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2017年05月29日

ワイヤレスゲートは17年12月期減益予想の織り込み完了して戻り歩調

 ワイヤレスゲート<9419>(東1)はワイヤレス・ブロードバンドサービスを主力として、Wi−Fiインフラ構築やIoTプラットフォーム事業も積極展開している。17年12月期は先行投資負担などで減益予想だが、この織り込みが完了して株価は戻り歩調だ。

■ワイヤレス・ブロードバンド事業が主力

 通信事業者からインフラを借り受けてワイヤレス・ブロードバンドサービス(Wi−Fi、WiMAX)を提供するMVNO(仮想移動体通信事業者)である。

 16年12月期の事業別売上高構成比は、ワイヤレス・ブロードバンド事業(BtoC事業)のモバイルインターネットサービスが92%、公衆無線LANサービスが6%、オプションサービスが1%で、ワイヤレス・ビジネスドメイン事業(BtoB事業)の認証プラットフォームサービスが0%、その他法人向けサービスが1%である。

 販売チャネルはヨドバシカメラ、および携帯電話販売最大手ティーガイアを主力としている。個人向けのワイヤレス・ブロードバンド事業は有料会員に対する月額課金収入、法人向けのWi−Fiインフラ事業はアクセスポイント管理(クラウド管理)に対する月額課金収入が主力であり、有料会員数およびアクセスポイント数の積み上げに伴って収益が拡大するストック型ビジネスモデルである。
 市場拡大のSIMカードは、14年9月データ通信専用「ワイヤレスゲート Wi−Fi+LTE SIMカード」の販売を開始して積極展開している。16年3月には業界初の全プランLTE通信使い放題「FonプレミアムWi−Fi」販売開始、16年9月には「全録テレビ見放題SIMプラン」販売開始した。SIMカードサービス自体での差別化は難しい状況だが、現行の販売ブースの構成をより有効的に活用する方向で取り組むとしている。

■法人向けWi−Fiインフラ構築・運用支援を拡大

 中期成長に向けて安定収益事業であるBtoC事業を堅持しつつ、成長事業であるBtoB事業に経営資源を集中投資する方針を打ち出している。14年1月法人向けWi−Fi環境構築・運用支援事業を開始した。クラウド型Wi−Fi環境サービスシステムなど法人向けソリューションサービスを拡大する。

 14年8月訪問看護サービスのNフィールドと業務提携してM2M/IoTソリューション「クラウド型みまもりサービス」開始、14年11月Web会議システムのブイキューブと業務提携、15年3月移動販売者向けプラットフォームのアンデコ社と資本業務提携、Wi−Fi環境構築・保守のバディネット社と業務提携した。

■Fon社と協力してWi−Fiエリア拡大を加速

 14年11月にはスペインのFon社および日本法人フォン・ジャパンと業務協力し、15年11月フォン・ジャパンの株式を取得して持分法適用関連会社化した。Fon社のルータを活用して国内Wi−Fiエリア構築を加速する。

 15年11月北海道「ニセコ」観光エリア一帯をWi−Fi化するプロジェクトを発表、15年12月鎌倉長谷寺のWi−Fiインフラ構築・運用サポート開始、16年3月東京都浅草地域において無料Wi−Fiサービス提供開始、16年4月浅草六区再生プロジェクトに参画した。

 16年2月には道の駅の総合プラットフォーム事業を展開するXS社と共同で日本全国の道の駅に対するWi−Fiインフラ設置・運用支援を開始、16年6月日本全国の道の駅におけるWi−Fiインフラ設置が50施設を突破した。またマーベリックを加えた3社共同で、道の駅に設置された無料Wi−Fi「Fon」を利用した位置情報連動型広告サービスを開始する。

 16年7月関西ブロードバンドと共同でFonを活用した無料Wi−Fiインフラサービス開始、アンデコ社と共同で八ヶ岳観光園(原村)を訪れる観光客を対象に無料Wi−Fiサービス開始、16年8月山梨県富士吉田市新倉山浅間公園のインバウンド観光客向けに無料Wi−Fiサービス開始した。

 16年11月にはデジサーフに出資した。また16年11月マーベリックおよびアップルベリー・ネットワークスと共同で、運営費用を全て広告収益で賄うWi−Fiサービスを新しいマネタライズモデルとして開発・提供することで合意した。第1弾として国内最大級ネイルコラム&キュレーションサイト「itnail」と提携し、全国のネイルサロンに「itnail Wi−Fi」としてサービス展開する。

 17年3月には経済産業省「IoTを活用した新ビジネス創出推進事業(IoT活用おもてなし事業)」に係る実施事業者として採択された。既に取り組み開始している「浅草六区再生プロジェクト」の参加に加え、新たに浅草六区ブロードウェイ商店街振興組合を中心とした複数の民間企業からなる協業コンソーシアム「EAST TOKYO FUN」の代表を務める。

■中期成長に向けて新サービスも展開

 15年10月米nCore社に出資、15年11月落し物ドットコムに出資、16年10月タンジェリンに出資した。16年10月には産業用IoTプラットフォーム事業への本格参入を発表している。米nCore社「LTE over WiFi」技術の活用に関して、IoT向け高速通信サービス事業化の目途が立った。事業開始にあたってモバイル・インターネットキャピタル(MIC)と合弁会社LTE−Xを設立した。また16年11月アジュールパワーに出資、16年12月Liquid社と資本提携した。

 17年1月にはMAMORIOが提供する世界最小クラスの紛失防止IoTデバイス「MAMORIO」を日本全国のヨドバシカメラ店舗、通販サイト「ヨドバシ・ドット・コム」にて販売開始すると発表した。

■17年12月期第1四半期は先行投資負担で減益

 5月10日発表した今期(17年12月期)第1四半期(1月〜3月)の連結業績は、売上高が前年同期比0.8%増の30億52百万円、営業利益が同28.6%減の2億17百万円、経常利益が同27.4%減の1億77百万円、そして純利益が同36.8%減の94百万円だった。

 主力のワイヤレス・ブロードバンド事業が競争激化などで減収だったが、ワイヤレス・ビジネスドメイン事業における大型案件の売上計上などでカバーし、全体として増収を確保した。利益面では、利益率の高い公衆無線LANの売上減少などに伴って売上総利益が減少し、顧客獲得コストの増加、子会社LTE−Xにおける業務展開コストの増加などで販管費も増加して各利益は減益だった。

 事業別の売上高は、ワイヤレス・ブロードバンド事業が同2.7%減の29億29百万円(うちモバイルインターネットサービスが同1.9%減の27億49百万円、公衆無線LANサービスが同13.5%減の1億54百万円、オプションサービスが同5.8%減の26百万円)、ワイヤレス・ビジネスドメイン事業が同5.0倍の1億11百万円(うち認証プラットフォームサービスが同3.9倍の46百万円、その他法人向けサービスが同9.9倍の65百万円)、その他(小型紛失防止IoTデバイス「MAMORIO」などの物品販売)が同8.1倍の11百万円だった。

 売上総利益は同1.2%減少し、売上総利益率は25.0%で同0.6ポイント低下した。販管費は同16.6%増加し、販管費比率は17.9%で同2.4ポイント上昇した。営業外費用では持分法投資損失(フォン・ジャパンの持分法適用化に伴うのれん償却)38百万円を計上した。

■17年12月期通期も先行投資負担で減益予想だが上振れ余地

 今期(17年12月期)連結業績予想(2月13日公表)は、売上高が前期(16年12月期)比7.0%増の130億97百万円、営業利益が同48.0%減の6億50百万円、経常利益が同53.3%減の5億13百万円、純利益が同51.5%減の3億36百万円としている。

 配当予想は同1円増配の年間28円(期末一括)で予想配当性向は85.7%となる。株主還元についてはDOE(株主資本配当率)を重視し、機動的かつ柔軟な自社株買いも実施する方針としている。

 事業ポートフォリオの転換に向けて経営資源を集中投資するため、先行投資負担で減益予想としている。ワイヤレス・ブロードバンド事業においては、競争環境変化による顧客獲得コストが増加し、新サービス開始に伴う一時的コストも発生する見込みとしている。ワイヤレス・ビジネスドメイン事業においては、子会社LTE−Xの本格的業務展開に伴うコストが増加する。営業外費用ではフォン・ジャパンの持分法適用関連会社化に伴うのれん償却(10年で約16億円を償却予定)を、持分法投資損失として前期と同程度計上する。

 なお通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は売上高が23.3%、営業利益が33.4%、経常利益が34.5%、純利益が28.0%と高水準である。ワイヤレス・ブロードバンド事業における新サービス開始(SIMカード関連)に伴う一時的コストが発生しなかったことが一因だが、通期予想に上振れ余地がありそうだ。

■中期経営計画で20年12月期営業利益20〜30億円目標

 20年12月期を最終年度とする中期経営計画「ワイヤレスゲート2020年ビジョン中期経営計画」では、基本方針として2020年を創成期と位置付け、事業ポートフォリオの転換を断行する。

 事業戦略としては、安定収益源であるBtoC事業を堅持(Wi−Fiインフラの強化、通信サービスの再編成、通信サービスと親和性の高い周辺機器ベンダーとの協業、通信サービスの卸販売などによる販売経路の多様化)しつつ、成長事業であるBtoB事業に経営資源を集中投資(持続可能なフリーWi−Fi環境の構築、セキュアで高速・大容量な通信インフラの構築、投資を含めたビジネスアライアンスの推進)する。また安定的な配当を行いつつ、中期的な企業価値の増大を目指す。

 経営目標値には、20年12月期の売上高150億円〜200億円規模、営業利益20億円〜30億円規模、営業利益率13%〜15%程度を掲げている。

■株価は17年12月期減益予想の織り込み完了して戻り歩調

 株価の動きを見ると、4月17日の年初来安値1312円から切り返して戻り歩調の展開だ。17年12月第1四半期減益に対してもネガティブ反応はなく、5月25日には1584円まで上伸した。

 5月26日の終値1541円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想連結EPS32円68銭で算出)は47倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間28円で算出)は1.8%近辺、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS287円91銭で算出)は5.4倍近辺である。時価総額は約161億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線を突破した。そして26週移動平均線突破の動きを強めている。17年12月期減益予想の織り込みが完了して出直りが期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)
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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 08:37 | アナリスト水田雅展の銘柄分析