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2024年06月04日

巴工業は戻り試す、24年10月期は上振れの可能性

 巴工業<6309>(東証プライム)は遠心分離機械などの機械製造販売事業、合成樹脂などの化学工業製品販売事業を展開している。成長戦略として海外事業拡大、収益性向上、SDGsや脱炭素、迅速な意思決定と効率的な営業活動に繋がるDX、資本効率改善、持続的成長に資する投資などに取り組んでいる。24年10月期は増収増益予想としている。機械製造販売事業、化学工業製品販売事業とも堅調に推移する見込みだ。小幅増益の見込みとしているが、第1四半期の進捗率が順調であり、通期会社予想は上振れの可能性が高く、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は3月の高値圏から反落して上値を切り下げる形だが、調整一巡して戻りを試す展開を期待したい。

■機械製造販売事業と化学工業製品販売事業を展開

 遠心分離機械などを中心とする機械製造販売事業、および合成樹脂や化学工業薬品などを中心とする化学工業製品販売事業を展開している。22年4月には欧州市場における各種化学工業製品の卸売を展開する100%子会社としてTOMOE Advanced Materils s.r.o.を設立した。23年11月にはインド駐在員事務所開設(登記完了24年4月予定)の準備を開始した。一方で、事業ポートフォリオ見直しとして24年2月に巴ワイン・アンド・スピリッツ(TWS社)の全株式を売却した。

 23年10月期のセグメント別業績は、機械製造販売事業の売上高が130億41百万円で営業利益が8億29百万円、化学工業製品販売事業の売上高が365億87百万円で営業利益が32億18百万円だった。

 機械製造販売事業の売上高の内訳は、分野別には官需が45億86百万円、民需が29億32百万円、海外が55億22百万円、製品別には機械が44億11百万円、装置・工事が11億52百万円、部品・修理が74億77百万円だった。化学工業製品販売事業の製品別売上高は合成樹脂関連が52億98百万円、工業材料関連が57億38百万円、鉱産関連が56億30百万円、化成品関連が85億73百万円、機能材料関連が61億90百万円、電子材料関連が49億10百万円、その他(洋酒)が2億46百万円だった。

 収益面の特性として、機械製造販売事業は設備投資関連のため、第2四半期(2月〜4月)および第4四半期(8月〜10月)の構成比が高い傾向がある。

 なお24年3月には、三菱化工機<6331>とのJVで沖縄県名護市より、し尿受入施設整備事業建設工事(契約金額12億89百万円、工期23年12月〜25年12月)を受注した。

■中期経営計画最終年度目標を上方修正

 持続的な成長と中長期的な企業価値向上を図るため、23年12月に資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応方針を決議するとともに、中期経営計画の最終年度業績目標値の上方修正、配当方針の変更と配当予想の上方修正、および株主優待制度の変更を発表した。

 中期経営計画「For Sustainable Future 〜持続可能な未来のために〜」で掲げた最終年度25年10月期の目標値を、初年度23年10月期にほぼ達成したため、上方修正した新たな目標値に25年10月期売上高540億円(機械事業150億円、化学品事業390億円)、経常利益44億円、当期純利益31億円、ROE8.0%を掲げ、PBR1倍の達成を目指すとした。

 現行の中期経営計画で取り組んでいる重点施策(機械事業での生産改革推進による採算性向上、海外事業の拡大、再生エネルギー分野への展開など、化学品事業での海外事業の拡大、新たなサプライヤーの発掘、パワー半導体分野への商材提供など、全社ベースでのDX推進、資本効率の改善、持続的成長に資する分野への投資・経営資源投入など)に加えて、新たな重点施策(成長戦略)として、化学品事業ではEV用等で世界的需要が拡大しているパワーデバイス市場での商権確立、ライフサイエンス分野等の新規事業立ち上げ、機械事業では海外展開の拡大(東南アジア全体のネットワーク化)、第2の柱とすべくバイナリー発電装置の販売、第3の柱となる海外製品の探索・販売権確保などを推進する。

 株主還元については、新たな配当方針として「配当性向40%以上を目標として安定的な配当を実施」を打ち出し、23年10月期の配当を大幅に上方修正した。さらに24年10月期も大幅増配予想とした。株主優待制度については、対象株主を「継続して1年以上保有する株主」に変更するとともに、優待区分を保有株式「100株以上300株未満」および「300株以上」とした。

 またIR活動の強化については、23年11月にIR・SR活動を担うIR推進PT(プロジェクトチーム)を設置し、取り組みを強化するための体制を整備した。そして24年4月には経営企画部内にIR・企画課を新設した。

 なおサステナビリティ経営に関しては、22年4月に、脱炭素・循環型社会の実現に向けて、主力のサガミ工場(神奈川県大和市)で使用する電力を100%再生可能エネルギー由来の電力に切り替えている。

■24年10月期増収増益予想、さらに上振れの可能性

 24年10月期の連結業績予想は売上高が23年10月期比4.4%増の518億円、営業利益が3.3%増の41億80百万円、経常利益が2.1%増の42億円、親会社株主帰属当期純利益が7.2%増の29億30百万円としている。配当予想は23年10月期比10円増配の120円(第2四半期末60円、期末60円)としている。予想配当性向は40.9%となる。

 機械製造販売事業は売上高が11.2%増の145億円、売上総利益が12.4%増の49億円、そして営業利益が20.6%増の10億円の計画としている。売上面は海外営業の強化などで増収、利益面は人件費の増加などを増収効果で吸収する見込みとしている。売上高の内訳は、分野別には官需が7.0%増の49億08百万円、民需が27.3%増の37億33百万円、海外が6.1%増の58億58百万円、製品別には機械が5.4%減の41億72百万円、装置・工事が73.2%増の19億95百万円、部品・修理が11.4%増の83億31百万円の計画としている。なお合計受注高は11.4%増の156億91百万円の計画としている。

 化学工業製品販売事業は売上高が1.9%増の373億円、売上総利益が2.4%増の83億80百万円、そして営業利益が1.2%減の31億80百万円の計画としている。売上面は東南アジアでのビジネス拡大などで増収だが、利益面は人件費や営業開発関係費用の増加などで小幅減益を見込んでいる。製品別売上高の計画は、合成樹脂関連が1.5%増の53億80百万円、工業材料関連が3.0%増の59億10百万円、鉱産関連が3.0%増の58億円、化成品関連が5.5%減の81億05百万円、機能材料関連が13.0%増の69億95百万円、電子材料関連が1.0%増の49億60百万円、その他(洋酒)が39.0%減の1億50百万円としている。

 第1四半期は、売上高が前年同期比9.1%増の121億38百万円で、営業利益が100.5%増の11億20百万円、経常利益が111.3%増の11億63百万円、親会社株主帰属四半期純利益が106.8%増の8億07百万円だった。機械製造販売事業が大幅伸長し、化学工業製品販売事業も堅調に推移した。

 機械製造販売事業は売上高が35.9%増の24億67百万円、売上総利益が増収効果で117.4%増の11億32百万円、営業利益が2億24百万円(前年同期は3億01百万円)だった。売上高の内訳は、需要先別には官需が42.2%増の8億36百万円、民需が28.5%増の6億35百万円、海外が35.9%増の9億95百万円、製品別には機械が7.8%増の4億70百万円、装置・工事が89.3%増の2億84百万円、部品・修理が39.5%増の17億12百万円だった。収益性の高い部品・修理が海外向けを中心に大幅伸長した。

 化学工業製品販売事業は売上高が3.9%増の96億71百万円、売上総利益が増収効果などにより4.9%増の21億56百万円、そして営業利益が4.1%増の8億95百万円だった。製品別売上高は、合成樹脂関連が全般的に低調で13.7%減の11億85百万円、工業材料関連が6.3%増の15億28百万円、鉱産関連が自動車用途材料や建材用途材料の好調で15.6%増の16億90百万円、化成品関連がコーティング用途向け材料の好調などで6.0%増の22億51百万円、機能材料関連が半導体製造用途向け材料の好調などで19.0%増の16億74百万円、電子材料関連が半導体組立用途向け材料の伸び悩みなどで12.0%減の12億46百万円、その他(洋酒)が1.1%増の94百万円だった。

 通期の連結業績予想は据え置いて小幅増益の見込みとしている。ただし第1四半期の進捗率は売上高23.4%、営業利益26.8%、経常利益27.7%、当期純利益27.6%と順調である。通期会社予想は上振れの可能性が高く、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株主優待制度(24年10月末より変更)はワインを贈呈

 株主優待制度(23年12月14日付で変更を発表、詳細は会社HP参照)は、毎年10月末日時点で100株以上を継続して1年以上保有する株主を対象として、ワインを贈呈(当社関連会社取扱商品、100株以上300株未満保有株主に対してワイン1本、300株以上保有株主に対してワイン2本)を贈呈する。なお24年10月末日の基準日より実施するが、株主の不利益を軽減するため、24年10月末日の基準日に限り、100株以上を継続して6ヶ月以上保有する株主を対象として実施する。

■株価は戻り試す

 株価は3月の高値圏から反落して上値を切り下げる形となったが、調整一巡して戻りを試す展開を期待したい。6月3日の終値は4315円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS293円64銭で算出)は約15倍、今期予想配当利回り(会社予想の120円で算出)は約2.8%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS3691円32銭で算出)は約1.2倍、そして時価総額は約455億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 11:02 | アナリスト水田雅展の銘柄分析