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2015年05月22日

【アナリスト水田雅展の銘柄診断】物語コーポレーションは年初来高値圏、既存店好調で6月期末の株主優待制度も注目

 物語コーポレーション<3097>(東1)は焼肉店やラーメン店を主力として飲食チェーンを展開している。株価は年初来高値圏でモミ合う展開だ。第3四半期累計(7月〜3月)の営業減益に対するネガティブ反応は見られず、15年6月期業績の下振れ懸念を織り込んだ可能性もあるだろう。既存店売上が好調であり、6月期末の株主優待制度の権利取りの動きも注目点だ。

 中部圏と関東圏を中心に飲食チェーンを直営とFCで全国展開している。郊外型立地を基本として、業態別には「焼肉きんぐ」などの焼肉部門、「丸源ラーメン」などのラーメン部門、「お好み焼き本舗」のお好み焼部門、寿司・しゃぶしゃぶ「ゆず庵」などの専門店部門を展開している。「焼肉きんぐ」は焼肉テーブルバイキング市場のトップブランドが特徴である。

 12年10月には、中国・上海に海外初出店となる「鍋源(GUO YUAN)」をオープンした。また15年4月には国内で当社初の繁華街型店舗となるプロトタイプ焼肉店「熟成焼肉 肉源」1号店を東京・赤坂にオープンした。

 15年3月末時点の店舗数は、全業態合計322店舗(直営163店舗、FC154店舗、海外5店舗)である。業態別には、焼肉部門が144店舗(直営93店舗、FC51店舗)、ラーメン部門が112店舗(直営33店舗、FC79店舗)、お好み焼部門が45店舗(直営21店舗、FC24店舗)、専門店部門が16店舗(直営16店舗)、その他部門が5店舗(中国直営5店舗)である。

 中期経営計画では、物語的大家族主義などピープルビジネスとしての「レインボー企業」を目指し、成長基盤確立に向けて優秀な人財の育成・確保、新業態開発、FC支援体制充実などに取り組んでいる。経営目標値には17年6月期の売上高470億31百万円、経常利益38億01百万円、店舗数442店舗(直営244店舗、FC198店舗)を掲げている。

 重点戦略としては、焼肉部門では「焼肉きんぐ」ブランドの浸透、美味しさとプレミアム感による顧客満足度向上、ラーメン部門ではサイドメニューの強化、「丸源ラーメン」ブランド化に向けた新たなフォーマットの構築、お好み焼部門では熟成リブロースステーキ「塊」による集客力向上、「お好み焼き屋」コンセプトの確立、専門店部門では寿司・しゃぶしゃぶ「ゆず庵」多店舗フォーマット化の推進、中国で展開する「鍋源」の新フォーマットでの出店などに取り組んでいる。

 5月11日に発表した今期(15年6月期)第3四半期累計(7月〜3月)の連結業績は、売上高が246億03百万円、営業利益が13億10百万円、経常利益が16億40百万円、純利益が8億04百万円だった。前期の非連結実績との比較で見ると25.1%増収、15.3%営業減益、2.8%経常増益、14.7%最終減益だった。

 新規出店効果に加えて、既存店の好調、海外子会社の連結開始なども寄与して大幅増収だった。新規出店は27店舗(国内直営19店舗、海外2店舗、FC6店舗)、退店は3店舗(国内直営1店舗、FC2店舗)で、既存店売上(国内直営)は前年同期比103.7%だった。

 ただし新規出店費用、リニューアルや業態転換に伴う改装費用、食肉仕入価格の上昇、人件費や本社経費の増加、多店舗展開に向けた先行投資やフォーマット標準化遅れで業績が低迷している中国の子会社の連結開始が影響して営業減益だった。経常利益は為替差益が寄与して増益だったが、純利益は固定資産除却損計上も影響して減益だった。

 業態別の売上高は焼肉部門が同19.4%増の143億36百万円、ラーメン部門が同9.7%増の33億81百万円、お好み焼部門が同23.4%増の18億36百万円、専門店部門が同91.8%増の25億66百万円、FC部門が同9.9%増の19億26百万円、その他が5億56百万円だった。

 四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(7月〜9月)80億10百万円、第2四半期(10月〜12月)78億68百万円、第3四半期(1月〜3月)87億25百万円、営業利益は第1四半期5億36百万円、第2四半期2億19百万円、第3四半期5億55百万円である。

 通期の連結業績予想は前回予想(連結決算移行に伴って11月4日に公表)を据え置いて、売上高が326億75百万円、営業利益が23億50百万円、経常利益が25億円、純利益が13億86百万円としている。配当予想(8月11日公表)については、前期比15円増配の年間50円(第2四半期末25円、期末25円)としている。

 前期の非連結実績との比較で見ると21.7%増収、16.8%営業増益、19.0%経常増益、16.5%最終増益となる。新規出店や既存店の好調で増収増益見込みだ。なお新規出店は49店舗(国内直営29店舗、FC20店舗)の期初計画だが、40店舗(直営25店舗、FC15店舗)となる見込みだ。退店はFC2店舗の計画だが、第3四半期累計で3店舗退店した。既存店売上は同101.1%の計画で、想定より好調に推移している。

 業態別売上高の計画は、焼肉部門が同17.9%増の193億53百万円、ラーメン部門が同5.2%増の43億51百万円、お好み焼部門が同20.3%増の24億04百万円、専門店部門が同2.0倍の38億75百万円、FC部門が同12.6%増の26億89百万円としている。

 通期見通しに対する第3四半期累計の進捗率は売上高が75.3%、営業利益が55.8%、経常利益が65.6%、純利益が58.0%である。新規出店遅れなども影響して利益進捗率がやや低水準だ。既存店が想定以上に好調のため第4四半期(4月〜6月)の挽回が期待されるが、新規出店が計画未達でロイヤリティー収入も減少する見込みのため、下振れにも注意が必要だろう。

 月次売上動向(国内直営店+FC店、前年比速報値)を見ると、15年4月は全業態全店115.1%、既存店101.8%(焼肉99.2%、ラーメン107.7%、お好み焼98.6%、専門店102.3%)だった。また14年7月〜15年4月累計では、全業態全店118.2%、既存店103.3%(焼肉102.8%、ラーメン104.8%、お好み焼101.6%、専門店103.5%)となった。リニューアル・業態転換、メニュー改定、新商品投入なども寄与して好調に推移している。

 なお株主優待制度については年2回、毎年6月末および12月末時点で1単元(100株)以上所有株主に対して実施している。100株以上所有株主に対してお食事ご優待券2500円相当またはお米2.5kg、300株以上所有株主に対してお食事ご優待券5000円相当またはお米5.0kg、600株以上所有株主に対してお食事ご優待券1万円相当またはお米10.0kg、900株以上所有株主に対してお食事ご優待券1万5000円相当またはお米15.0kgを贈呈する。

 株価の動きを見ると、4月中旬に動意づいて年初来高値となる4365円まで上伸する場面があった。その後は年初来高値圏4000円近辺でモミ合う展開だ。第3四半期累計の営業減益に対するネガティブ反応は見られず、既存店売上の好調を評価する動きで、15年6月期業績の下振れ懸念を織り込んだ可能性もあるだろう。

 5月21日の終値3985円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS231円63銭で算出)は17〜18倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間50円で算出)は1.3%近辺、実績PBR(第3四半期累計実績の連結BPS1676円09銭で算出)は2.4倍近辺である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線が下値を支える形であり、煮詰まり感を強めてモミ合い上放れのタイミングが接近しているようだ。6月期末の株主優待制度の権利取りの動きも注目され、13年9月の上場来高値4580円も視野に入るだろう。

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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 07:37 | アナリスト水田雅展の銘柄分析