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2016年09月12日

【小倉正男の経済コラム】「ガラケー」にとどまっているアメリカの景気

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■定まらない利上げの行方

 アメリカの景気はガラパゴス型、「ガラケー」にとどまっている。いまの世界の景気動向は、この構造に起因している。

 アメリカは、利上げの行方をめぐって、株式市場が上昇したり下落したりと方向が定まらない。ドル=為替も同様であり、これも先行きについては不確実ということになる。

 アメリカは、雇用については確かに力強い動きをたどっている。失業率も低下し、完全雇用に近い状態にある。ただし、賃金は上がらず、インフレも起こっていない・・・。

 アメリカ以外の世界経済を見渡せば、中国、EU、中東といずれもよい状態にはない。原油価格も大底を打ったものの大きく回復するといった兆候は見えない。

 世界全体の景気が盛り上がりを欠いているのだから、原油価格も上がらない。インフレも起こりようがない。
 言い換えれば、アメリカの景気回復が、世界全体の景気を牽引するまでにはいたっていない。

■利上げに迷いに迷うのは、「ガラケー」景気に起因する

 アメリカの利上げも世界経済の動向に左右されている。アメリカが、早期に利上げに向かうのか、あるいは利上げを先延ばしにするのか。
 迷いに迷って踏み切れないのは、世界全体の景気が引き続き軟調であることが背景にある。

 世界全体の景気が悪いのに、アメリカのみが雇用を増加させ、失業率を極限まで低下させている。それ自体は、アメリカ経済の底力にほかならない。

 しかし、それでもアメリカはすんなりと利上げに進めない。これは景気がよいのがアメリカのみという孤立した構造にあるためだ。今回のアメリカ景気は、「孤立した景気」という構造に特徴があり、世界景気を力強くリードするほどのものとはなっていない。

 いわば、今回のアメリカの景気は「ガラケー」にほかならない。アメリカが、利上げをめぐって迷いに迷っているのは、いまのアメリカの景気が孤立したものであることに起因している。

■アメリカがすんなり利上げに進めるなら「吉」

 問題は、世界全体の景気の先行きがどうなるのかということになる。アメリカの利上げ動向が、それを占う最大の指標になるだろう。

 いまの局面は、世界の景気にとっては分岐点といえる。いわば、綱引き状態だ。
――アメリカが、停滞する世界の景気を引っ張って持上げられるのか。それとは逆にアメリカの景気がピークを打って、軟調な世界の景気のほうに引っ張りこまれるのか――。

 一般論でいえば、アメリカがすんなり利上げに踏み込めるなら、世界の景気にとっては「吉」ということになる。
 下手をすれば、アメリカは利上げの実施を逃して景気が終末を向かえることもありえる。これが最悪のシナリオである。

 いまの不透明さを克服して「吉」を目指してほしい。最悪のシナリオを併記したが、これは心配しすぎの見方として笑い飛ばせるのがいちばんよいことになる。

(『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社編集局で企業情報部長、金融証券部長、日本IR協議会IR優良企業賞選考委員などを歴任して現職)

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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 13:44 | 小倉正男の経済コラム