京写<6837>(東証スタンダード)はプリント配線板の大手メーカーである。成長に向けて6つの重点戦略(グローバル生産・販売戦略、企業間連携戦略、効率化戦略、技術戦略、財務戦略、人財戦略)を推進し、独自のスクリーン印刷技術を活用してグローバルニッチトップメーカーを目指すとしている。24年3月期は大幅増益予想としている。自動車向けプリント配線板の受注回復、ベトナム子会社の黒字化、実装関連の好調、為替の円安、中国におけるコスト改善などが寄与する見込みだ。さらに25年3月期も積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は水準を切り下げる形となってやや軟調だが、1倍割れの低PBRも評価材料であり、調整一巡して出直りを期待したい。なお4月30日に24年3月期決算発表を予定している。
■プリント配線板の大手メーカー
プリント配線板の大手メーカーである。世界最大の生産能力を誇る片面プリント配線板、および両面プリント配線板を柱として、実装治具関連事業も展開している。販売先は自動車関連、家電関連、事務機関連など、幅広い顧客層(国内1000口座、海外300口座)を獲得している。
プリント配線板は独自のスクリーン印刷技術をベースとして、防塵対策基板、熱伝導放熱基板、ファイン回路片面基板などに技術的な強みを持っている。そして高温工程で繰り返し使用可能なノンシリコーンタイプ粘着キャリア、電子部品の急速な小型化に対応した業界初のスクリーン印刷法による0603チップ部品対応片面配線板、伸縮性のある材料にスクリーン印刷で直接回路を形成するストレッチャブル基板(プリンタブル基板)などの受注拡大が期待されている。
プリント配線板の生産は国内、および中国、インドネシア、ベトナムに展開している。片面プリント配線板は世界最大の生産量を誇っている。メキシコ子会社では実装搬送治具を製造している。
ベトナム子会社は両面配線板のグローバル生産拠点として21年1月に販売開始、23年8月に第2生産ラインが稼働開始して生産能力が2倍に拡大した。自動車関連向けを主力としている。なおベトナム子会社には自動車関連電子部品実装のエヌビーシー(岐阜県大垣市、05年から資本業務提携して協力関係)が出資している。さらに24年3月29日(予定)に同社を割当先とする増資を行い、増資後の出資比率は同社94.12%、エヌビーシー5.88%となる。
また21年5月にはメイコー<6787>と資本業務提携した。ともにプリント配線板事業を主力としているが、得意とする製品が異なるため棲み分けができている。中国やベトナムで事業拡大を進めるなど共通点が多く、グローバルに協業することで相互補完が可能な状況にあるとしている。経営資源の相互活用などでシナジー創出を図る方針だ。
■自動車関連が主力
23年3月期の製品別の売上高は、片面板が22年3月期比8%増の113億51百万円、両面板(多層板、銀スルーホール基板含む)が25%増の102億77百万円、実装関連が19%増の21億02百万円、その他が16%減の7億32百万円だった。両面板はベトナムの生産量増加に単価上昇も寄与した。実装関連は需要が回復基調となった。
用途別の売上高は、自動車関連が32%増の91億63百万円、家電製品が3%減の49億46百万円、事務機関連が23%増の34億57百万円、電子部品が17%増の21億64百万円、電気機器が14%減の9億72百万円、その他(映像機器、音響機器、アミューズメント等)が7%増の37億60百万円だった。自動車関連が大幅に増加した。
地域別のセグメント業績(セグメント間取引消去前)は、日本の売上高が2%増の98億46百万円で営業利益が21%減の1億89百万円、中国の売上高が19%増の135億52百万円で営業利益が8%増の6億99百万円、インドネシアの売上高が35%増の27億39百万円で営業利益が13百万円の赤字(22年3月期は14百万円の黒字)、メキシコの売上高が11%増の95百万円で営業利益が0百万円の赤字(同5百万円の黒字)、ベトナムの売上高が266%増の21億51百万円で営業利益が1億78百万円の赤字(同4億22百万円の赤字)だった。ベトナムは生産が本格化して赤字縮小した。
■独自の印刷技術を活用してグローバルニッチトップメーカー目指す
中期経営計画では目標値として、最終年度26年3月期売上高300億円、営業利益16億円、営業利益率5.3%、ROE10%、配当性向25%を掲げている。
製品別売上高の計画は片面板が101億円、両面板が127億円、金属基板が26億円、実装関連が32億円、新事業が10億円(超厚銅基板が8億円、プリンタブル基板が2億円)、その他が4億円としている。また地域別の売上構成比の計画は日本が41%、中国が22%、ASEANが26%、北米その他が11%としている。製品別では両面板と金属基板の拡大、地域別ではASEAN(ベトナム)の売上拡大を図る方針だ。
6つの重点戦略(グローバル生産・販売戦略、企業間連携戦略、効率化戦略、技術戦略、財務戦略、人財戦略)を推進し、独自のスクリーン印刷技術を活用してグローバルニッチトップメーカーを目指すとしている。
グローバル生産・販売戦略では最適な供給網の再構築(ベトナム工場第1期フル稼働、両面事業・営業拠点の再編)や片面シェア拡大による利益確保など、企業間連携戦略ではEMSメーカー・商社との連携マーケティングによる製品開発・販路拡大や同業他社との相互補完関係構築など、効率化戦略では自働化・IT化による生産効率向上やDX活用による業務効率化推進など、技術戦略ではプリンタブル関連基板の事業化や0603対応微細基板の技術提案など、財務戦略では自己資本強化や持続的・積極的な株主還元など、人財戦略ではマネジメント人材の育成やESG・SDGsへの取り組みなどを推進する方針だ。
なお22年7月には「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」に登録した。自社の保有する技術を用いて環境への貢献を目指す。
■24年3月期大幅増益予想、25年3月期も収益拡大基調
24年3月期の連結業績予想は売上高が23年3月期比2.2%増の250億円、営業利益が48.8%増の10億円、経常利益が34.0%増の8億30百万円、親会社株主帰属当期純利益が特別損失一巡も寄与して5億60百万円(23年3月期は4億85百万円の損失)としている。配当予想は23年3月期比6円増配の9円(期末一括)としている。予想配当性向は23.1%となる。
第3四半期累計は売上高が前年同期比3.2%増の186億82百万円、営業利益が105.9%増の9億21百万円、経常利益が44.2%増の6億02百万円、親会社株主帰属四半期純利益が106.3%増の3億80百万円だった。主力の自動車向けプリント配線板の受注回復、ベトナムの黒字化、実装関連の好調、為替の円安効果、中国におけるコスト改善などにより大幅増益だった。
地域別セグメント業績(内部取引含む)は、日本の売上高が12.3%増の80億64百万円で営業利益が141.3%増の1億96百万円、中国の売上高が1.8%減の99億13百万円で営業利益が6.6%増の6億17百万円、インドネシアの売上高が23.6%減の15億76百万円で営業利益が66百万円の損失(前年同期は26百万円の損失)、メキシコの売上高が29.5%増の95百万円で営業利益が3百万円(同0百万円)、ベトナムの売上高が95.3%増の27億75百万円で営業利益が1億78百万円(同1億67百万円の損失)だった。
日本では自動車向けプリント配線板が回復傾向となった。また実装関連では新規市場開拓により通信機器向けが大幅に増加した。海外はベトナムにおいて自動車関連配線板の受注が大幅に増加した。サプライチェーン体制再編により、自動車関連の北米向けを中国からベトナムに移管したことも寄与した。中国とインドネシアは事務機向け配線板などが減少したが、中国では高付加価値の金属基板の増収効果や受注減少に合わせたコスト改善効果で増益だった。
製品別売上高は、片面板が10.4%減の76億46百万円、両面板(多層板、銀スルーホール基板含む)が14.2%増の85億67百万円、実装関連が30.9%増の19億09百万円、その他が10.0%減の5億59百万円だった。両面板、実装関連は過去最高の売上高となった。
用途別売上高は、主力の自動車関連が30.4%増の85億91百万円、家電製品が6.5%減の34億52百万円、事務機関連が25.1%減の19億92百万円、電子部品が29.7%減の11億69百万円、電気機器が34.2%減の5億23百万円、その他(映像機器、音響機器、アミューズメント等)が16.6%減の10億46百万円、実装関連が30.9%増の19億09百万円だった。なお実装関連の用途別構成比は産業機器45.5%、航空機13.2%、通信機器10.6%、自動車8.7%、電子部品6.3%、その他15.7%だった。
全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が61億11百万円で営業利益が3億41百万円、第2四半期は売上高が60億19百万円で営業利益が2億90百万円、第3四半期は売上高が65億52百万円で営業利益が2億90百万円だった。
通期連結業績予想は据え置いている。自動車向けプリント配線板の受注回復、ベトナムの黒字化、実装関連の好調、為替の円安、中国におけるコスト改善などが寄与する見込みだ。第3四半期累計の進捗率は売上高が75%、営業利益が92%、経常利益が73%、親会社株主帰属当期純利益が68%だった。第3四半期累計の進捗率が高水準だったことを勘案すれば通期会社予想は上振れの可能性が高く、さらに25年3月期も積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株価は調整一巡
株価は水準を切り下げる形となってやや軟調だが、1倍割れの低PBRも評価材料であり、調整一巡して出直りを期待したい。4月23日の終値は405円、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS38円97銭で算出)は約10倍、前期推定配当利回り(会社予想の9円で算出)は約2.2%、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS502円53銭で算出)は約0.8倍、そして時価総額は約59億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)
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2024年04月24日