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2026年04月03日

【小倉正男の経済コラム】トランプ大統領 「重要演説」で「出口なし」露呈 原油は110ドル突破、ダメージコントロール不作動

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■「重要演説」途中から原油先物高騰、1バレル110ドル突破

 トランプ大統領は、「重要演説」と銘打ってイラン情勢について米国民に話すというので視聴した。“プライムタイム”の4月1日・米国東部夏時間午後9時、日本では2日午前10時。

 少なくともイランとの戦争の停戦・終結について何らかの道筋が語られると思っていたが、それはまったくなかった。中身は何もなし。マーケットは“戦争終結”を祝う気十分だったが、お通夜になってしまった。

 演説の途中、戦争終結期待で1バレル100ドルを割り込んでいたWTI原油先物価格は上昇、最終的には110ドル台に急高騰している。2日午前の日経平均株価は1000円以上の下落、NY株式先物も大幅下落となった。

 トランプ大統領は、イランに対して「圧倒的な勝利」と自画自賛、いわば自慢を繰り返し述べている。ベトナム戦争、イラクとの戦争などを持ち出して「32日間」の短期のものと強調している。「戦略的目標はまもなく完遂する」「2〜3週間激しく攻撃して石器時代に戻す」と。

 これでは戦争終結どころか、終結の「出口戦略」は何も持っていないと受け止められたのも仕方ない。「重要演説」は噴飯もの演説になった感が否定できない。

■「出口戦略なし」ペルシャ湾をぐちゃぐちゃにして投げ出す

 3月末にトランプ大統領の波紋を呼んだ発言、NATO(北大西洋条約機構)からの離脱、湾岸諸国への戦費要求はさすがに触れられることはなかった。

 やはり3月末に発信された「イランとの合意は必要ない。ホルムズ海峡封鎖解除なしでも今後2〜3週間で撤退する。石油はアメリカから買うか、自分で取りに行け」については演説で語っている。

 「ホルムズ海峡は戦闘が終われば、自然に開放される。アメリカは関与しない」

 米国・イスラエルはイランとの核協議交渉中に不意打ち的に開戦。しかし、「出口戦略」は考えていなかったどころか、ぐちゃぐちゃにして投げ出したようなものである。

■米国内の「ガソリンスタンド戦争」では敗北

 トランプ大統領は、要衝であるペルシャ湾をかき回すだけかき回して、あとは知らないという呈である。だが、ホルムズ海峡の事実上封鎖は、産油国である米国には関係ないということにはならない。

 トランプ大統領は、国内では「ガソリンスタンド戦争」に嵌まり込んでいる。イランとの戦争以前は1ガロン3ドル以下だったガソリン価格はついには4ドル台(34%上昇)に値上がりしている。ガソリン価格は米国の消費者にはインフレを身近に実感する代表的指標にほかならない。

 ディーゼル燃料はガソリンを上回って上昇している。野菜など食品生産者価格(卸売価格)が異常な値上がりとなっているのは農機などの燃費上昇が関連している。そのうえトラック物流の輸送費がハネ上がっている。野菜など消費者の日常生活に関連する食品価格全般が目に見える格好で暴騰に晒されている。

 ガソリンスタンド、食品スーパーの商品棚、すなわちインフレ加速がトランプ大統領の手に負えないものになっている。これではトランプ大統領の支持者の“離脱“現象が止まらない。

■ダメージコントロールは不作動

 トランプ大統領は、イランとの戦争開始当初に成果は「10点満点で15点」と自画自賛している。しかし、最終的に採点するのは米国民にほかならない。11月中間選挙を控えた肝心の内政では、「100点満点で15点」という赤点評価を下されることになりかねない。

 トランプ大統領がいま取り組まなければならないのは、「クライシスマネジメント(有事経営)」におけるダメージコントロールである。

 イランとの戦争は内政面では事実上敗北であり、そのダメージ直撃は不可避となる。それを覚悟したうえで、ダメージを極力低減・コントロール(制御)する緊急作動が必要になる。

 敗北を認識することがダメージコントロールの起点にほかならない。自画自賛、自慢ばかりでは現実との乖離は甚だしいものになる。

 11月中間選挙に敗北すれば、弾劾、あるいは最悪では罷免要求といったものに晒される。TACO(トランプはいつも尻込みする)の機を失ったことは、とりもなおさず相当な深手を負う事態になったことを意味するのではないか。(経済ジャーナリスト)

(小倉正男=「M&A資本主義」「トヨタとイトーヨーカ堂」(東洋経済新報社刊)、「日本の時短革命」「倒れない経営〜クライシスマネジメントとは何か」(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長などを経て経済ジャーナリスト。2012年から当「経済コラム」を担当)(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 17:45 | 小倉正男の経済コラム