■ビジネス系ソフトウェア開発が主力
ビジネス系ソフトウェア開発(アプリケーション開発、基盤システム構築)事業を主力として、組込型ソフトウェア開発事業、その他事業(商品・製品販売)も展開している。
16年3月期のセグメント別売上構成比は、ソフトウェア開発事業が82.6%(金融関連が41.7%、公共・サービスが19.4%、流通・その他が21.5%)、組込型ソフトウェア開発事業が17.0%(通信システムが3.0%、カーエレクトロニクスが6.8%、その他が7.2%)、その他事業が0.4%だった。
中期成長に向けた重点施策として、品質管理とプロジェクトマネジメント力の向上、組込型ソフトウェア開発事業の再構築、新ビジネスモデル創出と事業領域拡大、クラウド関連ソリューションの展開、グループ連携強化による収益性改善、ニアショア開発・オフショア開発の推進(地方分散開発体制強化と海外開発体制整備)などを掲げている。
なお16年2月にはサッカーJ1リーグのFC東京(東京フットボールクラブ)とクラブスポンサー契約を締結した。また経済団体「新経済連盟」に入会した。
16年4月には連結子会社を再編し、SAP社のERPの導入支援・保守運営を展開する連結子会社クレスコ・イー・ソリューションが、SAP社のERPと各種顧客システムの連携を支援するエス・アイ・サービス(15年4月に完全子会社化)を吸収合併した。
■オリジナル製品や次世代技術の開発を推進
オリジナル製品に関しては「インテリジェントフォルダ」「クレアージュ」や、SAP基幹業務をモバイル化して業務効率を向上させる新ソリューション「モビック」などの拡販を推進している。
15年5月には、旅行などのシーンで行われる点呼確認作業をビーコンとスマートデバイスを使って自動化するソリューション「みんなのてんこ」を販売開始した。訪日外国人旅行客に対するサービス向上を実現するため16カ国後に対応した適切な言語で通知する機能も備えている。
16年3月には、IoTビジネスの利活用を強力にサポートする企業向けIoTプラットフォーム「KEYAKI(けやき)」の開発を発表した。Beaconプラットフォーム「BeaconBridge」の後継ソリューションで、Beacon以外にもNFC等の近距離無線機器、各種センサー、マイクロサーバー、スマートフォンなど多種多様で大量のIoTデバイスに対応し、外部アプリケーションサービスの接続を担うIoTプラットフォームである。なお「BeaconBridge」の提供は16年3月末をもって終了し、16年4月以降は「KEYAKI」に移行した。
■中期成長に向けてアライアンス・M&Aも積極活用
得意分野を持つビジネスパートナーとのアライアンス・M&A戦略も積極活用している。
13年4月ソリューション事業のクリエイティブジャパンを完全子会社化、企業コンサルティング事業のエル・ティー・エスを持分法適用会社化、13年9月三谷産業<8285>とクラウドサービス事業で協業、14年3月ゴマブックスと提携して企業内文書デジタルサービスの提供開始、14年8月高速クラウド構築支援サービスでSkeed社と技術提携、14年12月受託ソフトウェア開発のエー・アイ・エム・スタッフを持分法適用会社化した。
15年3月には技術提携先のSkeedの第三者割当増資を引き受けて(出資比率12.1%)提携関係を強化した。15年4月にはSAP社の基幹業務パッケージの導入支援を主力とするエス・アイ・サービスの株式100%取得して完全子会社した。子会社クレスコ・イー・ソリューションと連携してERP事業のさらなる成長を目指す。
15年5月には子会社のクレスコ北陸がアップゾーンと資本業務提携してモバイルポータル事業に参入した。アップゾーンが提供するスマホ向けアプリケーション作成プラットフォーム「misterPARK」を中核に置いた多面的なモバイルポータル事業を展開する。
15年7月には、ソフトバンクの「IBM Watsonエコシステムプログラム」の初期エコシステムパートナーに選定された。テクノロジーパートナーとしてPepperをはじめとするロボット、モバイル、パソコンに対するさまざまなアプリケーション開発を通じてWatsonによるビジネス変革を支援する。
15年9月にはKii社、KDDI<9433>、大日本印刷<7912>が設立したIoT時代の新たな企業間連携を生み出す企業連合「Kiiコンソーシアム」に参加した。現在21社が参加している。
■第4四半期の構成比が高い収益構造
15年3月期の四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月〜6月)58億10百万円、第2四半期(7月〜9月)61億89百万円、第3四半期(10月〜12月)61億55百万円、第4四半期(1月〜3月)69億09百万円、営業利益は第1四半期3億80百万円、第2四半期5億89百万円、第3四半期5億43百万円、第4四半期5億01百万円だった。
第4四半期の構成比が高く、案件別の採算性も影響する収益構造だ。なお15年3月期の売上総利益率は18.0%で14年3月期比1.1ポイント上昇、販管費比率は10.0%で同0.4ポイント低下、ROEは14.1%で同3.4ポイント上昇、自己資本比率は60.8%で同1.3ポイント上昇した。配当性向は28.5%だった。配当に関しては、特別損益を零とした場合に算出される当期純利益の40%相当額をメドとした配当を継続的に実現することを目指している。
なお受注高は第1四半期58億81百万円、第2四半期61億19百万円、第3四半期68億79百万円、第4四半期64億09百万円だった。受注高については例年、第4四半期に減少する傾向がある。
■16年3月期は大幅増収増益
前期(16年3月期)連結業績は売上高が前々期(15年3月期)比14.8%増の287億75百万円、営業利益が同23.4%増の24億84百万円、経常利益が同27.5%増の28億57百万円、純利益が同21.3%増の17億05百万円だった。
近距離無線通信関連が案件小型化や案件受注遅れで計画を下回ったが、大企業・中堅企業の戦略的IT投資を背景として、計画を上回る大幅増収増益だった。金融・保険分野、公共・サービス分野を中心にソフトウェア開発事業が好調に推移した。組込型ソフトウェア開発事業ではカーエレクトロニクス分野が好調だった。
売上総利益は同16.0%増加し、売上総利益率は18.2%で同0.2ポイント上昇した。販管費は同10.0%増加したが、販管費比率は9.6%で同0.4ポイント低下した。営業外収益では有価証券売却益が増加(前々期69百万円計上、前期2億27百万円計上)した。特別利益では投資有価証券売却益が減少(前々期1億90百万円計上、前期1億58百万円計上)し、前々期計上した持分変動利益56百万円が一巡した。特別損失では前々期計上した役員退職慰労引当金繰入額38百万円および損害補償損失引当金繰入額62百万円が一巡したが、投資有価証券評価損1億21百万円および減損損失89百万円を計上した。
またROEは14.8%で同0.7ポイント上昇、自己資本比率は63.3%で同2.5ポイント上昇した。配当については同12円増配の年間50円(第2四半期末23円、期末27円)とした。配当性向は32.8%である。
セグメント別動向を見ると、ソフトウェア開発事業は売上高が同14.8%増の237億67百万円、営業利益(連結調整前)が同20.2%増の29億04百万円だった。売上高の内訳は金融関連が同16.2%増の120億03百万円、公共・サービスが同10.4%増の55億72百万円、流通・その他が同16.2%増の61億91百万円だった。全体として好調に推移し、特にメガバンク向けシステム開発が牽引するとともに、運輸関連、旅行関連、人材サービス関連の開発案件が好調のようだ。
組込型ソフトウェア開発事業は売上高が同15.6%増の49億01百万円、営業利益が同16.0%増の6億62百万円だった。売上高の内訳は通信システムが同9.8%減の8億70百万円、カーエレクトロニクスが同25.3%増の19億48百万円、その他が同21.0%増の20億82百万円だった。通信システム関連はデジタル通信端末の開発が減少しているが、カーエレクトロニクス関連は車載表示関連の開発が増加し、次世代の自動車自動走行関連の案件も含まれているようだ。またデジタル情報家電、医療機器、さらに制御系の案件も好調のようだ。
その他事業(商品・製品販売・その他)は売上高が同9.6%減の1億06百万円、営業利益が39百万円の赤字(前々期は30百万円の赤字)だった。
四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月〜6月)65億64百万円、第2四半期(7月〜9月)72億55百万円、第3四半期(10月〜12月)72億71百万円、第4四半期(1月〜3月)76億85百万円、営業利益は第1四半期4億23百万円、第2四半期7億85百万円、第3四半期7億43百万円、第4四半期5億33百万円だった。
また受注高は第1四半期72億86百万円、第2四半期70億27百万円、第3四半期78億08百万円、第4四半期70億09百万円だった。受注高については例年、第4四半期に減少する傾向がある。
■受注高水準で17年3月期も増収増益・連続増配予想
今期(17年3月期)の連結業績予想(5月9日公表)については、売上高が前期(16年3月期)比8.1%増の311億円、営業利益が同10.7%増の27億50百万円、経常利益が同5.0%増の30億円、純利益が同17.3%増の20億円としている。配当予想は同2円増配の年間52円(第2四半期末26円、期末26円)とした。予想配当性向は29.4%となる。
金融関連を中心とするシステム開発案件の受注が高水準に推移して、増収増益・連続増配予想である。
国内のIT投資需要はセキュリティ意識の高まりも背景に、クラウドやモバイル端末を活用したシステムへの移行、ITシステム基盤の統合・再構築、ビジネスプロセスの可視化・最適化、ビッグデータの分析と活用、仮想化技術の導入、ソーシャル・テクノロジーのビジネス活用などで高水準に推移する見込みだ。中期的にも収益拡大基調だろう。
■株価は15年7月高値に接近
なお14年11月のドイツ銀行ロンドン支店を割当先とする自己株式を活用した第三者割当による第1回〜第3回新株予約権の発行、および新株予約権買い取り契約(行使許可条項付・ターゲット・イシュー・プログラム「TIP・2014モデル」)について、15年3月12日に第1回新株予約権の権利行使が全て完了した。
第2回新株予約権については15年3月18日、5月12日、6月11日、7月9日、7月24日、8月21日、10月28日、11月25日、16年5月11日に行使許可を発表している。
株価の動きを見ると、1600円〜1900円近辺のレンジから上放れて、6月6日には年初来高値となる2140円まで上伸した。そして15年11月の戻り高値2090円を突破し、15年7月高値2198円に接近してきた。好業績を評価する動きだろう。
6月6日の終値2127円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS177円06銭で算出)は12〜13倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間52円で算出)は2.5%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1078円35銭で算出)は2.0倍近辺である。時価総額は約255億円である。
週足チャートで見ると26週移動平均線を突破してボックスレンジから上放れの形となった。また13週移動平均線が26週移動平均線を上抜いた。強基調への転換を確認した形だ。指標面に割高感はなく、15年7月高値を試す展開だろう。
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