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2016年07月19日

パイプドHDは17年2月期大幅増収増益・連続増配予想

 パイプドHD<3919>(東1)は情報資産プラットフォーム「スパイラル」を基盤として、情報資産プラットフォーム事業、広告事業、ソリューション事業を展開している。17年2月期は新規サービスの収益化も寄与して大幅増収増益・連続増配予想である。株価は安値圏だが調整一巡して出直りが期待される。

■旧パイプドビッツが株式移転で設立した持株会社

 15年9月パイプドビッツが純粋持株会社パイプドHDを設立して東証1部に上場した。グループ再編も推進し、16年3月にはパイプドビッツの事業の一部を新設会社へ承継した。

 国内最大規模の情報資産プラットフォーム「スパイラル」を基盤として、情報資産プラットフォーム事業(情報資産プラットフォーム「スパイラル」によるデータ管理などのクラウドサービス提供)、広告事業(アフィリエイトASP一括管理サービス「スパイラルアフィリエイト」など)、ソリューション事業(インターネット広告制作やWebシステム開発の請負、アパレル・ファッションに特化したECサイト構築・運営受託、BIMコンサルティング、デジタルCRM)を展開している。16年2月期の売上構成比は情報資産プラットフォーム事業76%、広告事業6%、ソリューション事業18%だった。

 16年2月期の連結子会社は、パイプドビッツ(情報資産プラットフォーム・広告・ソリューション事業)、ペーパーレススタジオジャパン(建築プロデュース&マネジメント・BIMコンサルタント事業)、アズベイス(コールセンタープラットフォームサービス「BizBase」開発・提供)、パブリカ(オープンデータサービス開発・販売)、ウェアハート(アパレル・雑貨品ECサイト構築・運営受託)、カレン(デジタルCRM事業)である。また持分法適用関連会社はMAKE HOUSE(住宅業界向けBIM事業)で、持分法を適用しない関連会社はSprinklr Japan(ソーシャルマネジメントプラットフォーム事業)である。

 なお16年3月新設の事業承継会社は、ゴンドラ(情報資産プラットフォーム・広告・Webソリューション・ソーシャルマネジメント事業)、フレンディット(ECプロデュース・情報資産プラットフォーム・ソリューション事業)、美歴(美容室向け電子カルテ「美歴」を中心とするプラットフォーム構築)である。

■国内最大規模の情報資産プラットフォーム「スパイラル」が基盤

 主力の情報資産プラットフォーム事業は、国内最大規模の情報資産プラットフォームである「スパイラル」を基盤として、アパレル特化型ECプラットフォーム「スパイラルEC」、会計クラウド「ネットde会計」「ネットde青色申告」、クラウド型グループウェア×CMS×SNS連携プラットフォーム「スパイラルプレース」などを展開している。

 また薬剤・医療材料共同購入プラットフォーム「JoyPla」、美容関連ヘアカルテ共有サービス「美歴」、地域密着型SNS「I LOVE 下北沢」、政治・選挙プラットフォーム「政治山」、BIM建築情報プラットフォーム「ArchiSymphony」、コールセンタープラットフォームサービス「BizBase」、自治体向け広報紙オープン化・活用サービス「マイ広報紙」、ソーシャルマネジメントプラットフォーム「Sprinklr」なども展開している。AKB48「選抜総選挙」の総選挙集計事務局も運営している。

 15年7月マイナンバー運用体制整備をサポートする「スパイラル・マイナンバートータルソリューション」を開始した。またオムニチャネル対応で顧客情報統一管理を担う「スパイラル・オムニチャネルソリューション」を開始した。

 15年9月クラウド型ストレスチェックサービス「こころの診断センター」が、TAC<4319>の改正労働安全衛生法(ストレスチェック義務化)対応サービス「ストレスチェック義務化トータルソリューション」に採用された。15年12月施行の改正労働安全衛生法は従業員50人以上の全事業所にストレスチェック実施を義務付けている。

 16年5月「スパイラル マイナンバー収集代行サービス」を開始した。収集対象者への案内書類発送から対象者の申請受付、不備チェック、データ化、管理、取扱報告書までワンストップで提供する。

■M&A・アライアンス戦略も積極活用

 M&A・アライアンス戦略も積極活用している。15年2月世界有数のソフトウェアベンダーである米国Sprinklr(スプリンクラー)の日本法人Sprinklr Japanに出資(A種優先株式)し、15年3月米国Sprinklrに純投資目的で総額約4百万米ドル(4億78百万円)出資した。

 15年4月ペーパーレススタジオジャパンとエヌ・シーエヌが住宅業界向けBIM事業を展開する合弁会社MAKE HOUSEを設立した。またソフトブレーン<4779>と業務提携した。

 16年3月SBIインベストメントが運営するFinTechビジネスイノベーション投資事業有限責任組合(FinTechファンド)に1億円出資した。またベトナムのMQ社と共同で、ベトナムにおけるC2Cマーケットプレース事業(フリマ事業)およびEC事業等を目的とする新会社MOKI(当社出資比率25%)設立に関する基本合意書を締結した。

 16年4月ゴンドラ、ジェイアール東日本企画、TWENTY FOUR、ビーマップ<4316>の4社共同出資により、インタラクティブ(双方向)コミュニケーション業務を展開する新会社(ゴンドラ出資比率10%)を設立した。

■契約数増加に伴うストック型収益構造

 四半期別の業績推移(16年2月期第3四半期からパイプドビッツHD)をみると、15年2月期は売上高が第1四半期7億14百万円、第2四半期7億98百万円、第3四半期8億00百万円、第4四半期8億61百万円、営業利益が1億40百万円、1億65百万円、1億71百万円、1億49百万円で、16年2月期は売上高が9億35百万円、9億46百万円、9億64百万円、11億60百万円、営業利益は1億64百万円、1億78百万円、86百万円、1億51百万円だった。

 契約数増加に伴って月額サービス収入が拡大するストック型の収益構造である。16年2月期は主力事業が好調に推移して16期連続増収だが、人員増加などの先行投資負担やソリューション売上増加に伴う外注加工費の増加などで減益だった。期末人員は同62名増加の322名だった。

 売上総利益率は71.3%で15年2月期比4.8ポイント低下、販管費比率は56.8%で同0.3ポイント上昇した。営業外費用では持分法投資損失、特別損失では組織再編費用、減損損失を計上した。ROEは11.1%で同4.8ポイント低下した。配当性向は56.8%、純資産配当率は6.3%だった。

 16年2月期末の有効アカウント数(全事業合計)は1万734件で同23件減少(獲得数2632件、解約数2655件)した。「ネットde青色申告」フリーミアム化に伴って443件減少し、第3四半期に「スパイラルプレース」の中型・大型解約が発生したため一時的に解約率が上昇した。

 セグメント別に見ると、情報資産プラットフォーム事業は売上高が同15.8%増の30億41百万円、営業利益(連結調整前)が同7.3%減の5億52百万円だった。初期投資や販管費の増加で減益だった。有効アカウント数は1万390件(「スパイラル」3300件、「スパイラルEC」55件、「ネットde会計」「ネットde青色申告」1285件、「スパイラルプレース」5507件など)だった。

 広告事業は顧客基盤拡大で売上高が同51.6%増の2億22百万円、営業利益が同3.0倍の53百万円だった。有効アカウント数は202件だった。なお売上高は広告枠の仕入高を売上高から控除する純額表示(ネット表示)で、広告枠仕入高控除前の総額表示(グロス表示)では20億35百万円だった。ソリューション事業は売上高が同85.7%増の7億43百万円、営業利益が25百万円の赤字(15年2月期は11百万円の黒字)だった。有効アカウント数は142件だった。新規連結も寄与して大幅増収だがコストが先行した。

■17年2月期第1四半期は大幅増収・営業増益

 今期(17年2月期)第1四半期の連結業績は、旧パイプドビッツの前年同期との比較で、売上高が24.2%増の11億62百万円、営業利益が31.5%増の2億16百万円、経常利益が30.3%増の2億17百万円、純利益が11.8%減の86百万円だった。税金費用の増加で最終減益だが、先行投資の収益化で増収・営業増益・経常増益だった。有効アカウント数(全事業合計)は1万750件で同346件増加した。

 売上総利益は同22.0%増加し、売上総利益率は72.1%で同1.3ポイント低下した。販管費は同19.0%増加したが、販管費比率は53.5%で同2.3ポイント低下した。期末人員は同46名増加の324名だった。営業外では持分法投資損益が悪化(前期は利益2百万円、今期損失1百万円)した。

 セグメント別に見ると、情報資産プラットフォーム事業は売上高が同4.7%増の7億83百万円、営業利益(連結調整前)が同37.9%増の1億96百万円だった。有効アカウント数は同300件増加の1万341件(「スパイラル」が107件増加の3311件、「スパイラルEC」が3件減少の54件、「ネットde会計」「ネットde青色申告」が19件減少の1286件、「スパイラルプレース」が141件増加の5428件など)となった。

 広告事業は顧客基盤拡大で売上高が同20.0%増の68百万円、営業利益が同36.4%増の25百万円だった。有効アカウント数は同39件減少の210件だった。売上高は広告枠の仕入高を売上高から控除する純額表示(ネット表示)で、広告枠仕入高控除前の総額表示(グロス表示)では5億53百万円だった。ソリューション事業は売上高が同2.4倍の3億10百万円、営業利益が6百万円の赤字(前年同期は2百万円の黒字)だった。有効アカウント数は同85件増加の199件だった。新規連結も寄与して大幅増収だがコストが先行した。

■17年2月期は大幅増収増益・連続増配予想

 今期(17年2月期)通期の連結業績予想は前回(4月1日公表)を据え置いて売上高が前期(16年2月期)比34.8%増の54億円、営業利益が同72.2%増の10億円、経常利益が同76.5%増の9億90百万円、純利益が同2.3倍の5億80百万円としている。

 主力サービスが順調に伸長し、新規サービスの収益化など先行投資や組織再編の効果も寄与して大幅増収増益予想としている。Sprinklr Japanおよび米国Sprinklrの投資損益については織り込んでいない。配当予想は年間21円(第2四半期末9円、期末12円)としている。実質的に前期比3円増配で予想配当性向は27.5%となる。

 なおアパレル特化型ECプラットフォーム「スパイラルEC」における不正アクセスによる個人情報流出に関して、セキュリティ強化によって再発防止に取り組むとしている。通期業績への影響は軽微の見込みとしている。

■株価は調整一巡して出直り

 株価の動きを見ると、地合い悪化も影響して6月24日に上場来(持株会社パイプドHD)安値となる914円まで調整したが、その後は下げ渋る展開だ。

 7月15日の終値975円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS76円50銭で算出)は12〜13倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間21円で算出)は2.2%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS240円98銭で算出)は4.0倍近辺である。時価総額は約79億円である。

 週足チャートで見ると900円台で下値を固める形だ。調整一巡し出直り展開が期待される。
(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)


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