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2016年03月30日

【アナリスト水田雅展の銘柄分析】日本エンタープライズは子会社のドローン群制御技術を材料視して急伸、16年5月期増収増益予想

 日本エンタープライズ<4829>(東1)はコンテンツ制作・配信や店頭アフィリエイト広告ビジネスなどを展開し、成長分野のM2M/IoTへの事業領域拡大も推進している。2月にはスマートバリューと業務資本提携し、3月28日には子会社の会津ラボがドローン群制御技術を発表した。16年5月期は期初計画を減額したが増収・営業増益予想である。29日の株価は会津ラボのドローン群制御技術発表を材料視してストップ高水準まで急伸する場面があった。

■コンテンツサービス事業とソリューション事業を展開

 交通情報、ライフスタイル、電子書籍、ゲーム、メール、音楽などのコンテンツを制作してキャリアの定額制サービスで配信するコンテンツサービス事業と、店頭アフィリエイト(広告販売)や企業向けソリューション(システム受託開発)などのソリューション事業を展開している。

 配信コンテンツを自社制作して「権利を自社保有する」ビジネスモデルを基本戦略としている。そしてアライアンスも活用して事業領域を広げ、ネイティブアプリや法人向け業務支援サービスを新たな収益柱に育成する方針だ。

■中国では携帯電話販売事業を展開、コンテンツ配信子会社への出資持分は売却

 中国にも積極展開して、チャイナテレコムの携帯電話販売店運営や、電子コミック配信サービスなどを手掛けている。中国・上海の携帯電話販売事業については、キャリアの販売施策変更に影響されない収益構造構築を目指し、大口法人への営業強化、付属品販売強化、徹底的なコスト削減などの収益改善策を推進している。そして15年10月には中国向けサンリオキャラクター商品卸売事業を行う合弁子会社としてNE銀潤(当社出資比率51.0%)を設立した。

 なお15年12月には、中国全土をカバーするコンテンツ配信ライセンスを保有する中国子会社の北京業主行網絡科技有限公司の出資金持分を売却した。05年12月に子会社化して中国の携帯通信事業者(チャイナモバイル、チャイナユニコム、チャイナテレコム)向けにモバイルコンテンツを配信してきたが、その後のコンテンツプラットフォームの多角化に伴って、ICPライセンス保有メリットが低下し、同社の損失計上が続いているため出資金持分の売却を決定した。

 今後の中国における事業展開については、中国での経験やノウハウを活かして、携帯電話等販売事業(チャイナテレコムの携帯電話販売店2店舗の運営)、卸売をはじめとしたソリューション事業(銀潤控股集団有限公司に対するサンリオキャラクター商品の日本からの輸出など)、およびモバイルコンテンツ事業を積極的に展開するとしている。

■中期成長に向けてM&A・アライアンスも積極活用

 ネイティブアプリの開発力強化、ゲームコンテンツ市場への本格参入、法人向け業務支援サービスの早期収益化、成長分野のM2M/IoTへの事業領域拡大など、中期成長に向けてM&A・アライアンスも積極活用している。

 13年3月音声通信関連ソフトウェア開発のandOneを子会社化、14年4月子会社HighLabを設立、14年11月アプリ開発の会津ラボを子会社化、15年6月スマートコミュニティ事業および太陽光発電・販売の合弁子会社として山口再エネ・ファクトリーを設立、15年7月プロモートを子会社化した。

■ネイティブアプリと法人向け業務支援サービスを収益柱に育成方針

 法人向け事業では14年8月、スマートフォンを活用して企業の内線電話網を構築するアプリケーション「AplosOneソフトフォン」を開発した。従業員のデスク上のビジネスフォン(固定電話)が不要となり、スマートフォンを内線電話として使用できるアプリケーションだ。また14年10月にはビジネス専用メッセンジャーアプリ「BizTalk」を発表した。

 15年5月には子会社の会津ラボが、会津若松市「桜咲く会津プロジェクト実行委員会」が実施する「次世代型食品生産トライアル事業」へ、農作物の高品質化・高付加価値化を実現するアプリケーションならびにシステムを開発して提供すると発表した。ICTを活用してスマート農業を支援する。

 15年6月には子会社HighLabが、新機能「お絵かき通話」搭載したスマートフォン向け無料チャットアプリ「Fivetalk」最新版を公開した。また15年6月にはIDCフロンティアとクラウド分野で業務提携してクラウド型統合運用監視サービス「プレミアクラウド」サービスを開始した。

 15年8月には、千葉県が少子化対策事業の一環として県民を支援するために提供するスマートフォンアプリ「ちばMy Style Diary」を、千葉県からの委託を受けて開発・運用開始した。

 15年9月には総合電子書籍サービス「BOOKSMART」PC版の提供を開始した。これまでスマホ・タブレット向けに提供してきたが、新たに未配信作品2万タイトルを追加投入してPC版サービスも開始する。また15年9月には子会社の会津ラボが、山口県周南市が運営する徳山動物園で、来園者を見たい動物の前まで道案内するナビゲーション「あるく動物ナビ」を開発し、サービス開始した。

 15年11月には、静岡県下田市のスマートフォンを活用した妊娠・出産子育てを支援する住民サービス「子育て支援アプリ導入業務」の受託を発表した。そして2月29日に子育て支援アプリ「しもだこどもDiary」をリリースした。

 16年1月には、千葉県山武群横芝光町が地方創生に資する若年層の定住促進を目的として実施する「横芝光町情報発信アプリサービス開発業務」を受託した。16年春のサービス開始に向けて、行政と町民の情報共有を活発化し、地方創生を促進するアプリサービスを開発・運用する。

 また16年1月には、タニタのデュアルタイプ体組成計インナースキャンデュアルで計測した体重や体脂肪率などのバイタルデータを、ヘルスケアアプリ「女性のリズム手帳」へBluetoothを使用して自動転送・記録できるサービスを提供すると発表した。

 3月1日には、子会社ダイブが「ミニエンゼルパイ<初音ミクのメロン味」との連携アプリ「エンゼルパイ×初音ミク」を開発したと発表している。初音ミクやエンゼルパイちゃんと一緒に写真が撮れるオリジナルフォトフレームを入手することができる。

■スマートバリューと業務資本提携して法人向け営業・開発を強化

 16年2月にはスマートバリュー<9417>と業務資本提携した。業務提携の内容は、双方の事業ノウハウ・地域特性および開発リソースを活用した法人向け営業・開発力の強化、M2M/IoTソリューションサービスの企画・開発・共同提案、その他各事業分野における相互支援としている。資本提携については、当社がスマートバリューの株主から同社株式11万株(議決権取得割合4.86%)を取得する。

■フリマアプリ譲り受けでEC分野に参入

 15年12月には、クルーズ<2138>が運営するフリマアプリ「Dealing」サービスを譲り受けて、電子商取引(EC)分野に参入した。

 競争激化するフリマアプリ市場へ初期投資を抑えながら短期間で参入できるとともに、当社が運営する300万DLを突破したヘルスケアアプリ「女性のリズム手帳」と「Dealing」を連携することで、あらゆるライフステージで女性の健やかな暮らしを支援するライフサポートプラットフォーム形成の促進が可能となる。

■ドローン分野の事業化に向けた技術開発も推進

 3月28日には子会社の会津ラボが、会津大学との産学連携により開発したドローン群制御技術「Dronet(ドロネット)」を、ドローン展示会「Japan Drone 2016」で発表した。会津大学が研究を主導し、会津ラボが主な開発を担当した。

 複数のドローンを給電ケーブルで接続し、ドローン間のケーブルの角度からドローン同士の距離を一定に保ち、ドローン群全体を安定制御する技術である。事業化に向けた開発も会津ラボが行う。

■15年5月期は販管費増加も影響

 15年5月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(6月〜8月)13億16百万円、第2四半期(9月〜11月)11億98百万円、第3四半期(12月〜2月)12億26百万円、第4四半期(3月〜5月)13億76百万円、営業利益は第1四半期52百万円、第2四半期10百万円、第3四半期52百万円、第4四半期75百万円だった。

 15年5月期はソリューション事業の売上が大幅に伸長したが、原価率の上昇や販管費の増加などで営業損益がやや低調だった。売上総利益率は47.1%で14年5月期比1.5ポイント低下、販管費比率は43.4%で同2.2ポイント上昇、ROEは3.8%で同7.1ポイント低下、自己資本比率は81.6%で同5.9ポイント上昇した。配当性向は64.8%だった。

■16年5月期第2四半期累計は増収減益

 今期(16年5月期)第2四半期累計(6月〜11月)の連結業績は、売上高が前年同期比1.3%増の25億47百万円、営業利益が同29.8%減の43百万円、経常利益が同24.9%減の52百万円、純利益が同56.3%減の69百万円だった。

 ソリューション事業が順調に拡大して増収だったが、ソリューション事業の増収に伴う売上総利益率の低下で減益だった。売上総利益率は45.7%で同2.5ポイント低下、販管費比率は43.9%で1.8ポイント低下した。販管費ではネイティブアプリへの広告投資抑制で広告宣伝費が減少した。なお特別利益では投資有価証券売却益が減少(前期は3億31百万円計上、今期は17百万円計上)した。

 セグメント別に見ると、コンテンツサービス事業は売上高が同11.0%減の11億48百万円、営業利益(連結調整前)が同5.1%増の2億82百万円だった。キャリア定額制サービス向けが堅調だったが、月額課金サービス(特にフィーチャーフォン)が低調だった。分野別には交通情報が同9.5%減収、エンターテインメント(ゲーム)が同3.7%減収、ライフスタイルが同33.3%減収だった。

 ソリューション事業は売上高が同14.3%増の13億99百万円、営業利益が同59.0%減の41百万円だった。売上面では広告(広告代理サービス)が前期第1四半期の特需の反動で同30.2%減収だったが、ソリューション(受託開発)が新規連結も寄与して同54.1%増収、海外が中国の端末販売の好調で同2.2倍増収だった。利益面ではソリューションの増収に伴って売上総利益率が低下した。

 なお四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期(6月〜8月)13億19百万円、第2四半期(9月〜11月)12億28百万円、営業利益は第1四半期57百万円、第2四半期14百万円の赤字だった。

■16年5月期通期業績予想を減額修正したが増収増益

 今期(16年5月期)通期の連結業績予想(1月8日に減額修正)は、売上高が前期比2.4%増の52億40百万円、営業利益が同10.7%増2億10百万円、経常利益が同12.4%増の2億30百万円、純利益が同21.2%減の1億40百万円としている。配当予想(7月10日公表)は前期と同額の年間3円(期末一括)で予想配当性向は87.0%となる。

 コンテンツサービス事業においては、スマートフォン向け月額課金コンテンツのプロモーション抑制、定額制サービスの新規コンテンツ投入遅延が影響する。またソリューション事業においては一部大型案件が計画を下回ったことに加えて、広告ビジネス(店頭アフィリエイト)の協業先である携帯電話販売店での端末販売減少、キャリアオリジナルコンテンツとの競合も影響する。

 なお業績予想減額修正に至った経営責任を明確にするため、1月8日に役員報酬の自主返上を発表している。代表取締役社長は月額報酬の10%、常務取締役は月額報酬の5%で、対象期間は16年1月〜16年5月までとしている。

 通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が48.6%、営業利益が20.9%、経常利益が23.0%、純利益が49.7%である。営業利益と経常利益の進捗率が低水準のため再減額に注意が必要となるが、受託開発事業の積極推進、地方創生に伴う事業領域の拡大、新規事業の創出加速に取り組むとしている。事業譲り受けた「フリマアプリ」なども寄与して下期の挽回を期待したい。

■株価はドローン群制御技術を材料視して急伸

 株価の動きを見ると、2月12日の昨年来安値163円から切り返し、2月18日発表のスマートバリューとの業務資本提携を好感して2月19日に235円まで急伸した。その後は220円近辺でモミ合う展開だったが、3月28日発表のドローン群制御技術を材料視して、3月29日にはストップ高水準の296円まで急伸する場面があった。

 3月29日の終値253円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想連結EPS3円45銭で算出)は73倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間3円で算出)は1.2%近辺、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS126円65銭で算出)は2.0倍近辺である。時価総額は約103億円である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線近辺から動意づく形となった。また週足チャートで見ると戻りを押さえていた26週移動平均線を一気に突破した。戻り歩調の展開だろう。

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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 08:34 | アナリスト水田雅展の銘柄分析