ジャパンフーズ<2599>(東1)は飲料受託生産の国内最大手である。17年3月期増益予想で、中期成長に向けて新規ビジネス分野への展開も積極推進する。株価は地合い悪化の影響を受ける場面があったが、調整一巡して出直り展開だろう。猛暑・水不足関連としても注目される。
■飲料受託生産の国内最大手
伊藤忠商事<8001>系で飲料受託生産の国内最大手である。主要得意先はアサヒ飲料、キリンビバレッジ、伊藤園<2593>、サントリー食品インターナショナル<2587>などの大手飲料メーカーで、品目別では炭酸飲料と茶系飲料、容器別ではペットボトル飲料を主力としている。
16年3月期製造数量(ケース数)の品目別構成比は炭酸飲料62.5%、茶系飲料14.0%、酒類飲料6.6%、コーヒー飲料5.7%、果実飲料4.9%、機能性飲料等6.4%だった。容器別構成比はPETボトル70.8%(うち大型PET24.0%、小型PET・ボトル缶46.7%)、缶19.8%、広口ボトル缶(TEC缶含む)6.0%、瓶1.9%、その他1.6%だった。
■フレキシブルで効率的な生産に強み
本社工場では12年7月に世界最新鋭の炭酸・非炭酸兼用無菌充填ライン(Eライン)が稼動し、14年3月には既存の大型ペットボトルライン(Tライン)もリバイタライズ(機能増強)で炭酸・非炭酸兼用無菌充填ライン化した。さまざまな容器(ペットボトル、瓶、缶)の飲料を世界最大級の本社1工場で生産し、市場環境や顧客ニーズの変化に対応したフレキシブルで効率的な生産を強みとしている。
また本社工場のある千葉県長柄町は、首都圏に近いロケーションという競争優位性に加えて、表層地盤の揺れやすさが0.4〜0.6と安定しているため災害優位性にも優れている。
■新規ビジネスも積極推進
新規ビジネス(海外飲料受託製造事業、国内水宅配事業、自社ブランド商品)への展開も積極推進している。
国内で水宅配事業を展開するウォーターネット(当社出資比率34%)、中国における日系初の清涼飲料受託製造会社である東洋飲料(東洋製罐と合弁、当社出資比率24.9%)を、17年3月期に連結化してグループ経営を強化する方針だ。ウォーターネットは黒字が定着し、東洋飲料は中国系メーカーを中心に受託製造数量が大幅に増加して16年度黒字化目途としている。
自社ブランド商品に関しては、本社工場がある千葉県産の農林水産物を使用した商品「おいしい房総サイダー」シリーズなどを千葉県中心に販売している。
■上期(4月〜9月)繁忙期、下期(10月〜3月)閑散期の収益構造
個人消費や天候などの影響を受けやすいことに加えて、飲料業界全体が夏場の上期(4〜9月)に繁忙期となり、冬場の下期(10〜3月)は閑散期となって生産量が減少するため、下期は営業損益が赤字となる収益構造だ。なお16年3月期から一部飲料メーカーとの取引形態が有償支給から無償支給に変更されたため、見かけ上の売上高は大幅に減少したが、実質的な売上高である加工料収入に影響はない。また建物およびリース資産を除く有形固定資産の減価償却方法について、16年3月期から「主として定率法」を「主として定額法」に変更した。
四半期別推移を見ると、15年3月期は受託製造数量が第1四半期1344万6千ケース、第2四半期1068万9千ケース、第3四半期735万3千ケース、第4四半期926万ケース、売上高が89億32百万円、67億28百万円、45億49百万円、46億53百万円、営業利益が6億37百万円、1億54百万円、4億67百万円の赤字、2億65百万円の赤字、16年3月期は受託製造数量が1405万7千ケース、1122万9千ケース、637万3千ケース、958万1千ケース、売上高が55億28百万円、40億56百万円、26億33百万円、35億58百万円、営業利益が10億54百万円、5億10百万円、5億45百万円の赤字、53百万円の黒字だった。
16年3月期(非連結)は、一部飲料メーカーとの取引形態変更に伴い見かけ上の売上高は大幅減収だが、受託数量増加によって実質的な売上高となる加工料収入が増加し、コスト低減も寄与して計画超の大幅増益だった。受託製造数量は新規商材獲得も寄与して15年3月期比1.2%増の4124万ケースだった。なお有償支給取引は全体の約2割に低下したようだ。
売上総利益は同57.8%増加した。加工料収入増加、新規商材獲得に伴うプロダクトミックス改善が寄与した。販管費は4.5%増加した。営業利益増減分析では増益要因が加工料売上増加4億59百万円、電力・燃料等ユーテリティ関連コスト低減4億23百万円、減価償却方法変更に伴う減価償却費減少4億37百万円、減益要因が修繕費や労務費などの増加3億66百万円としている。
特別利益に国庫補助金10億76百万円、特別損失に固定資産圧縮損7億71百万円、関係会社株式評価損3億80百万円を計上した。ROEは6.0%で同6.3ポイント上昇、自己資本比率は37.4%で同8.8ポイント低下した。配当性向は29.9%だった。配当の基本方針は、健全な財務体質を目指し、将来の事業発展に備えた設備投資等のための内部留保を確保する一方、業績に応じた安定かつ継続的な配当を行うとしている。
■17年3月期も増益予想
今期(17年3月期)の非連結業績予想(4月26日公表)については、売上高が前期(16年3月期)比8.1%減の145億円、営業利益が同1.6%増の10億90百万円、経常利益が同3.8%増の11億円、純利益が同38.0%増の6億円としている。
新規商材受託などで受託製造数量が増加し、実質的な売上高となる加工料収入および売上総利益が増加する。操業度上昇効果やコストダウン効果も寄与して増益予想である。配当予想は前期と同額の年間27円(第2四半期末10円、期末17円)としている。予想配当性向は21.7%となる。
■新中期経営計画で19年3月期ROE10%目標
16年4月策定の16年度〜18年度新中期経営計画「“JUMP+2018”−躍動−」では、成長戦略の方向性・キーワードを「戦略的パートナーシップ」「自立自発」「100年企業」「イノベーション」とした。2つの成長戦略には、コアビジネス(国内飲料受託製造事業)の収益拡大と、新規ビジネス(海外飲料受託製造事業、国内水宅配事業、自社ブランド商品)の着実な推進を掲げている。
コアビジネスでは「名実ともに日本一のパッカー」を目指し、経営課題としている「ふ(防ぐ)」「け(削る)」「か(稼ぐ)」を確実に実行する。品質向上の追求、ローコストオペレーション(生産効率・稼働率・原単位の向上)、新規商材の取り込みを積極推進するとともに、既存設備スクラップ&ビルドなどの積極投資を推進して競争力向上を図る。新規ビジネス分野では、もう一つの経営基盤構築に向けて、戦略的パートナーシップも活用して業容拡大を目指す。
また18年3月期から連結決算を開始する方針で、経営目標値として19年3月期連結売上高168億円、営業利益19億円、経常利益16億円、当期純利益10億円、総資産209億円、株主資本93億円、ROE10.0%、ROA4.0%を掲げている。経常利益の構成はコアビジネス80%、新規ビジネス20%のイメージである。3期合計の設備投資額は95億円としている。
■飲料受託生産の役割・存在感が一段と高まる
飲料業界全体が天候の影響を受けやすいことに加えて、大手飲料メーカーの内製拡大による受託製造量の減少を懸念する見方もあるようだが、夏場の繁忙期と冬場の閑散期という季節間の需要格差が大きい業界のため、大手飲料メーカーにとって内製拡大は設備投資や固定費負担の面でリスクが大きい。
また飲料メーカーは経営効率化の観点からも、経営資源の重点をマーケティング分野にシフトする動きを強めている。このため飲料受託生産の役割や存在感は一段と高まっている。そして当社は飲料受託生産の最大手として、高品質でフレキシブルな生産対応が可能な強みを発揮して受託製造量の増加が期待される。中期的に収益拡大基調だろう。
■株主優待制度は毎年3月末に実施
株主優待制度は毎年3月31日時点の1単元(100株)以上所有株主を対象として、自社製品詰め合わせセットなどを贈呈している。
■株価は調整一巡して出直り
株価の動きを見ると、地合い悪化の影響で6月27日に1090円まで調整する場面があったが、その後は切り返しの動きを強めている。
7月14日の終値1171円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS124円41銭で算出)は9〜10倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間27円で算出)は2.3%近辺、前期実績PBR(前期実績BPS1531円29銭で算出)は0.8倍近辺である。時価総額は約60億円である。
週足チャートで見ると26週移動平均線突破の動きを強めている。1倍割れPBRで割安感が強く、猛暑・水不足関連としても注目される。調整一巡して出直り展開だろう。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)
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2016年07月15日
ジャパンフーズは調整一巡して出直り、17年3月期増益予想で猛暑・水不足関連
【アナリスト水田雅展の銘柄分析の最新記事】
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 09:23
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