テンポイノベーション<3484>(東1)は、飲食業を中心とする出店希望者向けに居抜き店舗を転貸借する店舗転貸借事業を展開している。転貸借物件数の増加に伴って賃料収益を積み上げるストック型ビジネスモデルである。21年3月期は新型コロナ影響で営業減益だが、従来予想に対して減益幅が縮小した。経常利益と当期純利益は、従来の減益予想から一転して増益で着地した。22年3月期は増収増益予想としている。収益拡大を期待したい。株価は上値を切り下げる形でやや軟調だが調整一巡して出直りを期待したい。
■飲食業の出店希望者向け居抜き店舗転貸借事業
首都圏の一都三県(特に東京都)において、飲食業の小規模事業者を中心とする出店希望者向けに居抜き店舗を転貸借する店舗転貸借事業を展開している。
店舗転貸借事業は、仲介ではなく、サブリースでもなく、不動産業における第6のカテゴリーと位置付けている。不動産オーナーにとっては賃貸料収入の安定、不動産会社にとっては仲介収益機会の獲得、店舗出店者にとっては出店費用の削減、店舗撤退者にとっては閉店コストの削減というメリットがある。また飲食業は他の産業との比較で、開業・廃業による入れ替わりが激しいため、市場機会が豊富という特徴もある。
保有物件数(転貸借物件数)の増加に伴って賃料収益(ランニング収入)を積み上げるストック型ビジネスモデルである。21年3月期末時点の転貸借物件数は20年3月期末比22件増加の1706件だった。不動産売買事業は、不動産業者との関係強化も目的として、一定の保有枠の中で資金効率を重視して売買を行う。
中期経営計画の目標値は24年3月期売上高141億74百万円、営業利益10億77百万円、成約数520件、転貸借物件数2451件としている。転貸借物件数の中期的な目標は29年3月期5500件としている。
なおクロップス<9428>の連結子会社だが、営業上の取引はなく経営上の独立性を確保している。またCSR活動の一環として、飲食店舗を活用した子ども食堂を開催している。
■21年3月期は営業減益だが計画超、22年3月期増収増益予想
21年3月期の業績(非連結)は、売上高が20年3月期比3.6%増の103億42百万円、営業利益が6.8%減の7億31百万円、経常利益が3.7%増の8億41百万円、当期純利益が2.0%増の5億75百万円だった。配当は20年3月期と同額の9円(期末一括)とした。
売上高、利益とも従来予想を上回った。第1四半期をボトムとして成約件数が回復基調となり、転貸借物件の積み上げや不動産物件売却も寄与した。店舗転貸借事業は1.9%増収で12.8%減益だった。転貸借契約件数(新規契約件数と後継付け件数の合計)は20.9%減の314件、期末転貸借物件数は22件増加の1706件となった。なお成約件数は第1四半期が43件、第2四半期が81件、第3四半期が92件、第4四半期が98件だった。不動産売買事業は29.1%増収で8.9%増益だった。2物件を売却した。
営業利益は新型コロナ影響によるイニシャル収入減少で減益だが、販管費抑制も寄与して、従来予想に対して減益幅が縮小した。また経常利益と当期純利益は従来の減益予想から一転して増益で着地した。営業外収益での受取補償金と助成金収入の計上も寄与した。
四半期別に見ると、第1四半期は売上高が24億04百万円で営業利益が1億円、第2四半期は売上高が27億69百万円で営業利益が1億90百万円、第3四半期は売上高が27億63百万円で営業利益が3億14百万円、第4四半期は売上高が24億06百万円で営業利益が1億27百万円だった。
22年3月期業績(非連結)予想は、売上高が21年3月期比9.6%増の113億34百万円、営業利益が11.3%増の8億14百万円、経常利益が3.4%増の8億70百万円、当期純利益が3.4%増の5億95百万円としている。配当予想は未定としている。
新型コロナ影響で飲食業界の厳しい状況が継続するが、飲食店経営者のニーズの変化に合致した店舗物件の仕入を推進する。新型コロナ収束への過程でテナント募集が増加し、平常時よりも優良店舗物件を仕入れる機会が増加する可能性もあるとしている。成約件数は106件増加の420件、転貸借物件数は210件増加の1916件の計画である。
居抜き物件・店舗情報サイト「居抜き店舗.com」をリニューアルし、コロナ期を出店チャンスとみる飲食店経営者のニーズを捉えるWEBサイトに進化した。そして新規会員数が大幅増加している。収益拡大を期待したい。
■株主優待制度は毎年3月末300株以上・1年以上継続保有株主が対象
株主優待制度(20年8月に変更)は、毎年3月末時点で300株以上・1年以上継続保有株主を対象として、お食事券ジェフグルメカード5000円分を贈呈(詳細は会社HP参照)する。21年3月末対象から運用開始する。
なお株主優待制度について、単元未満株式の取り扱い変更(詳細は会社HP参照)を発表している。
■株価は調整一巡
株価は上値を切り下げる形でやや軟調だが調整一巡して出直りを期待したい。5月28日の終値は853円、今期予想PER(会社予想のEPS33円39銭で算出)は約26倍、前期実績PBR(前期実績のBPS166円14銭で算出)は約5.1倍、時価総額は約152億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)
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2021年05月31日