■野球は凄いコンテンツ
「ワールドシリーズ」「日本シリーズ」が終わり、侍ジャパンの強化試合も終わった。『野球ロス症候群』に陥っている方も少なくないのではないか。
野球とは凄いスポーツである。サッカーなど他のスポーツの台頭があるにしても、地上波、BSのコンテンツとしては外せないものがある。
「ワールドシリーズ」「日本シリーズ」はいうに及ばず、侍ジャパンの台湾との強化試合までライブ放送された。
■「田澤ルール」をご存知か
「ワールドシリーズ」では、ボストンレッドソックスの上原浩治、田澤純一が大活躍――。
田澤は、日本のプロ野球を経ないで、レッドソックスと契約してメジャー入りした。
ところで、日本のプロ野球には、その田澤の名を冠にした「田澤ルール」というのがあるのはご存知か。
「田澤ルール」とは、日本のプロ野球機構が田澤のメジャー入りを契機につくった制度というか、業界の”取り決め”である。
――日本のプロ野球を経ないで直接海外の球団と契約した選手のケース、海外球団を退団した後2年間(高卒のケースは3年間)日本のプロ野球球団は契約しないという業界内の取り決めである。
これには職業選択の自由などに照らして公正なことなのか、一種のカルテル行為ではないか、という見方がある。
■エクスパンションに拒否姿勢
日本のプロ野球は、中世の「座」のようなもので、新規参入にも断固NOという姿勢である。
新潟、静岡など地方各都市は、プロ野球球団を誘致する運動を行っているが、実現するメドはほぼゼロだ。
プロ野球球団は12球団制を守り、球団数を増加させるエクスパンションには徹底して消極的である。
エクスパンションを行えば、野球ビジネスで地方経済は活性化する。
しかし、儲かっている一部既存球団は現状に満足している。現状の変更はリスクがあるという判断で、「プロ野球ビジネス」全体の成長にはまったく関心がない。エクスパンションは議題にすらならない。
■アベノミクスの失速
日本のGDP(7〜9月)が失速している。これはアベノミクスの改革、あるいは改革意欲が失速しているのと無関係とはいえないのではないか。
日本のあらゆる業界は、儲かりだすと業界団体をつくり、そこが官僚の天下り先になっている。
業界団体は、既得権を守ることで現状の利益を守ろうとする。官僚も有望な天下り先を失いたくないから既得権を守るビヘイビアを取る。
ちなみに「プロ野球ビジネス」でも、昔からコミッショナーなどに官僚を受け入れている。あらゆる業界で、見事なまでにこうした構図がつくられている。
アベノミクスが動き始めてほぼ1年――。
このまま改革が失速するとなると、徐々にではあるが、ほころびは隠せないものになりそうな気がする。
(経済ジャーナリスト&評論家・小倉正男=東洋経済新報社・金融証券部長、企業情報部長などを経て現職。『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』(PHP研究所刊)など著書多数)
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2013年11月16日