めないとしている。理屈は立てられるにしても、これは傍から見ればやや嫌がらせのように見えないではない。

 “離党する”、という数がこれだけ大量になったこと自体が重たい。ともあれ、それだけで理非や大義が果してどちらにあるかを少しは示しているのではないか。

 それに議員の離党だけではなく、一般の党員の離党も半端ない動きとなる可能性がある。離党を認めるとか認めないという次元ではなく、認めるべきはみんなの党がすでに分裂している現実ということになる。

■普通なら経営責任追求もの!?

 みんなの党は、会社でいえば役員、社員が半数近くほど辞表を出したような状態に見える。それだけではなく、大株主、金融機関や顧客の気持ちが乖離したような状態だろうか。

 つまり、ステークホールダーの信頼性が揺らぎ、マーケット・ニーズから離れている会社になっているのでないか。

 政党も会社も人々の信頼、支持がなければ先行きは切り拓けない。普通なら株主総会で経営責任追及などに追い込まれるところだが、どうだろうか。

(経済ジャーナリスト&評論家・小倉正男=東洋経済新報社・金融証券部長、企業情報部長などを経て現職。『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』(PHP研究所刊)など著書多数)
提供 日本インタビュ新聞 Media-IR at 04:33 | 小倉正男の経済コラム