■循環型再生エネルギーシステムの実現性検討を開始
ホンダ<7267>(東1)と国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構は、人が長期間にわたって宇宙で滞在・活動するための環境構築を目指し、酸素や水素、電気を有人拠点や移動用車両に供給するための循環型再生エネルギーシステムに関する共同研究を進めているが、同システムの実現性検討を共同で開始することとなったと発表。(図=月面での循環型再生エネルギーシステムの活用 イメージ図 cJAXA/ホンダ)
宇宙で人が生活するためには、水や食料に加え、呼吸のための酸素、燃料となる水素、諸活動のための電気が必要。それらを地球から補給することなく宇宙で入手するためには、太陽エネルギーにより水を電気分解して酸素と水素を製造する高圧水電解システムと、酸素と水素から電気と水を発生させる燃料電池システムを組み合わせた「循環型再生エネルギーシステム」を構築することが解決策の一つとなる。そこで、ホンダとJAXAは、2020年11月に、3年間(2020年度〜2022年度)の共同研究協定を締結し、ホンダが有する高圧水電解技術と燃料電池技術を活用した、月周回有人拠点(Gateway)と月面での循環型再生エネルギーシステムに関する研究を進めている。
同共同研究において、JAXAは、これまでに検討してきたGatewayにおける酸素製造と月面における移動用車両への電気供給に関するミッションのシナリオや要求に基づき、検討条件の設定を担当し、ホンダは、JAXAのミッションやシナリオを実現するための技術検討を担当している。今年度(2021年度)は、昨年度の研究において識別した循環型再生エネルギーシステムの要素技術に関する課題に対し、試作による評価も行いながら実現性の検討を実施する。なお、この結果は来年度(2022年度)に計画しているシステムとしての成立性の検討へつなげていく予定。
■国際宇宙探査と月探査シナリオについて
人類の活動領域を、月さらには火星へと拡大するためには、持続的かつ実現可能な宇宙探査の計画が重要。2000年代初頭から、米国をはじめとした国際協力による有人宇宙探査計画の検討が開始され、2018年、文部科学大臣主催により、40か国を超える国・機関の代表により開催された第2回国際宇宙探査フォーラム(ISEF2)では、月・火星・その先の太陽系の探査活動が広く共有された目標であり、持続可能な形での探査の実施の重要性が確認された。
また、現在、26の宇宙機関が参加する国際宇宙探査協働グループ(ISECG)では、国際協調による宇宙探査に向けたロードマップ検討が進められており、JAXAでは、これらに連動する形で、国際宇宙探査シナリオの検討を継続的に実施している。
2019年10月、日本は、米国提案による国際宇宙探査プロジェクトである「アルテミス計画」に参画することを政府として決定し、協力項目について調整を進めることになった。この方針に則り、JAXAでは、火星なども視野に入れた月周回有人拠点(Gateway)への日本が得意とする技術・機器の提供、Gatewayへの新型宇宙ステーション補給機(HTV−X)での物資補給を目指し、研究開発を進めている。また、月面では、ピンポイント着陸技術の獲得を目指す小型月着陸実証機(SLIM)(2022年度打上げ予定)や、月面での水資源探査を目的とした月極域探査機(2023年度打上げ予定)により持続的な月面探査の基盤整備への貢献を目指し、さらに、2020年代後半以降の月面探査を支える移動手段として、有人与圧ローバの研究等を進めている。
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2021年06月14日