山下医科器械<3022>(東1)は九州を地盤とする医療機器専門商社で、福岡県での市場シェア拡大を重点戦略としている。17年5月期減益予想だが、期後半の需要回復で上振れ余地がありそうだ。株価は1月の戻り高値から一旦反落したが、0.7倍近辺の低PBRも見直して戻りを試す展開が期待される。
■九州を地盤とする医療機器専門商社
九州を地盤とする医療機器専門商社である。医療機器の販売・メンテナンスおよび医療材料・消耗品などの販売を主力として、子会社イーピーメディックは整形インプラントを製造販売している。
16年5月期の事業セグメント別売上構成比は医療機器販売業98.9%、医療モール事業0.1%、その他(整形外科用インプラント)0.9%である。中期成長に向けて、九州最大の需要地である福岡県での市場シェア拡大を最重点戦略としている。
医療機関向けSPD(病院医療材料管理業務)契約施設数増加に対応するため、13年7月に福岡SPDセンター(福岡県福岡市)を新設し、鳥栖SPDセンター(佐賀県鳥栖市)との2拠点体制とした。そして16年9月に長崎TMSセンター(長崎県諫早市)が稼働し、物流センター2拠点、SPDセンター3拠点体制となった。物流の効率化と迅速化により信頼性とサービス向上を図る。
また15年10月には、パナソニックヘルスケアとの合弁会社パナソニックメディコム九州(当社出資比率49%)が営業開始した。電子カルテやレセコンなどのメディコム製品および関連機器の販売・サービスを展開する。
■第2四半期と第4四半期の構成比が高い収益構造
四半期別業績推移を見ると、15年5月期の売上高は第1四半期105億82百万円、第2四半期126億55百万円、第3四半期118億52百万円、第4四半期152億21百万円、営業利益は45百万円の赤字、2億21百万円、50百万円、3億12百万円だった。16年5月期の売上高は114億70百万円、130億53百万円、122億63百万円、148億29百万円、営業利益は4百万円の赤字、1億97百万円、64百万円、3億27百万円だった。医療機関の設備投資関連で第2四半期および第4四半期の構成比が高い収益構造である。
16年5月期は15年5月期比2.6%増収、同8.6%営業増益、同3.1%経常増益、同7.5%最終減益だった。一般競争参加資格の降格措置期間が満了し、営業減益予想から一転して営業増益となった。売上総利益は同1.4%増加したが、売上総利益率は11.5%で同0.1ポイント低下した。販管費は0.7%増加したが、販管費比率は10.3%で同0.2ポイント低下した。
純利益は営業外費用での持分法投資損失計上、特別利益での収用補償金一巡、法人税等増加などで減益だった。ROEは5.6%で同0.7ポイント低下、自己資本比率は32.0%で同横ばいだった。配当は前々期比7円増配の年間50円(期末一括、普通配当40円+創業90周年記念配当10円)で、配当性向は38.0%だった。利益還元については安定的な配当の継続を基本方針とし、配当水準として連結配当性向30%を基準としている。
セグメント別(連結調整前)に見ると、医療機器販売事業は売上高が同2.5%増の512億64百万円で営業利益が同8.9%増の12億21百万円、医療モール事業(主に賃料収入)は売上高が同7.7%増の74百万円で営業利益が同3.9倍の10百万円、その他(自社グループ開発製品の整形外科用インプラント製造販売)は売上高が同11.0%減の4億76百万円で営業利益が6百万円の赤字(前々期は4百万円の赤字)だった。
医療機器販売業の売上高の内訳は、一般機器分野が同1.8%増の102億01百万円、一般消耗品分野が同2.9%増の192億66百万円、低侵襲治療分野が同3.4%増の134億13百万円、専門分野が同2.3%増の65億90百万円、情報・サービス分野が同3.7%減の17億93百万円だった。
■17年5月期第2四半期累計は計画未達で大幅減益
今期(17年5月期)第2四半期累計(6〜11月)の連結業績(12月27日に減額修正)は、売上高が前年同期比0.8%減の243億39百万円で、営業利益が同96.4%減の6百万円、経常利益が同84.8%減の34百万円、純利益が同93.3%減の8百万円だった。
売上高、利益とも計画を下回った。大型の設備案件の減少で一般機器分野の売上が減少し、医療情報事業の売上を合弁会社に移行したことも影響した。売上減少に伴って売上総利益が減少し、長崎TMSセンター稼働に伴う消耗品費等の増加も影響した。売上総利益は同1.6%減少し、売上総利益率は11.1%で同0.1ポイント低下した。販管費は同5.6%増加し、販管費比率は11.1で同0.7ポイント上昇した。
セグメント別(連結調整前)に見ると、医療機器販売事業は売上高が同0.8%減の241億64百万円で営業利益が同43.9%減の2億89百万円だった。医療モール事業は売上高が同1.3%増の36百万円で営業利益が同35.3%減の2百万円、その他は売上高が同37.0%減の1億53百万円で営業利益が24百万円の黒字(前年同期は9百万円の赤字)だった。
なお医療機器販売業の売上高の内訳は、一般機器分野が同8.9%減の39億25百万円、一般消耗品分野が同1.3%増の98億48百万円、低侵襲治療分野が同4.2%増の67億57百万円、専門分野が同0.9%増の31億35百万円、情報・サービス分野が同31.8%減の4億97百万円だった。一般機器分野は大型設備案件減少で手術室関連機器や画像診断装置などが減少した。一般消耗品分野はSPD契約施設の売上が増加、低侵襲治療分野は内視鏡備品の売上が増加、専門分野は理化学備品の売上が増加した。情報・サービス分野は合弁会社への売上移行が影響した。
四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期118億68百万円、第2四半期124億71百万円、営業利益は36百万円の赤字、42百万円の黒字だった。
■17年5月期通期予想を据え置き
今期(17年5月期)通期の連結業績予想(7月11日公表)は、売上高が前期(16年5月期)比6.0%増の546億95百万円で、営業利益が同28.5%減の4億18百万円、経常利益が同23.1%減の4億88百万円、そして純利益が同14.1%減の2億85百万円としている。配当予想は同15円減配の年間35円(期末一括)で予想配当性向は30.7%となる。
診療報酬改定による汎用医療材料の価格低下や病床再編に伴う市場成長の減速など事業環境が厳しい中で、低侵襲治療分野における内視鏡備品などが堅調に推移するが、長崎TMSセンター稼働に伴う費用(人件費、リース料、減価償却費)の発生、営業人員増加による人件費の増加などで減益予想としている。ただし期後半に機器需要の回復が見込まれることを考慮すれば、通期予想に上振れ余地がありそうだ。
なお病床機能の分化・連携や在宅医療・在宅介護の推進によって需要増加が見込まれる介護分野の事業展開を図るため、ヘルスケア事業推進部を新設する。同部署では今後、当社グループが出資している国内の新興企業が開発する介護関連製品の取り扱いを予定している。また電子カルテ等の普及拡大が見込まれるため、MIT推進部を強化してシェア拡大を図る。さらに整形分野における子会社事業の強化、循環器事業の拡大、医療モール事業の収益向上に取り組む。
■中期経営計画で18年5月期売上高580億円目標
15年7月策定の新中期経営計画では基本戦略として、さらなる基盤事業の強化と推進体制の構築、地域医療構想に即した新規事業の創出、グループ統制とガバナンス強化に即した経営体制の刷新、積極的な人材確保と教育、コンプライアンス・内部統制の徹底と経営理念経営を推進する。
経営目標数値には、18年5月期の売上高580億円、経常利益8億50百万円を掲げている。中期的に収益拡大基調が期待される。
■株主優待制度は11月末と5月末の年2回実施
株主優待制度は毎年11月30日および5月31日現在の1単元(100株)以上保有株主に対して実施している。優待内容は100株〜999株保有株主に対して500円相当のクオカード、1000株〜1999株保有株主に対して1000円相当のクオカード、2000株以上保有株主に対して1500円相当のクオカードを贈呈する。
■株価は低PBRも見直して戻り試す
株価の動きを見ると、1月27日の戻り高値1825円から一旦反落したが、自律調整の範囲だろう。
2月9日の終値1770円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS113円90銭で算出)は15〜16倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間35円で算出)は2.0%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2391円34銭で算出)は0.7倍近辺である。なお時価総額は約45億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインとなって下値を切り上げている。0.7倍近辺の低PBRも見直して戻りを試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)
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2017年02月10日
山下医科器械は九州を地盤とする医療機器専門商社、低PBRを見直して戻り試す
【アナリスト水田雅展の銘柄分析の最新記事】
提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 06:52
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