■金融事業を中心に国内外でM&Aを積極活用して業容拡大
国内外でM&Aや債権承継などを積極活用して業容を拡大してきた。そして従来の短期的なM&A型の事業拡大から、銀行業を中心とする持続的な利益拡大へのステージアップを目指して、国内外において事業基盤の強化に取り組み、特に韓国やインドネシアなどアジア地域での事業拡大を推進している。
16年3月期から事業セグメントを再構成し、国内金融事業(信用保証業務、債権回収業務、クレジット・信販業務、その他の金融業務)、韓国金融事業(貯蓄銀行業務、債権回収業務、キャピタル業務)、東南アジア金融事業(銀行業務、債権回収業務、販売金融業務)、総合エンターテインメント事業(アミューズメント施設運営、アミューズメント機器用景品の販売、遊戯機の周辺機器に関するコンピュータシステム等の開発・製造・販売)、不動産事業(戸建分譲を中心とした不動産売買、流動化不動産を中心とした収益物件の仕入・販売)、投資事業、その他事業(遊技場を中心とした各種商業施設の設計・施工、システム開発など)としている。
16年3月期のセグメント別(連結調整前)営業収益構成比は、国内金融事業が15%、韓国金融事業が33%、東南アジア金融事業が16%、総合エンターテインメント事業が22%、不動産事業が8%、投資事業が4%、その他事業が2%だった。なお非金融分野の総合エンターテインメント事業および不動産事業は、連結子会社のアドアーズ<4712>(12年6月子会社化)が展開している。
■国内金融事業は新規ビジネスとしてビットコインサービスも開始
国内金融事業では、日本保証(12年3月ロプロが武富士の消費者金融事業を承継、12年9月ロプロと日本保証が合併)、Jトラストカード(11年8月楽天KCを子会社化、15年1月「KCブランド」事業を譲渡、14年3月子会社化した個品割賦事業NUCSの「NUCSブランド」事業を承継、15年1月Jトラストカードに商号変更、15年5月完全子会社化)などを傘下に置いている。
15年3月Jトラストベンチャーキャピタル合同会社がSmartEbook<2330>の第1回無担保転換社債型新株予約権付社債および第6回新株予約権を引き受けた。15年4月子会社クレディアの全株式を売却した。また日本最大のビットコイン取引所を営むBTCボックスの第三者割当増資を引き受けて持分法適用会社化した。日本国内のビットコイン決済圏の確立、海外取引所の創設、新興国における新たな決済手段の構築、ビットコインを活用した新規ビジネスの創出を目指す。
16年6月子会社Jトラストフィンテックがビットコイン取引サービス「J−Bits」を提供開始した。Jトラストフィンテックは第1弾として15年8月からブロックチェーン情報サイト「コインポータル」を運営し、第2弾として「J−Bits」の提供を開始した。
■韓国金融事業は総合金融サービス展開に向けた事業基盤整備が完了
韓国金融事業は、12年10月に貯蓄銀行認可を受けたJT親愛貯蓄銀行(15年7月親愛貯蓄銀行から商号変更)が13年1月韓国・ソロモン貯蓄銀行から、13年6月韓国・エイチケー貯蓄銀行から消費者信用貸付債権の一部を譲り受けた。さらに14年3月韓国・ハイキャピタル貸付および韓国・ケージェイアイ貸付を子会社化、14年8月韓国・ハイキャピタル貸付、韓国・ケージェイアイ貸付および韓国・ネオラインクレジット貸付の貸付事業を韓国・JT親愛貯蓄銀行に譲渡した。
また15年1月韓国・JT貯蓄銀行(スタンダードチャータード貯蓄銀行から商号変更)の全株式を取得、15年3月韓国・JTキャピタル(スタンダードチャータードキャピタルから商号変更)の全株式を取得した。15年10月ネオラインクレジット貸付およびハイキャピタル貸付の全株式を譲渡して連結子会社から除外した。韓国において総合金融サービスを展開するうえでの事業基盤整備が完了した。
■東南アジア金融事業は成長市場のインドネシアに積極展開
東南アジア金融事業は13年12月シンガポールの子会社Jトラストアジアがインドネシアのマヤパダ銀行と資本業務提携、14年11月インドネシアのJトラストインドネシア銀行(15年6月ムティアラ銀行から商号変更)を連結子会社化、15年5月Jトラストアジアの子会社Jトラスト・インベストメント・インドネシアを設立、16年5月インドネシアのマヤパダ銀行の全株式を売却した。
また15年5月Jトラストアジアがオートバイ販売金融事業のタイ・GL社の転換社債を引き受け、15年12月株式転換権を行使して発行済普通株式の6.43%を取得した。さらに16年5月Jトラストアジアがタイ・GL社に転換社債引受契約を締結する旨の申し入れを行った。タイ・GL社との提携を強化し、ASEAN地域における販売金融事業の拡大を図る。
7月11日には、Jトラストアジアがタイ・GL社と共同でインドネシアに設立した割賦販売金融事業のGLFI社(16年2月設立、出資比率20%で持分法適用関連会社)が、所要の免許を取得して業務開始したと発表している。
■M&A・のれん償却・事業再編・不良債権処理などで収益変動
四半期別の推移を見ると、15年3月期は営業収益が第1四半期159億28百万円、第2四半期160億51百万円、第3四半期161億41百万円、第4四半期151億61百万円、営業利益が3億58百万円の赤字、22億74百万円の赤字、6億89百万円の赤字、18億96百万円の赤字、16年3月期は営業収益が194億90百万円、182億88百万円、201億69百万円、175億31百万円、営業利益が19億51百万円の赤字、3億84百万円の赤字、2億27百万円の黒字、20億06百万円の赤字だった。
M&A・のれん償却・事業再編・不良債権処理などで収益が大幅に変動する可能性がある。なお16年3月期を目途に任意適用予定としていた国際財務報告基準(IFRS)は任意適用時期を延期した。新たな公認会計士(優成監査法人)のもとで再度IFRS開示体制の整備を行うとしている。
16年3月期(日本基準)の営業収益は過去最高を更新した。割賦立替手数料や貸付金利息が減少したが、JT貯蓄銀行およびJトラストインドネシア銀行の通期連結も寄与して銀行業における営業収益が増加した。営業利益は赤字が縮小した。事業規模拡大に伴って人件費、のれん償却、銀行業における営業費用が増加したが、貸倒引当金繰入額や利息返還損失引当金繰入額など貸倒関係費が減少した。経常利益、純利益は為替差損益悪化、負ののれん発生益一巡なども影響して赤字だった。
営業総利益は15年3月期比7.4%増加したが、営業総利益率は48.4%で同5.3ポイント低下した。販管費は同3.6%増加したが、販管費比率は53.8%で同8.2ポイント低下した。営業外では為替差損益が悪化(15年3月期差益28億14百万円、16年3月期差損8億71百万円)し、特別利益では負ののれん発生益145億73百万円が一巡した。ROEはマイナス3.3%で同8.9ポイント低下、自己資本比率は32.1%で同2.7ポイント低下した。
配当は同2円増配の年間12円(第2四半期末5円、期末7円)だった。利益配分については、将来の経営環境や業界動向を総合的に勘案しながら、積極的な利益還元を図ることを基本方針としている。
セグメント別の営業利益(連結調整前)は、国内金融事業が同2.1倍の37億99百万円、韓国金融事業が2億60百万円の黒字(同62億96百万円の赤字)、東南アジア金融事業が78億98百万円の赤字(同1億57百万円の赤字)、総合エンターテインメント事業が4億75百万円の赤字(同3億85百万円の黒字)、不動産事業が同24.3%増の5億円、投資事業が同4.1倍の25億62百万円、その他事業が1億93百万円の赤字(同45百万円の黒字)だった。
国内金融事業は同41.3%減収だが、KCカード譲渡や日本保証の構造改革などで人件費や利息返還損失引当金繰入額が減少した。韓国金融事業は同35.5%増収で、債権売却損や貸倒引当金繰入額も減少した。東南アジア金融事業はJトラストインドネシア銀行を連結化して大幅増収だが、財務健全化に向けた貸倒引当金積み増し、のれん償却計上で赤字だった。投資事業はJトラストアジアにおけるタイ・GL社転換社債の評価益や転換時実現利益が寄与した。
なお16年3月期連結業績をIFRSベースで推計すると営業収益747億円、営業利益21億円で営業黒字化を達成したとしている。日本基準と比べて、減損損失振替の影響がマイナス17億円、Jトラストインドネシア銀行の期ずれの影響がプラス12億円、のれん償却額の影響がプラス30億円、貸倒引当金の計算における差異の影響がプラス34億円、国内金融事業における買取債権の公正価値の増加の影響がプラス3億円になるとしている。さらに韓国金融事業において債権評価を実効金利法に変更した影響や負ののれんの影響を考慮すると、事業利益の水準は64億円相当としている。
■17年3月期(日本基準)は黒字予想
今期(17年3月期)の連結業績予想(日本基準、5月13日公表)は、営業収益が前期(16年3月期)比30.1%増の982億18百万円、営業利益が112億66百万円の黒字(前期は41億14百万円の赤字)、経常利益が114億13百万円の黒字(同46億78百万円の赤字)、純利益が95億86百万円の黒字(同57億12百万円の赤字)としている。配当予想は前期と同額の年間12円(第2四半期末6円、期末6円)で、予想配当性向は14.0%となる。
セグメント別営業利益(日本基準)の計画は、国内金融事業が39億円、韓国金融事業が51億円、東南アジア金融事業が3億円、非金融事業(総合エンターテインメント事業、不動産事業、その他事業)が15億円、投資事業が30億円としている。
国内金融事業では信用保証、債権回収とも利益拡大を目指す。韓国金融事業では営業資産拡大を目指す。東南アジア金融事業は下期偏重の計画で、経常的な黒字化が射程圏に入ったとしている。投資事業では30億円以上の利益を確保して本社費用の増加分をカバーする。
なおIFRSベースでの予想は営業収益1068億円、営業利益151億円、純利益131億円としている。IFRSベースに対して日本基準は、営業収益で期ずれの影響がマイナス86億円、営業利益で正のれんによる影響がマイナス30億円、期ずれの影響がマイナス8億円、純利益で正のれんによる影響がマイナス30億円、期ずれの影響がマイナス5億円としている。
IFRSベースでのセグメント別営業利益の計画は、国内金融事業40億円、韓国金融事業55億円、東南アジア金融事業32億円、非金融事業(総合エンターテインメント事業、不動産事業、その他事業)18億円、投資事業30億円としている。
■18年3月期ROE10.0%目標
15年5月策定の中期経営計画では中期ビジョンとして「既成概念にとらわれないファイナンシャルサービスを提供する企業を目指す」を掲げ、経営目標数値は最終18年3月期営業収益1421億円、営業利益217億円、ROE10.0%としている。セグメント別営業利益(連結調整前)の計画は国内金融事業44億円、韓国金融事業83億円、東南アジア金融事業53億円、総合エンターテインメント事業11億円、不動産事業7億円、その他非金融事業5億円である。
事業拡大が望めるアジアでの銀行業からの利益貢献を中心として、成長市場におけるIRR15%以上の投資案件をターゲットに3年間で500億円〜1000億円の投資を目指す。また株式価値の最大化を経営の最重要課題の一つとして位置付け、株価が割安であると判断したときには機動的に自社株買いを実施する。
国内金融事業では消費者金融事業を縮小し、不動産関連の信用保証事業および債権回収事業を拡大するとともに、M&Aを活用して新分野への進出を目指す。韓国金融事業ではグループ内の相互連携を通じて各事業を有機的に連携させ、債権残高積み増しと収益拡大に取り組む。東南アジア金融事業では、Jトラストインドネシア銀行の不良債権回収事業の収益強化と財務健全性の向上に取り組むとともに、さらなるM&Aを推進する方針だ。
中期成長に向けて、M&Aや事業再編を活用したグループの事業基盤構築・強化に取り組んでいるため、M&A・事業再編および事業構造改革に伴う一時的利益・費用の計上で収益が大幅に変動する可能性もあるが、韓国事業の収益改善、東南アジアへの積極的な業容拡大、グループシナジーなどの効果で銀行業の収益が本格化し、中期的に収益拡大が期待される。
■17年3月末を目途に東証1部へ市場変更申請方針
16年5月に東証1部への申請に向けた検討を開始したと発表している。17年3月末を目途に申請を行いたいとしている。
また6月30日に主要株主の異動を発表した。当社代表取締役社長であり筆頭株主である藤澤信義氏の資産管理会社FUJISAWA PTE.LTD.が第2位株主(総株主の議決権の数に対する割合14.02%)となった。
■株価は調整一巡して出直り
株価の動きを見ると、地合い悪化の影響で6月24日に688円まで調整する場面があった。ただし2月の年初来安値668円を割り込むことなく切り返しの動きを強めている。
7月14日の終値770円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS85円56銭で算出)は9倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間12円で算出)は1.6%近辺、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS1455円90銭で算出)は0.5倍近辺である。時価総額は約866億円である。
週足チャートで見ると26週移動平均線が戻りを押さえる形だが、安値圏の下ヒゲで調整一巡感を強めている。出直り展開だろう。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)
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