■「流通業界の盟主」の有為転変
「イオンがダイエーを子会社化」――。
いまさらながらだが、有為転変激しいものがある。
1960〜70年代は、ダイエーが「流通業界の盟主」だった。インフレの時代にあって、なにしろ安い価格でモノを供給した。
お客のニーズにそこにあったし、お客に支持されていた。
『流通革命の旗手』といえばダイエー、そして創業者・中内功にほかならなかった。
80年代にはプランタン銀座で銀座進出を図ったが、セゾン(西武)有楽町店ともども成功したとは言い難い。
プランタン銀座では、中内は、開店間際まで現場指揮をしていた。気迫といえば気迫、はたから眺めていてそこまでやるかの思いを持ったものである。
■「ワンマン」の悲しさ
「ワンマン」とは悲しいものである。
野球でいうと、いつまでもエースで四番を辞められない。
80年代になると、ダイエーの経営は方向感を失い、凋落の兆しが隠せなくなる――。台頭するイトーヨーカ堂グループに押しまくられることになる。
側近の経営最高幹部に取材すると――。
例えば、「ダイエーの経営は、お客にとって理解し難いものではないか」と問うと、「私が貴方なら同じことを言うでしょう」というような答えが返ってきた。
もちろん、『ここだけの話にしてくれ』、という条件付の話である。
会社の経営がおかしくなっている。それでも、「ワンマン」には何も言えない。情報が上がらない。
エースで四番でないならまだしも、エースで四番はそのまま不変――。
「ワンマン」だからどうあれ何も変わらない。会社はますますおかしくなっていった。
■また時は失われるか
新陳代謝は世の習い――。いまの流通業界の覇者であるイオングループ、あるいはイトーヨーカ堂グループもこの先どうなるかわからない。
経済のダイナミズムとはそうしたものだし、有為転変が続くことになる。
アベノミクスは、夏休みということなのか、政策や動きが出てこない。
法人税減税などサプライサイドを強化するベクトルが不可欠と思われるが、思い切りのよい発言は鳴りを潜めている。
アベノミクスもこのまま賞味期限終了では、あまりにも面白くない。
有為転変、新陳代謝――、そうしたものを刺激する政策が打たれなければ、また時は失われ続けることになるのではないか。
(経済ジャーナリスト&評論家・小倉正男=東洋経済新報社・金融証券部長、企業情報部長などを経て現職。『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』(PHP研究所刊)など著書多数)
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2013年08月23日