飯野海運<9119>(東1)は、前日24日に4円高の393円と小幅ながらも3営業日続伸して引け、取引時間中には406円まで買い進まれ11月9日につけた年初来高値404円を一時更新した。同社株は、今年11月9日に今2021年3月期予想業績の2回目の上方修正と増配、さらに自己株式消却、株主優待制度の導入などの盛り沢山の株主厚遇策を発表しており、これを手掛かりに景気敏感系のバリュー株買いが増勢となった。株式需給的には、前日に自己株式消却を予定し、テクニカル的にも5日移動平均線が25日移動平均線を上抜くミニ・ゴールデンクロス(GC)を示現して上昇トレンド転換を示唆したことなどから、大幅な上値チャレンジが期待されている。
■外航海運業が大幅黒字転換し不動産業は2.01倍の大幅増益
同社の今2021年3月期予想業績は、今年8月に上方修正されたがその修正業績をさらに上方修正した。売り上げは、8月予想値をさらに20億円引き下げ850億円(前期比4.7%減)としたが、営業利益は6億円引き上げて51億円(同28.3%増)、経常利益も4億円アップさせて49億円(同41.8%増)、純利益も2億円上乗せして47億円(同24.1%増)として前期からの増益転換率を拡大させる。外航海運業では、原油需給緩和に伴う原油の陸上貯蔵タンクの逼迫から大型原油タンカーやケミカルタンカーの洋上備蓄需要が高まって、タンカー市況が上昇して第2四半期(2020年4月〜9月期、2Q)の営業利益が、前年同期の1800万円の赤字から18億1300万円の黒字へと大きく浮上し、不動産業でも、所有ビルの商業テナントは新型コロナウイルス感染症の影響を受けたが、事務所テナントが堅調に推移し2Q営業利益が、前年同期比2.10倍の18億9400万円となったことなどが要因となった。
配当は、業績再上方修正により配当性向30%を目標とする配当政策に従って年間13円(前期実績12円)へ増配する。また予定していた217万5980株(発行済み株式総数の1.96%)の自己株式消却の実施日は、前日24日に予定している。さらに株主優待制度も初導入しており、500株〜2000株を保有する株主に優待ポイント2000ポイント(1ポイント=1円相当)を贈呈する。
■PER8倍、PBR0.5倍の修正で2018年9月高値605円を意識
株価は、前期業績の上方修正・増配でつけた2月高値380円からコロナ・ショック安の波及で年初来安値255円へ突っ込み、タンカー市況の上昇とともに底上げし、今期業績の増益転換予想で363円、8月の今期業績の上方修正で393円と上値を伸ばし、業績再上方修正・増配・自己株式消却・優待制度導入で404円高値へ進んだ。この間、5日線と25日線が交錯するミニGCを示現して25日線を上放れる上昇トレンド転換を鮮明化した。PERは8倍台、PBRは0.54倍、年間配当利回りは3.30%とバリュー株妙味を示唆しており、年初来高値抜けから次の上値フシとして2018年9月高値605円が意識されよう。
◎日刊株式投資情報新聞(無料)登録受付中!
2020年11月25日