■産総研と企業・大学が共同開発、極低温下での原理実証に成功
産業技術総合研究所(産総研)の研究チームは、大規模超伝導量子コンピューター開発を加速させる画期的な技術を発表した。横浜国立大学、東北大学、NEC(日本電気)<6701>(東証プライム)との共同研究により、1本のマイクロ波ケーブルで1000個以上の量子ビットを制御できる超伝導回路の提案と原理実証に成功した。
実用的な量子コンピューターには100万個もの量子ビットが必要とされるが、既存技術では極低温下の各量子ビットを室温下のマイクロ波信号で個別に制御するため、最大1000個程度に制限されていた。今回の技術は、マイクロ波を多重化することで1本のケーブルから多数の制御信号を生成し、伝送経路の密度を従来の1000倍に高められる。これにより、室温と極低温間のケーブル数を大幅に削減でき、制御可能な量子ビット数を飛躍的に増加させることが可能となる。
研究チームは、提案した回路を液体ヘリウム中(絶対温度4.2K)で実験し、原理実証に成功。この技術により、1量子ビット当たりわずか81.8pWという低消費電力も実現。極低温環境での発熱を抑え、量子ビットの状態を保持できる。今後は量子ビットとの統合テストや高機能化を進め、大規模超伝導量子コンピューター実現の基盤技術として期待される。この成果は6月3日、英科学誌「npj Quantum Information」に掲載される。また、量子計算で必要とされる全ての量子ゲートを実行できるよう、同回路のさらなる高機能化を進めていく。
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2024年06月04日