
前週末13日の米国株式市場が下落したことや、週初16日の米国株式市場が3連休(14日〜16日)で休場のため、日本株式市場は様子見ムードも強く、売り優勢でスタートする可能性が高いだろう。その後はユーロ圏債務危機問題の動向、米国株式市場の動向、そして外国為替市場の動向次第となり、海外要因に神経質な地合いに大きな変化はないだろう。軟調な動きが続いている中国・上海株式市場の動向にも注意が必要だろう。
ただし、昨年12月から市場が身構えていたユーロ圏主要国、特にフランスの国債格付け引き下げについて、前週末13日の取引終了後に格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が、フランスなど9カ国の国債格付け引き下げを正式発表したことで、一旦はアク抜け感につながる可能性もあるだろう。
S&Pの格付け引き下げ発表の観測報道を受けて、13日の欧州・米国株式市場は下落した。しかし徐々に下げ渋る展開となり、取引終了にかけては揃って下落幅を縮小している。国債格付け引き下げはある程度織り込み済みだったと考えられ、底堅さも意識される展開だったと言えるだろう。
また来週は、米主要企業の10月〜12月期決算発表が本格化する。米景気の先行きに楽観的な見方も広がり始めているだけに、12年の企業業績に関心がシフトする可能性もあるだろう。米国株式市場が堅調な展開になれば、日本株式市場でも安心感につながる可能性があるだろう。
前週(1月9日〜13日)の日本株式市場(9日は休場)では、日経平均株価は2週ぶりに上昇に転じた。一方のTOPIXは3週連続の上昇となった。薄商いで海外要因に神経質な地合いが続いたが、12日のイタリアとスペインの国債入札が順調だったため、週末13日には過度な警戒感が和らいだ。全体としては下値固めの展開だったとも言えるだけに、S&Pによるユーロ圏9カ国の国債格付け引き下げ発表がアク抜け感につながれば、買い戻し優勢の展開が期待されるだろう。
ユーロ圏債務危機問題に関する前週の動きを整理すると、9日の独仏首脳会談で、英国を除くEU26カ国で合意した財政規律を強める新条約について、3月1日のEU首脳会議までに署名できるとの見通しが明らかになったが、特には材料視されなかった。
10日には、格付け会社フィッチ・レーティングスが「今年中のフランスの格下げ見通しはない」との見解を示したことが安心感につながった。
11日には、イタリア民主社会党がユーロ圏およびEUからの離脱を要請したとの一部報道、フランスが格付け会社S&Pから格下げの通告を受けたとの噂に加えて、ドイツが10〜12月期実質GDPについて前期比0.25%のマイナス成長見通しを示したこと、ギリシャの債務再編協議が難航していること、格付け会社フィッチ・レーティングスが「欧州債務危機やユーロ安対策としてECB(欧州中央銀行)が重債務国の国債購入拡大など一段の追加措置を講じなければユーロが崩壊しかねない」との見解を示したことなどが弱材料視された。一方で、ドイツがESM(欧州安定メカニズム)への拠出増額を示唆したことは好感された。
12日には、イタリアとスペインの国債入札で、いずれも平均落札利回りが前回を大幅に下回るなど順調な結果となった。流通利回りも低下して安心感につながった。ECB理事会は政策金利を据え置き、想定どおりとして市場の反応は限定的だった。
13日には、イタリアの長期債入札で発行額が目標額上限に達して落札利回りも低下したが、応札倍率が12日に比べて見劣る結果だったと受け止められた。さらに、格付け会社S&Pが13日中にドイツを除く複数のユーロ圏諸国の国債格付け引き下げを発表するとの観測報道や、国際金融協会(IIF)がギリシャとの債務再編協議を休止するとの発表に対して警戒感を強めた。
こうした流れを受けて外国為替市場ではユーロ売り圧力が継続した。ユーロ・円相場は、週初9日の海外市場と週末13日の海外市場で、一時1ユーロ=97円20銭近辺に円が上昇した。ドル・円相場は概ね1ドル=76円台後半で推移した。米12月雇用統計を通過して手掛かり材料難となり、ユーロの動向に関心が集まったが結果的には狭いレンジで小動きに終始した。週末13日の海外市場で終盤は1ユーロ=97円50銭〜60銭近辺、1ドル=76円90銭〜77円00銭近辺だった。
来週も、17日にスペイン、18日にドイツとポルトガル、19日にスペインとフランスなどで国債入札が予定されている。さらに14日〜16日のEU・IMF調査団のギリシャ訪問、16日の仏スペイン首脳会談、20日の独仏伊首脳会談に加えて、20日にはEBA(欧州銀行監督機構)に対する欧州各銀行の資本増強計画提出期限を迎えるだけに、警戒感を強めてユーロ売り圧力が継続する可能性は高いだろう。
米国の主要経済指標に関しては、前週は強弱感が交錯する週となった。9日には、米11月消費者信用残高が前月比204億ドル増加となり、10月改定値の同60億ドル増加に比べて市場予想以上に増加した。取引終了後に10〜12月期決算を発表した米アルコアは、12年の世界アルミ需要が7%成長するとの強気の見方を示した。11日には、米地区連銀経済報告(ベージュブック)で、経済活動が緩やかに拡大しているとの見解が示された。12日には、米12月小売売上高が前月比0.1%増加となり、11月改定値の同0.4%増加に比べて伸び率が鈍化して市場予想を下回った。米新規失業保険申請件数は39.9万件となり、前週改定値の37.5万件から2.4万件増加して市場予想以上に悪化した。13日には、銀行大手JPモルガン・チェースの10〜12月期純利益が減益となった。米11月貿易収支では赤字額が478億ドルとなり、10月改定値433億ドルの赤字に比べて市場予想以上に赤字幅が拡大した。米1月ミシガン大学消費者信頼感指数は74.0となり、12月の69.9に比べて大幅上昇して市場予想も上回った。
そして前週末13日の米国株式市場は下落した。ダウ工業株30種平均株価は前日比48ドル96セント(0.39%)安の1万2422ドル06セントと反落した。3連休(14日〜16日)を控えて利益確定売りが出やすい状況だったうえに、格付け会社S&Pによるユーロ圏各国の国債格付け引き下げ発表観測報道などで、序盤には前日比159ドル23セント安まで下落幅を拡大する場面もあった。しかし、その後は下げ渋る展開となり、取引終了にかけて下落幅を縮小した。S&P500株価指数は前日比0.49%安と5営業日ぶりに反落し、ナスダック総合株価指数は前日比0.51%安と7営業日ぶりに反落した。S&Pによる国債格付け引き下げはある程度織り込み済みだったと考えられ、底堅さも意識される展開だったと言えるだろう。ダウ工業株30種平均株価は週間ベースで62ドル14セント(0.51%)の上昇となった。
なお12日に発表された中国12月CPI(消費者物価指数)は、前年同月比4.1%上昇となり市場予想を若干上回ったが、11月の同4.2%上昇に比べると伸び率が鈍化したため、金融緩和期待が高まった。
テクニカル面で見ると、日経平均株価(13日時点の8500円02銭)の移動平均線に対する乖離率は、25日移動平均線(同8475円34銭)に対して0.29%のプラス乖離に転じたため、当面の下値支持線として意識されるかが注目点となる。また三角保ち合いの収斂が接近しているため、上下どちらに放れるかも注目点となる。
■注目スケジュール
来週の注目スケジュールとしては、国内では16日の11月機械受注、12月消費動向調査、12月企業物価指数、17日の11月第3次産業活動指数、18日の11月鉱工業生産確報、19日の12月首都圏マンション発売戸数、20日の11月景気動向指数改定値などがあるだろう。その後の注目イベントとしては、23日〜24日の日銀金融政策決定会合などが予定されている。
海外では14日のEU・IMF調査団のギリシャ訪問(〜16日)、16日の仏スペイン首脳会談、17日の中国12月鉱工業生産・小売売上高・固定資産投資、中国10〜12月期GDP、独1月景気期待指数、英12月消費者物価指数、ユーロ圏12月消費者物価指数改定値、スペイン短期債入札、米1月ニューヨーク州製造業業況指数、カナダ中銀金利発表、ブラジル中銀理事会(〜18日)、18日の中国12月主要70都市新築住宅価格、英12月失業率、独2年債入札、ポルトガル短期債入札、米11月対米証券投資、米12月卸売物価指数、米12月鉱工業生産、米1月住宅建設業者指数、米住宅ローン・借り換え申請指数、米週間チェーンストア売上高、米週間レッドブック大規模小売店売上高、ブラジル中銀理事会(最終日)、19日の豪12月雇用統計、フィリピン中銀理事会、ユーロ圏11月経常収支、ECB月報、スペイン国債入札、フランス国債入札、米12月消費者物価指数、米12月住宅着工件数、米1月フィラデルフィア地区連銀業況指数、米新規失業保険申請件数、G20財務相代理会合(〜20日)、20日の独仏伊首脳会談、EBA(欧州銀行監督機構)に対する欧州各銀行の資本増強計画提出期限、米12月中古住宅販売などがあるだろう。なお米国は16日がキング牧師誕生日で休場となる。
その後の注目イベントとしては、23日のEU財務相会合、24日のEU財務相理事会、米大統領一般教書演説、24日〜25日の米FOMC(連邦公開市場委員会)、25日のECB理事会(金利発表なし)、25日〜29日の世界経済フォーラム(ダボス)、30日のEU首脳会議などが予定されている。
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