
出馬が取りざたされている有力候補者のうち、現時点では4人が出馬を正式に表明している。ワタミ創業者・前会長の渡辺美樹氏(51)、現職神奈川県知事の松沢成文知事(52)、共産党政策委員長・前参院議員小池晃氏(50)、無所属で発明家のドクター・中松(中松義郎)氏(82)の4名が立候補を表明。
宮崎県の東国原英夫前知事(53)も出馬の意向を固めており、出馬に消極的だが民主党・行政刷新担当相の蓮舫氏(43)、名古屋市の河村たかし市長(62)が代表を務める地域政党「減税日本」からの擁立も考えられる。自民党からは丸山和也参院議員(65)が立候補を検討していると伝えられた。

★小池晃氏(共産党政策委員長・前参院議員)
共産党政策委員長で前参院議員の小池晃氏は、2月9日に記者会見を行なって出馬を正式に表明した。共産党の推薦を受けて無所属で立候補する予定であり、命と健康を守る福祉都市をつくりたいとしている。共産党だけに、社会福祉関連が重点政策になるだろう。
★渡辺美樹氏(ワタミ創業者・前会長)
ワタミ(東証1部7522)の創業者で前会長の渡辺美樹氏は、2月16日の記者会見で出馬を正式に表明した。政党の支援については白紙だが、地域政党は作らないとしており、既成政党との連携に含みを残している。渡辺美樹氏は、ワタミで居酒屋チェーン事業、介護事業、宅配弁当事業、農業関連事業などを手掛けてきたほか、学校法人郁文館夢学園の理事長を務めるなど、教育問題にも積極的に携わっている。そして出馬表明にあたっては、経営感覚を政治に吹き込みたいとして、産業振興による税収増、無駄な経費削減、減税の可能性などにも言及している。
★松沢成文氏(現職:神奈川県知事)
現職の神奈川県知事である松沢成文氏は3月1日、東京都知事選への出馬を正式に表明した。神奈川県から東京都へ、現職知事としては異例の国替えとなるが、石原慎太郎氏の不出馬と連動しているとの見方が強い。松沢成文氏は神奈川県知事を2期務め、飲食店などに禁煙か分煙を義務付ける受動喫煙防止条例を全国で初めて施行させた。また重点政策として、首都圏1都3県(東京、神奈川、埼玉、千葉)が一体で課題に取り組む首都圏連合構想を強調している。
★東国原英夫氏(前宮崎県知事)
態度を明確にしていない有力候補者の中では、前宮崎県知事の東国原英夫氏が、あらゆる可能性を排除しないとして国政との両睨みの模様だが、都知事選への出馬に意欲的とされている。そして、石原慎太郎氏の不出馬の可能性が高まったことで、3月上旬にも出馬を表明するのではとの見方も広がっている。
★蓮舫氏(民主党・行政刷新担当相)
民主党内の一部で出馬への期待が高い行政刷新担当相の蓮舫氏は、党として独自の候補者を立てるべきと強調しているが、自身については国政を優先するとして、現時点では出馬に消極的とみられている。
★河村たかし市長の地域政党「減税日本」から
また、名古屋市の河村たかし市長は、自身が代表を務める地域政党「減税日本」から、東京都知事選の候補擁立を検討しているとも伝えられている。
■重点政策に大きな違いがなく争点が見えにくい
一方、既成政党の動きを見ると、共産党は小池晃氏を推薦する予定だが、民主党、自民党の二大政党をはじめ、公明党、みんなの党なども、それぞれ独自の候補者を擁立する可能性は低いだろう。そして今後は各既成政党が、どの候補者と連携するかが焦点となるが、候補者側も既成政党色を強く出したくないだけに、現時点で組み合わせの見極めは難しい。
2月6日投開票の愛知県知事選と名古屋市長選では、大村秀章現愛知県知事と河村たかし現名古屋市長が連携し、地域政党対既成政党の構図を作った。そして「減税」をキーワードとして選挙戦を戦い圧勝した。今回の東京都知事選でも、無党派層の支持が勝敗のカギを握るだけに、各候補者とも選挙戦では、首都東京から国を変えるとして「非自民・非民主」「地域政党」「維新」「地方分権」「首都圏連合」などのキーワードを、前面に打ち出す可能性が高いだろう。大阪や名古屋との連携なども注目されるだろう。
■「安心・安全な社会と暮らし」は共通の重点政策
また現時点で各候補者の具体的な重点政策は不明だが、最近の傾向から見れば、教育、介護、医療、社会福祉、セーフティネットの充実など「安心・安全な社会と暮らし」をキーワードとする政策は、各候補者に共通の重点政策となるだろう。さらに、中小企業対策、商店街活性化対策、東京や首都圏の国際競争力強化なども争点になるだろう。減税もテーマとなる可能性があり、各候補者の今後の発言などに注目しておきたい。ただし、独自の政策や大胆な発言で注目されてきた石原慎太郎氏が不出馬となると、各候補者の重点政策に大きな違いがなく、首都決戦の争点が見えにくくなる可能性も考えられる。
有力候補者の顔ぶれによって状況が大きく変わる可能性も残しているが、いずれにしても、東京都知事選の告示が近づいてムードが高まってくれば、株式市場では選挙特需関連が材料視されるほか、有力候補者の重点政策に関連する銘柄が物色される可能性もあるだろう。
【特集:東京都知事選】
・2011年03月03日:(1)現職知事の不出馬で選挙戦の行方と関連銘柄は?
・2011年03月04日:(2)各候補者の動向と「具体的な重点政策」
・2011年03月05日:(3)選挙特需が期待される業界と銘柄
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