
9月16日の組閣以来、鳩山内閣は、「前政権の補正予算の見直しと凍結」、「概算要求の出し直し」、「事業仕分け」、「緊急経済対策」、「税制改革大綱」、「来年度の予算編成」と一気に走り抜け、年末を迎えた。
昨年秋の麻生内閣発足後、いつ総選挙があっても民主党が勝利し、政権交代を果たす情勢にあったから、これらの一連の政治スケジュールはすでに織り込み済みで、十分に準備する時間があったのかも知れないが、短期間に、よくこれだけの事柄を繰り出してきたなと、正直、感心する面もある。
だが、内容となると、長期に亘る自民党政治の清算というよりも、官僚支配からの脱却にウエイトがかかって、些か偏狭的な嫌いがするし、数字や金額に拘り過ぎ、公開討議といいながら結果的には、政治と政策を「小さなもの」にしてしまったという感も否めない。集大成としての22年度一般会計予算案にしても、「大幅な組み替えをする」といいながら、組み替えられたのは、わずか3兆円で、これは50兆円規模の事業予算からすれば、期待外れの数字といわなければならない。
藤井財務大臣をはじめ民主党の有力者たちは、選挙前にはこぞって、政権をとればムダをなくし、予算の仕組みを替え、埋蔵金を炙り出して財源を作る、といって壮大なばら撒きマニフェストを掲げた。それで、選挙に勝利したが、思った程のムダ削減効果も出ず、現実的には不況による税収不足に悩まされることになった。経済不振に拠る税収不足は、選挙の遥か前から予想できたことだから、民主党の面々に、この事態への備えに抜かりがあったといわなければならない。
■今後の経済見通しと経済成長戦略の策定は・・・ さて、予算案に続いて、今後の経済見通しと、経済成長戦略の策定が、民主党政権の次の課題であるが、25日、予算案を決定した閣議において、「平成22年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」が了承された。「経済見通し」は次のように記述する。
「平成22年度において、景気は緩やかに回復していくと見込まれる。これは、「明日の安心と成長のための緊急経済対策」や平成22年度予算に盛り込まれた家計を支援する施策等により、民間需要が底堅く推移することに加え、世界経済の緩やかな回復が続くと期待されるからである。物価は、大幅な供給超過の下で、マイナス幅が縮小するものの緩やかな下落が続くと見込まれる。また、失業率は高止まるとみられる。こうした結果、平成22年度の国内総生産の実質成長率は、1.4%程度と3年ぶりのプラス成長が見込まれる。また、名目成長率は、0.4%程度と同様にプラスに転じると見込まれる。なお、先行きのリスクとして、雇用情勢の一層の悪化、デフレ圧力の高まりによる需要低迷、海外景気の下振れ、為替市場の動向等に留意する必要がある」
世界経済頼りと緊急経済対策に期待するという、自律性のない「平板で底の浅い」分析に終始しており、問題点を箇条書きした程度の内容とボリューム不足も気になる。GDPの見通しを名目で475.2兆円とし、名目で0.4%、実質で1.4%のプラス成長と見ているが、最重要の指標なのだから、ここでは、根拠について詳しく述べる必要がある。内訳の民間最終消費支出についても、名目283.0兆円で名目マイナス0.2%、実質プラス1.0%とあるが、その説明は「雇用・所得環境に厳しさが残るものの、対策や家計を支援する施策の効果等から前年度の伸びを上回る」となっている。だが、これでは経済文書というより「政治文書」である。そして、「経済財政運営の基本的態度」についてはこう述べる。
「政府は、景気の持ち直しの動きを確かなものとするため、対策を着実に実施することとし、これに伴う平成21年度第2次補正予算と平成22年度予算を一体として、切れ目なく執行する。平成22年度予算においては、子育て、雇用、環境、科学・技術に特に重点を置き、国民の付託に応えて主要施策の実施に取り組むとともに、中長期的な我が国の経済社会の活力ある発展を図るため、これらの重点分野にアジアの視点を加えた成長戦略を推進する。
■民主党政権の政策実効性の如何が問われる年へ さらに、経済成長と財政規律を両立させ、経済成長や国民生活の安定、セーフティネットの強化という観点からも、財政の持続可能性を高めていく。なお、経済動向を引き続き注視し、必要な場合には、果断に対応する。
また、今後の経済財政運営に当たっては、国民の暮らしに直結する名目の経済指標を重視するとともに、デフレの克服に向けて日本銀行と一体となって強力かつ総合的な取組を行う。日本銀行に対しては、こうした政府の取組と整合的なものとなるよう、政府と緊密な情報交換・連携を保ちつつ、適切かつ機動的な金融政策運営によって経済を下支えするよう期待する」
「アジアの視点を加えた成長戦略の推進」と「名目の経済指標の重視」が、ポイントと思われるが、これらが今後どのように策定され、実行されていくかを注視することにしよう。お題目と美辞麗句の政策展開はもう終わった。これからは、民主党政権が自らの判断と責任で、財源を投入して行う、政策の実効性の如何が問われる番である。
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 16:15
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