【外国為替市場フラッシュ:1月9日〜13日のユーロ・円相場】
■ユーロ売り圧力継続、週末13日の海外市場では1ユーロ=97円20銭近辺に円が上昇
1月9日〜13日の週のユーロ・円相場(9日の東京市場は休場)は、ユーロ売り圧力が継続し、9日の海外市場と13日の海外市場では一時1ユーロ=97円20銭近辺に円が上昇した。13日には格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が、13日中にドイツを除く複数のユーロ圏諸国の国債格付け引き下げを発表するとの観測報道で警戒感を強めた。週末13日の海外市場で終盤は1ユーロ=97円50銭〜60銭近辺だった。
ユーロ・円相場の1週間の動きを振り返ってみよう。前週末6日の海外市場では1ユーロ=97円90銭近辺に円が上昇した。ECB(欧州中央銀行)がイタリアとスペインの国債を購入との報道を受けて、序盤にはユーロ買い戻しがやや優勢となる場面もあった。しかし米12月雇用統計が大幅改善したことや、格付け会社フィッチ・レーティングスがハンガリーの国債格付けを投機的水準に引き下げたことなどを受けて、ドル買いの動きが強まり一時1ユーロ=1.269ドル台にユーロが下落した。この流れを受けてユーロ・円相場でもユーロ売り圧力が強まった。
こうした流れを受けて週初9日の海外市場では、アジアの時間帯に1ユーロ=97円20銭台に円が上昇する場面があった。その後は独仏首脳会談を控えてややユーロが買い戻され、欧州の時間帯に1ユーロ=98円20銭台に円が下落した。終盤は1ユーロ=97円80銭〜90銭近辺だった。独仏首脳会談では、英国を除くEU26カ国で合意した財政規律を強める新条約について、3月1日のEU首脳会議までに署名できるとの見通しが明らかになったが、特に材料視されなかった。
10日の東京市場では、概ね1ユーロ=98円00銭台〜20銭台で推移した。小動きだったが、終盤はユーロ買い戻しがやや優勢となり1ユーロ=98円20銭近辺だった。10日の海外市場では、概ね1ユーロ=97円90銭台〜98円40銭台で推移した。序盤はユーロ売りが優勢だったが、欧州株式市場が大幅上昇したことや、格付け会社フィッチ・レーティングスが「今年中のフランスの格下げ見通しはない」との見解を示したことで、ユーロ買い戻しがやや優勢になった。その後はモミ合う展開となり終盤は1ユーロ=98円20銭近辺だった。
11日の東京市場では、概ね1ユーロ=97円90銭台〜98円10銭台で推移した。イタリア民主社会党がユーロ圏およびEUからの離脱を要請したとの一部報道を受けてユーロ売りが優勢となる場面もあったが、12日にイタリアとスペインの国債入札、ECB理事会を控えていたため小動きだった。終盤は1ユーロ=98円10銭近辺だった。11日の海外市場では、概ね1ユーロ=97円40銭台〜98円30銭台で推移した。ユーロ・ドル相場は1ユーロ=1.2662ドルまでユーロが下落する場面があった。序盤はユーロ買い戻しが優勢だったが、フランスが格付け会社S&Pから格下げの通告を受けたとの噂に加えて、格付け会社フィッチ・レーティングスが「欧州債務危機やユーロ安対策としてECBが重債務国の国債購入拡大など一段の追加措置を講じなければユーロが崩壊しかねない」との見解を示したため、ユーロ売り圧力が強まった。その後は、ドイツがESM(欧州安定メカニズム)への拠出増額を示唆したことなどで、ややユーロが買い戻された。終盤は1ユーロ=97円60銭〜70銭近辺だった。
12日の東京市場では、概ね1ユーロ=97円60銭台〜80銭台で推移した。ECB理事会、イタリアとスペインの国債入札を控えて様子見ムードが強く、小動きだった。終盤は1ユーロ=97円70銭台だった。12日の海外市場では、概ね1ユーロ=97円80銭台〜98円50銭台で推移した。イタリアとスペインの国債入札で、いずれも平均落札利回りが前回を大幅に下回るなど順調な結果となった。流通利回りも低下したため安心感につながり、ユーロ買い戻しが優勢になった。ECB理事会は政策金利を据え置き、想定どおりとして市場の反応は限定的だった。終盤は1ユーロ=98円40銭近辺だった。
13日の東京市場では、概ね1ユーロ=98円30銭台〜70銭台で推移した。イタリア長期債入札に対する警戒感で序盤は小動きだったが、ギリシャ債務再編問題で数日内に合意する可能性との一部報道を受けて、ユーロ買い戻しがやや優勢になった。終盤は1ユーロ=98円60銭台だった。しかし13日の海外市場では、ユーロ売り圧力が強まり1ユーロ=97円20銭近辺に円が上昇した。ユーロ・ドル相場では1ユーロ=1.262ドル台にユーロが下落する場面があった。イタリアの長期債入札で発行額が目標額上限に達して落札利回りも低下したが、応札倍率が12日に比べて見劣る結果だったと受け止められた。さらに、格付け会社S&Pが13日中にドイツを除く複数のユーロ圏諸国の国債格付け引き下げを発表するとの観測報道や、国際金融協会(IIF)がギリシャとの債務再編協議を休止するとの発表に対して警戒感を強めた。終盤は1ユーロ=97円50銭〜60銭近辺だった。
ユーロ圏債務危機問題に関しては、引き続き主要各国の国債格付け引き下げ懸念、国債入札、国債利回りの動向に関心が集中した。12日にはイタリアとスペインの国債入札が順調な結果だったとして安心感につながったが、13日にはイタリアの長期債入札で応札倍率が12日に比べて見劣る結果だったと受け止められた。さらに、格付け会社S&Pが13日中にドイツを除く複数のユーロ圏諸国の国債格付け引き下げを発表するとの観測報道などで警戒感を強めた。
来週も、17日にスペイン、18日にドイツとポルトガル、19日にスペインとフランスなどで国債入札が予定されている。さらに14日〜16日のEU・IMF調査団のギリシャ訪問、16日の仏スペイン首脳会談、20日の独仏伊首脳会談に加えて、20日にはEBA(欧州銀行監督機構)に対する欧州各銀行の資本増強計画提出期限を迎えるだけに、警戒感を強めてユーロ売り圧力が継続する可能性は高いだろう。
ただし、週末13日の取引終了後に格付け会社S&Pが、フランスなど9カ国の国債格付け引き下げを正式発表したことで、一旦はアク抜け感につながる可能性もあるだろう。
その後の重要イベントとしては、23日のEU財務相会合、24日のEU財務相理事会、米大統領一般教書演説、23日〜24日の日銀金融政策決定会合、24日〜25日の米FOMC(連邦公開市場委員会)などとなりそうだ。
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2012年01月14日