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2024年01月18日

イトーキは上値試す、24年12月期も収益拡大基調

 イトーキ<7972>(東証プライム)はオフィス家具(ワークプレイス事業)の大手で、物流設備(設備機器・パブリック事業)なども展開している。重点戦略として、全ての空間を市場とする新たな価値提供、グループ内連携によるシナジー効果発揮、コストを勘案したボトムライン経営の徹底による強靭な収益体質の構築などを推進している。23年12月には、空間デザインの先端事例をデザイナー視点で解説するデザインギャラリーサイト「ITOKI WORK―Style Design」を公開した。23年12月期は需要が高水準に推移し、提供価値の向上による利益率改善なども寄与して大幅営業・経常増益予想としている。さらに24年12月期も積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は23年12月の直近安値圏から切り返して戻り歩調の形だ。上値を試す展開を期待したい。なお2月13日に23年12月期決算発表を予定している。

■オフィス家具の大手で物流機器関連も展開

 オフィス家具の大手で物流設備なども展開している。製販一貫体制を特徴としている。21年5月には公共空間へのアート導入を展開するアートプレイスを子会社化してアート関連事業を開始した。海外は20年6月に中国の地域統括会社として伊藤喜を設立し、拠点再編、人員体制適正化、直接販売強化など収益構造改革を推進している。

 22年12月期のセグメント別業績は、ワークプレイス事業の売上高が21年12月期比6.7%増の859億45百万円でセグメント利益(営業利益)が34.7%増の25億79百万円、設備機器・パブリック事業の売上高が6.5%増の356億67百万円でセグメント利益が52.2%増の14億82百万円、IT・シェアリング事業の売上高が7.6%減の16億24百万円でセグメント利益が4億49百万円の黒字(前年同期は3億85百万円の赤字)だった。収益はオフィス移転シーズンにあたる第1四半期(1月〜3月)偏重の特性がある。

 ワークプレイス事業はオフィス家具、建材・内装工事、オフィス空間デザイン、学習家具など、設備機器・パブリック事業は物流設備、特殊扉、研究施設機器など、IT・シェアリング事業はオフィスシェアリング、オフィス機器レンタル、ITシステム開発などを展開している。

 本社オフィスのITOKI TOKYO XORK(イトーキ・トウキョウ・ゾーク)を活用して、ワークスタイルの多様化や働き方改革に対応したオフィス空間の提案を推進している。なお23年2月には、2月9日を「学習机の日」として記念日登録を申請し、一般社団法人日本記念日協会より正式に登録された。同社は1962年に日本で初めてスチール製学習机を発売した。23年12月には、空間デザインの先端事例をデザイナー視点で解説するデザインギャラリーサイト「ITOKI WORK―Style Design」を公開した。

■ポストコロナの働く環境づくりをリード

 中期経営計画「RISE ITOKI 2023」では、目指す姿を「ポストコロナの働く環境づくりをリードする」「強靭な体質の高収益企業になる」として、重点方針を構造改革プロジェクトの実行、新たな価値の創出と提供、不採算事業の早期黒字化達成、人材の育成、ESG経営の実践としている。

 目標値には、23年12月期売上高1330億円(オフィス関連709億円、設備機器関連590億円、その他31億円)、営業利益60億円(オフィス関連35億50百万円、設備機器関連23億円、その他1億50百万円)、営業利益率4.5%、経常利益59億円、ROE7.0%以上を掲げている。

 基本戦略としては、オフィス市場では構造改革による高収益化、全ての空間を市場とする新たな価値提供、DXを活用した新しい営業スタイルの実行・展開、設備機器市場では自社保有技術の確立と社会インフラ発展への寄与、急増する物流施設商談に対応するための生産能力増強、グループ内連携によるシナジー効果発揮、海外市場では中国市場での販売体制拡充、コストを勘案したボトムライン経営の徹底による強靭な収益体質の構築、その他(ECビジネス市場)ではテレワーク家具の販売機会創出、新たな顧客層獲得に向けた新規チャネル立ち上げなどを推進する。

 22年11月には、静岡聖光学院との実証研究プロジェクト(メタバースを用いた仮想空間と現実空間の学習環境のデザインと教育カリキュラムの構築プロジェクト)が、文部科学省「次世代の学校・教育現場を見据えた先端技術・教育データの利活用推進業」に採択された。

 23年1月には新たなモノづくりの形として滋賀工場APセンター(アセンブル・プロセスセンター)が本格稼働した。自社製品の保管・組立・出荷を一元的に行うセンターで、オフィス商品のアセンブル生産方式を強化し、生産性向上および収益拡大を推進する。

 23年2月には「メタバース×リアル」のハイブリッドショールームによる実証実験開始を発表した。ECメタバースの「メタストア」を提供するハコスコ社の協力のもと、ハイブリッドショールームによるDX時代の新しいコミュニケーション空間を探るとしている。23年6月には、次世代の学習環境および教育カリキュラム(文部科学省の採択事業)として、メタバースを活用した「バーチャルSTEAM教室」を開発し、静岡聖光学院にて実装した。

 23年8月には、物流「2024年問題」への対応や首都圏供給網の再構築・商品配送円滑化に向けて、物流拠点であるイトーキ東京テクノパークを移転し、イトーキ東京ロジスティクスセンター(埼玉県草加市)を開設した。23年10月には、京都工場内に「ラボ機能」と「ショールーム機能」を兼ね備えた共創空間・開発工房「カロッツェリア」を開設した。また23年11月にはイトーキ東京BASE(東京都江東区)を開設した。

■サステナビリティ経営

 22年7月にはサステナビリティ経営の実現に向けてマテリアリティを刷新した統合報告書2022を発行し、2050年カーボンニュートラル目標を表明した。22年8月には、女性活躍推進に関する取り組みの実施状況が優良な企業として厚生労働省より「えるぼし」の3つ星(3段階目)認定を取得した。

 22年9月には特定非営利活動法人ファザーリング・ジャパンが主宰する「イクボス企業同盟」に加盟した。22年10月にはワーク・ライフバランスが推進する「男性育休100%宣言」に賛同した。22年11月には、性的指向や性自認などにおける多様性を尊重し、誰もが自分らしく働ける職場環境を目指して「LGBTQアライ宣言」し、LGBTQに関する職場における取り組みの評価指標である「PRIDE指標2022」において「ブロンズ」を受賞した。

 22年12月には東京ビッグサイトで開催された「エコプロ2022」において、三重大学およびダルトンとの共同研究の一環として、ドリップ後に出る「コーヒーの豆かす」を活用して試作した植物由来のボード「Coffee Grounds board」を参考展示した。また、一般社団法人レジリエンスジャパン推進協議会が実施する「令和4年度第2回国土強靭化貢献団体認証(レジリエンス認証)」において「事業継続および社会貢献」の認証を取得した。

 23年1月には、事実婚や同性のパートナー、およびその子、親に対し、法律上の配偶者や家族と同様に福利厚生や規程を適用する「パートナーシップ制度」を導入するとともに、ハラスメントに関する規程の改定、および同性婚の法制化を推進するBME(Business for Marriage Equality)への賛同を発表した。

 23年2月には、JobRainbow社主催のダイバーシティ&インクルージョンに取り組む企業を認定する日本最大のアワード「D&I Award 2022」において、最高ランクの「ベストワークプレイス」に認定された。23年3月には、経済産業省と日本健康会議が共同で選定する健康経営優良法人2023(大規模法人部門ホワイト500)に認定された。オフィス家具事業を展開する企業としては初の7年連続認定となる。23年7月には、育児休業を取得後に復職した社員に「育児休業復職支援金」の支給を開始した。ダイバーシティ&インクルージョンのリーディングカンパニーを目指すとしている。23年10月には、サプライチェーン全体の共存共栄に向けて、パートナーシップ構築宣言を作成・公表した。

 23年12月には、武蔵野大学データサイエンス学部と産学連携で学習成果証明システムを共同開発し、その評価を証明する学習成果証明書をNFTによって共同発行したと発表している。学生がアピールしづらかった客観的な自身の非認知能力を外部へ証明することができる。

■23年12月期大幅営業・経常増益予想、24年12月期も収益拡大基調

 23年12月期の連結業績予想(23年8月7日付で各利益を上方修正)は、売上高が22年12月期比5.4%増の1300億円、営業利益が63.7%増の75億円、経常利益が79.5%増の75億円、親会社株主帰属当期純利益が特別利益の一巡で9.3%減の48億円としている。配当予想(23年8月7日付で期末7円上方修正)は、22年12月期比5円減配の32円(期末一括)としている。22年12月期の37円には特別配当20円が含まれているため、普通配当ベースでは15円増配との形となる。予想配当性向は30.2%となる。

 第3四半期累計は売上高が前年同期比7.7%増の968億57百万円、営業利益が75.7%増の71億79百万円、経常利益が78.4%増の73億60百万円、親会社株主帰属四半期純利益が39.6%増の49億09百万円だった。

 各事業が順調に伸長し、提供価値の向上による利益率改善なども寄与して大幅増益だった。営業利益+31億円の要因分析は、売上増加に伴う利益増加+25億円、売上総利益率改善(構造改革による粗利益改善、カタログ価格改定・販売価格適正化など)+18億円、販管費増加(業績連動賞与の増加、DX推進のためのIT基盤強化など)▲17億円、物流費減少(構造改革プロジェクト推進による物流サービス収益力強化)+4億円としている。

 ワークプレイス事業は、売上高が11.1%増の702億43百万円で、営業利益が119.3%増の53億67百万円だった。ハイブリッドな新しい働き方にあわせたリニューアル案件やオフィス移転案件を中心に需要が好調だった。増収効果や提供価値の向上による利益率改善などにより大幅増益だった。

 設備機器・パブリック事業は、売上高が1.1%減の251億99百万円で、営業利益が11.8%増の14億06百万円だった。微減収だが、博物館・美術館の展示ケースやデジタルサイネージ等の公共施設向け設備の需要が好調に推移した。利益面は、公共施設向け設備における提供価値の向上による利益率改善などにより増益だった。

 IT・シェアリング事業は、売上高が8.9%増の13億07百万円で、営業利益が0.9%減の3億22百万円だった。システム開発・検証事業やオフィスシェア事業が概ね堅調に推移した。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高が369億65百万円で営業利益が47億77百万円、第2四半期は売上高が312億25百万円で営業利益が22億25百万円、第3四半期は売上高が286億67百万円で営業利益が1億77百万円だった。年度末に当たる第1四半期の構成比が高い季節特性がある。

 通期連結業績予想は据え置いている。下期に人的資本投資やDX推進などの戦略投資を見込むが、構造改革プロジェクトによる体質改善効果で営業利益は33期ぶりに過去最高を更新する見込みだ。セグメント別の計画は、ワークプレイス事業の売上高が7.9%増の927億円で営業利益が106.7%増の53億円、設備機器・パブリック事業の売上高が0.5%減の355億円で営業利益が8.0%増の16億円としている。

 なお通常は第1四半期の構成比が高い季節特性があるが、今期はワークプレイス事業のオフィス移転案件が期中に分散し、設備機器・パブリック事業では物流設備案件が下期に偏重するため、通常とやや異なる四半期構成になる見込みとしている。このため通期会社予想に再上振れ余地があり、さらに24年12月期も積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株価は上値試す

 株価は23年12月の直近安値圏から切り返して戻り歩調の形だ。上値を試す展開を期待したい。1月17日の終値は1382円、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS105円84銭で算出)は約13倍、前期推定配当利回り(会社予想の32円で算出)は約2.3%、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS1100円33銭で算出)は約1.3倍、そして時価総額は約631億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 09:07 | アナリスト水田雅展の銘柄分析