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2015年03月27日

【アナリスト水田雅展の銘柄分析】きちりは煮詰まり感強めてモミ合い上放れ期待、米国で日本食業態を展開

 飲食店チェーン事業と飲食店運営プラットフォーム事業のきちり<3082>(東1)は、24日に米国子会社設立を発表した。米国で日本食業態を展開する。株価は700円近辺でモミ合う展開だが煮詰まり感を強めている。自己株式取得、15年6月期業績増額の可能性、中期成長力を評価して、モミ合い上放れの展開が期待される。

 カジュアルダイニング「KICHIRI」や「いしがまやハンバーグ」を主力業態とする直営店の自社ブランド展開事業、および飲食店運営のプラットフォーム提供や他業種企業のブランド・コンテンツ活用のプラットフォームシェアリング(PFS)事業を展開している。

 前期(14年6月期)末時点の店舗数は70店舗(関西エリア42店舗、関東エリア28店舗)で、新業態開発にも取り組みながら出店余地の大きい首都圏への新規出店戦略を強化している。14年3月には新業態「igu&peace」を出店した。

 PFS事業は、ITやクラウドを駆使して構築した外食特化型インフラ(購買・物流などのバックヤード機能、会計・労務管理・教育・デザインなどのバックオフィス機能、取引先紹介などのバックアップ機能といった本部機能)を活用する事業だ。大別するとブランド・コンテンツ活用型(優れたブランド・コンテンツを持つ企業と業務提携し、当社のプラットフォームを活用して新しいレストランビジネスを創造する)、およびクラウドサービス展開型(当社が構築した外食特化型インフラを他の飲食店チェーンなどに提供してアウトソーシング受託する)を展開している。

 ブランド・コンテンツ活用型では独自性ある新業態が開発できる、クラウドサービス展開型では参画企業・店舗数の増加に伴ってスケールメリットが得られるという強みがある。ブランド・コンテンツ活用型では13年2月精米機トップメーカーで「ギャバライス」ブランドのサタケ、13年4月イタリアのバッグブランド「オロビアンコ」、13年5月福岡県「はかた地どり」生産者の農業組合法人福栄組合と業務提携した。

 15年1月にはPFS事業の一環として、健康長寿県として注目されている長野県との間で、食を通じた健康長寿発信の推進に関して戦略的連携協定を締結した。長野県の食材の魅力と健康長寿のライフスタイルと食文化を広く発信することを目的に、協業の第一弾としてJR長野駅に直結した駅ビル「MIDORI長野」内に「長野県長寿食堂」を運営する。

 また3月24日には米国に子会社KICHIRI USAを設立(15年4月)すると発表した。日本から発信する「和食」および当社独自の「おもてなし」を強みとした日本食業態を米国で展開する。

 今期(15年6月期)の業績(非連結)見通し(8月8日公表)は売上高が前期比8.5%増の75億円、営業利益が同45.7%増の7億円、経常利益が同35.8%増の7億円、純利益が同41.9%増の4億20百万円、配当予想が前期から記念配当2円50銭を落として年間7円50銭(期末一括)としている。

 既存店売上高は98.5%、新規出店は10店舗の計画だ。出店戦略において優先的に出店したい立地の物件が確保できる状況のため、前期の新規出店4店舗に比べて大量出店となる。PFS事業ではブランド・コンテンツ活用型で新規3案件を計画し、クラウドサービス展開型の提供店舗数は自社ブランド店舗を含めて前期末の約200店舗から今期末には約300店舗に増加する見込みだ。

 第2四半期累計(7月〜12月)は前年同期比4.5%増収、同32.4%営業増益、同18.9%経常増益、同21.5%最終増益だった。自社ブランド展開事業ではブランド認知度向上などで既存店売上高が同100.8%と好調に推移し、3店舗の新規出店も寄与した。PFS事業も順調に拡大し、増収効果や効率化効果で大幅増益だった。

 四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(7月〜9月)17億03百万円、第2四半期(10月〜12月)18億85百万円、営業利益は第1四半期1億04百万円、第2四半期1億87百万円で、売上高、営業利益とも拡大基調だ。

 通期見通しに対する第2四半期累計の進捗率は売上高が47.8%、営業利益が41.6%、経常利益が40.6%、純利益が41.0%である。ブランド認知度向上効果などで既存店売上高が計画を上回るペースで推移し、下期は5店舗の期中新規出店も寄与する。PFS事業でのブランド・コンテンツ活用型の新規3案件や、クラウドサービス展開型の拡大も寄与することを考慮すれば、通期業績見通しに増額の可能性があるだろう。

 月次レポート(前年同月比、速報値)を見ると、15年2月の売上高は既存店(対象68店舗)が106.5%、全店(対象72店舗)が113.3%だった。既存店売上高、全店売上高とも今期最も高い伸び率となった。既存店客数は7ヶ月連続の前年比プラスと好調だ。

 中長期ビジョンでは、自社ブランド展開事業およびPFS事業を2本柱として展開し、目標値として18年6月期売上高100億円、営業利益15億円、経常利益16億円、純利益10億円、配当性向30%(当面は20%)を掲げている。事業別には自社ブランド展開事業が100店舗で売上高94億円、PFS事業が契約店舗数500店舗(契約売上規模300億円)で営業利益6億円を目標としている。

 自社ブランド展開事業の新規出店加速に加えて、長野県との戦略的連携協定を皮切りにPFS事業における連携も加速する。米国での事業展開も寄与して中期的に収益拡大基調が期待される。

 なお14年9月に発表した自己株式取得(取得株式総数の上限15万株、取得価額総額の上限1億円、取得期間14年9月8日〜15年3月31日)については、2月28日時点の累計で取得株式総数7万2600株、取得価額総額4831万9700円となっている。

 株主優待制度については毎年12月31日現在で1単元(100株)以上保有株主を対象として実施している。優待内容は14年12月31日現在の対象株主から「当社運営店舗で利用できる優待券3000円分、または近隣に店舗がない等の理由で優待券を利用しない方は当社事業における関連商品を選択できる」としている。

 株価の動きを見ると、14年11月の戻り高値815円から反落後は小動きとなり、概ね700円近辺でモミ合う展開が続いている。ただし大きく下押す動きは見られず煮詰まり感を強めている。

 3月26日の終値698円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS41円44銭で算出)は16〜17倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間7円50銭で算出)は1.1%近辺、前期実績PBR(前期実績のBPS157円27銭で算出)は4.4倍近辺である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線を割り込んだが、13週移動平均線突破の動きを強めている。自己株式取得、15年6月期業績増額の可能性、中期成長力を評価してモミ合い上放れの展開が期待される。

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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 07:18 | アナリスト水田雅展の銘柄分析