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2017年03月30日

ラクーンはボックス上放れ期待、利用企業数増加基調で17年4月期増益予想

 ラクーン<3031>(東1)は、BtoB電子商取引スーパーデリバリー運営を主力として、クラウド受発注COREC事業、BtoB掛売り・請求書決済代行サービスPaid事業、売掛債権保証事業など周辺領域への展開を加速している。利用企業数が増加基調で17年4月期増益予想である。株価は大勢としてボックス展開だが、徐々に下値を切り上げている。FinTech関連としても注目され、ボックス上放れて戻りを試す展開が期待される。

■企業間ECサイト「スーパーデリバリー」運営が主力

 アパレル・雑貨分野企業間(BtoB)電子商取引(EC)スーパーデリバリー運営を主力として、クラウド受注・発注システムのCOREC(コレック)事業、BtoB掛売り・請求書決済代行サービスPaid(ペイド)事業、売掛債権保証事業など周辺領域へ事業を拡大している。

 15年8月にはスーパーデリバリーの越境ECサービス(海外販売)「SD export」を開始した。商品販売するメーカー側の配送業務を簡潔にするためディーエムエス(DMS)の物流代行サービスを利用し、134ヶ国以上の小売店・企業への卸販売が可能となる日本最大級の輸出販売サービスである。

 16年4月期セグメント別売上高構成比(連結調整前)は、EC事業(スーパーデリバリーとCOREC)60.8%、Paid事業13.6%、売掛債権保証事業25.6%だった。なお16年6月にはスーパーデリバリーが第1回日本サービス大賞にて「地方創生大臣賞」を受賞している。

■新サービスを積極投入

 15年11月国内生産インフラサービス「SD factory」を開始した。日本国内のアパレル関連工場やパタンナーと、アパレルメーカーやデザイナーをマッチングするサービスである。

 16年3月には越境ECサービス「SD export」の新たな決済手段としてPayPalが提供する決済サービス「ペイパル」の対応を開始、日本から韓国への海外配送代行サービス「Malltail(モールテール)」を展開するgroowbitsと業務提携した。また「COREC API」を開始した。CORECユーザー各社が導入している販売管理、倉庫管理、会計管理などのシステムに自動でデータを取り込むことが可能になる。

 16年7月にはスーパーデリバリーで小売以外の事業者への販売を開始した。スーパーデリバリーで扱う商品数や商品ジャンルの拡大に伴って什器・梱包資材・販促用商品などの商材も多数出品され、それらの商材を求める小売以外の事業者からサービス利用を希望する声が増えてきたため、これまで利用対象外としていた飲食業・理美容業・宿泊業・教育関連など小売以外の事業者にもサービスを拡げることとした。

 16年8月には連結子会社トラスト&グロースが中小企業を対象とした業界初のネット完結型売掛保証サービス「URIHO(ウリホ)」を開始した。

 16年10月には越境ECサービス「SD export」における海外小売店の登録数が1万件を突破した。15年8月サービス開始時約1000件から約1年での1万件達成である。国別構成比は台湾、香港、アメリカ合衆国、オーストラリア、イギリス、カナダの順となっている。取扱商品数も新規メーカーの参入によって、サービス開始時約7万点から現在約15万点に増加している。

 17年1月には民泊物件サイト「民泊物件.com」を運営するスペースエージェントとの業務提携を発表した。また西武信用金庫とのビジネスマッチング契約締結を発表した。信用金庫との業務提携としては初となる。

 17年2月には越境ECサービス「SD export」が、プラネティアが運営するアジアに特化した化粧品口コミプラットフォーム「COSMERIA」と連携した。化粧品ジャンルの強化・拡大を推進する。

■Paid事業はFintech分野にも事業展開

 11年10月開始したBtoB掛売り・請求書決済代行サービスPaid事業はサービス改良によって業種・業態を問わず、あらゆるBtoB向けサービスへの導入を推進している。

 16年9月にはChatWorkのビジネスチャットツール「チャットワーク」へ、16年10月にはfavyの飲食店向けサービスへのPaidサービス提供を開始した。また16年10月にはインターファクトリーのクラウドECプラットフォーム「ebisumart」と連携した。16年11月にはネットショップ「リリパ」を運営するメガバックスへのPaidサービス提供開始を発表している。

 なお15年12月一般社団法人Fintech協会に加入、コミュニケーションアプリ「LINE」の公開型アカウント「LINE@」対応開始、16年2月SBIインベストメントのFinTechファンドに1億円出資した。

 17年1月にはPaidサービスが、GMOペイメントゲートウェイの「BtoB EC向け決済パッケージ」に導入されることが決定したと発表している。17年4月からサービス提供を開始する予定としている。

 17年2月には、日本初の株式投資型クラウドファンディングサービスであるFUNDINNO(ファンディーノ)を運営する日本クラウドキャピタル(東京都)への出資(2.6%)を発表した。FUNDINNOを通じて資金を調達したいベンチャー・スタートアップ企業に対して、Paidサービスの提供を推進する。

■利用企業数は増加基調

 16年4月期のスーパーデリバリー流通額は15年4月期比0.6%増の95億87百万円で、16年4月期末スーパーデリバリー会員小売店数は15年4月期末比8002店舗増加の5万2372店舗、出展企業数は同73社増加の1138社、商材掲載数は同10万2923点増加の55万9272点となった。有名アパレル関連企業の出展、アライアンス戦略、越境ECサービスのSDexport開始などで利用企業数が増加基調である。

 またクラウド受注・発注システムのCORECユーザー数は17年2月に1万社(バイヤー6880社、サプライヤー3170社)を突破した。連携サービス増加、受注登録やレポート作成などの機能追加、サプライヤーによるバイヤー誘致増加などの成果に加えて、16年7月のPaid(ペイド)との連携や16年11月のサプライヤー有料プランの改定の効果も寄与してユーザー数が増加基調である。

 Paid加盟企業数は16年4月期末に1700社を超え、16年4月期のグループ内含む取引高は同27.7%増加して134億04百万円となった。また16年11月には加盟企業数が2000社を突破した。

 売掛債権保証事業の16年4月期末グループ内含む保証残高は同41.0%増加の91億23百万円となった。また3月14日には17年2月末時点のサービス全体の保証残高が100億円を突破したと発表している。

■月額課金システム利用料が積み上がるストック型収益構造

 スーパーデリバリー流通に係る売上高に関して、15年4月期から商品仕入高を売上高と相殺して表示する方法(純額表示)に変更した。この変更によってスーパーデリバリー流通に係る売上高は出展企業から徴収するシステム利用料売上となっている。従来の総額表示に比べて見掛け上の売上高は減少しているが利益に変更はない。

 四半期別推移を見ると、15年4月期は売上高が第1四半期4億90百万円、第2四半期5億06百万円、第3四半期5億22百万円、第4四半期5億38百万円、営業利益は57百万円、93百万円、1億04百万円、82百万円、16年4月期は売上高が5億33百万円、5億44百万円、5億64百万円、5億87百万円、営業利益が87百万円、96百万円、97百万円、1億13百万円だった。出展企業と会員小売店の増加に伴って月額課金システム利用料売上が積み上がるストック型収益構造である。

 16年4月期は利用企業数が順調に増加し、Paid事業の黒字化なども寄与して15年4月期比増収増益だった。売上総利益は同6.3%%増加したが、売上総利益率は82.7%で同2.0ポイント低下した。販管費は同3.7%増加したが、販管費比率は65.4%で同3.0ポイント低下した。ROEは14.4%で同1.3ポイント上昇し、自己資本比率は35.7%で同0.1ポイント上昇した。

 配当は年間4円50銭(期末一括)で配当性向は32.5%だった。配当の基本方針は、将来の事業展開と経営体質の強化に備えるための内部留保の充実等を勘案しながら、業績を反映した水準で利益還元を実施するとしている。

 セグメント別(連結調整前)に見ると、EC事業は売上高が同2.3%増の15億83百万円、営業利益が同4.5%減の2億23百万円だった。国内流通額を四半期別に見ると第1四半期3%減、第2四半期4%減、第3四半期2%減に対して、第4四半期2%増となり復調傾向としている。Paid事業は売上高が同30.9%増の3億52百万円、営業利益が20百万円の黒字(前々期は16百万円の赤字)で黒字化した。売掛債権保証事業は売上高が同17.3%増の6億66百万円、営業利益が同50.7%増の1億11百万円だった。

■17年4月期第3四半期累計は2桁営業増益

 今期(17年4月期)第3四半期累計(5〜1月)連結業績は、売上高が前年同期比6.2%増の17億43百万円、営業利益が同13.2%増の3億17百万円、経常利益が同12.5%増の3億12百万円、純利益が同2.4%増の1億82百万円だった。

 Paid事業が大幅伸長し、保証事業における原価率低下も寄与して2桁営業増益だった。売上総利益は同8.5%増加し、売上総利益率は84.6%で同1.8ポイント上昇した。販管費は同7.3%増加し、販管費比率は66.4%で0.7ポイント上昇した。特別損失では減損損失32百万円を計上した。

 セグメント別(連結調整前)に見ると、EC事業は売上高が同2.0%増の11億94百万円で営業利益が同0.7%増の1億68百万円だった。スーパーデリバリー会員小売店数は16年4月期末比1万3652店舗増の6万6024店舗、出展企業数は26社増の1164社、商材掲載数は4万8841点増の60万8113点となった。合計流通額は前年同期比3.1%増の72億42百万円だった。国内流通額は購入客数増加で同0.4%増となり、海外流通額(SD exportと日本語版サイトでの海外向け流通額の合算)は同60.2%増と大幅伸長した。CORECユーザー数は16年11月の価格改定も寄与して9719社となった。

 Paid事業は、売上高が同21.7%増の3億09百万円となり、営業利益が同87.3%増の7百万円だった。積極的な広告投資で加盟企業が順調に増加し、取扱高増加で営業損益が改善した。加盟企業数は2100社を超え、グループ内含む取扱高は同24.2%増の119億76百万円となった。

 保証事業(第2四半期から名称変更)は、売上高が同9.3%増の5億38百万円で営業利益が同69.5%増の1億34百万円だった。売掛保証サービスの保証残高が減少したが、事業用家賃保証サービスおよび16年8月サービス開始した「URIHO」が伸長し、保証履行額減少で原価率が低下した。グループ内含む保証残高は同7.1%増の97億66百万円だった。

 四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期5億69百万円、第2四半期5億76百万円、第3四半期5億98百万円、営業利益は94百万円、1億05百万円、1億18百万円だった。

■17年4月期通期は先行投資負担吸収して増益予想

 今期(17年4月期)通期の連結業績予想(6月10日公表)は、売上高が前期(16年4月期)比12.1%増の25億円で、営業利益が同6.7%増の4億20百万円、経常利益が同14.2%増の4億20百万円、純利益が同4.4%増の2億50百万円としている。

 成長スピードを加速するための先行投資期間と位置付けて、経営基盤強化に向けた集中投資を計画しているため、人件費、広告宣伝費、開発費などが増加して小幅増益予想としている。ただしスーパーデリバリー国内流通額の復調、越境ECサービスSDexportの規模拡大、COREC、Paid事業、売掛債権保証事業の順調な拡大で、先行投資負担を吸収して増益予想である。

 なお未定としていた配当予想は3月14日に公表し、16年4月期と同額の年間4円50銭(期末一括)とした。予想配当性向は31.6%となる。

 通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が69.7%、営業利益が75.5%、経常利益が74.3%、純利益が72.8%と順調である。通期ベースでも好業績が期待される。

■株価はボックス上放れ期待

 3月14日に自己株式取得を発表した。取得株式総数の上限10万株、取得価額総額の上限6000万円で、取得期間は17年3月15日〜17年3月31日としている。

 株価の動きを見ると、大勢として500円を挟むレンジでのボックス展開だが、16年12月安値430円から徐々に下値を切り上げている。

 3月29日の終値498円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS14円25銭で算出)は35倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間4円50銭で算出)は0.9%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS101円17銭で算出)は4.9倍近辺である。時価総額は約93億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線が26週移動平均線を上抜いてきた。FinTech関連としても注目され、ボックスレンジから上放れて戻りを試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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