■貴金属リサイクルや農林水産品販売を展開
貴金属リサイクル(貴金属事業)や産業廃棄物処理(環境事業)などの貴金属関連事業、および農林水産品を扱う食品関連事業を展開している。16年3月期の売上高構成比は貴金属関連事業64.3%、食品関連事業35.7%、営業利益構成比は貴金属関連事業75.1%、食品関連事業25.9%だった。
貴金属リサイクルでは、半導体・電子材料部材・化成品などの貴金属製品をエレクトロニクス業界へ販売するとともに、半導体や電子部品を製造する過程で規格外となった部品(スペックアウト品)などの貴金属含有スクラップを国内外のメーカーから回収・処理・製錬することで、貴金属(金・プラチナ・パラジウムなど)をリサイクルする。
産業廃棄物処理では、写真の感光材料からの銀の回収、廃酸や廃アルカリの無害化中間処理など、産業廃棄物の回収・処理を行っている。無害化処理技術に強みを持ち、全国47都道府県での収集運搬業許可を得ている。
貴金属関連事業では「東アジアNO.1リファイナー」を目指し、国内外の拠点拡充、貴金属原料の確保と化成品などの製品販売強化、および製品・技術開発強化を推進している。海外は中国、台湾、シンガポール、タイ、フィリピン、マレーシア、ベトナムに展開し、ベトナムでは貴金属製錬工場の建設を進めている。
食品関連事業では、すりみ・エビ・貝類などの水産品、鶏卵・鶏肉・ポーク・ビーフなどの畜産品、乾燥野菜・冷凍野菜などの農産品を取り扱っている。取扱商品の豊富さとグローバルな調達ネットワークが強みだ。16年2月には水産品専門商社のガルフ食品の全株式を取得した。海外は中国、タイに拠点展開している。
■エレクトロニクス業界の生産動向や貴金属・食品市況が影響する収益構造
四半期別の業績推移を見ると、16年3月期の売上高は第1四半期450億14百万円、第2四半期403億52百万円、第3四半期407億69百万円、第4四半期359億30百万円で、営業利益は第1四半期9億68百万円、第2四半期10億79百万円、第3四半期7億09百万円、第4四半期3億69百万円だった。
収益は半導体・電子部品などエレクトロニクス業界の生産動向、貴金属および食品市況の影響を受けやすい。16年3月期連結業績は15年3月期比9.7%減収、42.2%営業減益、35.1%経常減益、23.0%最終減益だった。半導体・電子部品業界の生産減少、写真感材業界の市場縮小、金を除く貴金属相場の下落などが影響した。
売上総利益は同8.8%減少したが、売上総利益率は9.5%で同0.1ポイント上昇した。販管費は同7.0%上昇し、販管費比率は7.5%で同1.1ポイント上昇した。営業外収益では持分法投資利益が増加した。ROEは5.0%で同1.8ポイント低下、自己資本比率は74.1%で同4.4ポイント上昇した。配当は株式公開20周年記念配当2円を加えて年間28円(第2四半期末14円、期末14円)とした。配当性向は28.8だった。
セグメント別に見ると、貴金属関連事業は売上高が同16.3%減の1041億59百万円、営業利益が同47.4%減の23億47百万円だった。金を除いた販売価格の下落も影響した。食品関連事業は売上高が同5.2%増の579億05百万円だったが、営業利益が同18.1%減の7億77百万円だった。
■17年3月期は増収増益予想で収益改善期待
今期(17年3月期)の連結業績予想(5月13日公表)については、売上高が前期(16年3月期)比11.1%増の1800億円、営業利益が同12.0%増の35億円、経常利益が同3.1%増の39億円、純利益が同1.0%増の26億円としている。配当予想は前期と同額の年間28円(第2四半期末14円、期末14円)で予想配当性向は28.4%となる。
貴金属関連事業では国内外の拠点強化を推進するとともに、新規の需要開拓を積極的に推進する。食品関連事業では、顧客ニーズを的確にとらえた営業活動を推進する。貴金属相場の回復などで収益改善基調が期待される。
■中期経営計画で19年3月期営業利益50億円目指す
16年5月策定の中期経営計画(16〜18年度)では目標に19年3月期売上高2100億円、連結営業利益50億円を掲げている。既存事業の収益拡大化、新たな収益源の構築、東アジア地区での積極拡大、最適な管理体制の構築、人材育成・確保の5項目を重点方針とした。貴金属関連事業と食品関連事業の両分野において、製品・技術開発、国内外の拠点整備・機能拡充など事業拡大に必要な成長戦略を行う。
貴金属関連事業では、長年培った貴金属リサイクルおよび環境保全に関するノウハウやインフラを最大限活用し、資源リサイクルの総合力で顧客ニーズにマッチしたアイテム拡充と省金化への対応により、環境価値の高い商品・サービスを提供することでシェア拡大と収益性向上を図る。
食品関連事業では、これまで培った品質保証等に関するノウハウや調達力を活かして、安全・安心かつ高品質な食品原材料を安定的に供給することで顧客ニーズに対応し、海外を含めた市場拡大と収益向上を図る。水産品においては、16年2月に株式取得したガルフ食品との相乗効果を含めて事業拡大を図る。
■株主優待制度の対象を1年以上保有株主に変更
5月13日に株主優待制度の対象の変更を発表した。従来は毎年3月31日現在で当社株式1単元(100株)以上保有する国内在住株主を対象としていたが、今後は1単元以上を継続1年以上保有する国内在住株主を対象とする。17年3月31日現在の株主から変更後の新制度を適用する。ただし新制度導入初年度に限り、1単元以上を半年以上継続保有する株主に対しても株主優待品を贈呈する。
■株価は下値切り上げ、1倍割れPBRも見直して戻り試す
株価の動きを見ると、4月の年初来安値1096円から5月安値1129円、6月安値1180円と下値を切り上げている。
7月7日の終値1267円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS98円73銭で算出)は12〜13倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間28円で算出)は2.2%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1967円65銭で算出)は0.6倍近辺である。なお時価総額は約366億円である。
週足チャートで見ると戻りを押さえていた26週移動平均線突破の動きを強めている。そして13週移動平均線が上向きに転じた。0.6倍近辺という1倍割れPBRも見直して戻りを試す展開だろう。
(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)
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