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2016年01月21日

【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ワイヤレスゲートはワイヤレス・ブロードバンドサービスが主力、多彩なテーマ性も注目

 ワイヤレスゲート<9419>(東マ)はワイヤレス・ブロードバンドサービスを主力として事業展開し、中期成長に向けた施策も積極的に推進している。15年11月には東京証券取引所本則市場への変更を申請した。インバウンド関連、地方創生関連、M2M/IoT関連など多彩なテーマ性も注目される。株価は地合い悪化も影響して軟調展開だが、売られ過ぎ感を強めて反発のタイミングだろう。なお2月12日に15年12月期の決算発表を予定している。

■ワイヤレス・ブロードバンドサービスを提供するMVNO

 通信事業者からインフラを借り受けてワイヤレス・ブロードバンドサービス(Wi−Fi、WiMAX、LTE)を提供するMVNO(仮想移動体通信事業者)である。

 販売チャネルはヨドバシカメラ、および携帯電話販売最大手ティーガイア<3738>を主力としている。月額有料会員数の積み上げに伴って収益が拡大するストック型収益構造で、社員1人当たり営業利益額の高さも特徴だ。

 中期成長に向けた重点戦略として、M&A・提携も活用したサービス提供エリア拡大、サービスラインナップ拡充、新規事業推進などを掲げている。

■法人向けインフラ構築・運用支援事業を拡大

 新規事業として14年1月には法人向けWi−Fi環境構築・運用支援事業を開始した。公衆無線LAN環境を活用する動きが自治体の災害時通信インフラ、観光地の外国人旅行客誘致、商店街の集客力向上などに広がり、20年東京夏季五輪も追い風となって無線LANの需要拡大が予想されるため、クラウド型Wi−Fi環境サービスシステムなど法人向けソリューションサービスを拡大する。

 14年8月にはLTE領域ソリューション拡充の一環として、訪問看護サービスのNフィールドと業務提携し、M2M/IoTソリューション「クラウド型みまもりサービス」を開始した。14年11月にはWeb会議システムのブイキューブと業務提携した。

 15年3月には移動販売者向けプラットフォームを提供するアンデコ社と資本業務提携、およびWi−Fi環境構築・保守のバディネット社と業務提携した。観光地や商業施設などに構築するWi−Fiインフラにおいて、アンデコ社の「Mobility−Store Platform」と組み合わせてロケーションコマース事業を共同展開する。このロケーションコマース事業の共同展開に関して、バディネット社のWi−Fiインフラ構築体制とノウハウを活用し、ロケーションコマース・ソリューションの拡大を目指す。

■市場拡大のSIMカード分野にも展開

 SIMカードに関しては、14年9月にデータ通信専用の「ワイヤレスゲート Wi−Fi+LTE SIMカード」の販売を開始、14年12月に訪日外国人向けデータ通信専用プリペイド型SIMカードの販売を開始、15年4月に音声機能付きSIMカード「ワイヤレスゲート Wi−Fi+LTE 音声通話プラン」の販売を開始した。

 15年4月には、経済産業省の大規模HEMS情報基盤整備事業「みやまHEMSプロジェクト」のコンソーシアムメンバーである福岡県みやま市に対して、エプコと共同でLTE回線の提供を開始した。M2M/IoTサービス事業の一環としてSIMカードとフリールータを提供する。HEMSは省エネ機器をネットワーク化して家庭の電力利用を一括制御するシステムである。

 15年5月にはベネフィット・ワンと共同で、訪日旅行者向けに「飲食店割引サービス」と「Wi−Fi+LTE通信サービス」をセットで提供する「Benefit Station Japan」を台湾で販売開始した。訪日旅行客の日本での利便性を高めるサービスで、今後ベネフィット・ワンが展開するアジア各国でも同サービスを展開する方針だ。15年10月にはチャイナエアラインを利用する台湾からの訪日旅行者に対して同サービスの提供を開始した。

 15年7月には、安芸自動車学校と高知県自動車学校の自動車教習生向けに「Wi−Fiインフラ」の提供を開始した。両校の自動車教習生の利便性を高めるサービスを提供する。

■中期成長に向けてフォン・ジャパンなどへ出資

 14年11月に、世界200カ国以上・1700万ヶ所以上のWi−Fiスポットを保有する世界最大のグローバルWi−FiコミュニテォーであるスペインFon社および日本法人フォン・ジャパンと業務協力し、15年3月には日本のWi−Fiインフラ拡充に向けた取り組みを開始すると発表した。20年東京夏季五輪を視野に入れて国内で20万スポットを構築するとともに、観光地や商業施設などのパブリックエリアにFon社のルータを活用したWi−Fiエリアを構築する。

 そして15年11月にはスペインFon社が保有するフォン・ジャパンの株式の一部を取得(出資比率30%)してフォン・ジャパンを当社の持分法適用会社とした。

 この資本・業務提携によって、Fon社の持つグローバルWi−Fiプラットフォームを当社のインフラに加え、総合モバイルネットワーク事業者として新サービの開発・提供を推進する。SIMカードサービス自体での差別化は難しい状況だったが、グローバルWi−Fiネットワークを軸にして、LTE帯域を必要に応じて効率的に使うサービスを提供することで、安価でかつ通信速度もアンリミデッドな、他社にはないグローバルなサービスを提供することが可能になる。

 15年10月には米nCore社の第三者割当増資を引き受けて同社株式を取得した。総額30万ドルのマイノリティ出資としている。米nCore社が保有する「LTE over WiFi」技術を活用したサービス展開を企図し、将来的に日本を含めた全世界で展開することを目指す。

 15年11月には、落し物追跡タグ「MAMORIO」を提供する落し物ドットコム(東京都)の第三者割当増資を引き受けて同社株式を取得した。総額2990万円のマイノリティ出資としている。落し物ドットコムへ資本面でのサポートを行うことで新サービスの共同展開を加速させる。

 そして15年11月には、一般社団法人ニセコプロモーションボードおよびフォン・ジャパンと共同で、北海道「ニセコ」観光エリア一帯をWi−Fi化するプロジェクトを発表した。訪日外国人旅行客を中心とした来訪者向けに無料Wi−Fiサービスを提供する。

 15年12月には鎌倉長谷寺にWi−Fiインフラを提供して無料Wi−Fiサービスを開始すると発表した。鎌倉長谷寺のWi−Fiインフラ構築・運用サポートに加えて、今後は長谷寺内のWi−Fi利用者の「人の流れ」を集積して、ビッグデータを活用したソリューションサービスの提供を予定している。

■月額有料会員の積み上げによるストック型収益構造
 
 なお14年12月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(1月〜3月)20億45百万円、第2四半期(4月〜6月)21億59百万円、第3四半期(7月〜9月)23億69百万円、第4四半期(10月〜12月)25億32百万円、営業利益は第1四半期2億07百万円、第2四半期2億00百万円、第3四半期1億76百万円、第4四半期2億11百万円だった。

 第3四半期の営業利益はSIM事業開始に伴うオペレーション費用の影響を受けたが、月額有料会員数の積み上げに伴って増収増益基調である。14年12月期のROEは23.0%で13年12月期比3.9ポイント低下、自己資本比率は58.1%で同1.2ポイント低下した。配当性向は50.7%だった。

■15年12月期第3四半期累計は大幅増収増益、売上高・利益とも過去最高

 前期(15年12月期)第3四半期累計(1月〜9月)の連結業績は、売上高が前年同期比27.1%増の83億53百万円、営業利益が同33.4%増の7億77百万円、経常利益が同33.9%増の7億77百万円、純利益が同34.9%増の4億95百万円だった。大幅増収増益となり、売上高、各利益とも第3四半期累計として過去最高だった。

 事業別売上高は、ワイヤレス・ブロードバンド事業のモバイルインターネットサービスが同29.9%増の75億47百万円、公衆無線LANサービスが同11.0%減の5億90百万円だった。モバイルインターネットサービスでは、個人向け「Wi−Fi+LTE SIMカード」が競争激化で計画未達だったが、主力の「Wi−Fi+WiMAX」が好調に推移した。また公衆無線LANサービスは店頭での主な獲得活動を「Wi−Fi+LTE SIMカード」にシフトしたため減収だった。

 ワイヤレス・プラットフォーム事業は月額課金「電話リモートサービス」が堅調に推移して同1.1%増の86百万円だった。その他は同9.0倍の1億29百万円だった。法人向けM2M/IoTサービスでシステム受託開発案件を計上した。またベネフィット・ワンと共同の訪日外国人向けプリペイドSIMサービスの販路拡大に取り組み、Wi−Fiインフラ事業ではFon社ルータを活用したエリア拡大を推進した。

 売上総利益率は同1.2ポイント低下して26.6%、販管費比率は同1.7ポイント低下して17.3%となった。SIMサービスは約1億64百万円の利益押し下げ要因となったようだ。

 四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(1月〜3月)26億18百万円、第2四半期(4月〜6月)28億59百万円、第3四半期(7月〜9月)28億76百万円、営業利益は第1四半期2億08百万円、第2四半期2億98百万円、第3四半期2億71百万円だった。

■15年12月期業績予想を減額修正だが増収増益基調に変化なし

 前期(15年12月期)通期の連結業績予想(10月15日に減額修正)は、売上高が前々期比23.7%増の112億59百万円、営業利益が同21.0%増の9億61百万円、経常利益が同21.1%増の9億56百万円、純利益が同21.8%増の6億07百万円としている。期初計画を減額修正したが増収増益基調に変化はないようだ。

 ワイヤレス・ブロードバンド事業において個人向けSIMサービスが、音声通話プランの提供開始時期遅れや競争激化などの影響で苦戦している。またFon社との資本提携発表遅れが影響して、その他事業では機器(Fon社ルータ)販売が期初計画を下回る見込みだ。

 ただしワイヤレス・ブロードバンド事業において、収益基盤であるWiMAXサービスおよびWi−Fiサービスは想定どおり順調に推移している。またワイヤレス・プラットフォーム事業も順調に推移し、その他事業では期初計画に織り込んでいなかった訪日旅行者向けSIMサービスや、法人向けM2M/IoTサービスが売上高の増加に貢献する。

 配当予想(2月12日公表)は同1円増配の年間26円(期末一括)で、予想配当性向は43.6%となる。株主還元についてはDOE(株主資本配当率)を重視し、機動的かつ柔軟な自社株買いも実施する方針としている。

 通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が74.2%、営業利益が80.9%、経常利益が81.3%、純利益が81.6%である。主力の個人向けモバイルインターネットサービス「Wi−Fi+WiMAX」が順調であり、通期計画未達の主因となった個人向けSIMサービスやFon社のルータ販売についても第4四半期(10月〜12月)以降は販売を強化する方針だ。法人向けWi−Fiインフラ事業の収益化も期待され、中期的にも増収増益基調に変化はないだろう。

■東京証券取引所本則市場への変更を申請、自己株式取得も実施

 11月6日に監査等委員会設置会社に移行すると発表した。16年3月開催予定の第12回定時株主総会において承認されることを条件として実施する。

 また11月27日に東京証券取引所本則市場への変更申請を発表した。15年2月に変更申請を一旦取り下げたが、再申請する。

 なお11月27日に発表した自己株式取得(取得株式総数の上限3万3000株、取得価額総額の上限1億円、取得期間15年11月30日〜16年1月15日)については16年1月15日に終了した。累計取得株式総数は3万3000株、取得価額総額は6472万9700円だった。

■株価は軟調展開だが売られ過ぎ感

 株価の動きを見ると地合い悪化も影響して軟調展開だ。1月20日には1312円まで下押した。13年10月以来の安値水準だ。ただし売られ過ぎ感を強めている。調整の最終局面だろう。

 1月20日の終値1321円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS59円62銭で算出)は22〜23倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間26円で算出)は2.0%近辺、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS224円48銭で算出)は5.9倍近辺である。時価総額は約135億円である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が20%を超えて売られ過ぎ感を強めている。インバウンド関連、地方創生関連、M2M/IoT関連の多彩なテーマ性も注目され、中期成長力を評価して反発のタイミングだろう。

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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 07:36 | アナリスト水田雅展の銘柄分析