アグロ カネショウ<4955>(東2)は、今年2月19日に昨年来高値518円まで急伸し、500円台を出没しているが、安倍晋三首相が、成長戦略の一角、TPP(環太平洋経済連携協定)交渉参加の対応策として打ち出している「攻めの農林水産業」策の農業輸出額1兆円への倍増計画の恩恵をフル享受する業容から、なお上値評価が期待できる。低PER・PBR修正・好配当利回り買いからも、2010年12月末割り当てで実施した株式分割の権利落ち埋めを目指し、中期的に4ケタ示現の展開も想定範囲内となる。
同社は、農薬株の一角に属するが、そのビジネスモデルは、業界でも異色である。農薬業界では、主力製品はコメ関連が最大となるが、同社は、敢えてこの分野には参入せずに、果樹専門の害虫防除剤、病害防除剤、土壌処理剤などの農薬に特化、開発・製造・農家密着型の販売を進め、この独自分野で市場規模は小さいながらも業界トップを確保する「ニッチ・トップ」戦略を推進している。2月18日に開催された安倍内閣の第2回産業競争力会議では、農業輸出額を現在の4500億円から1兆円に倍増すると示されたが、同社のビジネスモデルは、この積極策をフル享受すると見込まれる。
すでにアジアの富裕層向けなどに「メイド・イン・ジャパン」の高級果樹が人気となり輸出額が増加しているほか、産業競争力会議では、農業の多様展開、6次産業化の具体的な事例として、広島県三次市で実績を上げている果樹のテーマパーク、観光農園が地域おこしとして機能していることなどが紹介されているからだ。果樹の作付面積の拡大、農薬需要の増加が予想されることになる。
業績は、同社福島工場が東京電力<9501>(東1)の福島原子力発電所の事故の被災地内にあり生産停止している影響を受けている。前期業績は、この生産停止などを外部への生産委託などでカバーし増収・経常増益転換、純利益は6億5500万円(前々期は2億7600万円の赤字)と黒字転換したが、今期は、代替として茨城県に建設した結城工場の減価償却費負担などから純利益は5億3000万円(前期比19%減)と減益転換を予想している。ただ東電からはすでに損害賠償金を受け取っているほか、なおこの損害賠償交渉を継続、業績上ぶれ材料となる。配当は、20円を安定継続する。
株価は、株式分割(1対2)権利落ち前の4ケタ台の地相場からスンナリ権利を落とし、東日本大震災・原発事故発生で312円安値まで突っ込んだが、2011年2月につけた分割落ち後高値566円目前まで戻してきた。PER11倍台、PBR0.5倍、配当利回り3.9%の割安修正からもかつての地相場回復が期待される。(本紙編集長・浅妻昭治)
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2013年03月01日