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2014年08月08日

【小倉正男の経済羅針盤】都市のソフト力全体の厚みとカジノ

■シンガポールのカジノ解禁

小倉正男の経済羅針盤 お堅いイメージのあるシンガポールだが、2011年にカジノを公認した。シンガポールのカジノは、中国などのお金持ち層旅行客の取り込みに成功したといわれている。

 シンガポールがカジノ解禁をしたのは、東京などのアジアの都市との「都市間競争」を意識したためとされている。「カジノも都市の魅力のひとつ」、と新しいメニューに加えたわけである。

 アベノミクスの「第3の矢」はどこにいったのか、ほとんど誰もいわなくなった。その代わりなのか、ここにきて日本もカジノ事業の解禁に踏み切りそうだ。

 「都市間競争」――、都市が旅行客に選ばれるのはよいことである。

 いま銀座の大通りを歩いていると、中国などのアジアの旅行客ばかりである。彼ら、彼女らにとって、東京や銀座ははたして魅力のある旅行地だろうか。

■問題は運営ソフトの欠如

 いま日本のカジノ事業にとって、いちばんの問題はカジノのソフト、オペレーション力などがないことだといわれている。

 ルーレットが回っていればカジノだというわけにはいかない。もっとも、このあたりは「ガイジン」すなわち外資企業が参入を虎視眈々と狙っているということだ。

 「ウインブルドン方式」、あるいは「大相撲方式」というべきか。

 すでに日本の株式市場はガイジンが牛耳っている。多くのゴルフ場も同様に外資企業が支配している。

 カジノは莫大な収益や税収を生むが、とりあえずは「場所貸し業」に甘んじることになりそうだ。運営ソフトはガイジン、そうでないとうまくはいかない・・・。

 もっとも、この場所貸しをめぐり湾岸エリアに利権を持つテレビ局、不動産企業などが色気を見せているなどという話もある。これでは「規制緩和」どころか、「利権拡大」競争になりかねない。

■都市の魅力となるソフトをどうつくるか

 江戸期の草津など有名温泉地の記録を見ると、農閑期にはお百姓が湯治客、保養客としてやってきて逗留している。江戸から浄瑠璃や落語などが来て芸を見せ、湯女もおり、博打場もある。盛況を極めたとされる。

 いわば、「総合リゾート」になっていた。だが、明治期以降の「産業革命」=近代化のなかで、そうしたソフト、オペレーションは失われていった。

 ところがここに来て、海外から年間1000万人以上の旅行客を受け入れようというのである――。

 工業化して、通貨を円安にして、クルマなどを輸出して稼ぐことばかりを考えていたのに日本も変わったものだ。

 ともあれ考えてみれば、宝塚歌劇=タカラジェンヌは宝塚温泉の保養客の観光施設としてつくられた。阪急電車の創業者の小林一三が考案した。もともと日本のソフトは相当に潜在力がある。

 そうしたソフト力の厚みが、都市の魅力、競争力にほかならない。「都市間競争」というならば、都市の魅力となるソフト力全体をどうつくっていくか、から入ってほしいものである。

 カジノなどもあくまでそのひとつのメニューということでしかない。

 都市のソフト力全体の厚みのなかのカジノということであり、そうでなければ「都市間競争」に勝てるわけもない。(経済ジャーナリスト・評論家、『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』(PHP研究所刊)など著書多数)

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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 12:53 | 小倉正男の経済コラム