■【株式・為替相場展望】(10〜14日)
来週(3月10日〜14日)の株式・為替相場は、前週末7日の米2月雇用統計の結果を受けて円安・株高でのスタートとなりそうだが、週末14日の株式市場での先物・オプションのメジャーSQ(特別清算指数)算出に向けて思惑が交錯し、買い一巡後は先物主導で不安定な展開となりそうだ。
10日〜11日の日銀金融政策決定会合が注目材料となるが、金融政策変更の可能性は小さい。ウクライナ情勢に対する過度な警戒感は一旦後退したが、16日のクリミア自治共和国の住民投票に向けた駆け引きなど予断を許さない状況が続く。次週18日〜19日に米FOMC(連邦公開市場委員会)を控えていることも波乱要因となりかねない。そして4月消費増税のマイナス影響に対する警戒感もくすぶる。
前週はウクライナ情勢緊迫化を受けて週初にリスクオフの動きを強め、外国為替市場ではドル安・円高方向に傾き株式市場も軟調なスタートとなった。しかしロシアの軍事介入が回避されたことで過度な警戒感が一旦後退した。その後は米国株が堅調だったことに加えて、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用に関する報道も好感して、リスクオフムードが和らぎ円安・株高方向に切り返した。
追加利下げ観測もあった6日のECB(欧州中央銀行)理事会では金融政策の現状維持を決定し、理事会後の記者会見でドラギ総裁が景気認識を上方修正したことを受けて外国為替市場ではユーロ買いの動きが強まった。そしてドル・円相場が1ドル=103円近辺までドル高・円安方向に傾いたことを好感して、株式市場は週間ベースで日経平均株価が433円00銭(2.92%)上昇、TOPIXが25.31ポイント(2.09%)上昇した。
さらに週末7日の米2月雇用統計では失業率が6.7%で前月比0.1ポイント悪化したが、非農業部門雇用者数が前月比17.5万人増加となり市場予想の同14.5万人〜15.0万人増加を上回った。1月改定値の同12.9万人増加も大幅に上回った。寒波の影響が懸念されたにもかかわらず雇用者増加数が強い結果だったことで米景気減速懸念が後退し、次週18日〜19日の米FOMCでテーパリング(量的緩和縮小)継続との見方が強まり、米10年債利回りが上昇して外国為替市場では一時1ドル=103円70銭台までドル高・円安方向に傾いた。
こうした状況を受けて週初10日の日本市場は円安・株高のスタートとなりそうだ。ただし、7日の米国株式市場ではS&P500株価指数が終値で史上最高値を更新したとはいえ、ダウ工業株30種平均株価は上昇幅を縮小して小幅高にとどまり、ナスダック総合株価指数はマイナス圏で取引終了するなど上値の重さが意識される形となった。為替も1ドル=103円30銭近辺で終了し、米2月雇用統計発表直後に比べてややドル安・円高方向に押し戻された。CME日経225先物(円建て)は大証比25円高の1万5315円にとどまっている。こうした点を考慮すれば週初10日は買い一巡後に様子見ムードを強める可能性があるだろう。
来週は10日〜11日の日銀金融政策決定会合が注目点となるが、日銀の早期追加金融緩和に対する期待感が一旦後退し、今回の会合で金融政策に大きな変更はないとの見方が有力のため、結果が市場予想どおりであれば反応は限定的だろう。ただし、追加金融緩和実施時期は4月以降というのが市場コンセンサスとなっただけに、消費増税のマイナス影響を緩和するための予防的な何らかの策が打たれればポジティブ・サプライズとなるだろう。
その後はウクライナ情勢、米国の主要経済指標、そして米10年債利回りと米国株の動向を睨みながらの展開が基本となるが、株式市場では週末14日に先物・オプションのメジャーSQが控えているだけに思惑が交錯し、先物の仕掛け的な動きで不安定な展開となる可能性がありそうだ。さらに次週18日〜19日の米FOMCを控えて、米FRB(連邦準備制度理事会)のゼロ金利解除時期前倒し観測が先走り、米10年債利回りが上昇ペースを速めれば波乱要因となりかねない。
ウクライナ情勢に関しては、クリミア自治共和国で16日に計画されているロシアへの編入の是非を問う住民投票に向けて、米ロの駆け引きなど予断を許さない状況が続きそうだ。また中国に関しては、景気減速懸念や金融不安問題に引き続き注意が必要となり、来週は全国人民代表大会(全人代)閉幕後に中国人民元の許容変動幅を拡大するとの観測を強めているだけに、その場合の外国為替市場の反応が注目される。
日経平均株価は心理的な節目となる1万5000円台を回復し、日足チャートで見ても下値を切り上げる上昇チャネルの形となったが、売買代金はやや低水準である。一本調子に本格的な円安・株高トレンドとなるかは微妙だ。需給面では、裁定買い残の減少や高水準の空売り比率に加えて、外国人投資家の売り越し額がピークアウトしたとの見方もあり、需給改善が相場押し上げ要因として期待されている。ただし一方では、高水準の信用買い残の戻り売りや、3月期末に向けて機関投資家の益出しの売りも警戒される。4月からの消費増税のマイナス影響を十分に織り込んだかどうかも疑問だ。
株式市場での物色動向としては、為替が1ドル=103円台後半〜104円台とドル高・円安方向に傾く展開であれば輸出関連セクター、週末14日のSQ算出に向けて先物主導で日経平均株価が続伸する展開であれば指数寄与度の高い銘柄や金融・不動産セクターが有望となりそうだが、一本調子の円安・株高トレンドとはなり難いことを想定すれば、消費増税の反動影響や追加金融緩和期待感後退の影響を受けにくいセクターとしてゲーム関連、再生エネルギー関連、ロボット関連、公共投資関連などが引き続き注目される。3月期末が接近して高配当利回りの中小型株の動きも注目される。また新興市場ではIPO人気が波及して全体のマインド改善に繋がるかどうかが焦点だ。
その他の注目スケジュールとしては8日の中国2月貿易統計、9日の中国2月PPI・CPI、10日の日本10〜12月期GDP2次速報、日本1月経常収支、日本2月景気ウォッチャー調査、ユーロ圏財務相会合、10日〜11日の日銀金融政策決定会合、11日の日本2月マネーストック、EU財務相理事会、米1月卸売在庫、ソフトバンクの孫正義社長がワシントンで講演、12日の日本1月第3次産業活動指数、日本1〜3月法人企業景気予測調査、日本2月企業物価、日本2月消費動向調査、日本の春闘集中回答日、ユーロ圏1月鉱工業生産、米2月財政収支、13日の日本1月機械受注、中国2月鉱工業生産・小売売上高・固定資産投資、インドネシア中銀金融政策決定会合、米2月輸出入物価、米2月小売売上高、米上院銀行委員会でフィッシャー米FRB副議長候補の指名公聴会、14日の米2月卸売物価指数、米3月ミシガン大学消費者信頼感指数速報値などがあるだろう。
その後は18日〜19日の米FOMC(19日に声明発表とイエレン議長の記者会見)、19日の日本2月貿易統計、20日の米FRBによる銀行の年次ストレステスト結果発表、24日の中国3月製造業PMI速報値(HSBC)、4月3日のECB理事会とドラギ総裁の記者会見、4日の米3月雇用統計などが予定されている。
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2014年03月09日
【アナリスト水田雅展の株式・為替相場展望】買い一巡後は先物主導で不安定、週末14日のメジャーSQに向けて思惑交錯
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