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2016年06月08日

【アナリスト水田雅展の銘柄分析】パイプドHDは自律調整一巡感、17年2月期大幅増収増益・連続増配予想

 パイプドHD<3919>(東1)は旧パイプドビッツが株式移転で設立した持株会社である。情報資産プラットフォーム事業の「スパイラル」を主力として、広告事業やソリューション事業なども展開している。17年2月期は新規サービスの収益化も寄与して大幅増収増益・連続増配予想である。株価は年初来高値圏から一旦反落したが、自律調整が一巡して戻りを試す展開だろう。なお6月30日に第1四半期の業績発表を予定している。

■旧パイプドビッツが株式移転で設立した持株会社、グループ再編も推進

 旧パイプドビッツが15年9月1日付で株式移転によって純粋持株会社パイプドHDを設立し、パイプドHDが15年9月1日付で東証1部に新規上場した。

 国内最大規模の情報資産プラットフォーム「スパイラル」を基盤として、情報資産プラットフォーム事業(情報資産プラットフォーム「スパイラル」によるデータ管理などのクラウドサービス提供)、広告事業(アフィリエイトASP一括管理サービス「スパイラルアフィリエイト」など)、およびソリューション事業(インターネット広告制作やWebシステム開発の請負、アパレル・ファッションに特化したECサイト構築・運営受託、BIMコンサルティング事業、デジタルCRM事業)を展開している。

 グループ再編も推進し、16年3月1日付でパイプドビッツの事業の一部を会社分割(新設分割)もしくは当社が出資する新会社へ事業譲渡し、それらの事業を新設会社へ承継した。

 なお16年3月時点のグループ会社は、パイプドビッツ(情報資産プラットフォーム事業、広告事業、ソリューション事業)、ペーパーレススタジオジャパン(建築プロデュース&マネジメント事業、BIMコンサルタント事業)、アズベイス(ASP/SaaS型コールセンタープラットフォームサービス「BizBase」開発、14年3月子会社化)、パブリカ(自治体・官公庁のオープンデータを活用した「マイ広報紙」サービス提供、15年5月設立)、ウェアハート(アパレル・雑貨品ECサイト構築・運営受託、講談社が発行する女性誌ViViのEC展開を目的として15年7月設立)、ゴンドラ(情報資産プラットフォーム事業、広告事業、Webソリューション事業、ソーシャルマネジメント事業、16年3月設立でパイプドビッツのメディアストラテジーカンパニーを承継)、フレンディット(ECプロデュース事業、情報資産プラットフォーム事業、ソリューション事業、16年3月設立でパイプドビッツのアパレル・ファッションカンパニーを承継)、美歴(美容室向け電子カルテアプリ「美歴」を中心とするプラットフォーム構築、16年3月設立でパイプドビッツの美歴カンパニーを承継)、カレン(デジタルCRM事業、15年3月出資、15年12月追加出資、17年2月期から連結)、MAKE HOUSE(住宅業界向けBIM事業、15年4月設立で持分法適用関連会社)、Sprinklr Japan(ソーシャルマネジメントプラットフォーム事業、米国Sprinklrの子会社で15年2月出資)である。

 また15年3月にはパイプドビッツ総合研究所を設立している。政府の政策に対して情報通信技術の活用や課題、先行事例など、さまざまな調査研究や実証実験を行い、公表や提言などを通じて地域や社会の課題解決に貢献する。

■国内最大規模の情報資産プラットフォーム「スパイラル」が基盤

 情報資産プラットフォーム事業では、国内最大規模の情報資産プラットフォームである「スパイラル」を基盤として、アパレル特化型ECプラットフォーム「スパイラルEC」、会計クラウド「ネットde会計」「ネットde青色申告」、クラウド型グループウェア×CMS×SNS連携プラットフォーム「スパイラルプレース」などを展開している。

 また薬剤・医療材料共同購入プラットフォーム「JoyPla」、美容関連のヘアカルテ共有サービス「美歴」、地域密着型SNS「I LOVE 下北沢」、政治・選挙プラットフォーム「政治山」、BIM建築情報プラットフォーム「ArchiSymphony」、コールセンタープラットフォームサービス「BizBase」、自治体向け広報紙オープン化・活用サービス「マイ広報紙」、ソーシャルマネジメントプラットフォーム「Sprinklr」なども展開している。

 15年9月には地域密着型SNS「I LOVE 下北沢」が、下北沢東会(あずま通り商店街)と共同の連携体で実施する「外国人来街者に向けた街の魅力発信事業および、おもてなし提供等事業」が、経済産業省の「平成27年度地域商業自立促進事業」に採択された。

 15年12月にはパブリカの「マイ広報紙」が、100以上の自治体に展開している「子育てタウン:ママフレ」と連携した。

 16年1月には子会社パイプドビッツが、ITサービスマネジメントシステムISO20000−1認証を更新、品質マネジメントシステムISO9001認証と情報セキュリティマネジメントシステムISO27001認証を継続した。

■マイナンバー関連の受注好調

 15年7月には「スパイラル・マイナンバートータルソリューション」を開始した。マイナンバー運用体制整備をトータルサポートする。また「スパイラル・オムニチャネルソリューション」を開始した。オムニチャネル化に向けたスモールスタートを切ることができる実践基盤で、情報資産プラットフォーム「スパイラル」が顧客情報統一管理を担う。

 マイナンバー関連については、15年9月ビューティサロンチェーン運営のDu−Pay(東京都)、プレナス<9945>、15年11月飲食店チェーン運営のキープ・ウィルダン(東京都)、一級建築事務所のINA新建築研究所(東京都)、アリさんマークの引越社(東京都)、首都圏模試センター(東京都)、人材派遣型CROのイーピーメイト(東京都)からの受注を発表している。

 また16年5月には「スパイラル マイナンバー収集代行サービス」の提供を開始した。収集対象者への案内書類発送から、対象者の申請受付、不備チェック、データ化、管理、取扱報告書まで、パイプドビッツがワンストップで提供する。

■ストレスチェック義務化関連も開始

 15年9月にはクラウド型ストレスチェックサービス「こころの診断センター」を開始し、TAC<4319>がメンタルヘルス対策サービスとして創設する「ストレスチェック義務化トータルソリューション」に採用された。TACは改正労働安全衛生法(ストレスチェック義務化)対応サービスとして、Webストレスチェックおよびメンタルヘルス対策研修ならびに組織診断をワンストップで提供する。

 改正労働安全衛生法(ストレスチェック義務化)は15年12月1日に施行された。メンタルヘルス対策の充実・強化等を目的として、従業員50人以上の全事業所にストレスチェック実施を義務付けている。

■M&A・アライアンス戦略も積極活用

 M&A・アライアンス戦略も積極活用している。15年2月に世界有数のソフトウェアベンダーである米国Sprinklr(スプリンクラー)の日本法人Sprinklr Japanに出資(A種優先株式)し、15年3月には米国Sprinklrに純投資目的で総額約4百万米ドル出資した。

 15年4月には、ペーパーレススタジオジャパンとエヌ・シーエヌ(岐阜県)が住宅業界向けBIM事業を展開する合弁会社MAKE HOUSEを設立した。またソフトブレーン<4779>と業務提携した。

 16年3月には、SBIインベストメントが運営するFinTechビジネスイノベーション投資事業有限責任組合(FinTechファンド)に1億円出資した。またベトナムの事業法人MQ社と共同で、ベトナムにおけるC2Cマーケットプレース事業(フリマ事業)およびEC事業等を目的とする新会社MOKI(当社出資比率25%)の設立に関する基本合意書を締結した。

 16年4月にはゴンドラ、ジェイアール東日本企画(東京都)、TWENTY FOUR(東京都)、ビーマップ<4316>の4社共同出資により、インタラクティブ(双方向)コミュニケーション業務を展開する新会社(ゴンドラ出資比率10%)を設立した。

■契約数増加に伴うストック型収益構造

 15年2月期(旧パイプドビッツ)の四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(3月〜5月)7億14百万円、第2四半期(6月〜8月)7億98百万円、第3四半期(9月〜11月)8億00百万円、第4四半期(12月〜2月)8億61百万円、営業利益は第1四半期1億40百万円、第2四半期1億65百万円、第3四半期1億71百万円、第4四半期1億49百万円だった。

 契約数増加に伴って月額サービス収入が拡大するストック型の収益構造である。15年2月期末の有効アカウント数(全事業合計)は1万757件で、14年2月期末比661件増加した。15年2月期の売上総利益率は76.1%で14年2月期比3.1ポイント低下、販管費比率は56.5%で同0.2ポイント低下、売上高営業利益率は19.7%で同2.8ポイント低下、ROEは15.9%で同2.2ポイント低下、自己資本比率は77.6%で同0.2ポイント低下、配当性向は34.1%だった。

■16年2月期は先行投資負担で減益

 前期(16年2月期)の連結業績は、売上高が40億06百万円、営業利益が5億80百万円、経常利益が5億60百万円、純利益が2億47百万円だった。前々期(旧パイプドビッツ15年2月期)との比較で見ると26.3%増収、8.2%営業減益、11.7%経常減益、33.6%最終減益だった。

 情報資産プラットフォーム事業やソリューション事業が好調に推移して16期連続増収だったが、人員増加などの先行投資負担やソリューション売上増加に伴う外注加工費の増加などで減益だった。有効アカウント数(全事業合計)は1万734件で15年2月期末比23件減少(獲得数2632件、解約数2655件)した。「ネットde青色申告」フリーミアム化に伴って443件減少した。また第3四半期に「スパイラルプレース」の中型・大型解約が発生したため一時的に解約率が上昇した。期末人員は同62名増加の322名だった。

 売上総利益率は71.3%で同4.8ポイント低下、販管費比率は56.8%で同0.3ポイント上昇、そして売上高営業利益率は14.5%で同5.2ポイント低下した。営業外費用では持分法投資損失25百万円を計上、特別損失では組織再編費用18百万円、減損損失35百万円を計上した。ROEは11.1%で同4.8ポイント低下した。配当は年間18円(旧パイプドビッツが実施した第2四半期末8円+パイプドHDが実施する期末10円)とした。配当性向は56.8%、純資産配当率は6.3%となる。

 セグメント別に見ると、情報資産プラットフォーム事業は売上高が同15.8%増の30億41百万円、営業利益(連結調整前)が同7.3%減の5億52百万円だった。主力サービスの好調で増収だったが、「マイ広報紙」や「Sprinklr」などの初期投資や販管費の増加で減益だった。有効アカウント数は1万390件(「スパイラル」3300件、「スパイラルEC」55件、「ネットde会計」「ネットde青色申告」1285件、「スパイラルプレース」5507件など)だった。

 広告事業は売上高が同51.6%増の2億22百万円、営業利益が同3.0倍の53百万円だった。有効アカウント数は202件となった。顧客基盤が順調に拡大して増収増益だった。なお売上高については広告枠の仕入高を売上高から控除する純額表示(ネット表示)している。広告枠仕入高控除前の総額表示(グロス表示)の売上高は20億35百万円だった。ソリューション事業は売上高が同85.7%増の7億43百万円、営業利益が25百万円の赤字(前々期は11百万円の黒字)だった。有効アカウント数は142件となった。新規連結も寄与して大幅増収だったが、売上高拡大に向けたコストが先行した。

 16年2月期の四半期別推業績移を見ると、売上高は第1四半期(旧パイプドビッツ3月〜5月)9億35百万円、第2四半期(同6月〜8月)9億46百万円、第3四半期(パイプドHD9月〜11月)9億64百万円、第4四半期(パイプドHD12月〜2月)11億60百万円、営業利益は第1四半期1億64百万円、第2四半期1億78百万円、第3四半期86百万円、第4四半期1億51百万円だった。

■17年2月期は大幅増収増益・連続増配予想

 今期(17年2月期)の連結業績予想(4月1日公表)については、売上高が前期(16年2月期)比34.8%増の54億円、営業利益が同72.2%増の10億円、経常利益が同76.5%増の9億90百万円、純利益が同2.3倍の5億80百万円としている。

 主力の「スパイラル」が順調に伸長し、さらに新規サービスの収益化など先行投資や組織再編の効果で大幅増収増益予想としている。なおSprinklr Japanおよび米国Sprinklrの投資損益については織り込んでいない。配当予想は同3円増配の年間21円(第2四半期末9円、期末12円)としている。連続増配で予想配当性向は27.5%となる。

■中期経営計画の目標数値を見直したが、中期的に収益拡大期待

 14年3月策定の「中期経営計画2017」では、15年2月期から17年2月期を「次世代ITベンダーへと革新する3ヵ年」と位置付けて、目標数値に17年2月期売上高92億円、営業利益28億円を掲げていたが、先行投資の進捗状況などを踏まえて16年2月29日に業績目標の見直しを発表した。修正後の目標数値は17年2月期売上高55億円、営業利益14億円としている。

 中期経営計画の目標数値を減額したが、事業会社の収益改善を推進して中期的に収益拡大が期待される。

■株価は調整一巡して戻り試す

 株価の動きを見ると、4月の年初来高値圏1400円近辺からから一旦反落したが、1200円近辺で下げ渋る動きだ。自律調整の範囲だろう。

 6月7日の終値1208円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS76円50銭で算出)は15〜16倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間21円で算出)は1.7%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS240円98銭で算出)は5.0倍近辺である。時価総額は約98億円である。

 週足チャートで見ると、26週移動平均線に続いて13週移動平均線を割り込んで調整局面の形だが、1200円近辺で下げ渋る動きだ。指標面に割高感はなく、自律調整が一巡して戻りを試す展開だろう。



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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 07:44 | アナリスト水田雅展の銘柄分析