■オバマの不人気で上院、下院とも共和党が圧勝の流れ
アメリカ中間選挙が11月4日と迫っている。上院(定数100議席)の3分の1、下院の全員(435議席)が選出される。あわせて州知事選挙も行われる。
はっきりしているのはオバマ大統領の不人気だ。与党の民主党候補は、オバマ大統領の選挙応援は固辞し、「オバマ隠し」を選挙戦術にしている。ひたすらオバマ大統領との相違点をアピールしている。
共和党も、極端なほどの「小さな政府」を追及して反発も強いティパーティ(茶会)系は後退――。主流派の、というかエスタブリッシュメント候補を揃えた模様だ。
上院、下院とも共和党がかなり優勢とみられている。上院は民主党がなんとか過半数を維持するといわれてきたが、どうやらここも民主党の劣勢が免れない。
■オバマ大統領は中間選挙以前に「レイムダック」
オバマ大統領は、イラク、シリア、ウクライナといった外交で何ひとつ成果を上げていない。
戦略は採れず、戦術も後手に廻り中余半端――。「何もできない大統領」という評価がすっかり定着している。
「レイムダック」とは、中間選挙の後にささやかれるのが通常だが、今回は中間選挙の前に堂々と呟かれている。レイムダックは、「役立たず」「何もできない」という意味にほかならない。
経済においても回復はしたが、スピード感がない――、などという批判を浴びている。
「リーマン・ショック」からわずか5年で、経済は金利を通常に戻すところまで急回復している。それは「贅沢」すぎる話ではないか――、という気がしないでもない。しかし、景気回復はアメリカの地力によるもので、オバマによるものではない・・・。
■オバマ大統領は「アメリカは世界の警察官ではない」と宣言
アメリカが、世界経済で一人勝ちの地平を目指しているのは間違いないのではないか。
それまでは中東、東欧、あるいは中国によるアジアなどの混乱・混迷には、極力のところ手出しを控える。
2013年、オバマ大統領はシリアのアサド政権を攻撃するか否かの瀬戸際で、攻撃を取りやめた。オバマ大統領は、「アメリカは世界の警察官ではない」とスピーチ――。「新・孤立主義」宣言にほかならない。
オバマ大統領が、「世界の警察官」を放棄したからこそ、ロシアはクリミア併合に軍を進めた。
白昼堂々、クリミア、ウクライナ東部にロシア軍が侵攻――。ロシアのプーチン大統領は、アメリカはウクライナ、クリミアに手出しはできない、と見切った。
中東での「イスラム国」の台頭も同じ文脈で捉えられるかもしれない。
年間1兆ドル超、あるいは1兆ドルに近い財政赤字の削減を促進する。財政再建がなされるまでは「世界の警察官」は返上する――。お世辞にも、財政赤字の削減が順調に進んでいるようにはみえない。だが、それがオバマ大統領のスタンスではないか。
■アベノミクスは試金石、「円安」一辺倒の見直しは不可避か
経済だが、ここから先はやや不透明――。ただ、わかっているのはアメリカが金融緩和を縮小して、金利を通常に戻す流れだ。為替はドル高に向かうことになる。
となれば、「円安」一辺倒で進めてきたアベノミクスは最大の試練を迎える――。
このまま極端な円安が進めば、天然ガスなど輸入品を割高で買うことになり、スタグフレーションが避けられない。
それに円安で貿易収支が大幅赤字を出し続けている現状は、景気にはマイナス要因にほかならない。
日本は、日銀の国債大量購入などの異次元金融緩和策を見直すことが避けられない。アベノミクスは、その「円安」一辺倒を大きく修正する局面を迎えることになるのではないか。
(経済ジャーナリスト・評論家、『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営』(PHP研究所刊)など著書多数)
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2014年10月15日