
セグメント別に見ると、資源・化学品が大幅増益だった。資源価格が高水準に推移したことが追い風となった。ボリビアの銀・亜鉛・鉛(サンクリストバル)事業の好調も寄与した。メディア・ライフスタイルも大幅増益となった。ジュピターテレコム(J・COM)(ジャスダック4817)、ジュピターショップチャンネルの好調に加えて、住商情報システムと共同TOBで買収したCSK(11年10月、住商情報システムがCSKが吸収合併して現SCSK、東証1部9719)も寄与した。
12年3月期通期の連結純利益見通しについては、期初時点の2200億円から今回の2500億円に上方修正した。欧州債務危機問題の影響で世界経済の減速も懸念されるが、同社のコアビジネスについては堅調に推移するとしている。上方修正後の通期連結純利益見通し2500億円に対する11年4〜9月期実績の進捗率は61%であり、再度の上振れの可能性が高いだろう。
進行中の中期経営計画では、新規投融資に加えて、資産入れ替えにも積極的に取り組む方針を打ち出し、12年3月期〜13年3月期の2年合計で、新規投融資5800億円、資産入れ替え1兆1500億円を計画している。11年4〜9月期には、米国シームレス鋼管事業への追加投資、チリのシエラゴルダ銅鉱山事業への追加投資、住商情報システムとの共同TOBによるCSK買収などで、新規投融資グロス900億円(資源・エネルギー290億円、新産業・インフラ30億円、メディア・生活関連300億円、その他280億円)を実行した。資産入れ替えでは、米州自動車金融事業売却など合計600億円を実行した。
総合商社大手5社の中では、原油関連の利益構成比が比較的低いのが特徴であり、IPP電力分野、水インフラ分野、レアアース分野、農薬分野、メディア・IT・リテール分野などにも注力し、バランスの取れた事業ポートフォリオの構築を目指している。メディア分野ではジュピターテレコム(4817)やジュピターショップチャンネルの収益が貢献している。
さらに、11月には中国農牧大手の四川新希望農業との食肉事業の合弁会社の設立、12月には南アフリカでの風力発電事業への参画、などを発表している。また資産入れ替えでは、米国でペットケア事業を展開する100%子会社Hartzの株式51%をユニチャーム(東証1部8113)に売却することを発表している。中期的にも収益基盤が一段と強化され、収益は拡大基調だろう。
11年の株価を見ると、2月17日に年初来高値1297円を付けた後は、上値下値を切り下げる展開となり、10月5日には年初来安値875円まで下落する場面もあった。その後は安値圏から反発して戻り歩調の展開となった。1000円台を回復して、上値抵抗線となっていた26週移動平均線も突破した。足元では1000円台でのモミ合い展開となっている。予想PERは5倍台、予想配当利回りは4%台であり、指標面で見れば依然として割安感の強い水準となっている。上昇余地は大きいだろう。
・【特集:2012年を読む】「総合商社」銘柄の動向(1)〜基盤強化で収益拡大基調
・【特集:2012年を読む】「総合商社」銘柄の動向(2)〜株価に割安感強く上昇余地
三菱商事は信用倍率やや高水準だが上昇余地は大きい
三井物産は中期的に収益基盤が一段強化で収益は拡大基調
丸紅は通期では期初計画の3000億円を上回る見込み
伊藤忠商事は2年合計で1兆円まで増額する可能性も
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