日本エム・ディ・エム<7600>(東証プライム)は人工関節製品など整形外科分野を主力とする医療機器メーカーである。米国子会社オーソデベロップメント(ODEV)社製品を主力として、商社機能と開発主導型メーカー機能を融合した独自のビジネスモデルを展開している。25年3月期は増収増益予想としている。償還価格引き下げや円安による調達コスト上昇などがマイナス要因となるが、獲得症例数増加による増収効果や原価低減効果などで吸収する見込みだ。為替が円高方向へ転換していることも考慮すれば、会社予想に対して上振れ期待が高まるだろう。積極的な事業展開で収益拡大基調を期待したい。株価は5月の年初来安値圏をボトムとして徐々に水準を切り上げている。地合い悪化の影響は限定的のようだ。1倍割れの低PBRも評価材料であり、上値を試す展開を期待したい。
■整形外科分野の医療機器メーカー、米国子会社製品が主力
人工関節製品、骨接合材料、脊椎固定器具など整形外科分野を主力とする医療機器メーカーである。米国子会社オーソデベロップメント(ODEV)社製品を主力として、商社機能と開発主導型メーカー機能を融合した独自のビジネスモデルを展開している。なお22年1月に三井化学が筆頭株主となり、新たに三井化学と資本業務提携した。
海外展開として、米国では販売体制強化と人工関節分野新製品導入による2桁成長を目指している。中国では21年5月に、米国ODEV社が中国WASTONと中国現地生産品の製造・販売を目的として合弁会社WOMA社を設立した。米国ODEV社製品の輸入販売拡大と中国現地生産品の製造・販売開始を目指している。
24年3月期のセグメント別業績(調整前)は、日本の売上高が130億04百万円で営業利益が10億93百万円、米国の売上高が143億60百万円で営業利益が6億36百万円だった。また売上高の内訳(日本は収益認識に関する会計基準を適用しているため売上高から販売促進費の一部を控除)を見ると、日本は人工関節が49億32百万円、骨接合材料が45億63百万円、脊椎固定器具が33億22百万円、その他が3億90百万円、売上控除が▲2億04百万円、米国は人工関節が101億41百万円、脊椎固定器具が32百万円だった。自社製品比率は80.2%だった。
収益面の特性として、医療機器償還価格の影響や為替変動の影響を受けるほか、整形外科医療機器の販売は下期が繁忙期となる傾向があるため、業績も下期の構成比が高い特性があるとしている。
■新製品の開発拡大
新製品としては、米国ODEV社との日米共同開発による適応症例拡大に向けたインプラント開発や、新素材インプラントや手術支援システムなど外部調達によるビジネス拡大を推進している。
23年9月にはインフィックスおよび細胞応用技術研究所と販売提携契約を締結した。膝関節早期治療製品PRP−FD(Plate Rich Plasma Freeze Dry)の医療施設向け販売を開始し、再生医療分野(膝関節)に参入する。23年11月には米国THINK社が開発した新型の手術支援ロボットシステムが、米国ODEV社製の人口膝関節「Balanced Knee System」および「BKS TriMax」を使用可能とするFDA承認を取得した。
24年3月にはODEV社製造の人工膝関節製品BKS(Balanced Knee SYstem)に関して、中国の合弁会社WOMA社が中国における薬事承認を取得し、中国での製造を本格的に開始すると発表した。また、ODEV社の人工股関節新製品「Trivicta Hip Stem」が米国食品医薬品局(FDA)薬事承認を取得し、米国での販売を開始した。
24年7月には、ODEV社製造の人工股関節大腿骨ステムOvation Tribute NEOシステムの薬事承認取得を発表した。日本人向けの治療材料として開発された製品で、25年3月期第4四半期から日本国内で販売予定としている。24年8月には、人工股関節用フェモラルヘッドの新商品JMDM BIOCERAM AZUL セラミックヘッドを発表した。京セラに開発・製造を委託し、25年3月よりに日本国内で販売開始する。
■長期ビジョンおよび1st Stageとしての3ヶ年計画
長期VISION「RT500」(25年3月期〜33年3月期)では、定量目標に最終年度33年3月期の売上高500億円(日本200億円、海外300億円)、営業利益率15%以上、ROE10%以上、ROIC8%以上、配当性向30%以上を掲げた。
また長期VISION「RT500」の実現、およびPBR1倍割れの早期改善に向けた「1st Stage経営計画」(25年3月期〜27年3月期)では、最終年度となる27年3月期(為替前提は期中平均1米ドル=150円)の目標値に、売上高300億円(日本150億円、米国150億円)、営業利益32億50百万円、営業利益率10.8%、当期純利益23億円、ROE8.0%、ROIC7.0%、配当性向30.0%を掲げた。なお25年3月期以降は毎年3ヶ年分を開示し、直近1年を予想、その後の2年分を目標として開示するローリング方式とする。
重点施策としては、販売力強化(米国ビジネスの拡大、日本ビジネスの拡大、中国販売基盤の構築)、製品ポートフォリオマネジメント強化、サプライチェーンマネジメント強化を推進する方針とした。
サステナビリティの取り組みも強化している。22年3月にはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同を表明するとともに、同提言に賛同する企業や金融機関からなるTCFDコンソーシアムに参画した。22年6月には国際連合が提唱する「国連グローバル・コンパクト(UNGC)」に署名し、参加企業として登録された。併せて、UNGCに署名している日本企業などで構成される「グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン」に加入した。
24年2月には、国際的な環境評価の情報開示システムを運用するCDPから、環境問題によるリスクや影響を管理している企業として、スコアレベル「B−」評価として認定された。24年7月にはFTSE Russellにより構築された日本株ESG指数「FTSE Blossom Japan Sector Relative Index」の構成銘柄に2年連続で選出された。
■25年3月期増収増益予想
25年3月期の連結業績予想は売上高が24年3月期比8.7%増の252億円、営業利益が5.9%増の18億50百万円、経常利益が0.4%増の18億50百万円、親会社株主帰属当期純利益が2.2%増の13億円としている。配当予想は24年3月期比1円増配の15円(期末一括)としている。連続増配予想で予想配当性向は30.4%となる。
品目別売上高(日本は収益認識に関する会計基準を適用しているため売上高から販売促進費の一部を控除)は、日本が24年3月期比3.8%増の135億円(人工関節が2.6%増の50億60百万円、骨接合材料が2.3%増の46億70百万円、脊椎固定器具が6.6%増の35億40百万円、その他が12.7%増の4億40百万円、売上控除が▲2億10百万円)で、米国が15.0%増の117億円(人工関節が15.4%増の117億円、脊椎固定器具が0百万円)としている。自社製品比率は0.7ポイント低下して79.5%の見込みとしている。
国内償還価格の引き下げ(約0.3%引き下げの見込みで影響額は年間約50百万円)、円安による調達コストの上昇などがマイナス要因となるが、獲得症例数増加による増収効果や原価低減効果などで吸収する見込みだ。なお想定為替レートは1USドル=150円で、為替感応度(為替1円変動による影響額)は営業利益で約20百万円としている。
第1四半期は、売上高が前年同期比12.0%増の60億52百万円、営業利益が5.7%増の3億66百万円、経常利益が9.0%増の3億67百万円、親会社株主帰属四半期純利益が54.3%増の2億73百万円だった。
増収増益だった。売上面は日本国内、米国とも獲得症例数が増加して2桁増収となった。利益面は日本の償還価格引き下げや円安による売上原価率の上昇がマイナス要因だったが、増収効果で吸収した。営業外収益では為替差益が13百万円増加、営業外費用では持分法投資損失が8百万円減少した。純利益については、前期の特別損失に計上した和解関連費用75百万円がなくなったことも寄与して大幅増益だった。
セグメント別(セグメント間取引・全社費用等調整前)に見ると、日本は売上高が4.2%増の31億84百万円で営業利益が33.6%減の1億56百万円、米国は売上高が17.9%増の37億53百万円で営業利益が252.5%増の1億93百万円だった。米国の外部顧客向け売上高はUSドルベースで7.8%増の18百万円USドル、円換算後で22.2%増の28億68百万円だった。米国売上の為替換算レートは1USドル=156.55円(前年同期は1USドル=138.11円)だった。
医療機器類の品目別売上高(セグメント間取引相殺消去後、日本は収益認識に関する会計基準を適用しているため売上高から販売促進費の一部を控除)は、人工関節は日本が2.3%増の11億98百万円で米国が22.4%増の28億63百万円、骨接合材料(日本)は4.0%増の10億79百万円、脊椎固定器具(日本国内と米国の合計)は6.5%増の8億74百万円だった。なお自社製品比率は1.1ポイント低下して81.2%となった。
通期連結業績予想は据え置いて増収増益予想としている。第1四半期の営業利益進捗率は、上期予想に対して67%、通期予想に対して20%である。通期予想に対する進捗率が低水準の形だが、これは下期の構成比が高い収益特性のためであり、上期予想に対しては高水準である。為替が円高方向に転換していることも考慮すれば、会社予想に対して上振れ期待が高まるだろう。積極的な事業展開で収益拡大基調を期待したい。
■株価は上値試す
株価は5月の年初来安値圏をボトムとして徐々に水準を切り上げている。地合い悪化の影響は限定的のようだ。週足チャートで見ると、抵抗線となっていた26週移動平均線を突破している。1倍割れの低PBRも評価材料であり、上値を試す展開を期待したい。9月4日の終値は744円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS49円39銭で算出)は約15倍、今期予想配当利回り(会社予想の15円で算出)は約2.0%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS968円74銭で算出)は約0.8倍、そして時価総額は約197億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)
◎日刊株式投資情報新聞(無料)登録受付中!
2024年09月05日