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2016年04月13日

【アナリスト水田雅展の銘柄分析】アドアーズは調整一巡して切り返し、3月既存店売上高は6ヶ月ぶりにプラス転換

 アドアーズ<4712>(JQS)はアミューズメント事業や不動産事業を展開している。12日発表の16年3月既存店売上高は前年同月比101.6%で15年9月以来6カ月ぶりにプラス転換した。16年3月期は減損損失計上で最終赤字予想だが、17年3月期は介護事業休止も寄与して営業損益改善基調が期待される。株価は株主優待制度導入で急伸した3月高値から反落したが、調整が一巡して切り返す展開だろう。なお5月10日に16年3月期決算発表を予定している。

■Jトラストグループで総合エンターテインメント事業が主力

 13年2月に、親会社Jトラスト<8508>グループで戸建て住宅分譲や商業建築など展開するキーノート、アミューズメント施設向け景品製作・販売など展開するブレイクを子会社化した。Jトラストグループ内で総合エンターテインメント事業、不動産事業、商業施設建築事業の中核を担う位置付けである。

 総合エンターテインメント事業では、利益率の高いメダルゲームジャンルを注力分野として収益改善を目指している。新業態開発やゲーム景品製造も強化して、当社独自のアミューズメント機器の開発も視野に入れている。不動産事業では一戸建分譲事業のエリア拡大や不動産アセット部門の強化を推進している。

 14年9月には韓国JBアミューズメント(JBA)の第三者割当増資を引き受けて第2位株主となった。韓国・済州新羅ホテルでカジノ事業を行うマジェスターを含むJBAグループと協力関係を構築し、アミューズメント事業におけるシナジー創出や事業拡大を目指す方針だ。

 15年4月には、フォーサイドエンタテイメントが運営するスマートフォン向けソーシャルコミュニケーションアプリ「Eyeland」による「地域コミュニケーション起点の店舗送客O2Oマーケティング」サービスの提供を開始すると発表した。当社が運営する店舗情報を「Eyeland」内の地図上に表示させ、当社のリアル店舗への送客を目指すとしている。

 16年2月には、ブレインプレス(東京都)が運営する音声通訳代行サービス「マルチリンガルコンタクトセンターサービス」の運用、ネットスターズ(東京都)が運営する中国人観光客向け決済システム「WeChat Payment」および「WeChat」ユーザー向けキャンペーンツール「WeChat シェイク」の運用を開始すると発表した。既存店舗のインバウンド集客施策の一環として活用する。

■介護事業は休止

 14年11月に通所介護事業の日本介護福祉グループを連結子会社化して介護事業に参入したが、15年8月に同社株式の譲渡と介護事業の休止を発表した。

 同社は競争激化などで通所介護事業の低迷が続き、デューディリジェンスで想定していた金額を超えて大幅な債務超過となった。このため同社に対して追加出資を行って債務超過を解消したが、業績改善の兆しが見込めないため、同社の創業者である藤田英明氏に全株式を譲渡して介護事業を休止することとした。

 なお15年12月には、日本介護福祉グループの創業者であり同社の代表取締役である藤田英明氏に対し、損害補償請求訴訟を東京地方裁判所に提起した。14年10月30日付株式譲渡契約書における表明保証違反に基づく損害補償請求で、訴額は3億1395万3066円としている。

■オリーブスパと業務提携

 16年3月には、首都圏中心に全国34拠点(16年2月末現在、海外1店舗を含む)においてリラクゼーションサロン「OLIVE SPA」等を運営するオリーブスパ(東京都、オリスパ社)と、オリスパ社の店舗開発、出店時の内外装工事、店舗サブリース、オリスパ店舗チケットを活用した販促活動に関して業務提携した。

 店舗リース事業による収益強化、子会社キーノートの商業施設建築事業の拡大、株主優待制度導入などオリスパ社のブランド力を活かした販促活動が可能になるとしている。

■15年3月期第4四半期の営業損益悪化は介護事業連結も影響

 15年3月期の四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月〜6月)56億85百万円、第2四半期(7月〜9月)60億97百万円、第3四半期(10月〜12月)61億04百万円、第4四半期(1月〜3月)55億13百万円、営業利益は第1四半期3億60百万円、第2四半期3億52百万円、第3四半期1億10百万円、第4四半期1億58百万円の赤字だった。

 第4四半期の営業損益悪化は介護事業の連結化も影響した。また15年3月期のROEは4.1%で14年3月期比4.8ポイント低下、自己資本比率は47.8%で同5.4ポイント低下した。配当性向は60.4%だった。

■16年3月期第3四半期累計は不動産アセットの反動減も影響して減収減益

 前期(16年3月期)第3四半期累計(4月〜12月)連結業績は、売上高が前年同期比7.4%減の165億66百万円、営業利益が同41.1%減の4億84百万円、経常利益が同42.1%減の4億20百万円、そして純利益が4億15百万円の赤字(前年同期は6億10百万円の黒字)だった。

 総合エンターテインメント事業、商業施設建築事業が低調で、不動産アセット部門で前期に保有不動産を売却した反動減や、15年8月まで介護事業を連結した影響などで減収減益だった。売上総利益率は15.1%で同0.1ポイント低下、販管費比率は12.1%で同1.5ポイント低下した。営業外収益では広告協賛金が増加(前期16百万円計上、今期40百万円計上)した。また特別利益では固定資産売却益2億08百万円、関係会社株式売却益1億54百万円を計上した。特別損失では減損損失が増加(前期13百万円計上、今期10億72百万円計上)した。

 セグメント別に見ると、総合エンターテインメント事業は売上高が同3.7%減の111億47百万円、営業利益(連結調整前)が同12.5%減の6億21百万円だった。アミューズメント施設運営部門は、ゲームセンター市場における個人消費意欲の減退、収益を牽引してきたプライズジャンルの人気商品不足による落ち込みなどで軟調だった。利益面ではアミューズメント景品・製造販売部門における円安による製造原価の上昇も影響した。なお15年12月末時点の店舗数は52店舗となった。

 不動産事業は売上高が同9.7%減の43億08百万円、営業利益が同10.3%減の3億78百万円だった。一戸建分譲事業は得意としている東京の城南エリアや大阪の北摂エリアにおいて販売物件の引き渡しが安定的に推移したが、不動産アセット部門で前期に都心エリアの一部保有不動産を売却した反動も影響して減収減益となった。

 商業施設建築事業は売上高が同68.6%減の4億83百万円、営業利益が2百万円の赤字(前年同期は1億32百万円の黒字)だった。大口施工案件が減少した。なお介護事業(15年3月期第4四半期から連結、15年8月事業休止)は売上高が6億08百万円、営業利益が1億10百万円の赤字だった。

 なお四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月〜6月)54億74百万円、第2四半期(7月〜9月)56億84百万円、第3四半期(10月〜12月)54億08百万円、営業利益は第1四半期11百万円、第2四半期3億37百万円、第3四半期1億36百万円だった。

■16年3月期は介護事業休止に伴う減損損失計上だが営業損益改善

 前期(16年3月期)通期の連結業績予想(日本介護福祉グループの株式譲渡と特別損失計上に伴って、8月11日に売上高と純利益を減額、営業利益と経常利益を増額修正)は、売上高が前々期(15年3月期)比6.0%減の220億円、営業利益が同20.4%増の8億円、経常利益が同26.8%増の7億円、純利益が1億10百万円の赤字(前期は4億61百万円の黒字)としている。配当予想(5月12日公表)は前々期と同額の年間2円(期末一括)としている。

 介護事業休止に伴って、居宅支援事業所などの開設に係る費用が減少するため、営業利益と経常利益は増益予想だ。純利益については特別利益に固定資産売却益2億円を計上するが、一方で特別損失に介護事業休止に伴う減損損失10億32百万円を計上する。なお通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が75.3%、営業利益が60.5%、経常利益が60.0%である。

■アミューズメント施設の3月既存店売上高は6ヶ月ぶりにプラス転換

 アミューズメント施設の月次既存店売上高(前年比、速報値)を見ると、15年4月97.6%、5月99.5%、6月94.9%、7月99.1%、8月95.1%、9月100.5%、10月94.8%、11月87.3%、12月94.9%、16年1月96.5%、2月97.0%、3月101.6%である。16年3月は15年9月以来6ヶ月ぶりにプラス転換した。メダルゲームジャンルにおいて、人気ビデオゲームのバージョンアップが牽引した。

 なお四半期別に見ると第1四半期97.5%、第2四半期98.3%、第3四半期92.4%、第4四半期98.4%で、通期ベースでは96.6%となった。

■中期経営計画で18年3月期ROE8%目標

 15年5月発表の中期経営計画では、目標数値として最終年度18年3月期の売上高330億円(アミューズメント事業148億円、不動産事業・商業建築事業80億円、介護事業102億円)、営業利益17億円、経常利益14億円、純利益9億50百万円、ROE8%を掲げている。さらに20年3月期には売上高410億円、営業利益29億円、経常利益23億円、純利益14億円を目指すとしている。

 基本戦略として、アミューズメント事業ではアニメコンテンツなどの活用・開発による総合アミューズメント事業の確立、Jトラストの活動基盤を活かしたアミューズメント施設の海外展開、不動産事業・商業建築事業ではJトラストの事業基盤を活かした日本基準住宅などの東南アジア展開を推進する。日本介護福祉グループの株式譲渡による影響については精査中としているが、グループ連携強化も奏功して中期的に収益改善基調が期待される。

 なお15年12月、日興アイ・アールが実施した「2015年度全上場企業ホームページ充実度ランキング調査」で、新興市場部門における優良サイトの1社に選定されたと。

■株主優待制度を導入

 3月8日に株主優待制度の導入を発表した。毎年3月末日現在で、株式2000株(2単元)以上保有株主を対象として、16年3月期末から実施した。

 優待内容は保有株数に応じて、業務提携先のオリーブスパが首都圏中心に運営するリラクゼーションサロン「OLIVE SPA」および「PANTHEON」の全店舗(16年2月末現在24店舗)で利用できるアロマオイルトリートメント120分ボディコース(2万円相当分)のサロンチケットを贈呈する。

■株価は調整一巡して切り返し

 なお2月29日に主要株主の異動、ならびにその他の関係会社の異動を発表している。2月25日付大量保有報告書で確認した。

 408万2500株(議決権の数に対する割合29.38%)を所有して第2位株主だったGF投資ファンド投資事業有限責任組合が主要株主でなくなり、ユナイテッドエージェンシーが408万2500株(議決権の数に対する割合29.38%)を所有して第2位株主となった。

 株価の動きを見ると、株主優待制度導入で急伸した3月の年初来高値148円から反落したが、90円台から切り返しの動きを強めている。調整が一巡したようだ。

 4月12日の終値100円を指標面で見ると、前期推定配当利回り(会社予想の年間2円で算出)は2.0%近辺、そして前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS82円22銭)は1.2倍近辺である。なお時価総額は約139億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線が26週移動平均線を上抜いた。強基調への転換を確認した形だ。16年3月期は減損損失計上で最終赤字予想だが、17年3月期は介護事業休止も寄与して営業損益改善基調が期待される。調整が一巡して切り返す展開だろう。

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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 08:10 | アナリスト水田雅展の銘柄分析