■建築後50年以上の道路橋にも更新需要、鋼材商社に注目
内閣府の有識者検討会は29日、駿河湾から日向灘の「南海トラフ」を震源域とする最大級の地震(マグニチュード9.1級)が起きた場合の被害想定を公表した。今回の想定では死者数が最大32.3万人、建物全壊が238.6万棟、浸水面積が1015平方キロメートルとしている。
死者数32.3万人のうち71%の23万人が津波、25%の8.2万人が建物倒壊によるとしているが、津波からの迅速な避難や建物の耐震化などで、最悪のケースの死者数を6.1万人(津波が4.6万人、建物倒壊が1.5万人)まで減らすことができるとして、減災対策を進めるよう呼びかけている。
防災・減災対策として巨大で頑強な防潮堤、避難用のビルやタワーなどが数多く必要となりそうだが、千年に一度の巨大地震や20メートル以上の巨大津波に備えて工期が長い巨大な防潮堤を造るよりも、避難タワーの新増設や既存建物の耐震化を優先的に進める方針の自治体もあり、高知県は3月末で10基だった津波避難用タワーを今年度中に33基増設する模様だ。こうした動きが他の自治体にも広がる可能性は高く、鉄骨・鉄塔・耐震化工事などの需要増に繋がりそうだ。
また日本民営鉄道協会は24日、大手民鉄16社2012年度の鉄道事業設備投資計画を発表している。これによると16社合計の設備投資額は2011年度比16.5%増の3345億円で、このうち耐震補強や線路立体化などの踏切および運転保安工事が同9.0%増の1794億円、エスカレータ・エレベータ設置などのサービス改善工事が同50.2%増の805億円、輸送力増強工事が同13.3%増の689億円などとなっている。ここでも高架・耐震化工事などの需要増が期待される。
2011年度版の国土交通白書によると、建築後50年以上を経過する設備の割合は、たとえば道路橋(橋長15m以上の約15.5万橋)の場合には、2010年度の約8%が2020年度に約26%、2030年度には約53%に急増する見込みとなっている。巨大地震に備えた防災・減災対策では、これらの老朽化した道路橋の更新工事も重要なポイントになるだろう。
橋梁(鋼製)・鉄骨・鉄塔メーカーの宮地エンジニアリンググループ<3431>、横河ブリッジホールディングス<5911>、日本橋梁<5912>、駒井ハルテック<5915>、瀧上工業<5918>、高田機工<5923>、川田テクノロジーズ<3443>などに加えて、鋼材市況改善に繋がる可能性もあり、鉄鋼商社の小野建<7414>、神鋼商事<8075>、清和中央ホールディングス<7531>などにも注目しておきたい。
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2012年08月31日