綿半ホールディングス<3199>(東証プライム)は経営方針に「地域に寄り添い、地域と共に新しい価値を創造する」を掲げ、ホームセンターを中心とする小売事業、長尺屋根工事や自走式立体駐車場工事を強みとして戸建木造住宅分野にも展開する建設事業、および医薬品・化成品向け天然原料輸入を主力とする貿易事業を展開している。26年3月期も増収増益で11期連続増配予想としている。各事業とも順調に伸長する見込みだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は戻り高値圏から反落して上値を切り下げる形となったが、大きく下押す動きも見られない。調整一巡して出直りを期待したい。
■小売事業、建設事業、貿易事業を展開
ホームセンターを中心とする小売事業、長尺屋根工事や自走式立体駐車場工事を強みとして戸建木造住宅分野にも展開する建設事業、および医薬品・化成品向け天然原料輸入を主力とする貿易事業を展開している。
25年3月期セグメント別業績は、小売事業が売上高792億69百万円で営業利益(全社費用等調整前)17億61百万円、建設事業が売上高447億62百万円で営業利益17億99百万円、貿易事業が売上高78億36百万円で営業利益8億57百万円、その他事業(不動産事業等)が売上高17億26百万円で営業利益1億63百万円、営業利益の全社費用等調整額が▲10億76百万円だった。
■小売事業はEDLP×EDLC戦略を推進
小売事業は、綿半ホームエイドが長野県を中心にスーパーセンター業態とホームセンター業態、綿半フレッシュマーケットが愛知県を中心に食品スーパー業態、綿半Jマートが関東甲信越エリアにホームセンター業態、綿半パートナーズがグループの共同仕入やプライベートブランド(PB)商品の共同開発など展開している。スーパーセンター業態は10万点を超える豊富な品揃えに加えて、生鮮食品を加えることで主婦層を取り込んでいることが特徴である。22年9月には長野市中心部・行政庁舎に近い権藤地区に綿半スーパーセンター権堂店をオープンした。生鮮食品、ホームセンター商品、医薬品、各種テナントを含めた複合型店舗としての出店である。
基本戦略として、M&Aも活用したエリア拡大と売場面積拡大、EDLP(エブリデー・ロー・プライス)×EDLC(エブリデー・ロー・コスト)戦略、子会社の綿半パートナーズによるグループ商品仕入原価低減とPB商品共同開発・相互供給、全社を一本化する新基幹システムの導入と物流改革、ネット通販の拡大などを推進している。
M&Aでは、18年12月に家電・パソコン通販サイト運営のアベルネット(現:綿半ドットコム)を子会社化、19年4月に長野県内で「お茶元みはら胡蝶庵」を展開する丸三三原商店(現:綿半三原商店)を子会社化、20年10月に家具・インテリア販売や空間デザイン事業を展開するリグナを子会社化、20年11月に調剤薬局併設ドラッグストアを展開するほしまんを子会社化、21年3月に組立家具製造販売の大洋を子会社化、21年11月にヴィンテージスタイルの家具・インテリアショップを展開する藤越を子会社化、22年4月に建物管理・不動産売買のAICを子会社化、藤越とリグナを合併(新社名リグナ)した。
22年7月には中村ファームを子会社化(綿半ファームへ商号変更)して養豚事業に参入、23年3月には小諸動物病院の全株式を取得、24年4月には養豚事業者向けに生産管理システムを開発・提供するEco―Porkと資本業務提携した。
小売事業の月次売上(速報値)を見ると25年4月は全店が100.4%、既存店が100.4%だった。前年より気温が低く推移したため園芸用品が落ち込んだものの、千曲店グルメコーナーのリニューアルオープンや、ECの販売戦略が成果を上げたことにより増収だった。
■建設事業は長尺屋根工事や自走式立体駐車場工事に強み、木造住宅も拡大
建設事業は、綿半ソリューションズが建築・土木・住宅リフォーム工事、鉄骨・鋼構造物の加工・製造などを展開し、長尺屋根工事および自走式立体駐車場工事を強みとしている。長尺屋根工事は、工場の操業を止めずに老朽化した屋根の改修工事を行う「WKカバー工法」で特許を取得している。自走式立体駐車場工事は、柱が少なく利用者が使いやすい「stage W」など、多数の国土交通省認定を有して国内トップシェアを誇っている。
またM&Aによって子会社化したサイエンスホーム(静岡県)が戸建木造住宅FC事業、夢ハウス(新潟県)が戸建木造住宅販売・加盟店運営を展開するなど、木造住宅分野も注力している。23年1月には自然素材・天然無垢材で造る木造住宅の新ブランド「cotton1/2」(木造軸組パネル工法)を開始、23年5月には木造システム建築「PREST WOOD」を開始した。23年6月には綿半ソリューションズが埼玉県川島町および東急不動産と、川島町における持続可能なまちづくりに係る協定書締結を発表した。再生可能エネルギー導入拡大を推進する。
24年4月には木材加工品製造・販売の征矢野建材を連結子会社化(24年6月に社名を綿半建材に変更)した。24年9月には綿半建材が(有)須江林産(長野県佐久市)の全株式を取得した。これにより、素材丸太の生産から加工・施工・販売まで、木材に関わるすべてをグループ内で展開する体制を構築した。
■貿易事業はジェネリック医薬品向け天然原料などを販売
貿易事業は、医薬品・化成品向け天然原料輸入専門商社の綿半トレーディングが展開している。ジェネリック医薬品向けアセトアミノフェン(解熱鎮痛剤)や、メキシコ特産でヘアワックス・口紅などに使用するキャンデリラワックス(取り扱い数量国内1位)など特定分野に強みを持ち、製造部門はHMG(ヒト尿由来の排卵障害治療薬)原薬を製造して医薬品メーカーに販売している。
23年1月には綿半トレーディングが、果実・野菜等の食品輸入を展開するカサナチュラルの株式20%取得して資本業務提携した。24年1月には綿半トレーディングが世界的な化学・エネルギー企業であるSasol Chemicals社と、日本のパーソナルケア市場における独占販売代理店契約を締結した。
■中期経営計画
23年5月に策定した新中期経営計画(24年3月期〜27年3月期)では、経営方針を引き続き「地域に寄り添い地域と共に新しい価値を創造する」として、目標数値には最終年度27年3月期の売上高1500億円、経常利益45億円、経常利益率3.0%を掲げている。地域との繋がりを大切にしながら、地域の発展に尽くすとともに、目標数値達成に向けて諸施策を実践し、企業価値向上を図るとしている。
24年11月には綿半ソリューションズが、持続可能な脱炭素社会の実現を目指す企業グループである日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)へ加盟した。
また九電工<1959>と共同で24年10月に設立した綿半ウッドパワー(出資比率65%)は、25年4月にソヤノウッドパワー(SWP)の発電事業を承継し、木質バイオマス発電事業に参入した。今後のスケジュールとして、25年8月頃にFIT(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)変更手続申請を行う。
■25年3月期大幅増益、26年3月期増収増益で11期連続増配予想
25年3月期の連結業績は売上高が前期比4.3%増の1335億94百万円、営業利益が24.0%増の35億01百万円、経常利益が17.8%増の38億12百万円、親会社株主帰属当期純利益が12.0%増の20億77百万円だった。配当は前期比6円増配の29円(期末一括、普通配当24円+記念配当5円)とした。10期連続増配で配当性向は27.7%となる。
増収・大幅増益で着地した。小売事業における収益性改善や建設事業の順調な進捗などが牽引した。なお特別利益に投資有価証券売却益3億71百万円を計上し、特別損失では固定資産の減損損失が4億32百万円増加(前期は2億55百万円、当期は6億87百万円)した。
小売事業は売上高が0.5%増の792億69百万円、営業利益(全社費用等調整前)が29.5%増の17億61百万円だった。売上面ではネット通販の販売戦略が成果を上げ、利益面では店舗改装による収益性改善や物流コスト削減が寄与した。
建設事業は売上高が11.0%増の447億62百万円、営業利益が55.9%増の17億99百万円だった。大幅増収増益だった。綿半建材の新規連結に加え、屋根リニューアル分野が好調に推移した。
貿易事業は売上高が2.2%増の78億36百万円、営業利益が25.3%減の8億57百万円だった。商品構成差の影響で減益だった。その他事業(不動産事業等)は売上高が42.7%増の17億26百万円、営業利益が45.8%増の1億63百万円だった。
なお全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が318億26百万円で営業利益が8億26百万円、第2四半期は売上高が334億44百万円で営業利益が9億29百万円、第3四半期は売上高が356億97百万円で営業利益が12億40百万円、第4四半期は売上高が326億27百万円で営業利益が5億06百万円だった。
26年3月期の連結業績予想は、売上高が前期比4.0%増の1390億円、営業利益が9.7%増の38億40百万円、経常利益が4.9%増の40億円、親会社株主帰属当期純利益が10.7%増の23億円としている。配当予想は前期比1円増配の30円(期末一括)としている。11期連続増配予想で予想配当性向は25.3%となる。なお前期の29円には上場10周年記念配当5円が含まれているため、普通配当ベースでは前期比6円増配の形となる。
26年3月期も増収増益で連続増配予想とした。各事業とも順調に伸長する見込みだ。セグメント別の計画は、小売事業の売上高が1.8%増の806億63百万円で営業利益(全社費用等調整前)が11.3%増の19億60百万円、建設事業の売上高が8.1%増の483億84百万円で営業利益が8.0%増の19億43百万円、貿易事業の売上高が0.7%増の78億90百万円で営業利益が11.3%増の9億54百万円としている。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株主優待制度は毎年9月末時点の継続保有株主対象
株主優待制度(詳細は会社HP参照)は毎年9月30日現在で1単元(100株)以上を継続保有している株主を対象に、保有株式数に応じて綿半オリジナル信州特産品やマイホーム購入特典などを贈呈している。
■株価は調整一巡
株価は戻り高値圏から反落して上値を切り下げる形となったが、大きく下押す動きも見られない。調整一巡して出直りを期待したい。5月21日の終値は1539円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS118円81銭で算出)は約13倍、今期予想配当利回り(会社予想の30円で算出)は約1.9%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1200円54銭で算出)は約1.3倍、時価総額は約307億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)
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2025年05月22日
綿半ホールディングス、26年3月期も増収増益で11期連続増配予想、各事業とも順調に伸長
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