綿半ホールディングス<3199>(東証プライム)は、経営方針に「地域に寄り添い、地域と共に新しい価値を創造する」を掲げ、ホームセンターを中心とする小売事業、長尺屋根工事や自走式立体駐車場工事を強みとして戸建木造住宅分野にも展開する建設事業、および医薬品・化成品向け天然原料輸入を主力とする貿易事業を展開している。24年3月期は増益予想としている。第2四半期累計の進捗率はやや低水準だったが、期初時点で下期偏重の計画であること、小売事業において既存店売上が堅調に推移していること、四半期別に見ると第2四半期は第1四半期比で大幅増収増益だったことなどを勘案すれば、積極的な事業展開により通期ベースでの収益拡大基調に変化はないだろう。株価は水準を切り上げて23年3月の昨年来高値に接近している。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。なお1月30日に24年3月期第3四半期決算発表を予定している。
■小売事業、建設事業、貿易事業を展開
ホームセンターを中心とする小売事業、長尺屋根工事や自走式立体駐車場工事を強みとして戸建木造住宅分野にも展開する建設事業、および医薬品・化成品向け天然原料輸入を主力とする貿易事業を展開している。
23年3月期は小売事業の売上高が22年3月期比1.4%増の776億11百万円で営業利益(全社費用等調整前)が58.0%減の7億62百万円、建設事業の売上高が55.8%増の496億02百万円で営業利益が122.7%増の18億88百万円、貿易事業の売上高が3.2%増の60億01百万円で営業利益が17.4%減の5億76百万円、その他(不動産事業など)の売上高が284.9%増の10億83百万円で営業利益が17.2%増の1億68百万円だった。
■小売事業はEDLP×EDLC戦略を推進
小売事業は、綿半ホームエイドが長野県を中心にスーパーセンター業態とホームセンター業態、綿半フレッシュマーケットが愛知県を中心に食品スーパー業態、綿半Jマートが関東甲信越エリアにホームセンター業態を展開している。
基本戦略として、M&Aも活用したエリア拡大と売場面積拡大、EDLP(エブリデー・ロー・プライス)×EDLC(エブリデー・ロー・コスト)戦略、子会社の綿半パートナーズによるグループ商品仕入原価低減とPB商品共同開発・相互供給、全社を一本化する新基幹システムの導入と物流改革、ネット通販の拡大などを推進している。スーパーセンターは10万点を超える豊富な品揃えに加えて、生鮮食品を加えることで主婦層を取り込み、平日・土日の平準化を図っていることが特徴である。
22年8月には綿半スーパーセンター上田店(長野県上田市)をオープンした。食品スーパー、ホームセンター、ドラッグストアの3業態を一つにまとめたグループ最大級の店舗である。22年9月には、長野市中心部・行政庁舎にも近い権藤地区に綿半スーパーセンター権堂店(長野県長野市権堂町)をオープンした。中心市街地型店舗開発を推進しており、生鮮食品、ホームセンター商品、医薬品、各種テナントを含めた複合型店舗としての出店である。
周辺領域への展開では、22年7月に綿半パートナーズが、ネットショップ立ち上げに必要な機能をワンパッケージで提供する「PayTouch」をオープンした。23年2月には綿半ドットコムが、創業25年で年間利用者2万人・年間買取100万品を誇る買取専門店「買取けんさく君」の四谷営業所をオープンした。
M&Aでは、18年12月に家電・パソコン通販サイト「PCボンバー」運営のアベルネット(現:綿半ドットコム)を子会社化、19年4月に長野県内で「お茶元みはら胡蝶庵」を展開する丸三三原商店(現:綿半三原商店)を子会社化、20年10月に家具・インテリア販売や空間デザイン事業を展開するリグナ(東京都)を子会社化、20年11月に調剤薬局併設ドラッグストアを展開するほしまん(長野県)を子会社化、21年3月に組立家具「Shelfit」製造販売の大洋(静岡県)を子会社化、21年11月にヴィンテージスタイルの家具・インテリアショップ「藤越 FUGGICOSI」を展開する藤越(静岡県)を子会社化、22年4月に建物管理・不動産売買のAIC(東京都新宿区)を子会社化、藤越とリグナを合併(新社名リグナ)した。22年7月には中村ファームを子会社化(綿半ファームへ商号変更)して養豚事業に参入した。
23年3月には子会社の綿半ホームエイドを通じて小諸動物病院の全株式を取得した。綿半ドラッグと連携した動物用医薬品の取り扱い、犬猫療法食等の企画販売、店舗におけるワクチン投与やトリミング事業の展開など、幅広くペット市場に参入する方針としている。
小売事業の月次売上(速報値)を見ると、23年12月は全店が96.4%、既存店が96.8%だった。年末商材の予約獲得に向けた積極的なプロモーションにより鮮魚寿司やオードブルなどが好調だったが、暖冬の影響で季節商品が低調だった。なお23年4月〜12月累計は全店が101.8%、既存店が100.2%となった。
■建設事業は長尺屋根工事や自走式立体駐車場工事に強み、木造住宅も拡大
建設事業は、綿半ソリューションズが建築・土木・住宅リフォーム工事、鉄骨・鋼構造物の加工・製造などを展開し、長尺屋根工事および自走式立体駐車場工事を強みとしている。長尺屋根工事は、工場の操業を止めずに老朽化した屋根の改修工事を行う「WKカバー工法」で特許を取得している。自走式立体駐車場工事は、柱が少なく利用者が使いやすい「stage W」など、多数の国土交通省認定を有して国内トップシェアを誇っている。さらに、19年8月に戸建木造住宅FC事業を展開するサイエンスホーム(静岡県)を子会社化、21年8月に戸建木造住宅販売・加盟店運営の夢ハウス(新潟県)を子会社化し、木造住宅分野も注力している。
22年12月には、自然素材・天然無垢材で造る木造住宅の新ブランド「cotton1/2」(木造軸組パネル工法)を発表した。子会社の綿半林業の生産ラインと品質、および子会社のサイエンスホームの合理化工法と販売戦略を合わせて、第3の住宅グループとして23年1月より始動した。将来的には年間1万2000棟という目標を掲げ、木造住宅のニュースタンダードを目指すとしている。
23年5月には木造システム建築「PREST WOOD」を販売開始した。23年6月には綿半ソリューションズが埼玉県川島町および東急不動産と、川島町における持続可能なまちづくりに係る協定書締結を発表した。再生可能エネルギー導入拡大を推進する。23年7月には木造住宅「夢ハウス」のブランドロゴを刷新して新CMの放映を開始した。また綿半ソリューションズが超軽量太陽光システムLIGHTON SOLARの販売を開始した。
23年8月には、木造住宅の柱・梁・床・壁材など総合木質建材メーカーである征矢野建材(民事再生手続き申し立て)へのスポンサー支援に関する契約を締結した。戸建木造住宅FC事業とのシナジーなどにより、木造建築事業の拡大を推進する。なお民事再生計画の認可決定後に、民事再生に基づく100%減資と征矢野建材に対する新たな出資を行う予定としている。
23年9月には綿半リアルエステートが、アメリカ生まれの炭酸を利用した環境に優しいカーペットやイス・ソファーのクリーニングシステム「ケムドライシステム」諏訪営業所を開設した。綿半グループは約20年前から日本における総代理店としてFC展開し、全国約50の施工代理店が理想的な清潔空間の維持を提供している。
■貿易事業はジェネリック医薬品向け天然原料などを販売
貿易事業は、医薬品・化成品向け天然原料輸入専門商社の綿半トレーディングが展開している。ジェネリック医薬品向けアセトアミノフェン(解熱鎮痛剤)や、メキシコ特産でヘアワックス・口紅などに使用するキャンデリラワックス(取り扱い数量国内1位)など特定分野に強みを持ち、製造部門はHMG(ヒト尿由来の排卵障害治療薬)原薬を製造して医薬品メーカーに販売している。
23年1月には綿半トレーディングが、果実・野菜等の食品輸入を展開するカサナチュラルの株式20%取得して資本業務提携した。天然原料の新規開拓・調達を加速し、グループ小売業店舗で取り扱う食品の拡充にも取り組む方針としている。
■中期経営計画
23年5月に新・中期経営計画(24年3月期〜27年3月期)を策定した。物価上昇・電気代高騰など外部環境の変化に対応し、前・中期経営計画(23年3月期〜25年3月期)を見直した。経営方針は引き続き「地域に寄り添い地域と共に新しい価値を創造する」として、目標数値は最終年度27年3月期の売上高1500億円、経常利益45億円、経常利益率3.0%としている。
地域との繋がりを大切にしながら、地域の発展に尽くすとともに、目標数値達成に向けて諸施策を実践し、企業価値向上を図るとしている。なお23年5月には、綿半グループ従業員持株会の奨励金付与率引き上げを発表した。また、従業員の生活支援とモチベーション向上を目的として、物価支援一時金の支給(23年3月に5万円支給)に加え、最大12%の賃上げ(持株会の奨励金付与率引き上げを含む)を実施した。
■24年3月期増益予想
24年3月期連結業績予想は売上高が23年3月期比2.8%増の1380億円、営業利益が13.4%増の27億24百万円、経常利益が2.0%増の31億20百万円、親会社株主帰属当期純利益が11.9%増の18億50百万円としている。配当予想は23年3月期比1円増配の23円(期末一括)としている。9期連続増配予想で、予想配当性向は24.7%となる。
第2四半期累計は売上高が前年同期比3.6%減の619億78百万円、営業利益が8.3%減の10億32百万円、経常利益が11.3%減の12億61百万円、親会社株主帰属四半期純利益が8.9%増の7億66百万円だった。
小売事業は順調だったが、前期に大幅伸長した建築事業の反動により営業・経常減益だった。親会社株主帰属四半期純利益については、特別利益に固定資産売却益1億76百万円、特別損失に減損損失1億33百万円を計上し、法人税等の減少も寄与して増益だった。なお期初計画(657億63百万円、営業利益8億95百万円、経常利益10億40百万円、親会社株主帰属四半期純利益6億30百万円)との比較で見ると、売上高は計画を下回ったが、各利益は計画を超過達成して着地した。
小売事業は売上高が3.2%増の395億32百万円、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が13.2%増の5億59百万円だった。増収・2桁営業増益と順調だった。売上面は前期第2四半期にオープンした2店舗(綿半スーパーセンター上田店、綿半スーパーセンター権堂店)も寄与して増収となり、利益面はオリジナル商品の開発加速なども寄与した。
建設事業は売上高が22.4%減の182億54百万円、利益が78.3%減の2億08百万円だった。前期に大幅伸長した反動で減収減益だった。
貿易事業は売上高が53.6%増の34億31百万円、利益が413.7%増の6億11百万円だった。上期に納品が集中した影響で大幅増収増益だった。その他(不動産事業など)は売上高が213.3%増の7億59百万円、利益が123.8%増の1億09百万円だった。
四半期別に見ると、第1四半期は売上高297億62百万円で営業利益2億40百万円、第2四半期は売上高322億16百万円で営業利益7億92百万円だった。第2四半期は第1四半期で大幅増収増益だった。
通期の連結業績予想は据え置いている。セグメント別の計画は、小売事業の売上高が3.6%増の804億35百万円でセグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が25.9%増の9億60百万円、建設事業の売上高が0.4%増の498億円で利益が0.1%増の18億90百万円、貿易事業の売上高が2.3%増の61億37百万円で利益が27.3%増の7億34百万円としている。
各事業とも概ね堅調に推移して増収増益予想としている。小売事業では生鮮・PB商品の構成比上昇も寄与する。建設事業は前期の大幅増収増益の反動を考慮して横ばい見込みとしている。貿易事業は原材料コスト上昇の価格転嫁の進展や、研究開発効果による利益率上昇を見込んでいる。
重点施策として、小売事業では店舗改装・新業態開発(ペット×ドラッグ「綿半ウエルネスエアイフガーデン」開発、調剤薬局導入)の推進、流通網拡大(飯田物流センターの本格稼働)、オリジナル商品開発・SPA化加速(24年3月期目標1.4万SKU、売上構成比15.0%)に取り組む。建設事業では地場産木材加工・流通網の構築、木を使った商品開発(木造システム建築「PREST WOOD」の販売開始、非住宅木造建築の開発)の推進、鉄骨分野の海外ネットワーク構築(海外ファブリケーターとの連携による大型物件対応)に取り組む。貿易事業では食品分野への進出(新たな天然原料の開拓)、肥料・飼料分野の拡大(小売事業との連携による6次産業化推進)に取り組む。
第2四半期累計の進捗率は売上高45%、営業利益38%、経常利益40%、親会社株主帰属当期純利益41%とやや低水準だったが、期初時点で下期偏重の計画であること、小売事業において既存店売上が堅調に推移していること、四半期別に見ると第2四半期は第1四半期比で大幅増収増益だったことなどを勘案すれば、積極的な事業展開により通期ベースでの収益拡大基調に変化はないだろう。
■株主優待制度は毎年9月末の継続保有株主対象
株主優待制度(詳細は会社HP参照)は毎年9月30日現在で1単元(100株)以上を継続保有している株主を対象として、2000円相当の綿半オリジナル信州特産品を贈呈(保有株式数に応じて選択)している。なお23年11月2日に株主優待制度の拡充を発表した。従来の継続保有100株以上(1点選択)または300株以上(2点選択)という区分に加えて、継続保有1000株以上(3点選択)という優待区分を新設する。24年9月末対象から実施する。
■株価は上値試す
株価は水準を切り上げて23年3月の昨年来高値に接近している。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。1月15日の終値は1445円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS92円99銭で算出)は約16倍、今期予想配当利回り(会社予想の23円で算出)は約1.6%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1068円23銭で算出)は約1.4倍、そして時価総額は約288億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)
◎日刊株式投資情報新聞(無料)登録受付中!
2024年01月16日