■アベノミクスの矢は折れたのか?
安倍晋三総理が成長戦略第3弾なるものを講演してから、為替も株式も大荒れである。しかも、底が見えない状態である。円は高くなり、株は急落し、最悪の事態だ。
成長戦略第3弾では、安倍総理に覚悟のようなものが見られなかった。
規制緩和でも、一般医薬品のネット販売が目玉というのでは、期待が大きかっただけに失望を巨大化させてしまった。
アベノミクスの矢は折れてしまったのか?
『折れた矢』を放っても、参院選挙に勝ちたい――。
参院選挙までは既得権益を持つ業界団体と手を繋ぎ、規制緩和には手を染めない。そうした安倍総理が抱える背景・ジレンマが報道されている。
しかし、それではマーケットを始め、広範な一般国民がアベノミクスを見透かしてしまうことになる。
アベノミクスへの期待が剥げ、ひるがえって安倍総理の支持率が急速に低下する。そうなれば参院選挙では、野党の混乱があっても、はかばかしい結果は得られないだろう。
■「強い経済を取り戻す」という原点への覚悟は・・・
一般医薬品のネット販売で利害関係のある企業経営者から、一般医薬品のネット販売すら規制緩和をできないのか、という強硬な意見があった。――そうした経過も言われている。
しかし、だからと言って、一般医薬品のネット販売を促進する、では話がわかりやすくて呆れてしまうことになる。
それでは、小さな「政商」ではないか、――と規制緩和が矮小化される。
そんなことならアベノミクスは大義をなくしてしまいかねない。
安倍総理は、「強い経済を取り戻す」という大義をかざし、その手段として規制緩和を打ち出したのではないか。それはアベノミクスの原点のなかの原点のはずである。
「成長戦略、なかでも規制改革はアベノミクスの一丁目一番地」――。
一丁目一番地は華やかに繁栄してほしい。だが、その逆に荒廃が進行するようでは以前の"失われた20年"に逆戻りしてしまう可能性がある。
何のためのアベノミクスか、ということになる。政権&政治の安定性はもろくも崩れかねない。
ここは既得権益を持つ利害団体などをあえて敵に廻しても「強い経済取り戻す」という原点への覚悟を見せてほしいものである。
アベノミクスの真価はいかなるものか――。その真贋定かならずでは、マーケットのみならず人心が迷い離れることになってしまうことを恐れるべきである。
(経済ジャーナリスト&評論家・小倉正男=東洋経済新報社・金融証券部長、企業情報部長などを経て現職。『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』(PHP研究所刊)など著書多数)
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2013年06月08日