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2023年09月27日

クリーク・アンド・リバー社は上値試す、24年2月期2桁営業・経常増益予想で収益拡大基調

 クリーク・アンド・リバー社<4763>(東証プライム)は、クリエイティブ分野を中心にプロフェッショナル・エージェンシー事業、プロデュース事業、ライツマネジメント事業を展開し、プロフェッショナル50分野構想を掲げて事業領域拡大戦略を加速している。24年2月期は、日本クリエイティブ分野や医療分野を中心に各事業分野が好調に推移し、成長投資を吸収して2桁営業・経常増益予想としている。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は戻り一服となったが、自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。なお10月5日に24年2月期第2四半期決算発表を予定している。

■クリエイティブ分野中心にエージェンシー事業やプロデュース事業を展開

 クリエイティブ分野(映画・TV番組・ゲーム・Web・広告・出版等の制作)で活躍するクリエイターを対象としたプロフェッショナル・エージェンシー(派遣・紹介)事業、プロデュース(制作請負・アウトソーシング)事業、およびライツマネジメント(知的財産の流通)事業を展開している。

 プロフェッショナル8領域(クリエイティブ、メディカル・ヘルスケア、コンストラクション、クオリティ・オブ・ライフ、ライフサイエンス、コンピュータサイエンス、エンジニアリング、経営支援)の18分野に展開し、さらにプロフェッショナル50分野構想を掲げ、グループ資産を活用した商品・サービス・プロジェクトの開発や事業領域の拡大を推進している。23年2月期末時点でプロフェッショナルクリエイター36万8000人、クライアント4万8000社のネットワークを構築していることが強みだ。

 新規エージェンシー事業としては建築、ファッション、シェフ、プロフェッサー、ドローン、舞台芸術、リサーチャー(研究開発支援者)、CXO(CEO、CFO、CMOなど企業における業務や機能の最高責任者の総称)などを展開している。

 22年4月に農業分野における障がい者雇用促進および農業を基軸とした地域雇用促進を目的とする子会社コネクトアラウンドを設立、グループ内における障がい者雇用促進を目的とする子会社One Leaf Cloverを設立、22年5月に日本アニメ・コミックに特化したNFT(非代替性トークン)プラットフォーム「ANIFTY」を運営するANIFTYを子会社化、22年7月にシェフなど料理人の独立・開業を支援する子会社シェフズ バリューを設立、漫画に音楽や音声を融合した動画「モーションコミック」を開発する子会社Nextrekを設立した。

 23年1月にはテレビ番組企画・制作や人材サービスなどを展開するシオン・グループ3社を子会社化、23年5月には施設建築領域全般においてマネジメント・セミナー事業を展開するALFA PMCを子会社化し、グループは28社となった。

 なお23年3月には経済産業省と日本健康会議が共同で実施する「健康経営優良法人2023(大規模法人部門)」に認定された。

■事業シナジー強化

 事業シナジーを見越した資本参加としては、バイオベンチャーのCO2資源化研究所、アグリベンチャーのプラントライフシステムズ、不動産仲介プラットフォームのエージェント・グロース(事業上の通称はケラー・ウィリアムズ・ジャパン)、弁護士保険のミカタ少額短期保険、NFT関連のブロックチェーンエンターテインメント事業を展開するシンガポールDEA社、子ども向けオンライン世界旅行のMimmyなどに出資している。

 21年8月にはEPSホールディングス<4282>、ワールドホールディングス<2429>、SBSホールディングス<2384>と共同で、エルダー人材の働き方の多様性を企画・実現する新会社HATARAKUエルダー(EPSホールディングスの連結子会社)を設立した。

 22年9月にはシンガポールDEA社と共同で、DEA社のGameFiiプラットフォーム「PlayMining」での23年春リリースに向けて、オリジナルのNFTiiゲーム「HERO SPIRAL(ヒーロースパイラル)」の共同開発開始を発表した。デジタル上で新たな体験として実現することをコンセプトとした「次世代拠点シミュレーションゲーム×NFT軍団バトルゲーム」である。またWeb3事業・NFT事業パートナーとしての連携強化を図るためシンガポールDEA社に追加出資した。

 22年10月には投資事業を行う子会社としてC&Rインキュベーションラボを設立した。既存事業とのシナジーや新規事業立ち上げのシーズ獲得など、グループとしてのM&A・事業承継、事業再生への取り組みを本格化させる方針だ。そして23年2月期末時点で、劇団運営および公演のYTJ、食品原料のWeb売買プラットフォームを展開するICS−netに出資している。

■日本クリエイティブ分野が拡大基調

 23年2月期の事業分野別の構成比は売上高がプロデュース44%、エージェンシー派遣39%、エージェンシー紹介13%、ライツマネジメント・他4%、売上総利益がプロデュース36%、エージェンシー派遣22%、エージェンシー紹介35%、ライツマネジメント・他7%だった。

 セグメント別の構成比は、売上高が日本クリエイティブ分野69%、韓国クリエイティブ分野8%、医療分野12%、会計・法曹分野5%、その他(IT分野のエージェンシー事業、新規事業など)6%、営業利益(調整前)が日本クリエイティブ分野69%、韓国クリエイティブ分野▲0%、医療分野34%、会計・法曹分野4%、その他▲7%だった。

 日本クリエイティブ分野の領域別構成比は売上高がゲーム38%、Web28%、映像(テレビ・映画)27%、電子書籍・YouTube等3%、新規エージェンシー4%、その他1%、営業利益がゲーム54%、Web30%、映像16%、電子書籍・YouTube等16%、新規エージェンシー▲2%、他▲14%だった。

 なお韓国クリエイティブ分野は、TVマーケット関連事業を新設会社に承継してCREEK&RIVER ENTERTAINMENTを18年2月期第2四半期から持分法適用関連会社としたが、20年1月9日付で株式を追加取得し、改めて連結子会社化した。

 収益面では、医療分野の売上と利益が季節要因で第1四半期と第2四半期に偏重するため、全体としても上期の構成比が高い特性がある。主力の日本クリエイティブ分野は売上・営業利益とも拡大基調である。新規事業分野は人件費などの費用が先行するが順次収益化を見込んでいる。なお23年4月には新卒社員299名が入社(22年は160名)した。

■プロフェッショナル50分野構想

 中長期の成長戦略として「プロフェッショナル50分野構想」を掲げ、23年4月策定の新中期経営計画では、最終年度26年2月期の目標値に売上高605億円、営業利益56.5億円、営業利益率9.3%を掲げている。株主還元については、配当性向目標を従来の20%水準から30%水準に引き上げた。

 基本戦略としては、プロフェッショナル分野のさらなる拡大(プロフェッショナル50分野構想)、新規サービスの創出(プロフェッショナルの能力を活かす新たな価値の創造)、経営人材の創出、コーポレートガバナンスの強化を推進する。M&A・アライアンスも積極活用して事業領域拡大戦略を加速する方針だ。

 グループ資産を活かした商品・サービス・プロジェクトとしては、漫画家発掘・デジタル配信事業のプラットフォーム「漫画LABO」、クリニックの経営支援、メタバース関連のVR建築展示場「XR EXPO」、独自のVR映像配信技術を活用した低遅延VRリアルタイム配信システム・VR遠隔医療教育システム、AR胸腔ドレナージ(順天堂大学と医療ARを共同研究・開発中)、AI需要予測「Forecasting Experience」、事業承継・M&A事業、アパレル分野のDXを支援する「sture(ストゥーラ)」、漫画に音楽や音声を融合した動画「モーションコミック」(プラットフォーム開発中)などがある。

 21年12月には国内最大のクリエイティブ(ゲーム・映画・TV・動画・XR・Web・漫画・小説・建築)開発スタジオとして「C&R Creative Studios」を始動した。そして23年3月に日本初のクリエイター専用の仕事・交流特化型メタバース「C&R Creative Studios Metaverse」β1版を一般公開した。世界中のクリエイターが客船「C&R Creative Studios号」に乗船して交流とアイテムの融合を図ることで、世界を革新するコンテンツやサービスを生み出すことをコンセプトとしている。今後の予定としては、23年夏までに展示エリア、交流エリア、セミナールームなどを追加したβ版に発展させ、さらに機能を充実させて24年春ごろの本格稼働を目指す計画としている。

 22年5月には「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)とともに、地域の未来社会を創造する首長連合」(万博首長連合)と、地域の産業や経済の発展を目指す支援包括連携協定を締結した。22年11月には、メタバース空間での住宅展示場プラットフォーム「超建築メタバース」の本格提供を開始した。既に今秋のメタバース関連展示会において、イベント用として企業で活用され始め、ハウスメーカー、デベロッパー、工務店などで導入提案が複数進展している。

 22年12月にはYouTube上で展開するマルチチャンネルネットワーク(MCN)のThe Online Creators(OC)が、TV番組制作会社4社と共同で企業の重要目標達成指標(KGI)の実現を図る動画制作サービスOCPX(The Oline Creators Production Transformation)を開始した。

 23年3月には、オリジナル音楽付きの動くマンガ映像を無料で配信するモーションコミックアプリ「モブコミ」をリリースした。第1弾として12作品を公開した。さらにアグリテックを活用した新サービス(23年2月に川崎市に6次化農業・実習施設開設、24年7月に福島県大熊町にスマート農業施設開設予定など)や、ChatGPT活用製品の開発なども推進している。

■24年2月期2桁営業・経常増益予想で収益拡大基調

 24年2月期の連結業績予想は、売上高が23年2月期比13.3%増の500億円、営業利益が13.7%増の45億円、経常利益が12.4%増の45億円、親会社株主帰属当期純利益が3.5%増の30億円としている。なお24年2月期より配当性向を従来の20%水準から30%水準に引き上げることとし、24年2月期の配当予想は23年2月期比14円増配の41円(期末一括)としている。連続大幅増配で予想配当性向は30.4%となる。

 第1四半期は売上高が前年同期比12.1%増の127億45百万円、営業利益が6.4%減の15億80百万円、経常利益が5.9%減の15億95百万円、親会社株主帰属四半期純利益が16.0%減の10億45百万円だった。

 利益面は人件費・研修費やDXなど戦略投資の影響で減益だが、概ね計画水準だった。なおグループ全体で新卒社員344名入社(旧C&Rグループで299名、23年1月に子会社化したシオン・グループで45名)した。売上面は日本クリエイティブ分野が牽引して2桁増収で過去最高と順調だった。

 日本クリエイティブ分野は、売上高が15.6%増の86億31百万円で営業利益(調整前)が7.1%減の8億20百万円だった。引き続きゲーム・WEB関連のプロデュース事業が好調に推移し、シオン・グループの連結も寄与して大幅増収だが、人件費・研修費やDXなど戦略投資の影響で減益だった。なお新卒社員の稼働率は5月末時点で約70%となっている。25年新卒社員採用をさらに強化する方針としている。

 韓国クリエイティブ分野は売上高が3.0%減の8億76百万円で営業利益が8百万円の損失(前年同期は2百万円の利益)だった。TV局への派遣稼働数が減少し、Webtoonへの投資増加も影響して赤字だった。

 医療分野は売上高が1.3%増の18億32百万円で営業利益が6.4%減の7億87百万円だった。医師マッチングシステム「民間医局ポータル」による成約件数増加も寄与して医師紹介やイベント「レジナビFair」が好調だったが、ワクチン接種スポット案件減少(1億28百万円減少)やDX投資などで減益だった。

 会計・法曹分野は売上高が12.4%増の6億17百万円で営業利益が26.9%増の37百万円だった。紹介事業が伸長した。

 その他事業(新規事業合計16社)は、売上高が23.3%増の7億87百万円で営業利益が60百万円の損失(同79百万円の損失)だった。新規設立・グループ化(6社)など投資段階のため全体として営業損失だが、売上面は16社のうち9社が増収(合計1億56百万円増収)となり、利益面は6社が増益(合計93百万円)だった。

 通期の連結業績予想は据え置いている。日本クリエイティブ分野や医療分野を中心に各事業分野が好調に推移し、成長に向けた新規事業投資を吸収して増収増益予想としている。

 日本クリエイティブ分野は売上高が18%増の358億円で営業利益(調整前)が13%増の31億円、韓国クリエイティブ分野は売上高が横ばいの34億60百万円で営業利益が0百万円の利益(23年2月期は16百万円の損失)、医療分野は売上高が8%増の56億40百万円で営業利益が5%増の14億円、会計・法曹分野は売上高が11%増の25億60百万円で営業利益が19%増の1億90百万円、その他は売上高が34%増の41億円で営業利益が50百万円の損失(同2億75百万円の損失)の計画としている。

 第1四半期の進捗率は売上高25%、営業利益35%、経常利益35%、親会社株主帰属当期純利益35%である。医療分野の利益が上期偏重(特に第1四半期)であることを考慮しても概ね順調と言えるだろう。第1四半期は減益だったが、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株価は上値試す

 株価は戻り一服となったが、自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。9月26日の終値は2113円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS135円04銭で算出)は約16倍、今期予想配当利回り(会社予想の41円で算出)は約1.9%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS637円32銭で算出)は約3.3倍、そして時価総額は約486億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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