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2016年03月30日

【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ワイヤレスゲートは調整一巡して出直り、16年12月期2桁営業増益予想

 ワイヤレスゲート<9419>(東1)はワイヤレス・ブロードバンドサービスを主力に、中期成長に向けてWi−Fiインフラ構築・運用サポートやM2M/IoTサービス事業なども積極的に推進している。3月1日付で東証マザーズから東証1部に市場変更した。16年12月期は2桁営業増益予想である。株価は調整が一巡して切り返しの動きを強めている。インバウンド関連、地方創生関連、M2M/IoT関連など多彩なテーマ性も注目点となって出直り展開だろう。なお5月9日に第1四半期の業績発表を予定している。

■ワイヤレス・ブロードバンドサービスを提供

 通信事業者からインフラを借り受けてワイヤレス・ブロードバンドサービス(Wi−Fi、WiMAX、LTE)を提供するMVNO(仮想移動体通信事業者)である。

 販売チャネルはヨドバシカメラ、および携帯電話販売最大手ティーガイアを主力としている。月額有料会員数の積み上げに伴って収益が拡大するストック型収益構造であり、社員1人当たり営業利益額の高さも特徴だ。

 中期成長に向けた重点戦略として、M&A・提携も活用したサービス提供エリア拡大、サービスラインナップ拡充、新規事業推進などを掲げている。

■市場拡大のSIMカード分野にも積極展開

 SIMカードに関しては、14年9月にデータ通信専用の「ワイヤレスゲート Wi−Fi+LTE SIMカード」の販売を開始、14年12月に訪日外国人向けデータ通信専用プリペイド型SIMカードの販売を開始、15年4月に音声機能付きSIMカード「ワイヤレスゲート Wi−Fi+LTE 音声通話プラン」の販売を開始した。

 3月16日にはWi−FiおよびSIMカードの新サービス販売開始を発表した。Wi−FiとNTTドコモの提供するLTE網および3G網が利用できるサービスである。業界で初めて全プランLTE通信を使い放題とし、業界最安値級の価格で販売する。

■中期成長に向けてフォン・ジャパンなどへ出資

 14年11月に、世界200カ国以上・1700万ヶ所以上のWi−Fiスポットを保有する世界最大のグローバルWi−FiコミュニテォーであるスペインFon社および日本法人フォン・ジャパンと業務協力し、15年3月には日本のWi−Fiインフラ拡充に向けた取り組みを開始すると発表した。20年東京夏季五輪を視野に入れて国内で20万スポットを構築するとともに、観光地や商業施設などのパブリックエリアにFon社のルータを活用したWi−Fiエリアを構築する。

 そして15年11月にはスペインFon社が保有するフォン・ジャパンの株式の一部を取得(出資比率30%)してフォン・ジャパンを当社の持分法適用会社とした。

 この資本・業務提携によって、Fon社の持つグローバルWi−Fiプラットフォームを当社のインフラに加え、総合モバイルネットワーク事業者として新サービの開発・提供を推進する。SIMカードサービス自体での差別化は難しい状況だったが、グローバルWi−Fiネットワークを軸にして、LTE帯域を必要に応じて効率的に使うサービスを提供することで、安価でかつ通信速度もアンリミデッドな、他社にはないグローバルなサービスを提供することが可能になる。

 15年10月には米nCore社の第三者割当増資を引き受けて同社株式を取得した。総額30万ドルのマイノリティ出資としている。米nCore社が保有する「LTE over WiFi」技術を活用したサービス展開を企図し、将来的に日本を含めた全世界で展開することを目指す。

 15年11月には、落し物追跡タグ「MAMORIO」を提供する落し物ドットコム(東京都)の第三者割当増資を引き受けて同社株式を取得した。総額2990万円のマイノリティ出資としている。落し物ドットコムへ資本面でのサポートを行うことで新サービスの共同展開を加速させる。

■Wi−Fiインフラ構築・運用支援事業を拡大

 新規事業として14年1月に法人向けWi−Fi環境構築・運用支援事業を開始した。公衆無線LAN環境を活用する動きが自治体の災害時通信インフラ、観光地の外国人旅行客誘致、商店街の集客力向上などに広がり、20年東京夏季五輪も追い風となって無線LANの需要拡大が予想されるため、クラウド型Wi−Fi環境サービスシステムなど法人向けソリューションサービスを拡大する。

 14年8月にはLTE領域ソリューション拡充の一環として、訪問看護サービスのNフィールドと業務提携し、M2M/IoTソリューション「クラウド型みまもりサービス」を開始した。14年11月にはWeb会議システムのブイキューブと業務提携した。

 15年3月には移動販売者向けプラットフォームを提供するアンデコ社と資本業務提携、およびWi−Fi環境構築・保守のバディネット社と業務提携した。観光地や商業施設などに構築するWi−Fiインフラにおいて、アンデコ社の「Mobility−Store Platform」と組み合わせてロケーションコマース事業を共同展開する。このロケーションコマース事業の共同展開に関して、バディネット社のWi−Fiインフラ構築体制とノウハウを活用し、ロケーションコマース・ソリューションの拡大を目指す。

 15年4月には、経済産業省の大規模HEMS情報基盤整備事業「みやまHEMSプロジェクト」のコンソーシアムメンバーである福岡県みやま市に対して、エプコと共同でLTE回線の提供を開始した。M2M/IoTサービス事業の一環としてSIMカードとフリールータを提供する。HEMSは省エネ機器をネットワーク化して家庭の電力利用を一括制御するシステムである。

 15年5月にはベネフィット・ワンと共同で、訪日旅行者向けに「飲食店割引サービス」と「Wi−Fi+LTE通信サービス」をセットで提供する「Benefit Station Japan」を台湾で販売開始した。訪日旅行客の日本での利便性を高めるサービスで、今後ベネフィット・ワンが展開するアジア各国でも同サービスを展開する方針だ。15年10月にはチャイナエアラインを利用する台湾からの訪日旅行者に対して同サービスの提供を開始した。

 15年7月には、安芸自動車学校と高知県自動車学校の自動車教習生向けに「Wi−Fiインフラ」の提供を開始した。両校の自動車教習生の利便性を高めるサービスを提供する。

 15年11月には、一般社団法人ニセコプロモーションボードおよびフォン・ジャパンと共同で、北海道「ニセコ」観光エリア一帯をWi−Fi化するプロジェクトを発表した。訪日外国人旅行客を中心とした来訪者向けに無料Wi−Fiサービスを提供する。

 15年12月には鎌倉長谷寺にWi−Fiインフラを提供して無料Wi−Fiサービスを開始すると発表した。鎌倉長谷寺のWi−Fiインフラ構築・運用サポートに加えて、今後は長谷寺内のWi−Fi利用者の「人の流れ」を集積して、ビッグデータを活用したソリューションサービスの提供を予定している。

 16年2月には、道の駅の総合プラットフォーム事業を展開するXS社(大阪市)と共同で、日本全国の道の駅に対してWi−Fiインフラの設置と運用を支援し、道の駅がインバウンド(訪日外国人旅行客)を中心とした来訪者向けに無料Wi−Fiサービスを開始した。FONを活用したWi−Fiインフラ支援である。2月12日現在で24駅の道の駅が無料Wi−Fiインフラを導入し、今後も全国の道の駅とその周辺観光地への拡大を目指すとしている。

 3月16日には、Wi−Fiインフラ事業で、東京都浅草地域においてFONと共同で、浅草の各商業地域とインバウンド(訪日外国人旅行客)を中心とした来訪者向け無料Wi−Fiサービスを提供開始すると発表した。北海道・ニセコ、鎌倉・長谷寺、全国の道の駅などに次ぐ取り組みである。

■月額有料会員の積み上げによるストック型収益構造

 なお14年12月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(1月〜3月)20億45百万円、第2四半期(4月〜6月)21億59百万円、第3四半期(7月〜9月)23億69百万円、第4四半期(10月〜12月)25億32百万円、営業利益は第1四半期2億07百万円、第2四半期2億00百万円、第3四半期1億76百万円、第4四半期2億11百万円だった。

 第3四半期の営業利益はSIM事業開始に伴うオペレーション費用の影響を受けたが、月額有料会員数の積み上げに伴って増収増益基調である。14年12月期のROEは23.0%で13年12月期比3.9ポイント低下、自己資本比率は58.1%で同1.2ポイント低下した。配当性向は50.7%だった。

■15年12月期第は大幅増収増益、4期連続増収増益

 前期(15年12月期)連結業績は、売上高が前々期(14年12月期)比24.2%増の113億11百万円、営業利益が同34.0%増の10億65百万円、経常利益が同34.5%増の10億62百万円、純利益が同37.1%増の6億84百万円だった。計画超の増収増益で、12年7月東証マザーズ上場以来4期連続の増収増益だった。

 事業別売上高は、ワイヤレス・ブロードバンド事業のモバイルインターネットサービスが同27.4%増の102億62百万円、公衆無線LANサービスが同11.2%減の7億74百万円だった。モバイルインターネットサービスでは、個人向け「Wi−Fi+LTE SIMカード」が競争激化で単月赤字が継続しているが、売上の約9割を占める「Wi−Fi+WiMAX」が、ギガホーダイも寄与して好調に推移した。公衆無線LANサービスは店頭での主な獲得活動を「Wi−Fi+LTE SIMカード」にシフトしているため、想定どおりの減収だった。

 ワイヤレス・プラットフォーム事業は同16.9%減の1億25百万円だった。月額課金「電話リモートサービス」は堅調に推移したが、認証プラットフォームは前々期計上の大型案件が一巡した。その他は同5.9倍の1億49百万円だった。法人向けM2M/IoTサービスで継続収入が発生した。またベネフィット・ワンと共同の訪日外国人向けプリペイドSIMサービスの販路拡大に取り組み、Wi−Fiインフラ事業ではFon社ルータを活用したエリア拡大を推進した。

 なお売上総利益率は26.3%で同1.0ポイント低下、販管費比率は16.9%で同1.7ポイント上昇した。SIMサービスは約2億20百万円の営業利益押し下げ要因となったようだ。ROEは27.6%で同4.6ポイント上昇、自己資本比率は45.5%で同12.6ポイント低下した。配当は同1円増配の年間26円(期末一括)で配当性向は38.8%となる。

 なお四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(1月〜3月)26億18百万円、第2四半期(4月〜6月)28億59百万円、第3四半期(7月〜9月)28億76百万円、第4四半期(10月〜12月)29億58百万円、営業利益は第1四半期2億08百万円、第2四半期2億98百万円、第3四半期2億71百万円、第4四半期2億88百万円だった。

■16年12月期は2桁営業増益予想

 今期(16年12月期)通期の連結業績予想(2月12日公表)は、売上高が前期(15年12月期)比13.4%増の128億32百万円、営業利益が同17.4%増の12億50百万円、経常利益が同0.5%増の10億67百万円、そして純利益が同3.5%減の6億60百万円としている。

 個人向けサービスの会員数については前期並みの純増数を見込んでいる。法人向けサービスについては、ストック収益は前期実績を踏襲するとしているが、新規受注案件は織り込んでいない。会員数増加に伴う原価・販管費の増加、SIMカードサービス見直しに伴う販管費増加、管理体制強化に向けた人材採用に伴う人件費増加、案件獲得に伴う技術人材や業務委託の増加、収益貢献に見合った従業員向けインセンティブプランの導入などコストアップ要因があるが、増収効果で吸収して2桁営業増益予想だ。

 なお営業外費用では、フォン・ジャパンを持分法適用関連会社化したことに伴うのれん償却費(10年で約16億円を償却予定)を計上、および市場変更関連費用を計上するため経常利益は同横ばい、純利益は同微減益見込みとしている。

 ワイヤレス・ブロードバンド事業の収益基盤であるWiMAXサービスおよびWi−Fiサービスが順調に推移して増収増益基調だろう。またワイヤレス・プラットフォーム事業の収益寄与本格化も期待される。

 配当予想(2月12日公表)は同1円増配の年間27円(期末一括)としている。予想配当性向は41.9%となる。株主還元についてはDOE(株主資本配当率)を重視し、機動的かつ柔軟な自社株買いも実施する方針としている。

■株価は調整一巡して出直り

 株価の動き(16年3月1日付で東証1部へ市場変更)を見ると、1月と2月の安値圏1200円台から切り返しの動きを強めている。3月24日には1971円まで上伸した。調整が一巡したようだ。

 3月29日の終値1829円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS64円49銭で算出)は28〜29倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間27円で算出)は1.5%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS261円99銭で算出)は7.0倍近辺である。時価総額は約188億円である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線がサポートラインの形だ。また週足チャートで見ると13週移動平均線に続いて26週移動平均線突破の動きを強めている。インバウンド関連、地方創生関連、M2M/IoT関連など多彩なテーマ性も注目点となって出直り展開だろう。

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