バイオベンチャーのDNAチップ研究所<2397>(東マ)の株価は、バイオ人気が一巡した13年7月以降はやや軟調展開だが、中期成長力を見直す動きが徐々に強まりそうだ。
99年4月、DNAチップ(DNAマイクロアレイ)関連の研究と、その成果を基にした製品やサービスの提供を目的として設立し、04年3月東証マザーズ市場に新規上場した。DNAチップ周辺技術だけでなく、将来の個人化医療を見据えた遺伝子発現プロファイル収集・統計受託解析など、DNA技術の事業化をビジネスの中心に据えた研究開発企業である。
時々刻々と変化する体調変化や加齢とともに起こる免疫変化などを、低侵襲針採血で遺伝子検査するRNAチェック(血液細胞遺伝子発現マーカー検査)に強みを持ち、個人化医療や未病社会の実現に貢献する企業を目指している。また中期成長に向けて、現在の主力である研究受託事業のメニューを充実させるとともに、独自開発の診断パッケージソフトウェア、診断支援サービス、健康モニタリングサービスなどの診断関連事業を収益柱に育成する方針だ。
研究受託事業では、大学・大学病院・研究機関、製薬・食品メーカーなどが主要顧客であり、DNAチップ関連の実験・解析・統計処理・カスタムDNAチップ設計などの受託解析サービスを主力として、次世代シークエンス受託解析サービスや、RNAチェックによる遺伝子解析検査サービスへの展開を強化している。
商品販売事業では、汎用チップ・試薬や開発機器などの販売に加えて、中期成長に向けた戦略商品として、臨床研究用データベース「iCIS」構築による診断支援サービス、高校・大学生が分子生物学を学習できる教育用DNAチップ教材「ハイブリ先生」、関節リウマチのスムーズな診察をサポートするiPad対応の問診パッケージソフト「iRIS」、関節リウマチ生物学的製剤インフリキシマブの投与14週後の治療効果を予測する診断支援サービス「リウマチェック」、乳癌の再発リスクを予測する新しい乳癌予後予測キット「MammaPrint」などを製品化し、大学病院などで導入されている。
当面は、こうした戦略商品の大病院などでの人間ドックへの採用増加を目指し、中長期的には一般の健康診断への採用も目指す方針だ。さらに大腸がん・悪性神経膠腫の予後予測、免疫年齢・肥満・うつ病・疲労・アルツハイマーなどの診断関連マーカーの開発・事業化、医薬品開発と一体化した診断マーカーの開発(コンパニオン診断薬開発支援)、再生医療支援事業(培養細胞の安全性評価系)なども強化して業容を拡大する。
1月23日発表の今期(14年3月期)第3四半期累計(4月〜12月)の業績(非連結)は、売上高が前年同期比3.1%減の1億52百万円、営業利益が1億08百万円の赤字(前年同期は1億69百万円の赤字)、経常利益が1億08百万円の赤字(同1億69百万円の赤字)、純利益が1億09百万円の赤字(同1億58百万円の赤字)だった。売上高は伸び悩んだが、受注は大型案件を中心にほぼ想定水準の模様であり、粗利益率改善などで営業赤字幅は縮小した。
通期の見通しは前回予想(4月25日公表)を据え置いて、売上高が前期比15.6%増の4億30百万円、営業利益が1百万円(前期は89百万円の赤字)、経常利益が1百万円(同89百万円の赤字)、純利益が1百万円(同80百万円の赤字)で黒字化見込みとしている。今期の収益はまだ低水準だが、来期(15年3月期)は大型案件の計上、利益率の高い製品やサービスの構成比上昇、さらに診断関連事業の収益化が期待され、中期成長力に対する期待感も一段と高まるだろう。
株価の動き(13年10月1日付けで株式100分割)を見ると、バイオ人気が一巡した13年7月以降は概ね1000円〜1500円近辺のレンジでやや軟調な展開が続いている。1月末には理化学研究所の「STAP細胞」作製成功のニュースで物色されて1月30日に1326円、1月31日に1405円まで急伸する場面があったが、人気が続かず全般地合い悪化も影響して反落し、2月5日には836円まで下押す場面があった。
ただしその後は1000円台を回復する場面もあり、下げ渋りの動きを強めている。2月21日の終値は938円だった。昨年6月の安値885円、12月の安値882円を一時的に割り込んだが、週足チャートで見ると2月安値でも下ヒゲを付けた。800円〜900円近辺が下値支持線となって反発局面だろう。(ジャーナリスト&アナリスト)
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2014年02月24日
【アナリスト水田雅展の銘柄分析】DNAチップは人気一巡し軟調展開だが、中期成長力を見直し
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 07:45
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