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2017年04月04日

生化学工業はフシ突破してボックスレンジ上放れ、18年3月期収益改善期待

 生化学工業<4548>(東1)は関節機能改善剤アルツが主力の医薬品メーカーである。17年3月期は円高や国内薬価改定で減益予想だが、18年3月期はマイナス要因が一巡して収益改善が期待される。また中期的には高齢者人口増加を背景として、国内外で関節機能改善剤の需要拡大が期待される。株価はボックスレンジから上放れて年初来高値圏である。フシ突破して上げ足を速める可能性がありそうだ。

■関節機能改善剤アルツなど糖質科学分野が主力の医薬品メーカー

 糖質科学分野が主力の医薬品メーカーである。国内医薬品(関節機能改善剤アルツ、白内障手術補助剤オペガン、内視鏡用粘膜下注入材ムコアップ)、海外医薬品(米国向け単回投与関節機能改善剤Gel−One、米国向け3回投与関節機能改善剤VISCO−3、米国向け5回投与関節機能改善剤SUPARTZ−FX、中国向けアルツ)、医薬品原体(ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸)、LAL事業(エンドトキシン測定用試薬関連)を展開している。高齢者人口増加を背景に関節機能改善剤の需要拡大が期待される。

 内視鏡用粘膜下注入材ムコアップについては販売提携先を変更し、16年4月からボストン・サイエンティフィック・ジャパンと日本国内における独占販売契約を締結した。

■新薬開発は糖質科学分野に焦点

 09年3月策定の「生化学工業10年ビジョン」に基づいて、研究開発は糖質科学分野(糖鎖や複合糖質を研究する科学分野)に焦点を絞り、国際競争力を確立する「グローバル・カテゴリー・ファーマ」としての発展を目指している。

 開発中の新薬としては、腰椎椎間板ヘルニア治療剤SI−6603(コンドリアーゼ)、変形性膝関節症改善剤SI−613(NSAID結合ヒアルロン酸)、ドライアイ治療剤SI−614(修飾ヒアルロン酸)がある。

 腰椎椎間板ヘルニア治療剤SI−6603は日本で14年1月に製造販売承認申請して審査継続中である。17年3月期中の国内承認取得を目指しているが、品質管理に関する審査対応に時間を要しているため、17年3月期中の承認取得は厳しい状況にあるとしている。米国では第3相臨床試験段階として、二重盲検試験および安全性評価を主目的としたオープン試験を実施中である。

 16年8月にはスイスのフェリング社とSI−6603の海外におけるライセンス契約を締結した。フェリング社はSI−6603の日本を除く全世界を対象とした独占開発・販売権を取得し、当社はフェリング社から契約一時金5百万米ドル、および今後の開発や販売等の進捗に応じて複数年にわたり最大で90百万米ドルのマイルストーン型ロイヤリティーを受領する。日本における独占的販売契約については12年12月に科研製薬<4521>と締結している。

 変形性膝関節症治療剤SI−613は日本で16年1月第2相試験(反復投与)が終了した。そして17年2月、日本における第3相臨床試験開始を発表した。米国を含めたグローバル展開を目指す製品と位置付けている。

 ドライアイ治療剤SI−614は米国・欧州で15年1月第2・3相試験が終了し、次相試験について検討中である。

 16年2月にはジェネリック医薬品である眼科手術補助剤「シェルガン0.5眼粘弾剤」の製造販売承認を取得した。眼科手術補助剤オペガンと同様に参天製薬<4536>が販売する。

■品揃え充実で重点地域の米国におけるプレゼンスを強化

 変形性膝関節症を適応症とする医療機器「VISCO−3」は、15年12月米国食品医薬局(FDA)の承認を取得した。ヒアルロン酸主成分とする関節機能改善剤で、1治療あたり3回投与の3本キット製品である。

 米国では高齢化に伴って関節機能剤の市場拡大が予想されているため、単回投与製品Gel−One、5回投与製品SUPARTZ−FX(15年10月SUPARTZからブランド名変更)に加えて、3回投与製品VISCO−3を新たに市場投入し、重点地域の米国に置いてプレゼンス強化を図っている。

 16年11月には米ジンマー・バイオメット社と、3回投与の関節機能改善剤VISCO−3の米国における独占販売契約を締結したと発表した。米ジンマー・バイオメット社は12年から単回投与の関節機能改善剤Gel−Oneを米国で販売している。

■薬価改定、為替、研究開発費などが影響する収益構造

 収益は販売数量、薬価改定、為替、研究開発費、受取ロイヤリティーなどが影響する。16年3月期は米国向けGel−One数量増や円安などで増収だが、研究開発費が増加して減益だった。四半期別推移を見ると売上高は第1四半期77億62百万円、第2四半期81億92百万円、第3四半期74億83百万円、第4四半期75億25百万円、営業利益は8億83百万円、11億67百万円、6億93百万円、5億99百万円の赤字だった。

 売上総利益率は58.4%で15年3月期比0.5ポイント低下、販管費比率は51.5%で同0.7ポイント上昇した。減価償却費は同22.3%増の31億91百万円、研究開発費は同6.2%増の86億49百万円だった。営業外では受取ロイヤリティーが増加したが、為替差損益が悪化した。また一過性の税率低減要因(米国子会社有償減資に伴う税率減)が終了して税金費用が増加した。

 ROEは3.7%で同1.7ポイント低下、自己資本比率は87.0%で同横ばいだった。配当は15年3月期と同額の年間26円(第2四半期末13円、期末13円)で配当性向は57.3%だった。株主還元は超長期的な視点に立って安定的かつ継続的な配当を目指し、1株当たり年間26円を継続する方針としている。

 セグメント別売上高は、医薬品事業が同3.5%増の255億18百万円(国内医薬品が同0.2%増の169億28百万円、海外医薬品が同15.1%増の73億円、医薬品原体が同8.4%減の12億89百万円)、LAL事業が同11.7%増の54億44百万円だった。海外売上高は同15.8%増の115億81百万円、海外売上比率は同3.5ポイント上昇の37.4%となった。

■17年3月期第3四半期累計は円高、薬価改定、研究開発費増加で減収減益

 前期(17年3月期)第3四半期累計(4〜12月)連結業績は、売上高が前年同期比5.6%減の221億28百万円、営業利益が同67.9%減の8億81百万円、経常利益が同49.7%減の20億16百万円、純利益が同50.9%減の14億81百万円だった。

 米国向けGel−OneやLAL事業の販売数量が増加したが、円高や国内における薬価改定の影響で減収となり、アルツ新容器投入に伴う一過性要因による原価率上昇、米国における腰椎椎間板ヘルニア治療剤SI−6603オープン試験進展に伴う研究開発費の増加などで減益だった。為替の円高影響は売上高で10億60百万円のマイナス要因だった。

 売上総利益は同12.9%減少し、売上総利益率は54.3%で同4.6ポイント低下した。販管費は同0.7%増加し、販管費比率は50.3%で同3.1ポイント上昇した。研究開発費は57億66百万円で同2.4%増加した。営業外収益では受取ロイヤリティーが増加(前期3億61百万円、今期6億78百万円)したが、投資有価証券売却益が減少(前期4億33百万円、今期1億06百万円)した。

 セグメント別売上高は医薬品事業が同6.7%減の180億20百万円(国内医薬品が同5.5%減の123億05百万円、海外医薬品が同7.7%減の49億28百万円、医薬品原体が同17.2%減の7億86百万円)、LAL事業が同0.5%減の41億08百万円だった。なお海外売上高は同5.5%減の81億18百万円だった。

 国内アルツは市場全体が横ばいで推移する状況だが、新容器投入(16年4月プラスチックシリンジのルアーフィットタイプ)や販売提携先の拡販努力によって医療機関納入本数は増加(同2.6%増)した。白内障手術補助剤オペガン類は、16年7月発売したシェルガンが好調で、医療機関納入本数が増加(同7.9%増)した。米国向けGel−Oneは営業体制拡充効果などで現地販売が増加した。米国向けSUPARTZ−FXは競合環境が厳しく現地販売が微減だった。

 四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期82億75百万円、第2四半期68億10百万円、第3四半期70億43百万円、営業利益は3億79百万円、4億04百万円、98百万円だった。

■17年3月期通期も円高や薬価改定で減益予想、18年3月期収益改善期待

 前期(17年3月期)通期の連結業績予想(11月8日に売上高と営業利益を増額、経常利益と純利益を減額修正)は、売上高が前々期(16年3月期)比4.2%減の296億50百万円、営業利益が同41.7%減の12億50百万円、経常利益が同24.3%減の26億50百万円、純利益が同22.4%減の20億円としている。配当予想は前期と同額の年間26円(第2四半期末13円、期末13円)としている。予想配当性向は73.7%となる。

 円高や薬価改定の影響で減収減益予想である。下期の想定為替レートは1米ドル=103円で、売上総利益率は56.2%、販管費比率は51.9%、研究開発費は78億50百万円の想定としている。

 セグメント別売上高の計画は、医薬品事業が同4.0%減の245億円(国内医薬品が同4.0%減の162億50百万円、海外医薬品が同2.7%減の71億円、医薬品原体が同10.8%減の11億50百万円)、LAL事業が同5.4%減の51億50百万円、海外売上高は同5.0%減の110億円としている。

 通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が74.6%、営業利益が70.5%、経常利益が76.1%、純利益が74.1%と概ね順調な水準である。円安傾向を考慮すれば増額余地がありそうだ。また来期(18年3月期)はマイナス要因が一巡して収益改善が期待される。

■新中期経営計画で19年3月期経常利益45億円目標

 16年5月策定の新中期経営計画(17年3月期〜19年3月期)では、重点戦略として、腰椎椎間板ヘルニア治療剤SI−6603の確実な進展、変形性膝関節症市場におけるリーディングカンパニーとしての進化、開発パイプラインの充実、最適な生産・品質管理体制の追求を掲げている。

 腰椎椎間板ヘルニア治療剤SI−6603については日本での上市と拡販、および潜在市場規模の大きい米国での事業化を目指す。変形性膝関節症市場におけるリーディングカンパニーとしての進化では、成長ドライバーであるジェル・ワンの米国売上拡大と新規市場展開、製品改良による国内アルツの販売数量維持、次世代品となる関節機能改善剤SI−613の開発を推進する。開発パイプラインの充実では、糖質科学分野において他社を凌駕する基盤技術の保持、探査研究の加速、持続的な開発テーマの創製を推進する。最適な生産・品質管理体制の追求では、製品の安定供給、さらなる生産効率化の推進によって原価低減を実現する。

 経営目標値には、19年3月期売上高320億円、営業利益25億円、経常利益45億円を掲げた。想定為替レートは1米ドル=110円で、海外事業の拡大(海外売上高比率45%)によって国内薬価改定による減収をカバーし、研究開発費は高水準(対売上高比率25%〜30%)で推移する。また各種受取ロイヤリティーを営業外収益として織り込んでいる。

■株価はボックスレンジ上放れ、フシ突破して上げ足速める可能性

 株価の動きを見ると、16年1月の1865円を突破し、3月28日には年初来高値となる1936円まで上伸した。1400円〜1800円近辺のボックスレンジから上放れた形だ。

 4月3日の終値1865円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS35円30銭で算出)は53倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間26円で算出)は1.4%近辺、そして前前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS1229円05銭で算出)は1.5倍近辺である。時価総額は約1060億円である。

 週足チャートで見ると1800円近辺のフシを突破した。さらに13週移動平均線、26週移動平均線、52週移動平均線とも上向きに転じて先高感を強めている。フシ突破して上げ足を速める可能性がありそうだ。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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